堂内あかね のすべての投稿

特別なバルサミコ酢 その2

前回特別なバルサミコ酢のお話の続きです。

写真はマゼット屋敷17 世紀中盤に建てられたもの。向かって左側の3階の円窓のところに醸造室がありました。

我が家に受け継がれる樽は1700年代中盤のものですから、かれこれ250年以上手入れを繰り返しながら、大事に使い続けており、最終製品を取り出す樽の容量は 約30Lですが、酢酸菌や他の微生物のバランスが変わらないように年間、23Lしか樽から取り出すことができません。そのため通常、フォルニ家の特別な食事や、特別な贈答品として使われ来ました。

現在では醸造室を見学に来てくださる方だけに特別にお出ししているだけで、一切販売はしてきませんでした。

ところが去年の秋、懇意にさせて戴いている、厳選したイタリア食材を扱うEeT株式会社の山田さんから特別な販売会のお話があり心が動いたのでした。

http://eet.co.jp/

デパートが主催する外商顧客で招待状をお持ちの方のみご入場いただける特別な販売会との事。

逸品会という特別な販売に市場には出回らない、ワイン、生鮮品以外のイタリア食材を探し出して、出品しなければならないのだけれど、どう考えてもバルサミコ酢しか思い浮かばないのですが、どうでしょうか?とその本数は100ml7つ。

条件はある金額以上の価値がある物、そしてストーリー性、オリジナル性、限定品である事。

今まで贈答用のものであっても、市販の容器に入れていたのですが、これはもう容器も一点ものの手作りにしたい。思い浮かぶ方はこの方しかいない。

イタリアで活躍する、陶芸家 林由紀子さん。

イタリア好きVol33マルケ州特集のコーディネイト、Web通信でもおなじみであり、大切なお友達でもある彼女に是非担当してもらいたい!とお願いしたのです。

林さんの記事はこちらから

https://italiazuki.com/category/tsushin/marche_h/


(写真は個人所有の博物館で見つけたタラーニョで3L以上入りそうな大きなものも)

容器の形はTragnoタラーニョ。モデナでは伝統的に液体を搬送するために使っていました。通常はもっと大きな容器で、横についた取手は紐を通して運搬するためのもので、馬車の荷台に乗せた時に振動で割れたり壊れたりを防ぐため上から吊り下げて、まっすぐに保てるという機能性を備えています。

一つづつろくろ引きして作ったタラーニョ100mlと小さなものに我が家の紋章を一つ一つ手描きで絵付けしていただき、裏にはBalsamico 2019と由紀子さんのサイン入り。

手書きですからまさに一点もの。

箱にもこだわって、バルサミコ酢の樽を彷彿とさせるような濃い目の茶色に、金の留め金中にはなめし皮風のクッション色も作品に合いそうなものを彼女に選んでもらいました。

正面には夫と立ち上げたバルサミコ酢のコミュニティーサイトal vasèlのロゴバルサミコ酢の樽を模したものを入れ、並べると醸造室を思い浮かべることができるという寸法です。

https://www.alvasel.com/

2月の上旬と中旬の2回に分けて販売されるとのこと。価値がわかる方のところへお嫁に行って欲しいと願うばかりです。


イベントのお知らせです

モデナの我が家マゼット屋敷にて5月4日にイベントを開催します。ゴールデンウイークにイタリア旅行を考えていらっしゃる方是非いらして下さい。

13年物蔵出しバルサミコ酢お披露目会と

イタリア好きVol.36で紹介された

Mirkoシェフの料理レッスン&ケータリング

 お陰さまで今年で夫Massimilianoと増やした樽が13年目を迎えます。伝統的製法のバルサミコ酢は最低でも12年の熟成を必要とし、納得いくものを待って、今年13年目皆様にお披露目いたします。その間葡萄の出来だけでなく、作り手にも子供が生まれたり、良いことも苦労も含め造り手にも変化がありました。バルサミコ酢の歴史は家族の歴史でもあります。

そんな要素が絡まって一年一年熟成した13年目のバルサミコ酢のお披露目をさせていただきたく、今回特別な会を開きます。

スケジュール

 ※おおよその時間です。多少前後することがありますので、ご了承ください。

イタリア好きVol.36に特集された

11:00  バルサミコ酢醸造室見学

11:30  バルサミコ酢試飲鑑定講習会

    日本人初A級バルサミコ酢鑑定士 堂内あかねが

    どんなものを基準にバルサミコ酢選びを

    すべきかを伝授。

12:00  郷土料理講習会 

    地元でモデナで高級ケータリング会社を営むこだわりの

    出張料理人ミルコ ピンナシェフをお呼びして

13:00 モデナの郷土料理と地元食材を使ったお食事会

    モダンと伝統が共存した素晴らしいお料理の数々。

    ミルコシェフが腕を振るいます

    メニュー内容

    アペリティーボ 10種類の前菜と地元ワインで

    プリモピアット

    セコンドピアット

    付け合わせ各種

    ドルチェ各種

    ワイン、リキュール、コーヒー

15:30  販売会、解散

すべて日本語での説明、もしくは通訳をいたします。

グループでなくても個人でもお申し込みが可能ですので、是非お申し込みください。

参加費用 250ユーロ/1

最小催行人数5名 最大12名 (先着順)

申し込み方法

426日までに当FacebookページAkane in balsamiclandよりメッセージ、またはコメントも合わせてご参加申し込みください。双方確認後メッセンジャーにて会場アクセスなど詳細をお送りいたします。

https://www.facebook.com/events/176606216942784/

:Facebookのイベント参加表明だけではお申し込み完了になりませんのでお気をつけ下さい。

 

特別なバルサミコ酢 その1

早いもので、1月も終わりに近づいていますが、いかがお過ごしですか?

私事ですが、昨年11月に日本人初めてとなる、バルサミコ酢A級鑑定士の試験に合格いたしました。足掛け10年を要しましたが、これからもマスター級を目指して精進したいと思っております。また今年はいろいろな意味で、日本の皆様にバルサミコ酢造りを広くお知らせしていけたら幸いです。

幾度かこちらのコラムでバルサミコ酢の話を書いておりますが、イタリア、エミリアロマーニャ州、モデナの旧家には先祖代々受け継がれている伝統的なバルサミコ酢が存在する事をご存知でしょうか?通常バルサミコ酢という名前が付いて販売されている商品とは似ていて全く非なるものです。


写真はモデナドゥカーレ宮エステ公爵家の肖像画

その昔、モデナにおいてバルサミコ酢の醸造室を有することは王侯、貴族など特権階級だけが許される最上級の贅沢でした。あくまで貴族の趣味として始まったバルサミコ酢作りであり、貴族間で催される品評会や、特別な贈答品として用いられ、ヨーロッパ諸国の王族がこぞってこの芳香(イタリア語でバルサモ)の酢を欲しがったと言われています。

また薬効もあると言われ、薬局で販売されていたようで、ある文献には死人も起き上がる効能があったという記述もあったほど。


18世期のノナントラ市の地図。現在マゼット屋敷と呼ばれる我が家も載っています。

私が嫁いだフォルニ家は現在のモデナ、フェラーラ、レッジョエミリアを統治した エステ公爵家の右腕として外務大臣を勤めていました。モデナ屈指の1100年代から続く旧家で、エステ公爵と共にサボイア家によるイタリア統一後、オーストリアに亡命を余儀なくされました。体制が落ち着いた後、フォルニ家はモデナに戻りますが、すぐに世界大戦が勃発しました。モデナ県においても爆撃された建物が非常に多かったそうです。

モデナ市の郊外の屋敷であったため略奪や破損を受けることもなく、バルサミコ酢の樽は当主不在が長かった時期もありますが、屋敷と領地を守る管理人に恵まれ屋敷と共に奇跡的に残りました。舅の叔父の代まではバルサミコ酢造りは任せきりだったようですが、時代は変わり舅が管理をし、そして2007年からは主人のマッシミリアーノと私が継承し、唯一の原料であるモストコット造りからバルサミコ酢造りをするようになりました。

伝統的製法で作られるバルサミコ酢は、モストコットと呼ばれるぶどうの絞り汁を煮詰めたものを唯一の原料とします。9月に採れる完熟の白ぶどうトレビアーノ種を絞り、直火でゆっくりと丸一日煮込んで煮詰めた後、春までゆっくりとアルコール発酵させます。

その後材質の違う大小7つの樽に移し替え、年に一度移し替え作業を行いながらゆっくり酢酸発酵と熟成を行います。ワインとは大きく異なるのは、酸素が必要な酢酸発酵が行われるため、樽の上部が空いており、液体が一年間に10%前後蒸発していきます。冬になると、一番小さい樽から最終製品を樽の10%(年によりますが、23L前後)取り出し、その取り出した分と、蒸発した液体分を少し大きい隣の樽から移し替えます。二番目に小さい樽は三番目の樽からと順繰りに移し替え作業を行いない、やっと一番大きい樽に去年作ったモストコットが入ります。

この移し替え作業を毎年する事により、材質の違う樽のタンニン、香り、収穫年の違うぶどうの煮詰めた汁が混ざり合い独特のハーモニーが生まれます。100kgのぶどうを毎年25年間、毎年移し替え作業を行い熟成させると最終的に約2Lのバルサミコ酢にしかなりません。熟成期間は最低でも12年、25年以上の物、さらに100年、200年このように気の遠くなるような手間と熟成期間を必要とする特別な物。貴族の楽しみとして生まれたというのも頷けます。

そのため、今なおモデナ人の最高のステータスシンボルは、アチェタイア(バルサミコ酢の醸造室)を持つことなのです。

我が家の樽は1700年代中盤のものですから、かれこれ250年近くこの作業を繰り返している事になります。この樽からは年間、23Lしか樽から取り出しません。そのため通常、フォルニ家の特別な食事や、特別な贈答品として使われて来ました。現在では醸造室を見学に来てくださる方だけに特別にお出ししています

今年は、主人と結婚した時に、結婚祝いとして友人親戚一堂に結婚祝いとして資金援助をしてもらい増やした樽が13年目を迎えます。ようやく納得がいく味になってきましたので、少しづつ蔵出しをする事を決めました。


5月4日、ゴールデンウイークの最中にイベントをいたしますので、もしその期間にイタリアにいらっしゃる方は遊びにいらっしゃいませんか?

13年物蔵出しバルサミコ酢お披露目会

イタリア好きVol.36で紹介されたMirkoシェフの料理レッスン&ケータリングにバルサミコ酢試飲鑑定講習会などなど盛り沢山の内容です。もちろん蔵出ししたバルサミコ酢の販売もございますし、家宝のバルサミコ酢もお料理と合わせます。


我が家にいらした方にしか購入できない限定容器なども作る予定ですので、お楽しみに。お申し込みは私のFacebookページ Akane in balsamicland イベントより

https://www.facebook.com/events/176606216942784/

 

 

 

 

モデナドゥカーレ宮 秘密の醸造室

クリスマスも間近に迫ったモデナ、どの街角にもイルミネーションが点灯し、気忙しい師走の気分が少し和らぐようです。

写真はドゥカーレ宮前の広場より

そんな中、伝統的バルサミコ酢愛好者協会モデナ支部の最後の鑑定会がドゥカーレ宮で行われ、バルサミコ酢醸造室を見学する機会を得たので、ご紹介します。

モデナのpalazzzo ducaleドゥカーレ宮殿は、1634年に建築され、その後2世紀にわたりモデナ、フェラーラ、レッジョエミリアを治めていたエステ家の宮廷として使用されました。

その西側のプラート塔は(写真左側)1747年に公爵のバルサミコ酢の樽が移され、ここで歴史の公文書で初めてバルサミコの名が使用されました。
その後イタリア統一でモデナ公国が無くなるまで、バルサミコ酢の醸造室として使用されていました。その樽の数は36樽ほどだったと言いますが、現在のバルサミコ酢を醸造する樽から比べると随分サイズの大きいものが保管されていたようです。

残念ながら、バルサミコ酢の樽は1796年にナポレオンが軍資金集めのために競売にかけたり、イタリア統一の際、勝者であるサボイア家に奪われ、トリノのモンカリエーリに運ばれて行ったものもあるようですが、運搬中の破損、気候の違いなどで、全くバルサミコ酢とはお呼びのつかないようなものになってしまったりと雲散霧消。公爵の衰退と共に、バルサミコ酢も歴史の波にのまれたのでした。


現在展示されている樽は1990年代に新しく寄付された物で、残念ながらエステ公爵家の樽は何一つ残っていませんが、当時の醸造室に想いを馳せることができます。


このプラート塔、地上30m、天井が6m以上の高さとのこと、大きな貯蔵室で、壁の厚さも厚く、内側から二つの鉄の閂がかかるようになっており、敵の襲撃など緊急時に公爵が隠れるスペースとしても用いられていたそうです。
公と同じぐらいバルサミコ酢が重要であったという証のように思えます。
こんなに分厚い壁

贅を極め、バルサミコ酢という至極の酢を作りはじめたエステ家。その一族はもうモデナに在住しなくなりましたが、バルサミコ酢を作る伝統はひっそりと息づいているのです。王侯貴族の趣味として始まった伝統的製法のバルサミコ酢のルーツである公爵家の醸造室は
今なおバルサミコ酢の醸造室を持つことがモデナ人の誇りであるという事をおっしゃっていたバルサミコ酢愛好者協会会長の言葉が誇張でない事を目の当たりにしたように思いました。
今回の醸造室の見学はバルサミコ酢愛好者協会のための特別公開とのことで、建物の中に入るのも事前のIDカードの届け、当日の入館チェック、各グループに専属の士官がつくなど物々しい警備でした。
現在ドゥカーレ宮は軍学校の施設となっているため、土日の決まった時間帯のガイド付きツアーの事前申し込みが必要です。
イタリア語ガイドが主ですが、20名を超える場合は英語通訳の要請も可能です。
バルサミコ酢の醸造室の一般公開は建物の安全性の面などから残念ながらされていませんので悪しからず。
ドゥカーレ宮ツアーお申し込みはこちらから

https://www.visitmodena.it/it/informazioni-turistiche/scopri-il-territorio/arte-e-cultura/ville-dimore-teatri-storici/palazzo-ducale-accademia-militare

我が家のバルサミコ酢醸造室を見にいらっしゃいませんか?
見学試飲や、郷土料理のお食事会、お料理教室などご相談に応じます。グループでいらっしゃる方にはイタリア好きVol .36で紹介されたMirkoシェフを呼んでのお食事会などもオーガナイズいたします。

お問い合わせご予約はこちらまで
https://m.facebook.com/balsamicland/

それでは皆さん良いクリスマスと良いお年をお迎えください。

 

 

 

醸造機具国際展示会SIMEI

イタリア好きの皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

例年より、やや気温が高めのイタリア。ベネツィアを始め各地で、大雨や大雪で災害が起こったり、これも温暖化の影響なのでしょうか?エミリアロマーニャ州モデナも例外ではなく、浸水被害が出たところも多く、1日も早い復旧を願うばかりです。

さて、11月19日から22日までミラノ、ローフィエラで行われたSIMEI(Salone Internazionale Macchine per Enologia e Imbottigliamentoの略)醸造機器と瓶詰め機器の国際展示会を見てきました。
ワインをはじめ、ビール、ウイスキーお酢などの醸造に欠かせない道具最新の醸造の機器を見ることができます。

ミラノのローフィエラは2008年にアンジェロマンジャロティの設計で作られた施設で、205,000㎡。東京ドームの建築面積の約7個分、ビックサイトの総展示面積の約2.1倍。とにかく大きい国際展示会場です。

ミラノサローネでなどでは全てのブースが使われ、ものすごい人出。そのイメージで出かけると、9,11のブースでの展示会とのことで案外外は閑散としていました。
とはいえ中に入れば、イタリアを始めヨーロッパ圏はもちろんアジア系、中等系、アングロサクソン系と色々な方がたくさん。
まずは私が個人的に気になっているぶどうの除梗機。
巨大なものから大きなものから、ほとんど手動の小さなもの、スクリューがゴム製になっていて。ぶどうを潰さず、葡萄の実をとることができるものなどなど。
お次は圧搾機。主流は圧搾機の中の風船が膨らんで圧搾するものと昔からの圧搾機のように上から圧力がかかるもの。木製かステンレス製か。ぶどうの絞りかすの処理が楽なものはどれでしょう?
お次はタンク。最新技術は温度だけでなく圧力や、ぶどう液の対流、コンピューター制御パネルが装備。もちろんステンレス製だけではなく、セメントタンク、木製の大樽などなど

これぞイタリアデザインの国!を思わせるデザインと最新鋭の技術を集結したタンクも各種。
木製の熟成樽バリックはイタリアより、フランスが多いよう。オーストリアの会社も。
ボトリングの機械や、コルクなどのキャップ類も多く展示されていました。
大きな機器の洗浄装置や、洗浄実演ちょっとテレビショッピングの実演販売的。
高圧洗浄器は大掛かりなタンクの洗浄にいいなあ
実際ぶどうの作業をする身はこういうものが気になるんです。
もちろん葡萄畑の中で使用する機器も
例えば、葡萄畑の支柱や、ワイヤー。
ぶどうを入れるカゴ
多分作っていなければ目がいかないものばかりなんですが、マニアックな世界は楽しい。皆さんも一度いかがですか?
最新鋭の道具を知ると、ワイナリー見学もまた違ったものになりますよ。
SIMEIの公式ホームページはこちらから

https://www.simei.it/

バルサミコ酢の醸造室見学、バルサミコ酢を使ったモデナの郷土料理お食事会、料理教室、モデナもシェフを呼んでスペシャルな一日を過ごしたい、などお問い合わせはこちらまで。同行通訳をいたします。

https://m.facebook.com/balsamicland/


写真はイタリア好きマッシモツアーより
それでは皆様、モデナでお待ちしております。

モデナのパルミジャーノレッジャーノチーズ

すっかり晩秋のエミリアロマーニャ州はモデナ。ずいぶんと気温が下がり、今朝は遠くに見えるアッペンニン山脈の頂が真っ白になっていました。庭の木々も随分と紅葉して、花材も色とりどりの葉っぱや実がたくさん。

食欲の秋にふさわしいチーズの王様パルミジャーノレッジャーノチーズの工場をご紹介します。

その歴史は古く、1250年にジェノバ共和国の公文書においてcaso parmesi(パルマのチーズの意)の購入記録などが発見されており、ずいぶん古くから存在していたようです。

日本ではパルマ県というイメージが強いと思いますが、パルミジャーノチーズはポー川の南西に位置するパルマ県、レッジョエミリア県、モデナ県、ボローニャ県、マントバ県の5県にわたって作られており、現在パルミジャーノレッジャーノチーズを作る工場は330軒、そのうち61軒はモデナ県にあります。うちのご近所にもBio製法で作られているパルミジャーノレッジャーノチーズ農場があり、冬のために刈られた沢山の干し草のロールを積み上げた倉庫があるレッジャーニさんのチーズ工場へお邪魔しました。

こちらは37年前、たった5頭の牛から始めた小さな酪農農家だったレッジャーニさんのチーズ工場。今では1200頭の牛から毎日牛乳を絞り、パルミジャーノレッジャーノチーズを作っています。奥さんマリアテレーザ(通称テリー)さん、が案内して下さいました。

パルミジャーノレッジャーノチーズは朝晩2回絞った牛乳で作ります。前日絞った牛乳はすぐに18度以下に冷却し、次の朝まで置くと、上部に脂肪分(生クリーム)がたまります。生クリームを取り除いた牛乳に、その日の朝に絞った牛乳を混ぜ合わせ、1000L入る銅なべにいれます。
36度まで温度を上げた後、前日にチーズを作った残りのホエー(乳清とも呼ばれ牛乳の脂肪分とカゼインを取り除いた残りの黄色味がかった液体)をバケツ一杯、レンネット(凝乳酵素)を入れ50度まで加熱し、4分間経つとプディング状に固まります。それを10分後にスピーノと呼ばれる道具で細かく壊し、約一時間後ホエーと、チーズに分けます。鍋の底の固形分を麻布に入れて引き上げ、スパッと二つに分け二つのパルミジャーノレッジャーノチーズの大元が出来上がります。これをまた麻布に入れて、木の大ベラに引っ掛けて、水分を切ります。
それをファッシエーラと呼ばれる型に入れ、夕方まで上下をひっくり返すこと3回、木の重石を置きながらしっかり水切りをした後、パルミジャーノレッジャーノチーズの刻印の元になる帯を巻いて一晩置くとしっかりパルミジャーノレッジャーノチーズの文字がチーズに刻印されます。これを上下を返しながら乾かす事3日間、次は塩水プールへ
パルミジャーノレッジャーノチーズの唯一の保存料は塩のみ。2/3が塩、1/3が水のこのプールで20日間しっかりと塩を染み込ませます。表面を洗浄し、いよいよ熟成庫へこの時点でのチーズの重量は50kg。
気温17度、湿度75%の熟成庫で裏表を返しながら、週に一回表面に浮いた脂肪分をブラシで擦って綺麗に保ちます。一年経った時点で、パルミジャーノレッジャーノ協会の監査員が専門の金槌で、一つづつ丹念にチェックをし、検査が通ったものについては、パルミジャーノレッジャーノチーズの刻印が押されます。通らなかったものはすぐにパルミジャーノレッジャーノの刻印が削り取られます。どんなに熟練のチーズ職人が作っても最低5%は検査に通らないと言われています。
その後また熟成させること一年あまり。この時点の重量は40kg
チーズがこの部屋にあるだけで、こんなに痩せるんだから、私だって痩せるはず!と思ったけど、この部屋でいくら作業しても痩せないのよねーと笑うテリーさん。
待った無しの生き物相手に365日間、休みなく毎日チーズを作り続け、牛の飼料となる干し草ももちろんBio農法で作った牧草から作り、抗生物質などの薬や、保存添加物一切なし、また、牛舎で出たし尿、チーズ造りで出るホエーや、チーズの表面の削りカスを利用して、ビオガスから発電をしており、工場で必要な全ての電力をまかない、ビオガスを取った残りのカスは畑へ肥料として使う完全循環型の環境に優しい。そんなこだわりのチーズ工場。
この度イタリアはベルガモで行われたチーズ品評会Word cheese awards 2019年で、全世界3500種類以上のチーズが出品された中、レッジャーニさんの18〜22ヶ月熟成のパルミジャーノレッジャーノチーズが11位にランクインしました!
出品されたパルミジャーノレッジャーノチーズの中で最高位!
本当におめでとうございます!

レッジャーニさんのパルミジャーノレッジャーノ工場
見学は事前に要予約(イタリア語のみ)

https://www.bioreggiani.com/


パルミジャーノレッジャーノチーズ工場の見学、バルサミコ酢の醸造室見学、バルサミコ酢を使ったモデナの郷土料理お食事会、料理教室、モデナもシェフを呼んでスペシャルな一日を過ごしたい、などお問い合わせはこちらまで。同行通訳をいたします。

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皆さんも一度、モデナに足を運んでみませんか?

 

 

養蜂とぶどうと蜂蜜と

すっかり秋風が吹き始めたモデナです。みなさんいかがお過ごしですか?

そんな中ぶどうの収穫をいつにするか、そんな話が出てくるのも今の時期。

今回はエミリアロマーニャ州からミツバチのお話をしたいと思います。

ミツバチは全世界で減少傾向にあると言われ、世界の果物や野菜の受粉の70%はミツバチたちがになっていると言われており、全滅すれば、食糧危機となる事は必須との事。

コルディレッティ(Coldiretti : Confederazione Nazionale coltivatori Diretti)イタリア全国直接栽培者連合の調べではイタリアの蜂蜜年間生産量は2万トン。うち、一位ロンバルディア州、二位ピエモンテ州、三位エミリアロマーニャ州の順になっています。日本は年間生産量2、8トン。

どうりて、日本の果物栽培の受粉の様子が筆を使っての人工受粉についてイタリア人から驚きを持って質問される訳です。これだけの数のミツバチがいるわけだからイタリアでは人工受粉をする必要がないわけなのに納得。

さて、我が家はモデナ県の東に位置する、ランブルスコソルバーラ種DOCの生産地の中心。我が家の葡萄畑も規定に沿って、ランブルスコ、サラミーノ、トレビアーノ種と、3種類のぶどうの木が植えられています。もちろん、バルサミコ酢作りに使うぶどうもこの畑で栽培しています。

ぶどう自体は花をつけたら、花粉を自ら飛ばして受粉する「自家受粉」を行う植物と言われますが、ぶどうの花の間を仕切りに飛び交うミツバチたち確実に受粉のお手伝いしてくれています。

統計データでは養蜂箱を置いた後のぶどうの味が向上したという報告も多く、我が家のぶどうの実のつき方もとても良い事から、確実に我が家の葡萄畑に貢献してくれている大事な働き手。
庭の様々な果樹も毎年鈴なり。
何よりもミツバチは農薬や、大気汚染などに大変敏感でミツバチが住める環境であるということは、私たち人間にとっても安全が保証されたようなもの。

今年は5月の長雨にせっかく咲いた花の蜜が流れてしまい、蜂蜜が採れないどころか、ミツバチの食料となるミツも不足で沢山の群れが死んでしまったり、分峰していなくなってしまったりという被害がエミリアロマーニャ州を始めイタリア全国で報告されていました。
その反面たまたま、急な雨が降った時に写真の分蜂の群れを見つけて、うちの子に加わった群もいるのです。
6月、7月の好天が功を奏し、やっと8月に採蜜作業にこぎつけることができました!採れた蜂蜜は約120kg。
ミツバチは貯蔵した巣穴が蜜が一杯になると蜜蝋で蓋をします。これをナイフで削り取り、ドラム缶に均等になるように差し込み、手回しの遠心分離機にかけてハチミツを取り出します。

黄金色のハチミツが流れ出てくる様子は圧巻!でもこれだけでは、ハチミツに混じった蜜蝋などが混じって、食感が悪いので、最低10日間寝かせます。すると蜜蝋が上にたまり、ハチミツと分かれるので、綺麗なハチミツが採取できるのです。

3月の上旬から咲く、果樹の花桃、プラム、桜、を始め、アカシア、シナノキ、我が家の周りはパルミジャーノの牧草を栽培しているので、エルバメディカと呼ばれる牧草のお花などなどイタリア語でMiele di mille fiori 千の花の蜜。(和名ならば百花蜜)味も香りも濃厚。同じ牧草を食べて育った牛の乳から作るパルミジャーノレッジャーノチーズとの相性も抜群です。
その土地でできたものはその土地のものとよくあう!
蜂蜜だけでなくバルサミコ酢や、サボール(砂糖を使わず、秋のモデナのフルーツを凝縮させたコンフェトゥーラ)と贅沢に組み合わせながら楽しむことシンプルだけど、豊かなモデナの田舎暮らし。
一度遊びにいらっしゃいませんか?

バルサミコ酢醸造室の見学、試飲講習会、郷土料理のお食事会、料理教室のお問い合わせは

https://m.facebook.com/balsamicland/


以前イタリア好きShopping でご紹介させていただいたMirkoシェフの魅惑のコンフェトゥーラ、サボールをパルミジャーノもオススメの一品。まだ少し在庫があるようです。ご購入はお早めに

https://italiazuki.com/2019/07/15/《-会員向け-》-伝統的コンフェトゥーラ-savor(サヴォ/

さて、ミツバチたちがお手伝いしてくれた葡萄の収穫、そろそろはじめます。

夏とトマト

暑い日が続いていますが、イタリア好きのみなさんいかがお過ごしですか?牧草の刈り取りはこの時期の風物詩。ゴロゴロと畑に牧草ロールが並びます。パルミジャーノ レッジャーノ チーズの牛に始まり、色々な家畜の飼料に使われます。

夏といえばトマト、皆さんのイメージはきっと、南イタリアのイメージが強いのではないかと思います。

イタリアの国立統計研究所Istatの調べによれば、加工用に適した品種のトマトPomodoro da industriaはエミリア・ロマーニャ州がイタリア一位の生産量。総耕作面積は何と24,866ヘクタール、東京都(21,090ヘクタール)よりも大きい面積なのだそうです。どうりてトマトの加工工場も沢山あるはずです。

通常トマト栽培は支柱を立てて、そこにトマトが絡みつくように育てますが、加工用のトマトは無支柱栽培。ゴロゴロと赤い実が畑に転がっています。なかなかその風景は圧巻!
1970年代ごろから導入された無支柱栽培は生産性を飛躍的に向上させたと言われています。衝撃に強く、果汁が豊富で、糖度の高い品種が次々とできてきたそうです。
こちらはIbridi prismaticiという品種で、先が丸くてそこまで大きなものではありませんでしたが、食用に販売されてものに比べて、皮が硬いのですが、甘みは十分。
農家の方のオススメは、2、3日置いて、追熟させてから加工した方がいいよとの事。
刈り採り作業が行われているようで、この時期半日でこんなに沢山の量が採れるそうですが、近所の人が家庭用に50kg、100kg単位でどんどん買いに来るので、あっという間になくなってしまうのです。
我が家ではこの時期家族総出で、トマトソースを作ります。
15年ほど前に近所の農家のおじいさんに教えてもらった作り方。
以前はそのおじいさんから買っていたのですが、高齢で作れなくなってしまったので、作るようになりました。
先ずはトマトをよく洗い、半分に切ります。
それを湯の中で20分湯でて、ざるに取り、1時間ほどしっかりと水分を切ったあと
電動裏漉し機にかけて、種と皮を取り除きます。トマトの実と果汁は鍋で温めたあと、煮沸した瓶に詰めてしっかりと蓋をし、最後にぬるま湯をはった鍋に瓶を並べて加熱殺菌、そのまま自然に冷まして出来上がり。
我が家では約140kgのトマトを使い、120本のトマトソースが出来上がります。これを一年間でほぼ消費してしまいます。和食の頻度も多い我が家ですから、一般のイタリア家庭の消費量は確実にそれを上回る事でしょう。私より先のお客さんがトラックで1000kg買っていったのもさもありなん。きっとお友達や親戚を集めて一緒に作るのでしょう。
夏の味がしっかり入った自家製のトマトソースの味を知ってしまったら、なかなかスーパーでトマトソースが買えなくなる事必須。
大変だけれど、価値があるトマト仕事。
さあ残りの70kg用の瓶の消毒をしなくては!


第11弾 マッシモ編集長と行くバルバレスコマラソンとエミリア・ロマーニャ伝統の美食の旅10日間の旅催行決定致しました。バルバレスコマラソンの後、

コーディネイトさせていただいた、Vol.36イタリア好きの取材先を巡ります。アチェタイアの見学、Mirkoシェフのお料理教室にお食事会、パルミジャーノレッジャーニチーズ工場見学などなど内容盛りだくさん。まだ若干余裕があるそうので、是非お申し込みください!

https://italiazuki.com/2019/05/21/第11弾%E3%80%80編集長マッシモと行く%E3%80%80バルバレスコ/

 

サンジョバンニ祭(Fiera di San Giovanni)

 


イタリア好きの皆様、いかがお過ごしですか?

イタリアは小学校がもう夏休みに入り晴天続きの毎日です。

そんな中、6月最終週モデナ県のスピランベルト市では毎年サンジョバンニのお祭りが行われます。


今年も620日から24日まで、クラッシックからロックまで様々なタイプの野外ライブや、ショークッキング、ワインやノチーノ(くるみのリキュール)の試飲、ストリートフードトラックがずらりと並び街全体が色々な催しで盛り上がるそんなお祭りです。

中でも23日の日曜日の夜は第53回目になる伝統的製法で作られたバルサミコ酢のパリオ(品評会)の入賞者の発表が行われます。主催者はスピランベルト市に本部のある伝統的バルサミコ酢愛好者協会。私たち鑑定士が4月から毎晩鑑定会を行い、2000から応募されるバルサミコ酢を鑑定し、勝者を決めるのです。
伝統的なバルサミコ酢と、市場に出回るバルサミコ酢では決定的な違いがあり、品評会に応募される殆どが一般家庭で大事に作られてきたもので、市場に流れることはほとんどないのが現状です。
市場統計において、バルサミコ酢という名前の商品の中で、伝統的製法のものは0、001%、年間約2万Lとのことですから。本当に希少価値の高いものです。
この上の写真沢山のバルサミコ酢が並べられていますが、この中のひと瓶も伝統的な製法で作られたものはありません。
日本にもバルサミコ酢という名前のついた商品はたくさん出回っており、価格も決してお安いものではないと思いますが、伝統的製法のバルサミコ酢とは全く別物で、そのほとんどが、葡萄シロップとワインビネガーを混ぜた類似商品です。価格の高いものは一定期間樽内での熟成を行なっていますが、鑑定をすればその違いは一目瞭然。
鑑定士の中では、市販品が鑑定サンプルとして鑑定の中に入ると香りを嗅いだ瞬間、テーブルについた鑑定士全員が鑑定する価値もないとサンプルをテーブルに投げ出すくらいです。(実際最後まで鑑定しますが点数は惨憺たるものです)


伝統的なバルサミコ酢というのはどんな定義のものなのでしょうか?DOP(保護指定原産地表示)の規定においては
1、原材料 ぶどうの絞り汁を直火で煮込んだモストコットのみ
葡萄の品種もモデナで栽培される伝統品種であること
2、生産から加工、熟成までモデナで行ったものであること
という事が規定されています。
3、熟成期間は種類の違う樽を使い12年以上熟成されたものであること

簡単な規定ですけれど、大量生産には向かないというのがお分かりになると思います。
近年パリオで賞を受賞するバルサミコ酢の殆どが、40年以上の熟成期間を経たものであるのが最近の傾向です。
本当に気の遠くなるような年月と手間を必要とする伝統的なバルサミコ酢ですが、年間に生産できる量は1セットの樽例えば50、40、40、20、15Lの種類の違う木材の樽がセットになったとして最終の樽から年間1〜2Lと本当に少しで、昔は、貴族か、裕福な家庭の趣味として発祥したというのがうなずけます。バルサミコ酢を作っているほとんどのモデナ人は金儲けのために作っているわけではなく、バルサミコ酢を愛し、モデナの歴史や文化を愛する人たち。そして今なおバルサミコ酢の醸造室を持つということはステータスシンボルであり、家庭の中で消費するか、特別な贈答品として扱う場合がほとんどで、特別な存在であることに間違いありません。
そんな希少な伝統的製法のバルサミコ酢、今年はどなたが賞を受賞されるのか楽しみです。

スピランベルト市のお祭りについてはこちらのサイトより

https://www.fierasangiovanni.it/edizioni/2019/sabato-15-giugno-anteprima/

一時帰国をして神戸で2019年6月25日に自然料理アカデミーさん主催で、バルサミコ酢講習会をします!

もちろん市場に出回らない我が家の家宝である、1700年代に作られた樽から取り出した、特別なバルサミコ酢をお持ちします。

バルサミコ酢の歴史、伝統、作り方、化学的な見地からの検証、バルサミコ酢を使ったモデナの郷土料理で昼食会と盛りだくさんの講習会です。

まだ数席余裕がありますので、お早めにお申し込みください。

お申し込み先は

https://m.facebook.com/naturalcooking.ac/

お待ちしております!

 

コマッキオサイクリング 後半

イタリア好きの皆さんこんにちは!

前回イタリア最大の河川、ポー川のデルタ地帯の一部にある、フェラーラ県のコマッキオ市リードデリエステンセという町からから湿地帯の中を通り、コマッキオ市街をめぐる、全行程20kmのサイクリングの前半をご紹介しました。今回はその後半を

急に友人のスピードが落ちました。タイヤのパンク。自転車屋がありそうなコマッキオ市街まではまだ4kmほど。

だましだまし進んでいくと、ビランチョーネ:

水上家屋、網元のこと。張り出した鉄パイプにj網が吊り下げられており、その昔からの漁方で海水と、河川の混じり合う独特な環境下で育つ魚介類を、引き上げるため天秤ばかりのような形からビランチョーネ(大きな秤の意味)と呼ばれる

の一つに

Ingresso libero入場無料、Anguille ai Ferri 焼き鰻」

の怪しげな手書きの看板。

中に入っていくと、60平米の空間に、ソファー、テーブルが3つ、ピザの皿が紙ナフキンの上に伏せてあり、奥にはキッチンが見て取れます。オーナーが無愛想に

「見てったら?食事がしたけりゃ125ユーロ。子供はその半分でいい。鰻は料金ちょい増しだけどな。」というのです。

かなり怪しげな上に、お世辞にも綺麗な身なりとは言えないオーナーですが、その指先は爪がきちんと切りそろえられており、年季は入っているけれど、磨き込まれた鍋類が壁にかかっています。

レンタサイクルに電話をし、タイアの修理をお願いすると、1時間はかかるとのこと。

待ち時間もある事だし、こうなったら試してみようじゃないか!とテーブルに着くと、オーナーなかなかの手際で調理を始めました。
まずは朝採れたムール貝のマリナーラ。大きく切ったにんにくとオリーブオイル、イタリアンパセリを仕上げにかけたシンプルだけど絶品。

船の中のようなビランチョーネですから、水道はなく、タンクの汲み置きの水を大鍋に入れて、パスタ用に沸かし、今ムール貝に使った鍋に食べ終わった貝殻を入れさせると、ゴミ箱に捨て、その鍋を使って、パスタソースを作り始めました。子供達の1人が

「お皿換えないの?」と聞くと

「皿は使い回しだ!それが嫌なら、コマッキオのゴマンとあるレストランに行ってくれ!」

大人はヒヤリ。なかなか味のあるオーナーで、

私たちが座った後も観光客が「ここはアサリはないわけ?」「魚のグリルはないの」と入ってくると、

「そんなものはない、コマッキオのレストランに行けば良いだろ」と追い返す始末。「ああいう面倒な客はとらないんだ。」とニヤリ。

続いて出てきたのが、魚介類のミネストラ。小さなカニ、エビ、ムール貝、アサリがたっぷり入ったマカロニのパスタで、カニのお腹を吸いながら食べていると、この辺の名物の小魚のフリットを揚げる良い香り。

 
アクアデッレ(トウゴロウイワシ)、タラチーネ(ヒラメのような形の小さな魚)、小エビ、が山ほど出てきました。
その後はお待ちかねの焼き鰻。しっかり焼いて、外はカリッとして、余分な脂が落ちていて美味しい!レモンを絞って、頭もガリガリ。イタリア人はこれやりません。
見ていたエンリコ(食べ終わる頃やっと名前を明かした
「あんた、わかってるね。みんな残すんだけど、たまに俺は頭だけもらってきて、ゆっくり焼いて酒のつまみに食べるんだ」と他にもお魚の調理の方法を色々教えてくれました。

すっかり打ち解けた頃、ビランチョーネについて色々説明してくれました。

作るには許可がいらないけれど、年間1200ユーロほど、市に支払いをすること。住むことは認められず(住所は与えられないという法律上の問題。エンリコさんは通いだそうです)電気や水道を引くこともできないので自家発電機と、キャンプのように水をタンクに入れて持ってこなくてはいけないこと。トイレは簡易トイレの回収業者が4軒ほどのビランチョーネごとにいること

建物の下には長さ7、5m、70本ほどの栗の木が地底に4mほど打ち込まれてその上に建ててあり、栗の木は外側の樹皮をそのまま使用してあり、波で木が削られていくのを防いでくれるようになっていると説明してくれました。

友人の自転車のパンクも直り、エンリコに挨拶をして再出発。

残念ながら天気は下り坂、午後になると急に風が吹き出し、灰色の雲が。コマッキオの市街へ。

小さなベネチアと言われるようにベネチアを思わせるような水路の街で、トレポンティと呼ばれる1638年に作られた橋があり、二つの塔に、五つの階段なかなか大きな橋で、観光客がたくさん写真を撮っていました。

ここからスタート地点まで残すところあと8km。国道の横のサイクリングロードをひた走り、リードデリエステンシの街に帰って来ることができました。

地図の説明では全行程1時間18分との事でしたが、ノンストップでも、もう少しかかりそうだなあというのが実感。

とはいえ、高低差はないので、後半向かい風で大変だったものの、自転車に乗り慣れていれば、小学生でも全く問題のないコースだと思います。

レンタサイクルはリードデリエステンシ、コマッキオ市内と5箇所ほど、皆さんも試してみてはいかがですか?

コマッキオサイクリング、散策についてのインフォメーションは

こちらから

https://www.ferraraterraeacqua.it/it/parco-del-delta-del-po

 

コマッキオサイクリング前半

イタリア好きの皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
今年は日本のゴールデンウィークも、大変長いお休みと聞いています。ここイタリアも、復活祭から、フェスタデラリベルタ(終戦記念日)、地域によってはメーデーまで長い連休に入っています。
パスクエッタと呼ばれる復活祭の後の月曜日、
イタリア最大の河川、ポー川のデルタ地帯の一部にある、デルタ・デル・ポーエミリアロマーニャ公園をご存知でしょうか?
この公園は水鳥、魚介類の生息地として、ユネスコ世界遺産に登録されており、40万ヘクタールという大きな湿地帯を形成しています。
今回はフェラーラ県のコマッキオ市リード デリ エステンセという町からから湿地帯の中を通り、コマッキオ市街をめぐる、全行程20kmのサイクリングロードを友人ファミリー大人4人、子供4人(6、10、11、12歳)で楽しんできました。
リード デリ エステンセとはエステンセ公国の浜辺といったような意味で、文字通り松林を隔てて広い遠浅の砂浜があり、リゾート地といった雰囲気です。
朝、レンタサイクルのお店に行くと、色々な種類の自転車が取り揃えてあり、自転車を借りる人で、ごった返していました。4輪サイクルは街の中限定、マウンテンバイクや、カゴや子供を乗せるママチャリなど、大人から子供まで10ユーロで、丸一日好みの自転車を貸してくれます。
街のインフォメーションでは、自転車のハンドル部分につける地図まであって、なかなか便利。

イタリア語だけでなく英語も表記されています。
街の中を通り、川のような湿地帯の入り口まで来ること約3km、両岸には水上家屋が点在しています。どの建物も水に上に杭が打たれた上に建てられてあり、どこもワイヤーにつながった網が 張り出ています。これは昔からの漁方で海水と、河川の混じり合う肥沃な環境下で育つ魚介類を、建物を起点に網を水中に下ろし、引き上げる天秤ばかりのような形から、この建物の事をビランチョーニ(大きな秤の意味)と呼ぶそうで、イタリアにおいて量、質ともに最上級のうなぎ、小魚、エビ、貝類なども豊富に水揚げされるそうです。
自転車はちょっとという方には、モーターボートに乗って塩田をはじめとする湿地帯を観光を楽しむ事もできます。
そんな河岸を走ること1km、急に広い湿地帯が現れました。
季節によっては、南からフラミンゴが渡ってくることも有名で、湿地帯を歩く観光も春から秋にかけて行われているそうです。特に塩田を歩くツアー(4km)はガイドが湿地帯の生態系や、歴史などを説明してくれるようです。
この橋の先はガイドがいないと入れず、残念ながら塩田部分には時間が合わず、入ることができませんでしたが、周りを見渡すだけでも素晴らしい景観。細い河川敷の右にも左にも大きな湿地帯がひろがり、たくさんの水鳥が飛翔しています。
こんなに豊かな水辺の風景はユネスコ世界遺産に登録されているというのも納得した次第です。

コマッキオ塩田ツアー、インフォメーション

https://www.salinadicomacchio.it/

サイクリング後半の話はまた次回

 

魅惑のサヴォール

 

秋のモデナは葡萄の収穫が終わる9月末から、10月の中旬が過ぎると様々な秋の果物の最盛期を迎えます。


エミリアロマーニャ州はイタリアの中でもフルーツの生産量が1位。私の住んでいるモデナ周辺でもりんご、洋ナシ、プルーン、マルメロ、カリンなどが採れます。そんなたくさんの果物と、夏の終わりに収穫したカボチャ、葡萄の果汁を煮詰めて作ったモストコット(サバとも言います)を使って作るコンフェトゥーラがモデナにはあります。モデナ方言でサヴォールと呼ばれ、砂糖を加えずに、何日もかけてじっくり煮込んだ、砂糖のなかった時代からの素晴らしいフルーツの保存食。


地元の方に作っているか聞いたところ、80代のお婆さんは孫たちはヌテッラ(ヘーゼルナッツの入ったチョコレートクリーム)ばかりで見向きもされないから作らなくなってしまった。なんてお話を聞くと悲しくなります。

子供達の同級生の親御さんに聞いても作るという人は皆無…。


その昔は暖炉や薪ストーブの横で何日も鍋を置いて作っていたそうですから、近年ガスや、暖房器具の普及によって生活スタイルが変わったことも作らなくなってしまった所以かもしれません。


我が家では幸い薪ストーブがあり、バルサミコ酢の原料のために作ったモストコットを使って、庭の木にたわわに実ったカリンやマルメロ、カボチャ、りんご、洋ナシ、プラムなどを使って作っており、何より砂糖不使用、添加物なしというのが、子供達にも安心して食べさせられますし、自然の恵みを感じる甘みや酸味がモデナの伝統的なお菓子作りや、お料理に合わせやすくてとても重宝しています。


果物を切って煮込む事数日。褐色のサヴォールがようやく出来上がります。

市販されているものもあるのですが、どれも砂糖が添加されたもの、残念ながら苦みが勝って決して美味しいと思えないものばかりにあたり、個人的に随分味を見たのですが、納得いくものが見つからず、Alsavor アル サヴォールという名前のケータリング会社を立ち上げている友人ミルコ ピンナシェフ(イタリア好き本誌Vol36にも登場しています)に相談すると、「僕も探し回ったけれど、納得のいくものがないから自分で作っているよ。必要なら分けてあげようか?」というではありませんか。


写真はミルコシェフのオーガナイズするパーティーの会場の様子。パルミジャーノレッジャーノチーズを始めさまざまなチーズとサヴォールを合わせて

Al savorとはモデナ方言の言い回しで、コンフェトゥーラの名前の他、味わいという意味もあるのです。その名をつけたケータリング会社だから何か知っているだろうと踏んだのは当たりでした。


試しに味見をしてごらんと味見をさせてもらって、その美味しさに本当にびっくりしたのです。

フルーツの凝縮された深みのある味、それでいて懐かしいような。和菓子にも通じるような味わい。

チーズを始め、肉料理や魚料理、野菜料理何にでも合うのですが、そのままスプーンですくってひと瓶空にしたいくらい。パンにジャムのように塗って食べてもとっても美味しいですよ。

イタリア好き読者の皆さん、エミリアロマーニャ州のフルールがギュっと凝縮されたこのサヴォール、是非召し上がってみてくださいね。