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シチリア特集

vol.132013年5月発行
在庫なし

おやじの粋なはからいと
シチリア美人

キリット晴れた雲ひとつない青空。
強い風は、波を防波堤に打ち寄せ、
海からの風を小路に流していく。
冷たい空気と潮の香り。

8年ぶりに訪れた、シラクーサ・オルティージャ島。
記憶を辿って、早朝の散歩に出かけた。
蘇る記憶と匂い。

前日の夕方ここに到着した。

パスクアを翌週に控え、町は浮かれ、そわそわして、例えるなら日本の年末、忘年会シーズンのようだった。

ドゥオーモ前の広場は賑わい、小さな子供はバルーン片手に走り回り、久しぶりに再会する地元の友人たちは談笑し、ショーウインドウには卵型のチョコが飾られ、おじいさんの持つ大きな荷物はきっと孫へのプレゼントだろう。

映画『マレーナ』は、壮麗なバロック様式のドゥオーモ前の広場を歩く、モニカ・ベルッチの美しさが印象的だった。このシーンの舞台となったのは、オルティージャ島だと、8年前シラクーサを訪れた時に、フォトジャーナリストの篠さんに教えてもらった。その時は、真夏の太陽がジリジリと刺すように照りつける昼下がりで、広場は静まり返っていた。歩いているのは、ポツポツと観光客くらい。地元の人は、夏の暑い昼間には外に出ない。

オルティージャ島の市場には今回初めて行った。やはり魚屋が目立つ。
早朝の開店したてとあって、まだ人はまばらだが、その土地で暮らす人々の生活が見える市場はいつも気分があがる。
魚屋のおやじアンジェロは、まな板の上に乗せられ、解体されようとしているサメの説明をまくし立てるように始めた。

小柄だががっちりした体格に、だみ声に髭、彫の深い顔。
その振る舞いからは、市場を仕切る親分のようだ。
どうやって食べるのかと思い、一所懸命に聞いていたのに、「いや、食べない」なんだ損した。
そうかと思うと、タンバリンを持ち出し歌い始める。
タンバリンは小気味よく、おやじの渋い声と絡み合い、どこか物憂げなシチリア独特の旋律は、早朝の市場にはあまり似つかわしくなかったように思うけれど、おやじのサービス精神は嬉しかった。

アンドレアは、パニーノをつくり続ける。
彼のパニーノはひとつのアートだ。
同じ市場内のチーズのお店。店先に並んだ焼いたリコッタが、僕の心を惹きつけた。
買い物に来たお客さんに創作パニーノを振る舞う。
自家製チーズは売っているんだからたくさんある。
ひとつつくってはまたひとつ。
チーズ、ハム、トマト、オリーヴ、チポッラ、店にあるものは何でも挟む。
パニーノのアイディアがどんどん溢れていく。
パニーノをつくるアンドレアの手先はまるで、マジシャンのよう。
次に何が出てくるのかが楽しみだ。
ワインも出てきた。
こんな店、日本にもないかなーと考えながら、パニーノをほおばる。
市場だから毎日来る顔がいる。
だけどサービス品だけを食べて帰る客はいない。
アンドレアの心意気と気さくな振る舞いは、お客を惹きつけて離さない。
損して得取れ。

僕にとってシラクーサは、とても思い出深いところだ。
この『イタリア好き』を発想した起点となったところと言ってもいい。

8年前ここで偶然出会った家族とのひと時。
真夏の昼下がり、汗をタラタラ流して歩いていたところ、外の日陰で昼食をしている家族がいた。
篠さんがカメラを向けると、快く撮影に応じてくれ、撮った写真を見せると盛り上がり、ワインやフルーツをご馳走になった。
そして、篠さんがやおらカンツォーネを歌い出すと、隣に座っていたおばさんが、
「あんたはダメ」と言って、
今までの話し声とは全く別の声で、歌い出した。歌は路地に響き、僕の心は高鳴った。
“イタリア”面白いぞ!
ここから僕は、イタリアという国の懐の深さと、大らかさを感じ、その魅力にはまっていった。

今回もまた、イタリアおやじの粋な魅力に心を奪われてしまったのだけれど、
実はそれ以上に心を奪われたのは、マレーナならぬマリリーナ(本誌4ページ)だった。

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ラツィオ特集

vol.122013年2月発行
在庫なし

ロマーニの憩いの場所で
魚介を味わう(在庫わずか)

 ローマは知っていても、ローマがどの州にあるか知らない人も少なくないかも?(そんな“イタリア好き”はいないか)ラツィオ州はローマを州都だ。古くエトルリア人の遺跡も多く残るところや、今回取材の中心となったアンツィオ付近は、第二次世界大戦の激戦地でもあった。そういう意味でもイタリアにおいてはやはりこの州は重要な地であることは間違いないのだろう。

ラツィオ州の取材の拠点となる候補はいくつかあった。その中で今回選んだのは、ローマより南に約50~60km、カンパーニア州にもほど近い、テレニア海側のアンツィオという町だ。そして今回はローマの取材はあえてしていない。
取材が9月ということもあり、まだまだバカンスシーズンも抜けきっていないローマ近郊のビーチ周辺に興味があったし、おいしい魚介類の新しい発見もしたかったからだ。

首都ローマを抱える州だけあって、中心から離れていても、それは地方の小さな村とは違う、どこかに洗練された印象がある。人は大らかで、開放的で心地よい。そこにちょっと誇りと自慢が同居している、まさに都会的な感じがした。

アンツィオで入った海辺のレストラン「アルチェステ・アル・ブォン・グスト」(P24)で、すすめられたテッリーネという貝。大きさは、大人の親指の爪程度。白くて、薄い縞模様が入っている。アサリを獲るように漁師が獲ってくるらしい。この辺りではまさに夏の定番として、地元の人も好んで食べるこの貝。大きな白い皿にたっぷり盛られて出てきた時には、なんだかわけがわからなかったが、小さな身に凝縮された旨味と磯の香りが口の中に広がり、文句なくうまい。

マンマの料理の取材の時にも、図々しくもリクエストしたら、やはり大きなボールに大盛りに出てきた。僕はすすめられるがまま、抱えるようにそれを食べた。砂地の浅瀬に生息する貝だけに、砂抜きも重要だ。でも時折、「ジョリッ」とするのが、またなんとも家庭的だった。

このあたりはローマから車で1時間ほど、近くて行きやすい場所ではあるが、旅行でイタリアを訪れて、ローマの中心部以外に足を延ばすというのは、なかなか難しいだろう。それでも、ローマっ子にも憩いの場所として人気なだけに、魅力的なところだから、この特集を読んで心が動いたら、今年の夏はちょっと足を延ばしてほしい。

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アブルッツォ特集

vol.112012年11月発行
在庫なし

山岳地帯の、
豊かな自然の中で、
暮らす

取材最終日の朝、僕はマイエッラ国立公園内の山歩きに出た。出発までの限られた時間だったが、最後にどうしてもアブルッツォの自然の中にもう一度身を置きたかった。

東側をアドリア海に面し、アペニン山脈の中でも、最高峰のグランサッソと、マイエッラを擁するこの州は、3分の2は山岳地帯で、自然保護区域も多く存在する。
目の前に大きくそびえる山は、岩肌がゴツゴツ見えるところと、深い緑に覆われているところとが、混在している。手前から奥に見えた景色が、進むにつれ、どんどん変化していく。太陽が徐々に登り始めると、目の前の山は、その姿を現し、山道を曲がるごとに、新しい山が見えてくる。そして、さらにその先の向こうにある山の姿が、どんなものなのか想像を駆り立てた。眼下を見下ろせば、朝もやの向こうに、遠く、薄っすらとアドリア海が見える。

取材の拠点にしたグアルディアグレーレは、アドリア海に面した街、ペスカーラから50kmほど内陸に入った、この豊かな山の麓にある町だ。「ヴィッラ・マイエッラ」はこの町にある。母、ジネッタさんの店を引き継いだ、ペッピーノさんはそこのオーナーだ。

そして、この山を越えた反対側は、中世の面影を強く残す町、スルモナ。

目の前に大きく迫るマイエッラ山脈が、町のどこかしこから見え、まるで町を見守っているかのようだ。そんな町の中心に、少し遠慮がちに「リストランテ・ジーノ」はある。ジャコモさんは、父親の後を継ぎオーナーとなり、母のルチアさんは、お嫁さんたちと店の味を守る。

ペッピーノさんとジャコモさん。ふたりは、店で働く親の姿を見て育ち、今ではそれぞれレストランのオーナーとして店を切り盛りしている。そして店や、料理を通して、アブルッツォらしさを伝えている。しかし、そのスタイルは好対照であり、店で出される料理も全く違う。

ペッピーノさんは、伝統を守りながらも、常にアグレッシブであり、発信の場を広く世界に求め、そのことで、アブルッツォ、ひいてはグアルディアグレーレその良さを引き継いでいけると考えている。一方で、ジャコモさんは、身の丈にあった中で最高のサービスの提供を心がけ、顧客の満足を得ることで、守れるものがあると。
伝統を踏まえて、さらに革新を求める。あくまでも、伝統的なスタイルを守る。マイエッラ山脈を挟んだ、ふたりのスタイルはそれぞれに異なるように見える。しかしアブルッツォという恵まれた自然の中で育ってきたふたりの根底には、この豊かな伝統を守っていこうということは共通するところのようだ。ただそのためにつくり上げたスタイルが違うだけだ。

大自然の持つ豊かさは、懐深く人を包み込み、豊かさの本質が分かる人を育んでいるのだろう。

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カンパーニア特集

vol.102012年8月発行
在庫なし

頑固なのは自信の証し
チレンターニはまじめで誠実
ほどよいオープンさが
なにより心地よい(在庫わずか)

「こんなに山ばかりを撮っていたのか」取材から帰国して、事務所で自分の撮影した写真の整理をして、ちょっとビックリした。それほどチレントの山の景色に魅了されていたのだろう。

6月のイタリアはいちばんいい季節だろう。まだヴァカンスシーズンも始まったばかり。ひどく混雑する前で、暑さもほどほどで過ごしやすい。

チレントはナポリからは車で高速を走っても2時間以上はかかる。サレルノ県でもさらに南、もうすぐ下にはバジリカータ、カラブリアがあり、山を越えればすぐプーリアだ。広く周辺一帯は国立公園として指定されている。夏のヴァカンスシーズンは、イタリアやヨーロッパ各地から観光客が訪れ賑わうが、残念ながら日本人にはあまりなじみは無い。このロケーションを考えれば仕方ない。長くはない休みに、やっとの思いでイタリア・カンパーニアまで来たのに、カプリ島や、アマルフィ海岸など有名な観光地には目もくれず、こんなアクセスの悪い田舎に行くのは、変わり者か、よほどのイタリア好きだ。

いや、でもほんとうに来てよかった。

山間の小さな村、その高台から見える景色、小さな漁港や、長く美しい海岸線は、心を和ませ、人はほどよくオープンで大らか。

取材先で会う男たちは、一様にチレンター二のことを「頑固で石頭」だと言う。そういう男たちはみな、信念を貫き、選んだ道をひたむきに歩む。チレントオリーヴ組合の会長エリオは、自分のお気に入りの絶景スポットに僕らを連れて行ってくれた。「男はひとつやふたつ悲しみを背負っているだろ。辛い時や、悲しい時にはここにきて、アッチャローリの海を眺めると、心が落ち着くのさ」。地元の農作物の良さを守り、発信し、認められることはそう簡単ではない。それには貫く強さが必要だ。グランドチッタには住みたいとは思わないと言っていた漁師ヴィットリオは、小さな漁村ピショッタを愛する、気配りのできる、やさしく強い男だ。レスラーのような風貌のアンジェロは、ナポリで警官だった時に、大怪我をして実家でアグリトゥリズモを始めてから、心のくすみやゆがみがなくなったと、イキイキとして、チレントに自信と誇りを持って生活していた。

誰もがほんとうに温かく迎えてくれたし、心地よく話ができた。そして、チレントで過ごすうちに、僕の心の中に折り重なっていった気持ちが、チレントを故郷のように懐かしく感じられるようになった。もしかしたら山ばかり撮っていたのは、そんな気持ちの表れだったのかもしれない。

黄色い花ジネーストラが咲き誇る緑豊かな山々と、少し霞む空に映える、吸い込まれそうな碧い海。来年の6月にまた彼らに会いに帰ろう。


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ヴァッレ・ダオスタ特集

vol.92012年5月発行
在庫なし

アルプスの山に囲まれて住む人々
固い表情が緩んできたら
心を許してきた証し

四方を山に囲まれ、昔からアルプス越えの要所として重要視されてきたアオスタの谷、“ヴァッレ・ダオスタ”。谷のあちらこちらに、大小さまざまな城塞がいくつも残り、当時を思わせる。そんな地理的な特徴を抱えたこの地の人は、口ぐちに自分たちの事を“閉鎖的”だと言う。確かに取材先の誰もが、初対面の瞬間から、明るく開放的に笑顔で迎えてくれることはなかった。 ヴァッレ・ダオスタといえば、フォンティーナチーズだ。冬の長いこの地で、重要な食料として、昔から重宝されてきた。それだけにチーズへの思いは格別でもあり、日常の料理には欠かせない。僕らも毎日食べ、その美味しさに触れた。そのチーズづくりの名手は意外なほどに若かった。彼は牛舎に入ると、まるで友達に話しかけるように、牛と会話し、自分の子供のように仔牛を抱える。そうしている時間が本当に楽しく、幸せそうに見えた。そして、澄んだ瞳で語る彼の話に僕は引き込まれた。小さなころから父親の姿を見て、この世界に入ることを決め、専業農家としての道を歩む。酪農の将来を案じ、家族を、動物を愛する、若干28歳。年齢よりもはるかに成熟した大人の風貌だった。 今まで真剣な表情でチーズづくりについて語っていたその彼が、「週1回ディスコに行くのが楽しみだね」と、顔に満面の笑みを浮かべ、少し照れくさそうに話し、職人の顔から若者の顔になった。その時、心を許してくれたと感じた。そして少し彼のことが理解できた気がした。 アオスタ人。警戒心が強く、確かに笑顔が出るまでには、少し時間がかかる。その代わりに信頼を得れば、これほど確かな友人はいないだろう。 デ・ボッスのオーナーブルーノさんは、ついに話している間は、ほとんど笑顔を見せなかった。そういう姿は、製品にかける真剣さも物語っていた。そのオーナーが、別れ際に笑ってお土産をくれた。長い時間取材をしていた僕らの姿勢を受け入れてくれたのだと感じ安心した。   

セゴールのディエゴさんは、最終日に頼んでおいたものを取りに行った時には、カフェに誘われ、僕のつくったVTRをうれしそうに見てくれた。  フランス語は必修という、イタリア北部の小さな州、ヴァッレ・ダオスタ。国境に暮らす人々の笑顔に出会うまでの時間が、短くなったと感じたら、この州の魅力にもう一歩近づけるはずだ。

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マルケ特集

vol.82012年2月発行
在庫なし

海と山、男と女
それぞれが魅力を引き立てるマルケ

「この海のことは、自分のポケットの中のように知っているよ」ポルトノーヴォで出会った72歳の漁師は得意げにこういった。強い陽射しと潮風に鍛えられた彼の笑顔を見ていると、ポケットからホラッと魚をつまみ出してくれそうな気さえしてくる。海の男はやはりロマンチックだ。

アドリア海の
ブルーは豊かさの証し

僕らがマルケでの取材を始めたのは、2011年9月8日。アンコーナ空港に到着したのは午前10時すぎ。空はもうギラギラと日差しが強く、ピエモンテからやってきた僕らは、真夏のイタリアに逆戻りした。空港から車に乗り、しばらくするとアドリア海の海岸線が見えてくる。どこまでも続くアドリアティクブルーの海は、サルデーニャで感じた、突き放されたように驚くきれいさでもなく、カプリやプローチダのそれとも違う。青にほんの少し黄色を混ぜたようなブルーは、どことなく馴染みやすく、豊潤さと懐かしさを感じた。9月の2週目ということもあり、おなじみの光景でもある、きれいに並べられたカラフルなパラソルこそ少なかったが、まだまだ砂浜では、自由に甲羅干しを楽しむ人が多くいた。

少し海の幸に飢えていた僕を最初に喜ばせてくれたのは、ポルトノーヴォで獲れる、天然のムール貝モショリだった。例の漁師のポケットの中身のひとつがまさにこれだ。実は小さめだが、プリッとして甘く、アドリア海の潮の香りが口中に広がる。天然モノだけにこの季節にしか味わえない、まさに旬の味。青空と海とよく冷えたヴェルデッキオ、これで移動の疲れはいっぺんに癒えた。彼に、世界でいちばんの場所と言わせる理由は、海がきれいというだけではなかった。
マルケの魅力は海だけではない。これも今回の旅の実感だ。山あいのマルケの町も忘れがたい風景を見せてくれた。中世の面影が色濃いウルビーノや、野外オペラ劇場や小劇場が残るマチェラータ。そしてアスコリ・ピッチェーノは、小さいけれどその佇まいが魅力的な町だ。
中部イタリアらしく、豚肉を食べる文化も根強くある。チャウスコロは、その脂肪の独特の風味と食感が好きな人は、病みつきになる。当然体型には危険だけれど、悪女のように魅力的な食べ物だ。固いパンにはさんでパニーノにすると、じんわり脂肪分がパンにしみ込み、塩分も中和されてマイルドになる。こういうのは日本にいてはなかなか食べられない。

包容力のある男と、しなやかな強さの女

マルキジャーニは温和で親切だ。海に近い町を多く訪ねたせいもあるかもしれないが、初対面こそとっつきにくいところもあるが、時が経つにつれ、親しみやすく、僕らを温かく迎えてくれた。その包容力と同時に、女性にはしなやかな強さも感じた。それはマンマの風格とは少し違う、自立している、という表現が似合っているかもしれない。職を持っている女性にも多く会ったし、妻として家庭に入っていても、夫婦お互いに尊敬し、認めあう男女関係も垣間見た。

男がいて女がいて、お互いを支えあう。海があって山があってお互いの魅力を引き立て合う。それがマルケなのかもしれない。ポルトノーヴォのあの漁師の奥さんも、きっと陽気だけれど凛としたマルキジーナであることは間違いない。

マルケの旅をお楽しみに。

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イタリア好きVol.8:マルケ特集

vol8cover

vol.8 マルケ州

海と山、男と女
それぞれが魅力を引き立てるマルケ

「この海のことは、自分のポケットの中のように知っているよ」ポルトノーヴォで出会った72歳の漁師は得意げにこういった。強い陽射しと潮風に鍛えられた彼の笑顔を見ていると、ポケットからホラッと魚をつまみ出してくれそうな気さえしてくる。海の男はやはりロマンチックだ。

アドリア海の
ブルーは豊かさの証し

僕らがマルケでの取材を始めたのは、2011年9月8日。アンコーナ空港に到着したのは午前10時すぎ。空はもうギラギラと日差しが強く、ピエモンテからやってきた僕らは、真夏のイタリアに逆戻りした。空港から車に乗り、しばらくするとアドリア海の海岸線が見えてくる。どこまでも続くアドリアティクブルーの海は、サルデーニャで感じた、突き放されたように驚くきれいさでもなく、カプリやプローチダのそれとも違う。青にほんの少し黄色を混ぜたようなブルーは、どことなく馴染みやすく、豊潤さと懐かしさを感じた。9月の2週目ということもあり、おなじみの光景でもある、きれいに並べられたカラフルなパラソルこそ少なかったが、まだまだ砂浜では、自由に甲羅干しを楽しむ人が多くいた。

少し海の幸に飢えていた僕を最初に喜ばせてくれたのは、ポルトノーヴォで獲れる、天然のムール貝モショリだった。例の漁師のポケットの中身のひとつがまさにこれだ。実は小さめだが、プリッとして甘く、アドリア海の潮の香りが口中に広がる。天然モノだけにこの季節にしか味わえない、まさに旬の味。青空と海とよく冷えたヴェルデッキオ、これで移動の疲れはいっぺんに癒えた。彼に、世界でいちばんの場所と言わせる理由は、海がきれいというだけではなかった。
マルケの魅力は海だけではない。これも今回の旅の実感だ。山あいのマルケの町も忘れがたい風景を見せてくれた。中世の面影が色濃いウルビーノや、野外オペラ劇場や小劇場が残るマチェラータ。そしてアスコリ・ピッチェーノは、小さいけれどその佇まいが魅力的な町だ。
中部イタリアらしく、豚肉を食べる文化も根強くある。チャウスコロは、その脂肪の独特の風味と食感が好きな人は、病みつきになる。当然体型には危険だけれど、悪女のように魅力的な食べ物だ。固いパンにはさんでパニーノにすると、じんわり脂肪分がパンにしみ込み、塩分も中和されてマイルドになる。こういうのは日本にいてはなかなか食べられない。

包容力のある男と、しなやかな強さの女

マルキジャーニは温和で親切だ。海に近い町を多く訪ねたせいもあるかもしれないが、初対面こそとっつきにくいところもあるが、時が経つにつれ、親しみやすく、僕らを温かく迎えてくれた。その包容力と同時に、女性にはしなやかな強さも感じた。それはマンマの風格とは少し違う、自立している、という表現が似合っているかもしれない。職を持っている女性にも多く会ったし、妻として家庭に入っていても、夫婦お互いに尊敬し、認めあう男女関係も垣間見た。

男がいて女がいて、お互いを支えあう。海があって山があってお互いの魅力を引き立て合う。それがマルケなのかもしれない。ポルトノーヴォのあの漁師の奥さんも、きっと陽気だけれど凛としたマルキジーナであることは間違いない。

マルケの旅をお楽しみに。

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イタリア好きVol.7:ピエモンテ特集


Vol.7秋号

『イタリア好き』第7号は

ピエモンテ州特集。

ミラノから電車で約2時間半。ビエッラ駅に着いた。大きな駅を想像していたら、何もない小さな駅。そこに迎えに来てくれていたのは、この取材でお世話になる、クラウディオさんと幹子さん夫婦。クラウディオさんから手渡された名刺には”原始人”と書かれていた。それは奥さんの幹子さんからそう呼ばれていて、最近では、イタリア人の友人もプリミティーボと呼ぶ。今回の旅はそんな彼のこだわりがたくさん詰まった旅になった。

最初に訪れたのは、標高1200m付近でトーマチーズを作る、マルガリ族のレナータさんのところ。石積みの小屋で、全てが手作りされる。ここでは、一晩寝かせた脱脂乳を使う。強い香りが印象的だが、口に入れるとまろやかだ。その副産物としてバターも作っているが、トーマもさることながら、このバターが何とも言えない。牛に負荷をかけず、少量しか生産しないので熟成するまでに待っていると、トーマを手に入れるのは難しい、このあたりでは評判の味だ。

ボーカのクリストフさんは、スイス人。以前はバローロよりも有名だったというボーカのワインは、土地の荒廃と産業の発達によって一時は衰退していた。ワインのインポーターをしていた彼が、ボーカのワインを飲んだ時に運命を感じ、苦労の末、土地を購入し、伝統的なボーカのワインの製法を学び、ボーカのワインを復活させた。スイス人でありながら、イタリアのこの地をひといちばい愛し、ワインを愛する彼の情熱に、今では地元の人も一緒にワインづくりを楽しんでいる。

自然派ワインの愛好家として、フランスでも評価の高いビエッティさんは、ピアニストが本業だ。最初は気難しげな、話し難い印象だった。ところが話し始めた彼は、自然体で気取りなく、ワインのことを静かな口調で熱く語った。その人柄が、バローロの有名な作り手たちからも絶大なる信頼を得ていることを納得させた。その彼を信頼し、良き相談相手として慕い、友人でもあるアウグストさんは、バローロの名門カンティーナ、ドットール・ジョゼッペ・カッペラーノの4代目。飄々として、伝統や歴史の重みなど感じさせない雰囲気の彼だが、話しているとヒシヒシと伝わる芯の強さは、これからどんなワインを作っていくのかとても楽しみになった。

トラットリア・タコノッティの夫婦、リッチさんとアンナさん。お店に入ると、そこはまさにふたりが作り上げた空間だった。選ばれるワイン、出てくる料理、そして何よりもそこに流れる時間がとても心地よく、まるで、ふたりの家に招待されているそんな幸せな時間だった。

ピエモンテでオリーヴ作りに挑戦しているヴァレンティーノさん、オリーヴ作りへのこだわりはむろん言うまでもないが、年金生活の両親の存在が、彼の大きな支えとなっているのは間違いない。父親は愛情たっぷりに、「ゆっくりしている暇もないよ」と愚痴りながらも、彼よりも畑に経つ時間が長い。母親は料理の名人。ふたりが手塩にかけて作ったオイルを存分に味わえる料理を毎日欠かさず作る。そんな家族愛の詰まったピエモンテ産のオリーヴオイルだ。

ビエッラの街で、誰もが知っている人がふたりいる。ひとりは、1916年創業のモスカの4代目主人、ジョヴァンニさん65歳。精肉業からスタートした店は、今では、お肉を始め、チーズや、惣菜、食材のあらゆるものがそろう、ビエッラいちの食品店となった。毎日5時半に起き、毎日店に立つ。お客様に信頼される店になるために、素材から商品になるまでを全て、店内で仕上げる。毎週木曜日は牛を買いに行く。自分の目で確かめ、自分が間違いないと思ったものしか店頭に並ばない。だからお客様の信頼は絶大だ。特に印象的だったのは、牛のことでも、店のことでも、とても楽しそうに話す。自分の仕事に誇りと自信が滲みでていた。そしてもうひとりは、パニーニ屋台のアントニオさん。いつも彼のトラックの前は人だかりだ。もみあげの長い、印象的な顔と、しゃべりにお客さんは魅了される。リズミカルに作られる特製のサルシッチャを使ったパニーノは、ひとくち食べれば、間違いなく笑顔がこぼれる。トニーの魔法が詰まっている。ビエッラに行ったら必ず会いたいふたり。

クラウディオさんが言った、「人生には履歴書では語れない感情の履歴があるんだ」と。その言葉を聞いた時、取材を通して会った人たちの奥行を改めて感じた。

そんな心豊かなピエモンテーゼに会える旅、お楽しみください。

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イタリア好きVol.6:エミリア・ロマーニャ特集

vol6cover Vol.6夏号

『イタリア好き』第6号は エミリア・ロマーニャ州特集。

小高い丘の上を上がると、ベルティノーロのチェントロだ。 今日はここで、ロマーニャワインと地方料理の祭典がある。 最初の案内人のイタリア人ジャーナリストのロイは、少しせっかちにこれから始まるこの祭典の説明をしてくれた。 広場には、テーブルがセットされ、ワインやチーズの生産者が店を広げていた。 白はアルバーナ、赤はサンジョヴェーゼ、このあたりのワインを代表する品種だ。 皆、試飲グラスを片手に、お気に入りのワインを見つけ、会話も弾む。ワイン祭典は深夜まで続いた。 そこでロイから紹介された、ジャンルーカはオリーヴオイルの生産者だ。 翌日は、彼の農園を訪ねた。研究熱心な彼が、希少品種のブリジゲッラを使って、高品質のオイルを作っている。喉を通る時に、ヒリヒリとする辛さが特長だ。元はフォルリに住む貴族のお嬢様のカンティナだった古城で、現在も高品質のサンジョヴェーゼワインを造るアレッサンドロは、上品で知的な紳士。静かな口調で丁寧に話す彼は、日々、伝統を守りながら、ワイン造りを続けていく難しさも語っていた。

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取材した6月は、少し不安定な天候の日が多かった。 その日は、明け方まで降っていた雨が止んでいて、丘を登るにつれ、霧が晴れた向こうに見えたのは、中世の佇まいを残した、ブリジゲッラの美しい村と、それを見守る城塞だった。その美しい村にある、ホテル・リストランテ・ラ・ロッカのダニエレは、まじめで、とても親切な男だった。 彼が作る料理は、この土地で獲れたものを大切にし、伝統を守りながらも、新しいエッセンスを取り入れた、彼の情熱が伝わる味だった。そして、そのダニエレに野菜や果物を提供しているのが、この村で、長く有機栽培で野菜や果物を作るレナートさん。 戦時中は激しい戦いの場となったここで、料理人との信頼関係を築き、「もう引退だよ」と言いながらも、熱い思いを語り、今もまだ現役を続ける彼は、この州の人たちを象徴しているようだった。 レッジョエミリアのパオロは言っていた。「イタリア人の中には、今も中世の気質が流れている」と、ここを旅していると、その言葉の意味がなんとなくわかったような気がした。 伝統と革新が交差した、豊かな地、エミリア・ロマーニャの旅をお楽しみください。

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イタリア好きVol.5:カラブリア特集

vol5_coverimg
Vol.6秋号

『イタリア好き』第6号は

エミリア・ロマーニャ州特集。

小高い丘の上を上がると、ベルティノーロのチェントロだ。

今日はここで、ロマーニャワインと地方料理の祭典がある。

最初の案内人のイタリア人ジャーナリストのロイは、少しせっかちにこれから始まるこの祭典の説明をしてくれた。

広場には、テーブルがセットされ、ワインやチーズの生産者が店を広げていた。

白はアルバーナ、赤はサンジョヴェーゼ、このあたりのワインを代表する品種だ。

皆、試飲グラスを片手に、お気に入りのワインを見つけ、会話も弾む。ワイン祭典は深夜まで続いた。

そこでロイから紹介された、ジャンルーカはオリーヴオイルの生産者だ。

翌日は、彼の農園を訪ねた。研究熱心な彼が、希少品種のブリジゲッラを使って、高品質のオイルを作っている。喉を通る時に、ヒリヒリとする辛さが特長だ。元はフォルリに住む貴族のお嬢様のカンティナだった古城で、現在も高品質のサンジョヴェーゼワインを造るアレッサンドロは、上品で知的な紳士。静かな口調で丁寧に話す彼は、日々、伝統を守りながら、ワイン造りを続けていく難しさも語っていた。

取材した6月は、少し不安定な天候の日が多かった。

その日は、明け方まで降っていた雨が止んでいて、丘を登るにつれ、霧が晴れた向こうに見えたのは、中世の佇まいを残した、ブリジゲッラの美しい村と、それを見守る城塞だった。その美しい村にある、ホテル・リストランテ・ラ・ロッカのダニエレは、まじめで、とても親切な男だった。

彼が作る料理は、この土地で獲れたものを大切にし、伝統を守りながらも、新しいエッセンスを取り入れた、彼の情熱が伝わる味だった。そして、そのダニエレに野菜や果物を提供しているのが、この村で、長く有機栽培で野菜や果物を作るレナートさん。

戦時中は激しい戦いの場となったここで、料理人との信頼関係を築き、「もう引退だよ」と言いながらも、熱い思いを語り、今もまだ現役を続ける彼は、この州の人たちを象徴しているようだった。

レッジョエミリアのパオロは言っていた。「イタリア人の中には、今も中世の気質が流れている」と、ここを旅していると、その言葉の意味がなんとなくわかったような気がした。

伝統と革新が交差した、豊かな地、エミリア・ロマーニャの旅をお楽しみください。

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