vol.26 パニーニ特集

vol.262016/8/10
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パニーノ好きなもので

旅先のホテルの朝食はたいていブッフェだろう。僕は目の前に食材が並ぶと、なぜだか〝挟みたい〟衝動に駆られる。質、量ともに充実したハワイのブッフェでも、比較的簡素なイタリアのブッフェでもこの気持ちは変わらない。

パニーノはイタリア版おにぎりとも言われるけれど、日本の朝食のブッフェに、ごはんと梅干しや鮭が並んでいるからといって〝握りたい〟という衝動に駆られたり、ましてや実行に移している人は見かけない。それは〝握る〟という行為は思いのほか面倒だからだろう。もちろん僕は、仮にイタリアのホテルの朝食に炊きたてのお米が並んでいたとしても、迷わずパンとハムとチーズを取って挟んでいるに違いない。それは〝挟みたい〟からだ。そして自分で作ったパニーノに溺れ、手に米粒が付くことなくそれを頬張っているだろう。

パンの歴史は、古代エジプトまで遡るほど古く、ポンペイでは西暦70年頃にはパン屋がいくつもあったことがわかっている。はたして当時に何かを挟んで食べていたかは分からないが、パンを使ったレシピも残されていることから、もしかしたら市井の人の中には、何かを挟んで食べていた人もいたかもしれない。

取材中に話を聞いた老人たちの多くは、パンに塩とオリーヴオイルだけをつけて挟んだものや、赤ワインを軽く浸したパンに砂糖を載せたものをおやつとして食べていたという。昔は家にある身近な食材でお腹を満たす軽食だったということだ。

このところイタリア人も観光客も時間とお金をかけてゆっくり食事をする人が減っているそうだ。フィレンツェにも、ファストフード的な食事処が多くなり、パニーノが少しブームなのもその一環だと思う。全てがファストで、コンビニエンスになりつつあるのは世界的に否めないのだろうか? できればイタリアだけはそうあって欲しくないと願う〝イタリア好き〟は少なくないはず。

と言いながら今回はパニーノ特集である。そんな背景もあるということを踏まえながらも、あまり難しくは考えず、「うまそう!」「食べたい!」と思いながらページをめくっていき、読後は自分で〝挟んで〟いただきたい。
ただし〝挟む〟という行為は意外とセンスが必要なのだ。ただたくさん挟めばいいわけでもないし、少なくてもダメ。素材の味と量、そのバランスを見極めるのが、難しくも楽しい。いざかぶりついた時、口の中で踊る食感や味壺を駆け巡る快感に想像を膨らませ、ニヤニヤしながらどうぞ。
「パニーニ ブォーニ!」

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