vol.36 エミリア・ロマーニャ特集

vol.362019/2/1
在庫なし

匂いと、香りの記憶

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父親が材木問屋だった。
子供の頃に父親の仕事場に行くと、独特の木の香りに包まれた。作業場では大工が仕事をしていた。僕はその香りと音、空気感が嫌いではなかった。モデナの樽工房の木材を眺めながら脳の奥に眠っていた記憶が香りと共に蘇ってきた。

モデナの人(モデネーゼ)にとってアチェートバルサミコ(バルサミコ酢)は切っても切れない関係であり、それを造るための樽は重要な要素の一つだ。その樽工房を訪ねた時に重い引き戸を開けると、大きな機械音と共にアチェートバルサミコと木、そして油の匂いに包まれた。その作業場の奥には、乾燥させたさまざまな種類の木材が保管されている。新しいものもあれば、古い樽を分解したものもある。

年月を経た樽の軌跡は、何年、何十年と経て完成するアチェートバルサミコの軌跡と同じだ。そしてそれは香りの記憶と共に歩んできたモデネーゼの家族の歴史でもある。価値はその歴史にある。

子供のために残すアチェートバルサミコの12年後、25年後の味は、モストコットと樽と家族のハーモニーによって醸される。そしてそれは、匂いと香りの記憶と共に、引き継がれていく。
アチェートバルサミコ、小さな瓶の中の長い歴史。

発行編集人 マッシモ松本

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