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トレヴィーゾ郊外の栗祭り 「フェスタ・デイ・マローニ」

トレヴィーゾ郊外の山間、コンバーイ(Combai)

すっかり秋らしく、冬の足音が聞こえてくるこの時期は、栗の美味しい季節。
トレヴィーゾ県のコンバーイ(Combai)という、プロセッコの里に隣接した山の地域では、産地呼称であるI.G.P.を冠する栗の産地としても有名だ。

その地で毎年10月には、栗の収穫祭が開かれる。ここに辿り着くまでには、プロセッコのブドウ畑の並ぶ急勾配の道を、車でズンズンと登っていく。紅葉の始まりかけた周囲の素晴らしく美しい風景を横目に、目的地へ。石造りの家の立ち並ぶ小さな集落。標高約400mに位置する町だ。
コンバーイはプロセッコの畑を見下ろす場所に位置する街に近ずくにつれて人も車も多くなり、会場から少し離れたところに車を止めるように交通整理員に誘導されて、徒歩で街の中心へ。普段は静かなこの小さな集落は、一年に一度のこの季節となると、車が渋滞するほどの賑わいとなる。

集落の入り口には大きな垂れ幕!


街全体がお祭り会場へ

集落内は全体がお祭り会場と化している。道端には、土地の製品を売る屋台が出店している。美味しそうな地元チーズやヴェネトの太いサラミ、ソプレッサの山は非常に魅力的…。

地元の食料品店の店先。簡易の即売所となる


柔らかく太いヴェネトのサラミ、ソプレッサ


そしてメイン会場へ到着。お昼どきには、ラザニアやニョッキ、スペッツァティーノ(肉の煮込み)などが振舞われており、大混雑の雑踏のなかで食べるそれらはこれまた格別。並べられたテーブルに座ると同席のお隣さんとも親しくなったりする。

牛肉のスペッツァティーノ。付け合わせはお決まりのポレンタで


祭りの目玉、焼き栗を食す!

別会場となる仮設テントは、焼き栗の大きな実演販売と飲食コーナーとなる。
テントの脇には、大きな大きな鉄鍋が設置されており、焼き栗が準備される。このお祭りの名物シーンでもある。チェーンで動作させるほどの大きな鉄鍋は、大量の薪を燃やして栗を焼く。煙がすごいが、気温の下がるこの時期には、暖をとるのにもちょうど良く、周囲には多くの人々が集まる。実際に焼いている人たちは大汗をかきながら作業しているのだが…

大きな鉄鍋で大量の焼き栗をつくる風景は、このお祭りの名物


食券販売所の列に並び、焼きたての焼き栗を注文。食券を持ってカウンターに行くと、焼き栗の袋と交換してもらえる。
熱々の焼き栗を囲んで、手先を真っ黒にしながらとにかく栗を食べる、食べる。食べる…食べ続ける。

真っ黒に焼けた栗。中はホッコリ。旨し!


会場内はテーブルが並べられていて、栗は立ち喰い


焼き栗のお供は…トルボリーノ

そして、焼き栗に欠かせないのが、「トルボリーノ(torbolino)」だ。「トルボリーノ」とは、この時期に飲むワインの前身のようなもの。収穫して間もないぶどうの果汁は、発酵過程を経てアルコールへと変わっていくが、その発酵がまだ完全になされていないこともあり、糖が残りアルコール度数が低い。当然のごとく、澱引きしていないことから、濁っている。「トルビド(=濁った)」であることが、「トルボリーノ」と通称される所以だ。

栗の収穫時期には、ちょうどこの段階のコレが季節的にも、そしてほんのりと残る甘い微発泡のコレが焼き栗に非常に合うことから、焼き栗とトルボリーノとはきってもきれない関係なのだ。
ワインになりきっていないぶどうの果汁という意味で、この会場ではあえて”モスト”と呼んでいる。

濁り酒のトルボリーノ


会場は、地元の子供たちも焼き栗や飲み物の提供をお手伝い。焼き栗の袋詰めやカウンターでワインを注いでくれる子供たちの姿がなんとも可愛くありながら大人びていて、見ていると思わず顔がほころぶ…。

注文のバンコ(カウンター)を守るのは、地元の子供たち


山間の小さな小さな街の大イベントだから、迎える人も訪れる人も喜びを一緒に分かち合う。この季節とこの季節だからこその味覚を皆で大いに楽しむ、そんな楽しいイベントだ。

コンバーイの街の上から。集落内はスパヴェンタパッセリ(かかし)が道案内


 

パドヴァ名物茹でタコ屋台 「ラ・フォルペリア (La Folperia)」

私の住むパドヴァの旧市街地には、ラジョーネ宮という1200年代に建築された、もと裁判所の建物がある。それを中心に南北をエルベ広場、フルッタ広場、そしてその西側にシニョーリ広場、という3つの大きな広場が位置し、街の最も活気のある中心地として存在する。

日没の遅くなる春先から秋の終わりまでは、この広場周辺のバールが広場にテーブルを出し、アペリティーヴォを楽しむパドヴァーニで賑わう場所。

この広場のひとつ、フルッタ広場の一角に、夕方になると毎日名物屋台が登場する。パドヴァの人ならば、知らない人のいない、夕暮れ時のパドヴァの風景の一部となっている。


この屋台の名物は、「茹でタコ」。店名も「タコ屋(フォルペリア)」という。イタリア語でタコは「ポルポ (polpo)」というが、ここヴェネトでは、訛りで「フォルポ (folpo)」と呼ばれているから、この屋台の目玉はタコ、ということは一目瞭然。

 


夕方になると、赤いひさしの屋台を載せ登場するのは店主のマッシミリアーノ(通称マックス)さん。非常に気さくで実は細かいところによーく気のつく、皆の人気者。

昨今のストリート・フードブームにあやかり、それ関連のガイド本などにも掲載されるようにもなぅた。そんなこともあり、最近ではパドヴァの人だけでなく、観光客なども多く訪れる。


注文は、カウンターの前に並んで自分の順番がくると、マックスが鍋の中からタコを取り出して大きさを見せてくれるので、適当な大きさのものをチョイス。


お互いの同意のもとにて、そのタコをブツブツと一口大に切る。軽く塩をし、特製サルサ・ヴェルデ(パセリとオイル、レモン、少しのニンニクを混ぜたもの)をさっとかけ、さらにレモンをギュッと絞る。


店の周囲のカウンターの空いているスペースを陣取り、お隣さんにもスペースを空けてあげる配慮をしながら、楊枝でつっついて立ち食い、というのがスタンダードなスタイル。

柔らかくて潮味のタコ、最高に美味いアペリティーヴォのお供となる。


飲み物は、隣のバールで調達。店の人たちも事情を承知のうえなので、グラスを持って店を移動しても全く問題なし。

座って食べたい場合には、このお隣のバールのテーブルにタコの皿を運んで、飲み物をオーダーし、落ち着いて食べてもよし。


とにもかくにも、この皿に会うのは間違いなく、冷たく冷えたプロセッコだ。

茹でタコ専門とはいえ、他にもいくつかの魚介の惣菜も用意している。バッカラ・マンテカート、エビのグリル、魚介のフリット・ミスト、他、マックスのアイデア次第で店頭に並ぶものも変わる。

そして、春先から出てくるのは、この「ボヴォレッティ (bovoletti)」。小さなカタツムリ。これは生きたままのものを茹で、タコと同様、サルサ・ヴェルデで和えたもの。楊枝でひとつひとつを中身をすくい出すようにし、手も口のまわりも汚しながら食べる。


広場のこの赤いひさし、夕暮れのパドヴァの街に欠かせない風物詩のひとつ。私の大好きな場所のひとつ。

La Folperia

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