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カラブリア州らしい(?)トマト仕事のお楽しみ

春の長雨、初夏の低温と農家泣かせの異常気候が続いたカラブリア州。この影響を受け、我が家のトマト仕事は史上初・10月中旬開催となりました。通常の1.5ヶ月遅れです。

農家さんが6月下旬(!!)に恐る恐る植え付けたという苗から育った立派なトマトを200㎏ほど入手し、有難いことだねぇと言いながらやっと終了したトマト仕事。我が家では、トマトソースをメインに少量のペラーティ(Pelati/湯皮剥きトマトの瓶詰)も作ります。

ところで。
食材ロスを絶対出したくないカラブリア州には、トマト仕事をする人(家庭)ならではの「お楽しみ」が存在する事はご存知でしょうか。

 

我が家のトマトソースの作り方


まず、トマトソースの作り方をおさらいしておきましょう。
我が家のざっとした作り方がこちら

1.トマトは洗って半分に切る
2.ざっと茹でる
3.水気を切って器械に通す
4.軽く塩をしたら瓶詰めして煮沸
5.そのまま冷やして完成→冷暗所保存

以上です。
ご家庭によってバジルを入れたり、トマトを生のまま器械に通したり、作り方には様々なバリエーションがありますが、ほぼ害虫駆除を行わない畑の泥で汚れた路地物トマトを使う我が家は、まずトマトを茹でます。だって、トマトの中に住んでる方がいるんだもの…

そして、この一連の作業で出るトマトの廃棄部分を使うのが、カラブリア州らしい(?)今回ご紹介する「お楽しみ」です。

 

お楽しみ・その1。いつもより赤いパスタ


(2)の作業でトマトを茹でたお湯は取っておいて、トマト仕事をした日のパスタを茹でるお湯として使います。

真っ赤にぐつぐつ煮えるトマト汁。絵柄がヤバイ。


パスタを入れても絵柄がヤバイですね。
もうこれだけで美味しそう。
広がるトマトの香りも素晴らしいです。


トマト汁で茹でたパスタを、作りたてのトマトソースで頂く贅沢。いつもより濃厚な赤さと旨味。
このトマトソースを楽しみに、修行の様なトマト洗いの作業も頑張れる。そんなお味。

これがトマト仕事をした日のお楽しみの1つ目です。

 

お楽しみ・その2 廃棄食材から秘伝調味料


器械にトマトを通すと、皮や種の部分が漉されてゴミとして出ます。
ま、この捨てる部分も3回くらい器械に通して、もう絞れません!!ってぐらいにまでは絞りつくすのですが、それでも結構な量の廃棄物が出ます。


これ、もったいないよね。と誰かが思ったんでしょうね。
カラブリア州の農村部には、このもう絞れませんな部分を使った調味料のレシピが存在します。

作り方は簡単。


まず、天日干し。
10月の太陽でどうかなーと思ったのですが、幸いと晴天に恵まれて数日でカッピカピに乾燥しました。さすがカラブリア州の太陽! (虫や汚れが入らない様、食品乾燥用の網で作られた容器内で乾燥させています)

なお、天日干しが無理な場合は、低温・送風のオーブンで乾燥させます。

で、カッピカピになったトマトだった何かをにんにく、好みの香草と一緒にフードプロセッサーにかけるだけで出来上がり。

トマト以外の材料もドライの方が保存がきくので、私はにんにくや香草もトマトと一緒に天日干ししています。


出来上がりはこんなカンジ。
乾燥させているといっても結構な量ができるので、すぐ使う分は清潔な瓶に入れて冷蔵庫で、残りは真空にして冷凍庫で保存しています。

この調味料、私はメイン料理やスープ料理の隠し味に使う事が多いのですが、使う香草によっては柔らかいチーズと合わせて使うマンマもいる模様。

主材料がトマトの残骸ともいえる部分なので、旨味的な所では乾燥トマトに負けます。でも、乾燥トマトを水でもどして…という作業が面倒くさい時や、あれちょっと旨味が足りないゾ?!という時に使える便利出汁みたいな位置づけです。

この調味料にもご家庭ごとにレシピがあり、それぞれこだわった使い方があるみたいで、こういった地味な所にカラブリア州家庭料理の懐の深さを感じる次第。

さて、カラブリア州では栗、オリーブ、ブドウなどの収穫が始まりました。一雨ごとに冬に近づく、美味しい物で一杯の季節の到来です。

カラブリア州でトレッキング。どんなカンジ?

40℃を超える日が続き、記録的な酷暑だったイタリア。
カラブリア州も7月中旬~下旬に州内最高気温記録を更新する酷暑となりました。

こうなると、暑さ確定の海に行くよりちょっと涼しそうな山でバカンスしようかな? という人も増え、2023年のカラブリア州は山間部訪問が大ブーム。それぞれが山間部を擁するカラブリア州内の3つの国立公園では、野外アクティビティをする人で賑わいました。

数ある野外アクティビティの中で、絶大な人気を誇るのがトレッキング。専用アプリも充実し、州内の国立公園内には初級者向けコースもたくさんあるので、気軽に出かける人が多かったように思います。

ところで、カラブリア州のトレッキングコースってどんなカンジ?
完走者0の年もあった過酷な冬期トレラン(250㎞)大会やマウンテンバイクの大会なども開かれるシラ国立公園内のとあるトレッキングコースをメインに、カラブリア州内でのトレッキングの様子をご紹介します。

 

トレッキングに行ってみよう


トレッキングコース自体の情報は、トレッキング専用アプリやトレッキング専門サイト、CAIのページなどから入手できます。コース番号と一緒に大抵は所要時間か総距離の情報もあるので、無理のないコースを選んだら、さぁ出発!

トレッキングコースの入り口には、写真の様な案内があります。これはCAI(Club Alpino Italiano)が設置するもので、コース番号、辻・折り返し地点・名所などまでの所要時間が記載されています。

ここで、コース番号が事前に調べた情報と合致していればOKです。矢印が示す方向に進みましょう。

コース上にある看板の様式はイタリア中どこでもほぼ同じ。各地のCAIボランティアや、有志がコースの整備などにもあたっています。


一旦コースに入ってしまえば、あとはオリエンテーリングの要領で、赤と白の目印を目安にコースを進めばOK。腰ぐらいの高さの石や、樹の幹に印がつけられています。

 

コースの様子はどんなカンジ?


トレッキングコースは基本的に整備されていて、中にはThe農道!なコースもあります。農道コースは道に迷うことも無くて安心ですが、ちょっとトレッキングの醍醐味に欠けるかな。


人気なのは、森林の中を行くコースや、薄っすら轍が見えたり、人が通過している跡があるかな…という草原コース。他人と会うことが稀なコースがほとんどなので、地図を見ながらぽつりぽつりとあるコースの印を探しながら歩く、トレッキングの楽しさを味わえます。


中級者向けコースになると、足場の悪い場所もあります。こういったコースは、州の北・ポッリーノ国立公園内のコースに多い印象。


中には、休憩できるところや、給水スポットのあるコースも。給水スポットは、湧き水源泉のキンキンに冷えた美味しい水(管理された飲料水です)を補給できるので、ぜひ立ち寄ってみてください。

 

標高の高い山の無いシラ国立公園内のコースは、大きな高低差も無く、就学前の子供でもOKなコースも多いです。どなたでもすぐ楽しめそうなのですが…それでもちょっと注意が必要かな?というところを以下にご紹介していきます。

 

カラブリア的難所(?)その1


コース上、高い確率で牛がいます。

北イタリア・アルプス界隈の人懐っこい牛と異なり、カラブリア州の牛はかなりワイルド。シラ国立公園内はポドリカ牛を始めとする酪農が盛んで、ワイルドな方たちが普通に、あちこちに、いっぱいいます。


道の真ん中でノンビリしているワイルドさんもいるけれど、そっと近づけば、牛の方が動いてくれます。

ここで大きな声を出したりするのはかえって危険。仲間を守ろうと、群れのボス格の牛などがすっ飛んで来ます。牛が近くにいたら、大きな音をたてないように、そっと通過しましょう。

あちらもニンゲンを興味津々で見ていたりするので、ちょっと不思議な気分になります。イタリア語であいさつすると、耳をパタパタする牛もいたりしてカワイイ。

 

カラブリア的難所(?)その2


突然現れる通せんぼ。

これ、私はアルプスのトレッキングコースで見たことが無いのですが、カラブリア州内のコース上には稀に柵があります。しかも大抵閉まってる。

これは土地の境界に立てる柵で、酪農家が隣り合っているとこういった柵がありがちです。で、コース上に柵があると進めないので、これをどうするのかというと、


柵には必ずこのような簡易扉みたいなのがあるので、有刺鉄線に気をつけながらぐいっと…


開けます。通過したら、また元の通りに戻しておきましょう。止め輪の部分が固いことが多いので、できればグループ内で最も力のある方が行うと良い作業です。

 

カラブリア州的難所(?)その3


風に揺れる道案内。

稀に、案内の建付けが悪くて風に揺れていることがあります。こうなっていると進むべき方向が分からない! これ、地味に困るヤツ!

実は、シラ国立公園内でも毎年遭難事故が発生しています。大抵は遭難から2日以内に無事に保護されることが多いのですが、道に迷わない準備も必要。

コース概要を把握してくと共に、最近はGPS機能付きのトレッキング用のアプリも沢山あるので、携帯に入れておくと安心ですね。

 

必要な道具や服装は?


シラ国立公園内でのトレッキングなら、本格的な道具は必要ないコースも多いですが、運動靴、動きやすい服装と防寒着、飲み水は最低限準備しましょう。(持ち歩くべき水分量(ml)は、体重体重 × 行動時間 × 5 × 0.8でざっくりと計算できます)

乾燥した草で皮膚が切れたりするので、盛夏でも長ズボンが良いですよ。

涼しくても日差しは強烈なので、帽子もあるとなお良いですね。チョコレートやエネルギーバー、塩味の強い物などの行動食もあると安心です。

一方、カラブリア州北部のポッリーノ国立公園内でトレッキングをするのなら、しっかりした準備やガイドをお願いして向かうのがデフォ。2000m超級がそびえるポッリーノ山系で遭難すると、命の危険が伴います。

欧州最大の一枚岩も見ることが出来る州の南、アスプロモンテ国立公園はシラとポッリーノの間位の難易度で、基本的に平易なコースが多め。でも、場所によっては本格的な装備が必要なコースもあるので要情報収集です。

トレッキングポールなどの道具もあると、さらにGood。ただし、道具をレンタルできる場所は無いで、自前で用意する必要があります。

※ガイド付きツアーの場合、必要な道具はガイドが用意してくれます。

 

歩いて行かないと見れない光景へ


トレッキングの醍醐味は、普通に観光していたのでは出会えない光景に出会えること。

そして、カラブリア州でのトレッキングはほんっとーーーーーに人に出会わないので、コース独り占め感や大自然に浸ってる感をとても強く感じられます。

シラ国立公園内のコースは、全体的に難易度が低めで、ビーチ沿いのリゾート地や都市部から気軽に行ける距離感も人気の理由。
観光のついでにトレッキングできる気楽さも、本年の大ブームの理由かなと思います。


最近は、日本からいらっしゃる方でもトレッキングを体験してみたい!という方がそれなりにいて、カラブリア州での滞在の仕方も変わってきているのかな、という印象。

観光地巡りも良いですが、半日ほど、どっぷりと自然を楽しむのも良いものですよ。

 

ところで…


トレッキングコースは冬場にスノーシュー用コースとなるのですが、これはまた、別の機会に。

 

「イタリアの美しい村」チヴィタ―独自の文化を持つ少数民族・アルブレーシュ(アルバレシュ)の村―


約600年前、オスマントルコの侵攻の際にギリシャ~バルカン半島界隈からイタリア半島に逃げてきた人たちがいました。

その後イタリア国内各地(主に南伊)に定住し、当時の文化、風習、言語を今に伝えている彼らと彼らの使う言葉は「アルブレーシュ(arbëreshë)」(アルバレシュ)と呼ばれています。

カラブリア州内にはアルブレーシュ(アルバレシュ)の村が多く、なかでもコセンツァ県内には約30の集落が存在しています。イタリア語とアルブレーシュ(アルバレシュ)、2言語が共通言語な村・チヴィタ(Civita)をご紹介します。

独自の文化と言語を持つ人々
カラブリア州コセンツァ県。コセンツァ市から車で北上すること約1時間、ポッリーノ国立公園のふもとにチヴィタ(Civita)村はあります。

村に近づくごとに道路標識は2か国語表記に。イタリア語と、もう一つは彼らの言葉「アルブレーシュ」(アルバレシュ)です。現在ではほぼ全員がイタリア語で読み書きしますが、ほんの数世代前まではほぼ100%アルブレーシュ(アルバレシュ)を使って生活していた、イタリアの中の外国。

イタリア到達以来、約600年にわたって独自の文化を守ってきたアルブレーシュ(アルバレシュ)は、カトリックの一派ながらも東方正教会系(東方典礼系・アルバニアビザンチン典礼カトリックとも)を信仰。正教会系の教会の中は、イタリアで見慣れたカトリック系とはひとあじ違う内装で、とくにモザイクの装飾は見ごたえがあります。

彼らの独自の文化・風習は、村の中の郷土民族資料館「チヴィタ郷土民族資料館(Museo Etnico arbëreshë)」で詳しく知ることができます。


ポッリーノ国立公園のふもと。豊かで厳しい自然と素朴な見どころ
2,000m級の山が連なるポッリーノ山系のふもとに位置するチヴィタ。「イタリアの美しい村」にも選出された村の美しさとこの大自然を感じるには、村の見晴台に行くのが一番。Belvedere(ベルベデーレ=見晴台)の案内に沿って行けば、ラガネッロ川が削った渓谷の厳かで立派な姿と、旧市街地の中でもとくに古い地域を一望することができます。

数々の伝説が残る岸壁、
かけてもかけても落ちてしまうことから「悪魔橋」と名付けられた渓谷にかかる橋、
渓谷を渡る強風にさらされた場所に作られた、石積みの小さな畑……
村の中を散策するだけでも、豊かで厳しい自然と共に生きる人々の生活の様子を感じることができます。


少し時間があったら、トレッキングがオススメです。ポッリーノ国立公園にしか生息していない、そしてヨーロッパで最古の杉と言われるピーノイタルス(Pino Italus、Pino Loricatoとも。樹齢約1230年)まで、約8時間の行程です。そのほか、初心者用のコースもたくさん。初夏から晩秋までがシーズンです。


ポッリーノ山系ならではのうまいもの、あります
自然が大切に守られているポッリーノ国立公園は、イタリア最大の国立公園。この中で放牧され、エサを探して一日に多いときで40㎞も歩くという、ヤギやヒツジのお乳から作られる、このあたりのチーズは絶品です。

ヤギやヒツジが食べている、野草の香りもふんわりとするような濃厚なチーズは、その日に採れたお乳で作られるので量産できず、この辺りを訪問しないと食べられない完全に地産地消されている幻の味。

チヴィタにはこれらの「地域限定幻の味」を楽しめるレストランも多数あって、アルブレーシュ(アルバレシュ)に伝わる伝統手打ちパスタや伝統料理と一緒に提供されています。あまりの美味っぷりに、カラブリア州内外からもグルメが押し寄せるさまとなっているので、週末やバカンスシーズンは予約が必要なほど。

村歩きの後などに、地元では「ポッリーノが育んだ味」として大切に伝承されている数々のお料理を楽しむことができます。

ポッリーノ国立公園(Parco nazionale del Pollino)
http://www.parcopollino.it/

Vol.48号掲載・カラブリア州の山羊乳チーズ職人マリアさん取材裏話

みなさま、イタリア好き通信Vol.48「イタリア人の暮らし」(2022年2月発行)はご覧になられたでしょうか?

愛するイタリアに南回り航路でやって来たマッシモ編集長の旅の軌跡がぎゅぎゅっと収められた号で、写真を見ているだけでイタリア中を旅しているよう。各地のうまい物や魅力的なスポット、素敵な人たちの写真もいっぱいで私のお気に入りです。

マッシモ編集長、北部イタリア各地を取材された後、イタリア半島を南下しカラブリア州にも取材にいらっしゃいました。
その際にご紹介したのが、山羊のチーズを作っているマリアさん。彼女の経歴については、本誌記事に詳しく紹介がありますけれども、某チーズの説明のことろに「本当においしい」っていう説明がありまして。
みなさま「本当においしいとはどんな味…?」って思われませんでしたか?


こちら、熟成室内でふわっふわのカビがとても良いカンジのチーズ。このふわっふわ感から素晴らしさが伝わりますでしょうか…?

えぇ。彼女のチーズは語彙力が無くなる破壊力を持ったおいしさなんですよ…


取材で訪問時、まぁ次から次へと出て来る様々な種類の山羊チーズ。それを取材のためとはいえ、まぁおいしそうに片っ端から平らげていくマッシモ編集長。

牛乳には無いコクっていうのはもちろんなんですが、山羊乳ってこんなキャパシティーがあるの?っていう驚きの連続。そして、どのチーズもホントにおいしい。困った、このチーズもおいしいぞ。これ、説明しようが無い。ホントに!! おいしい!!!!! 語彙力が行方不明!ってなってしまうのがマリアさんのチーズなんです。いやもう、感嘆するほど旨い物を文章で説明するのって難しすぎる。

なので、山羊チーズを語らせたら我こそは!!と思う方、え。そんなにおいしいの? と疑問に思われる方、いやそんなにおいしいなら食べてみたい!という方、みなさま是非、本誌を抱えてマリアさんのチーズ工房いらしてください。ホントにビックリするほどおいしいですよ。

実は彼女のチーズ、カラブリア州内の星付きレストランシェフやスローフード認定レストランシェフなどが名指しで買いに来きます。そんなすごい職人さんなんですが、


仔山羊抱えて嬉しそうにしている様子を見ると、全くそんなカンジがしないから不思議。
彼女の山羊たち、人を恐れないんですよ。撫でてって寄って来るぐらい人が好き。それだけ大事にされているんだなーと思います。

マッシモ編集長とも片言でコミュニケーションして、いっぱいチーズを食べたり触ったりして、お2人でとても楽しそうにされていました。


こちら、取材終了間際に撮影。いい1枚だ……
そうやって作られたVol.48でございます。見てね。

ところで先日、紆余曲折があってやっと持って帰って来れた本誌をマリアさんにお渡ししてきました。


写真撮ってくれ!って言われた(笑
大好きなマリアさんがとても喜んでくれて、私も嬉しいです。

マリアさんの山羊舎では、2月中旬以降3月上旬ごろまで出産シーズンを迎えます。これから忙しくなるわー、今年もおいしいチーズ作るからねーとおっしゃっていました。

またリコッタチーズ買いに行かなきゃ。

 

カラブリア州コセンツァ県の冬の味覚・クッドゥリ

カラブリア州コセンツァ県一帯の冬の味といったらクッドゥリ。

正確にはコセンツァ市ではcuddruriaddri(クッドゥリアッドゥリ)。その他の地域では cullurielli(クルリエッリ)の方が通じますが発音難しいので練習しましょう。

ちなみにクッドゥリアッドゥリの「ド」を強く発音します。すなわち、クッゥリアッゥリ。呪文かな?

ジャガイモと小麦粉を使った生地をドーナツ状に成型して揚げるのですが、塩味バージョンだとアチューゲ(アンチョビ)が生地に入ります。

一方甘味バージョンでは、揚げた後にお砂糖にくぐらせて、日本人には懐かしの揚げドーナツの様な一品に。


街角や観光地にはクッドゥリ屋台が出て、揚げたてを購入できます。クッドゥリ小屋は朝から晩までずーっと営業していて、ストリートフードとして大変人気があるんですよ。


お店によって味も大きさも違うのがご愛敬。
ただ、ジャガイモの特産地であるシラ国立公園内で購入するクッドゥリは格別美味しいような気がします。

そもそもジャガイモが美味しいからね…

それと、


こんな光景の中でアツアツを頬張れるから、かもしれません。

最近では真夏以外は営業しているクッドゥリ小屋も増えました。
カラブリア州コセンツァ県を訪問されたら、ぜひ召し上がってみてください。

※一つ€2前後。注文時にアチューゲ入り塩味か砂糖付け、プレーンを選べます。

 

ついに開催・カラブリア州コセンツァ市のFiera di San Giuseppe

カラブリア州コセンツァ市の春のお祭り・Fiera di San Giuseppe(フィエラ ディ サン ジュゼッペ)。約1週間続くお祭りは、FedericoⅡ(フリードリヒ2世・1194年~1250年)によって整備され、古くはシルクロード交易がもたらす物品販売の市場だったと言われている由緒正しいお祭りです。

以前、こちらでもご紹介しました。
(2019年に開催された際の記事はこちら

3月中旬に開催されるこのお祭り、コセンツァ市民にとっては春告げの祭りなのですが、この2年、世界的に色々大変なアレの影響で開催が見送られていました。

それが!
カラブリア州は実はまだまだ色々大変なのですが、「本年は絶対開催するぞ!!」という行政の強い意志で(笑)、開催時期を少しずらし、先日無事に開催されました。


我が家の近くで開催なのでちょっと覗きに行ってきましたが…マスクをしていない人がいっぱいいるぅぅぅ!
(イタリア、外でのマスク着用義務は現在ありません)

最早、人がいっぱいいるという状況を見るだけで感動ですよ…
2020年はロックダウンで家に籠っていたからな…


このフィエラで食器を買おう!と心待ちにしているコセンツァ県民も多く、またブランド物のB級品をあつかうお店も多数出店しています。

このフィエラは値切り交渉上等の文化なので、熱い交渉が行われているのもあちこちで目にしました。

食器エリアの熱気が戻って来た(笑


伝統の食器関連、カーペットをはじめとする「布もの」関連のお店の他にも、食べ物関連の出典も大変多く、ストリートフード系のお店、郷土菓子屋さん、大人も子供もつい立ち止まる系のジャンクフード屋などなどが軒を連ねます。


そして発見したリンゴ飴。
あれ、こんな毒々しいカンジだった?? などと思いつつ1つ購入…

 

復活祭からフィエラと続き、カラブリア州にも少しずつ日常が戻ってきました。
日常。なんとも嬉しいものですね。

 

パンにまつわる昔話・Panificio Cuti(パニフィーチョ・クーティ)

私の住むカラブリア州コセンツァ県コセンツァ市は、古くから近郊の村々から毎朝焼き立てのパンが届く伝統があって、「古来より続くパン販売店」はあってもパン工房自体は存在しません。

コセンツァに届くパンは、それぞれの村で使われる酵母、小麦、水は地域によって違いが大きく、味も風味も大きく異なります。この為、今でもパンが作られる地域や村の名前を使って「××のパン」という呼び方をして厳密に区別し、その日の献立によって購入するパンを選ぶ習慣も残っています。


戦後しばらくたった頃まで、コセンツァ市周辺の村々の家でパン焼き窯を自宅に備えていることは、ある種の豊かさの象徴でもあったようです。
小さな村の一般的な家庭にはパン焼き窯が無いことが多く、小さな教会を中心にした1つの地区に1つの共同窯を管理している。そんな光景が普通だったと聞きます。

コセンツァ市から車で15分くらいのところにロリアーノ(Rogliano)という村があって、村のはずれにクーティ(Cuti)という地区があります。
Cuti地区には小さな小さな教会が1軒あり、数十年前までは共同のパン焼き窯が1つあり、Cuti地区のパンという物が焼かれていました。


1981年、この共同窯を使っていたある家庭が一族伝来の酵母と伝統の製法でパン屋として起業し、Panificio Cuti(パニフィーチョ・クーティ)が生まれました。

写真は2代目社長でパン職人でもあるアントニオさんと奥様のピーナさん。
ピーナさんはパンに関する本も出版されるなど、Cutiのパンの伝統を形に残し、ロリアーノのパンの知名度向上に奔走されています。

1960年代後半からイタリアは経済成長で湧き、カラブリア州内でも多数の新興中流層が生まれました。
Cutiが創業した1980年前後といえば、コセンツァ市はホワイトカラーの仕事を求める人々による大幅な人口増、近郊の村々は逆に過疎に悩み始めたころ。お惣菜が店に並ぶようになり、共同窯でパンを焼くより購入する方が好まれ始めた頃の事です。

そうやって小さな窯は少なくなり、そんな中であえて起業したCutiのパンは、街に出た人たち、すなわち、パンを焼かなくなった人たちからも「懐かしいあの味に似ている」と好評だったとか。
この為、会社は徐々に規模が大きくなり、現在(2021年9月現在)は社員を16名も抱える企業となりました。


Cutiのパンの表面には、爪楊枝の様な道具で付けられた「CUTI」の印があります。
これは、まだCuti地区の女性たちが窯を炊く日に集まって、おしゃべりしながら生地を捏ね、共同窯でパンを焼いていた頃からの伝統。

大きな共同窯で焼いたどのパンがどの家庭の物かわかるように、パンの表面に飾りを入れていた頃の名残だそうです。


酵母は少なくとも150年以上前から伝わる物。毎日数時間かけておこし、継ぐ作業をしています。

Cutiのパンを焼くには、この酵母の他に塩素の入っていないシラの湧き水、厳選された小麦と少量の塩。地元の土を使って作られたレンガで組み立てた窯と大量の薪(栗の樹)が必要です。

薪も栗の樹、と限定されているんですね。知らなかったわ…


小麦粉など素材にこだわるのはまぁ一般的だろうと思いますが、実は私、窯に使われるレンガに違いがあるなんて知りませんでした。
耐熱レンガなんてどれも同じだろうと思っていたんです。

ところが、パン職人で社長のアントニオさんによると、ロリアーノの土を使った、ぼろぼろと崩れる様に一見脆いこのレンガがパン焼きに最高に良いんだとか。「このレンガを作れる職人がいなくなると困る。Cutiのパンが焼けなくなる」とおっしゃっていたのが印象的です。

レンガは地元の職人が一つ一つ手作りしているので、大きさと高さが微妙に異なっていて、窯の内部もデコボコしています。パンの裏側にこの凹凸が出るのもCutiのパンの特徴なんだとか。

「パンを知ってる人は裏返してみる」らしいですよ。パンの裏側にも地味に職人のいい仕事の証があるんだそうです。

うん、私、毎日のように食べているのに知らなかったです。今度から裏返してみて「通」を気取ってみようかな(笑


厳選された小麦を使った「白いパン」と全粒粉のパンが主力商品。天然酵母を使いゆっくり発酵させた証と言われる、横に長い空洞があるのも特徴です。
そして、皮の部分がもの凄く美味しい。


酸味を感じるパンは日持ちするし、乾燥させて郷土料理にも使います。

コレが無いと作れないお料理の数々、コセンツァには結構あります。そして…酵母の酸味が必要なので、他の地域のパンで代用できません。我が家では、遠方に住む親せきたちからは「××を作りたいので××のパンを送ってくれ」と頼まれることもしばしばですが、リクエストのあるパンはほとんどがCutiのパン。
それだけ広く愛されているんだなぁと思います。

彼らが頑固に伝来の酵母を使い続ける限り、パンにまつわる伝統も伝承もコセンツァの郷土料理も失われない。そんな思いにさせられる、食文化の縁の下の力持ちです。

カラブリア州のワイナリーVol.5 欧州で一番標高が高い所に畑を持つワイナリー・インマコラータペダーチェ(Immacolata Pedace)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第五弾は、ヨーロッパで最も標高が高い位置にあるぶどう畑を持つワイナリー・インマコラータペダーチェです。

カラブリア州コセンツァ県のシラ国立公園内(赤印が大雑把な目安の場所です)で2007年に設立されたインマコラータペダーチェは、高原域の湖に面した海抜1300m地帯に2.5haの畑を持つ、小さな家族経営のワイナリーです。

最高生産数は1万本/年と言いたいところですが…ここ数年は気象条件が大変厳しく、1万本に少し届かないぐらいの数を生産。最近多い、晩春の降雪があると樹がダメージを受け収穫0もあり得る。そんな厳しい土地でワインを作っています。

ただでさえ少ない生産本数の上、最近は海外からの認知度も高くなり、ワイン好きの間でひそかな奪い合いが発生しているワインナリーに成長しました。この為、エクスクルーシブ(専売契約)をしたお店でしか買えないワインとなっています。

※ワイナリーでの直接購入は在庫次第で可能です


温暖な印象のある南イタリア・カラブリア州ですが、シラ国立公園内は積雪する高原地帯。ワイナリーのある海抜1300m地帯もしっかり積もります。

公園内にはスキー場が3か所もあるぐらいだしね。スキー場の様子はこちらからどうぞ(


ここでワイン作ろう!とブドウの樹を植えはじめたのが、写真のエマニュエル氏。最近パパになったばかりの、本業は新進気鋭のエンジニアです。

幼い頃に祖父と一緒に食べた「新雪のモストコット*掛け(これ、コセンツァ市でも食べる郷土食(?)です)」が忘れられず、自家製モストコットを作りたいというのがそもそもの動機。

モストコット*:収穫したブドウをぎゅっと絞ったブドウジュースを煮込んだもの。甘味料としても使われた。

 

さらにこの場所なら、ご本人が大好きなアイスワインが出来るのではないか、と考えたことがそもそもの始まりだったのですが…


・昼夜の寒暖差が15℃以上という、とんでもない気温差が春から秋にかけて連日観測される土地柄。なお夏場はおよそ20℃の寒暖差がある。

・湖に面した独特な気候帯

・醸造家をして「ここの土、フランスの某地に似すぎてる!」と言わしめた土壌

・「欧州で一番空気が綺麗な場所」に認定(2014年)された、清涼な環境

などなどの要素が重なり、繊細な香りのワインを作ることに成功、現在に至ります。


そもそも最初は、モストコットとアイスワインが目当てですからね。
始めて収穫を行った年は、こんなに小さな圧搾機(トルキエット)でブドウをぎゅぎゅーっとしていたらしい(笑

で、初めてのワインをボトリングした結果…(収穫後の処理が雑なので)少し雑味があるワインながらも香りの良さに注文が殺到。エマニュエル氏、モストコット作っている場合じゃなくなってしまいました。嬉しい悲鳴だったそうです。


自然が厳しい土地柄だけに、ブドウの樹も土地に合う品種を探しながら徐々に増やし、現在の規模になるまであっという間だったそうです。

実は、寒さが厳しすぎて所謂土着品種は向かない土地と言う事がかなり早い段階で判明しました。この為、土着品種は少なめに、逆に国際品種のシャルドネ、ピノ・ブラン、メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョンなどがメインに作られています。

ところで当初の目標でもあったアイスワインですが、温暖化の影響かワイナリーのある地域の降雪時期が12月~年明けにずれ込むことが多く、製造を断念したそうです。
うーん。。残念。ここの畑から作られるアイスワインにも興味があった!


ラインナップも少し変わっていて、白・1種、ロゼ・2種、赤・1種となっています。そして、どのワインもアルコール度数が13度とカラブリア州産ワインにしては控えめなカンジ。(標高高い所だからね…

そして、特筆すべきは全てのワインでそれぞれのエレガントな香りを楽しめる事。さらにブドウの樹が生育する周辺の環境の香り(松の林とか、森の果実とか)がボトルの中にぎゅっと濃縮されている事です。

シラ国立公園内に滞在したことのある人なら、ここのワインを飲んだ瞬間に「あの光景」が脳裏に浮かびます。これは衝撃的。日本の皆様にもぜひ飲んでみて頂きたい。

この香りを最大限生かすため、樽での熟成には否定的なエマニュエル氏、今後はスプマンテ作りにも挑戦してみたいと話してくれました。
実は…白もロゼも素晴らしい出来栄えなので、スプマンテにも期待度120%で正座して出来上がりを待ちたいと思っている地元ソムリエ、私を含めて何人かいます(笑

今後に目が離せないワイナリーの1つです。

 

Immacolata Pedace)公式サイトは準備中

C.da Cava di Melis – Longobucco (CS)
フェイスブックやインスタに電話番号の記載があるので直接連絡、もしくはメールで訪問予約可

自然と共にある生活。カラブリア州のある養蜂家の1年と採蜜の様子

イタリアには固有種・リグスティカ種(Ape ligustica)というセイヨウミツバチがいて、古くから養蜂に使われてきました。(日本の養蜂家にも人気で「イタリアン」と呼ばれているそうです。)


実は、セイヨウミツバチは家畜。この為、世界中で品種改良も活発に行われており、数々のハイブリッド種も登場しています。
これらハイブリッド種は採蜜量に優れ、強健で環境適応能力が強い特徴があります。(目的をもって人間が作り出した種なので、ある意味当たり前なのですが。)

この為、世界中で飼育されている大多数のミツバチがこのハイブリッド種。イタリア国内においても、特に商業養蜂家はハチミツをいっぱい作ってくれるハイブリッド種を好むので、固有種であったリグスティカが消滅の危機にあります。


これではいかーん!!と、国と養蜂家の一部がイタリア固有種を保全する活動を始めていて、その活動に賛同している養蜂家を「イタリア好きVol.34 カラブリア特集号」でもご紹介いただきました。

ところで。リグスティカが大変なのは分かった。でも養蜂家って1年何してるの?って思いませんか??

今回は、リグスティカ種保全活動に取り組む養蜂家・ジュゼッペ氏(本業は先生)の1年、採蜜の様子と彼のコダワリについてお届けします(ちょっと長いです

 

養蜂家の1年


養蜂家の仕事は春から始まります。
秋の蜜を採った後、冬越しさせるための体力をつけてもらい、外気温が柔らかく緩むまでは蜂箱を開けることはありません。冬の間に蜜箱を綺麗にしたり、工房での地味な仕事は色々あるのですが…まぁ今回は割愛して。

そして待ちに待った春。


温かさに釣られて、冬越しをした働き蜂たちが一斉に出てきます。
彼らの最初の仕事が、なんと排泄。
冬の間中ずーっと我慢していた物をすっきりさせてから、野の花へ花粉を集めに行きます。

長い冬ごもり、お疲れさまでした。本年もよろしくお願いします。

 


蜂たちの活動が活発になると、養蜂家は蜂の観察とお世話の作業で忙しくなります。
女王蜂は元気か、病気はいないか、蜜を集めてきているか。そろそろ人間用にも分けてもらえるかな…などを蜂箱を1つ1つ開けて確認します。


保全活動の一環として、女王蜂も作っています。
技術があれば女王蜂も作れるんですよ…びっくりですよ…。

さらに新女王蜂の結婚飛行の時期は特に気を使い、雑種交配しないように細心の注意が払われます。ここで近親交配にならない様、血統の遠い雄蜂との交配が出来る様に準備するのも、リグスティカ種保全活動の中では大切な作業。

 


女王蜂が元気で働き蜂の勢いが良く、人間にも蜜を分けてもらえそうなご一家のお宅は増築されます。
写真の場合、青い箱が本宅で、上に乗っている紫とオレンジの箱が人間用の蜜を集めてもらっている箱。

ミツバチたちはココにハチミツを集め、貯蔵に向く水分量まで熟成させてから蓋をします。
蓋をして保存するんですね。虫なのに凄いですよね。

 


ミツバチは高度な集団生活を行う虫なので、作業中には偵察係もやってきます。偵察なので見に来ただけで刺しません。かわいい。

このようにして蜜を集めてもらったら、今度は工房内で採蜜作業です! ちなみに、蜜でいっぱいになった蜜箱はおよそ20㎏ぐらいの重さになりまして、腰に注意しながらの作業です!!

 

 

採蜜の様子


まず、ミツバチがした蓋を取り除きます。
熱源を使って溶かし落とす養蜂家もいますが、非加熱にこだわるジョゼッペ氏は手作業で行います。
(熱源を使って溶かしても、注意すればハチミツの品質に大きく影響しませんが、ジョゼッペ氏のこだわりが凄くて…)

 


その後、ごるんごるんと工房自体が動くんじゃないか、ぐらいの勢いで遠心分離機にかけられて…

 


ハチミツが出てきました♡
これは栗の蜜ですね。

 


特殊な3重のフィルターを使って不純物をろ過し、ハチミツ保存用の専用容器に入れて数週間休ませます。ろ過しないと虫の足などが入ったハチミツになってしまうので密かに重要な作業です。

さらに水分量等の各種品質検査を経て…

 


やっと瓶詰め。(これはアカシアの蜜)
瓶詰めも手作業(笑

ジュゼッペ氏は1年のうちに最低3回は採蜜するので、この作業を3回繰り返すって訳ですね…

 

ジョゼッペ氏のコダワリ

 


ここまで見て頂いたように、ハチミツという食べ物は、ミツバチたちが集めた蜜を加熱も加工もすることなく、そのまま頂く「生」な食べ物です。
ワインの様に、ぶどうジュースがアルコール発酵した飲み物よりもずっとずっと「生」です。

このため、私たちはミツバチがいる環境を、空気を、自然を頂いていることになり、良いハチミツ作りには良い環境が欠かせない、というのがお分かりいただけると思います。

ジョゼッペ氏の養蜂場は、ヨーロッパで最も空気が綺麗な場所に認定されたこともあるカラブリア州シラ国立公園の入り口。
しかも
  • ・近くに畑が無い(農薬散布被害の心配がない)
  • ・整備された車道が無い(排ガス付着の心配がない)
  • ・すぐ下を清流が流れている(空気が動き、常に清涼な環境)
など、人間にとっては不便だけれど出来上がるハチミツの安心さにはちょっと自信があるぞ、な場所なんですね。

さらにこのような環境は、ミツバチの健康の為にも良いので、リグスティカ種保全活動にはぴったりの場所なのです。

 


加えてジョゼッペ氏、ミツバチが蜜を集める時期の作業に、蜂を落ち着かせる作用のある煙も使いません。

これは、ハチミツに煙の成分が入ってしまう可能性を除く為。煙の成分が付着したら、ハチミツ作る際に取り除けないですからね…

煙を使ったとしてもハチミツに付着するのは超微量ですが、ここまで気を付けている養蜂家ってすごーく珍しいのです…

 


さらに採蜜作業も、蜜に触れない様に細心の注意を払いつつ手作業で行っています。

ここで薬剤を投入したりすると非常に楽らしいのですが、生であること、非加熱・無添加である事にこだわるジョゼッペ氏は頑なに手作業…

出来上がるのは、EUの認証を受けたBIOハチミツです。もちろん非加熱・無添加です。
(日本だと有機とか生、などの冠が付くのでしょうか?)

 


このようなこだわりは、リグスティカ種保全の目的もあるけれど、恐らく自分や家族に食べさせたいと始めた養蜂だからかな、と思います。
そりゃね。イタリア人が自分のマンマ♡に食べて欲しいと思って作ったら…最高級の注意が払われますよね。わかるわ~(笑

花を追って移動する大規模養蜂家はと違い、リグスティカ種と共に生きる為に最適な場所を選んだジョゼッペ氏は、実は私の養蜂の師匠でもありまして。

 


昔ながらのハチミツって…ミツバチたちがブンブン飛んでいた、まさにその時期の自然がぎゅっと凝縮された食べ物じゃない? その年によって微妙に味が違って当たり前じゃない?っていうコンセプトに共感し、折を見ては お邪魔虫 お手伝いに行っております。

本年のカラブリア州、4月中旬に山間部で積雪する寒さを記録し、各地養蜂家も大変なスタートとなりました。
が。本来養蜂ってそんなもんだろうと、飄々と作業する師匠の後を追っかけて、養蜂修行は今日も続く…


2021年度「イタリアの美しい村No.1」にトロペアがぁぁぁ!

イタリアの美しい村(Borghi più belli d’italia)に選出されている村の中から人気投票で選ばれる、2021年度の「美しい村」No.1 にカラブリア州トロペアが選出されました。

Webニュースで速報も出て、その記事がこちら→

https://www.lacnews24.it/cronaca/tropea-borgo-piu-bello-d-italia-vince-il-concorso-e-porta-la-calabria-in-cima-al-podio_134605/

時節柄、明るいニュースが少ない地元では早速大騒ぎでお祝いしています。めでたい。

トロペアは、カラブリア州中西部のヴィッボ・ヴァレンツィア県の海沿いの村。
カラブリア州ガイドには必ず写真が載る、州内最大規模の観光地です。
イタリア好きVol.34号はカラブリア州特集号でしたが、マッシモ編集長の紹介文、

 
「神が与えてくれたもの、土地が与えてくれたもの。それを信じて生きる喜びを知っているのだ。」

 
という言葉がぴったりの場所。


観光地ですが、そこにしっかりと暮らしている人たちがいる。そんな場所です。

訪問の機会があったら、明るい時間に裏路地散策なども楽しんでください。

 

グルメさんにはこの土地を代表する食べ物・赤玉ねぎが有名でしょうか。
トロペア周辺の海岸線沿いで作られ、この地域独自の気象帯の影響を強く受けた独特の甘みが特徴です。

この玉ねぎを他の土地で作っても絶対にこの美味しさは出ないんだなーと地元農家が自慢しまくる1品。
特に葉付き玉ねぎの美味しさは、ぜひ一度お試しいただきたいものです。

 

(そのうち)遊びに来てね、カラブリア州。
カラブリア州特集号はこちらから購入できますよ(

亡き義両親の思い出@国際女性デーの我が家の食卓

3月8日の国際女性デー。
私が住むコセンツァ市では、大通りに面した噴水を赤く染めてこの日をお祝いします。


昨日見に行ったら準備万端でした。
ナゼ赤いのかは…諸説ありますが不明です(笑

ところで我が家では、女性の友人たちとランチやアペリティーボをするのは8日前後とし、3月8日の国際女性デー当日は自宅でお祝いする習慣があります。
この日ばかりは出張を入れたりせず、みんなが急いでランチの為に帰宅します。


義父が存命の頃は、料理上手だった義父が得意の手料理を振舞い、特に豪快な肉料理が人気でした。この日の為にスケジュールを調整し、半休取ってお料理してたものね。気合の入り方が違います。
週末がちょうど「当日」の場合は、山の家でピクニック気分でお祝いしました。写真は前菜の盛り合わせ。自家製のサラミなどが山盛りで、復活祭ランチの予行演習といった趣でした。

一方、亡き義母は典型的な「イタリアのマンマ」像からものすごく遠い人で、お料理が最高に苦手でちょっとビックリな失敗の逸話も沢山ある人。
でも、作るとなったらお料理の口当たりは非常に重視する人で、その為の作業は厭わない人でもありました。


義実家では長いこと義母がお菓子係だったのですが、そんな義母に言わせるとミモザのケーキは口当たりがモスモスして苦手。モスモスって(笑

イタリアのスポンジのレシピってしっとりしていない事が多いので…だから苦手だったのでしょう。それでもミモザのケーキが無いのは寂しいので、小さく作るのが習慣でした。

そんなこんなで、我が家では国際女性デー定番のミモザのケーキは主役じゃなくて、でも何かしら黄色いお料理やお菓子を作ることが伝統の様になっています。

コセンツァ市は来週控えた聖ジョゼッペの日を盛大にお祝いすることもあり、この日の為のお菓子・ゼッポレは良く食卓に上りました。その他、旬を迎えた地場産のイチゴとたっぷりのカスタードクリームのタルト、私が嫁いで来て以降は黄色ければOKなルールを悪用した(?)ちらし寿司などなど(笑


散らし寿司は義両親が錦糸卵の繊細さに非常に感動し、また江戸風の「甘い卵焼き」に衝撃を受けてた思い出深い一品です。

レンコンも初めて食べただろうに、しゃくしゃくした歯触りを義母が気に入ってくれて、甘辛い味付けの食材もたくさん食べてくれました。そういえば、すし飯も人生・初だったかもしれない(笑


と言う事で。
本年の3月8日は、義母が大好きだった聖ジョゼッペの日用のお菓子・ゼッポレでお祝いする事に。たくさん焼いて、後はアマレーナを飾ればOKの状態でスタンバイ中です。

皆がわーっと帰宅するのを待って、我が家のお祝いの日のランチが始まります。

Buone Feste♡