堂内あかね のすべての投稿

北イタリアの葡萄畑を襲う危機

イタリア好きの皆さんいかがお過ごしですか?

モデナは庭にも牧草地にも様々な花が咲き始め、桜も少しずつ咲き始めました。

 そんな中,エミリア・ロマーニャ州植物検疫組合、ランブルスコ組合、農業組合が主催するモデナのぶどう、畑の将来についてのシンポジウムを聞いてきました。これまでも、ピエモンテ州ヴェネト州ロンバルディア州では、北イタリアを中心にぶどうの木が立ち枯れする病気が広がってきているとのこと。



ファイトプラズマ菌に感染すると、紅葉の時期でもないのに葉がこんなふうにまだらになります。

そんな深刻な被害をもたらしているのがファイトプラズマという細菌。それを媒介するのがアカザノ科のヨコバイ(Scaphoideus titanus)、その個体数が、ここ数年で大変な勢いで増殖するばかりか、温暖化により成虫になるスピードが増しているそうなのです。

このシンポジウムぶどう栽培農家が中心となって、300人近くの参加者がいました。それもそのはず、モデナ県内には8000ヘクタール(80)以上の葡萄畑が存在しており、その大きさは山手線内側の面積63㎢をはるかに上回る大きさ。収入面でもモデナ県の農業収入の高確率を占めています。

葡萄の生産量の減少は、近年の気温の上昇や深刻な水不足だけが原因ではなく、この細菌がファイトプラズマが大きく関わっていること。

感染が確認された葡萄は切り倒す必要がありますが、感染したとわかるまで一年。その間、ヨコバイが感染した木の樹液を吸って、感染していない木の樹液を吸えば、次の年に感染が拡大するというイタチごっこ式。すぐに感染がわからないなら、媒介する虫を殺すべきなのか?



葡萄の葉の裏についたヨコバイ。オスとメス

化学成分が入った殺虫剤の使用は生態系を大きく狂わせる可能性があるだけでなく、人間にも健康被害がある可能性が高い。誰も葡萄畑に毒はまきたくないのです。

ビオ栽培の畑には、虫の個体数は多いけれど、細菌に感染した葡萄の木の本数は少ないという統計が出て、植物由来のエッセンスオイル等を何回にも分けて散布する方法など、紹介がありましたが、手間とコストがかかる。実際、生産性という意味で、ビオ栽培は手間がかかるのにも関わらず、葡萄の収穫量が落ちるため、敬遠する農家が多いのも事実。



沢山なっている葡萄

モデナのあるパダーナ平原は、水源が豊富な肥沃な土地として知られ、種を蒔けば野菜も果物もできて、たくさんの葡萄がなるからこそ、機会を導入した大量生産型に移行していったモデナの葡萄作り。機械による収穫は葡萄の木を揺らして実をふるい落としていくので、木にストレスを与え、100年持ったものが今や2030年で使い物にならなくなるというのに、それが当たり前のように続けてきた戦後。なぜなら、日本同様経済成長による農業離れ、農家の人材不足はエミリアロマーニャ州でも問題であり、平地という立地と相まって機械化は必然の流れだった背景があります。



平原に機械が入ることを想定して作られた木と木の間隔が広いモデナの葡萄畑

そのため生産量重視の、機械化によって安価に飲めるワインとして消費者に提供できるようになったランブルスコワイン。

原料の葡萄は、安価な値段がつけられており、これがここに来て、生産者の首を絞める原因となっています。ワイナリーを経営し、ぶどう栽培からワイン醸造までを手がけワイナリーは葡萄の生産コストを賄う経済力がまだありますが、ぶどう作りだけを手がけている農家は、葡萄の現在の買取価格では燃料費、その他諸々の物資高騰が生産コストとのバランスが合わないくらい。そこへ持って、葡萄の生産量の減少。

シンポジュウムでは現場の生々しい声が飛び交いました。

ファイトプラズマ菌による葡萄の木の病気は、すぐに対応すべきだけれど、プラスアルファの手入れをする金銭面と人材の工面がつかない、植え替える資金の調達も夢のまた夢。

一体どうしたら良いのだ。と窮状を訴える人。

イタリアの葡萄畑は権利制になっていますから権利を所有していないと葡萄栽培はできません。権利は売買できますが、現在では10年前と比べて、葡萄畑の権利権価値が半額に下がっているという現状を切々と訴える人。



短く切られた葡萄の木 後ろにもそんな木が見える

その権利を買い取って6年前に葡萄を植えたけれど、ファイトプラズマ菌の被害で、7割を引く抜く状態に陥った人。

燃料費をはじめとする物価の高騰インフレや買取価格に言及する人。

シンポジュウムの後半は暴動が起きるのでは?とヒヤヒヤするほどの参加者と主催者側の白熱した議論が繰り広げられました。

残念ながらファイトプラズマによる葡萄の木を守る確実な方法は、まだ不明解な点が多いのだそう。参加者はモヤモヤした思いで帰途に着いたのですが、反芻するにつれ、自然に多くを求めたために、今度は問題を自然から突き詰められた様な気がします。



植物も人も動物も安心して暮らせる環境を作ることを考えました。

葡萄栽培に限らず、地球の資源には限りがあり、今回のシンポジュウムは色々なことの変換を求められている現在の地球の問題とリンクするように感じました。

モデナの葡萄栽培が地球との自然との共生の中で、活路を見出すことができると信じて。

イタリアモデナでバルサミコ酢を醸造しています。

随時見学を受け付けております見学を受け付けておりますのでお気軽にご連絡ください。

イタリアで竹林巨大迷路

イタリアは小中学校が夏休みに入り、イタリアはバカンスモードに突入。

長い長い夏休み、どうやってバカンスを過ごすか目下イタリア人の最大の感心事になるのは必須の事。

週末を友人宅で過ごしたり、子供たちを連れてどこに行くか?何をさせるか頭の痛いことであるから、情報交換に余念がないのも風物詩。

そんな夏の週末、パヴィアの丘の上にある友人宅のプールサイドで、まったり午後を過ごしていると。



友人宅のプールサイドからの絶景

「竹でできた巨大迷路があるから、おすすめだから帰りに是非行ってみて!」

と友人に力説された。

連日35度越えの暑さの中、竹製の巨大迷路で迷子になるのはちょっと勇気がいる。

竹を素材として通路を作っているのか?と思ってよく聞いてみると、そうではないらしい。パンフレットまで出してきてくれる。

なんだか面白そうではないか!

マゾーネ ディ フランコ マリア リッチの迷路(LABIRINTO della Masone di Franco Maria Ricci ) フィデンツアとパルマのちょうど境に位置する。2015年に開園された迷路と、リッチ氏の個人所有のコレクションが並ぶ美術館。休日は混んでいて、随分と待たされたから、ネット予約をした方がいいと即座に予約までしてくれた。

翌日、高速道路をフィデンツアで降りて、田舎道を行くこと10

平日月曜の午後15時と一番暑い時間だったせいもあり、駐車場には一台しか車が止まっていない。



あまりにも人がいなくて、入り口はここなのか?と不安になるくらい

レセプションに着くと紙製のバンドを渡され、もし迷ってたどり着けない時は電話番号が書いてあるから、電話してください。とこともなげに言われ、ちょっと不安が増した。

気を取り直して、出発!

巨大迷路といっても庭園を竹を植えて迷路にしたもので、大きさは7ヘクタール。入り口が1箇所、出口が1箇所なので、後戻りして出るか、出口を探すしかない。

子供達止めるのも聞かず、どちらが早く入り口を探せるか競争だ!と、いきなりダッシュ



こっちかな?あっちかな?と子供達

私は入り口の地図を携帯で撮影して中に入る。鬱蒼とした竹林。竹も一種類ではなく、かなりたくさんの種類の竹が植えられている。足元はしっかりとコンクリートで固められ、竹が通路に育たないように工夫されているようだ。頭上は竹で覆われてしっかり灼熱の太陽を遮ってくれている。

途中途中、迷路というものの神学的意味や、敵が簡単に侵入できないように植え込みを植えたり、散歩が楽しくなる工夫のために迷路を作った史実が紹介されていたり、アミューズメントパークとして作ったものとは異なって面白い。

そんなパネルを眺めていると出口を見つけた子供達が、汗だくで走ってやってきた。

45分で出口に到着!出口にあったのはなんとピラミッド。なかなか趣向を凝らした庭園なのである。

入り口の建物に戻り美術館を鑑賞。リッチ氏のコレクションは15世紀のものからコンテンポラリーアート、ものすごい数の書籍類など多岐に渡っていた。

皆さんもちょっと珍しい庭園&美術館。

話の種に訪れてみてはいかがでしょう?

マゾーネ ディ フランコ マリア リッチの迷路(LABIRINTO della Masone di Franco Maria Ricci ) のネット予約はこちらからネット予約はこちらから

モデナで伝統的なバルサミコ酢を醸造しています。

醸造室見学や、日本での我が家のバルサミコ酢購入についてのご案内はこちらから

皆さんどうぞ良い夏をお過ごしください。

保存食をもっと楽しんでいただく 本誌取材の裏側

 51日に発行されたイタリア好きVol.49、読まれましたか?

 「知恵とうま味が詰まった 保存食でフルコース」を担当させて頂きました。

本誌には載せきれなかった、取材の裏側をご紹介したいと思います。

 2月中旬が過ぎた頃、イタリア好き編集部より、イタリア好きVol.36に紹介した出張料理人のミルコ・ピンナ(Mirko Pinna)さん(第11弾のマッシモツアーでも紹介されております)に、イタリアの保存食の紹介とアレンジする術を紹介してくださいませんか? というお話を頂きました。

 取材依頼をするミルコさんは、サルデーニャ島出身の両親の元にモデナで生まれ育った方で、最近忙しくしているらしいというのは分かっていたのですが、連絡が取れない。電話は留守電、メッセージとメールを散々送りつけ、やっと連絡がきたのが20日の夜中。



Mirko Pinna
Photo by Giulia Pini

「喜んで引き受けたいけれど、問題はスケジュール。今仕事でサルデーニャなんだ」

というメッセージ。ともかく私の予定はどうにか合わせるからと数日後、日にちを決めようとサルデーニャ島から戻ってきたところを捕まえて、打ち合わせしました。

「イタリアの保存食と保存食の活用」を踏まえて、イタリア土産とし皆さんが一度は買ったことがある、もらったことがある、馴染みがあるもの、物語性があるものちょっと珍しいものなどの保存食を11候補ほど挙げ、アレンジ術は3〜4候補出してすり合わせて、編集部に送る候補リストを作り、取材撮影日を決めました。

 当初予定していたカメラマンは日程が合わず、急遽ミルコさんに紹介してもらい、37日、8日にミルコさんの事務所で取材撮影することになりました。

 事務所と言ってもお客様を招いてお食事会や、料理教室、奥でケータリングの準備ができるスペースで、アンティーク家具やケータリングの名脇役になるようなお洒落な瓶詰め、スパイスなど色々なものがあってとってもおもしろいのです。



撮影に使ったミルコさんの事務所 Photo by Giulia Pini

今回のカメラマンは、モデナを拠点とするジュリア・ピーニさん。ウエディング、企業のピーアール、食関係の雑誌などで活躍されています。

 撮影当日、プロの仕事とはこういうものだ! と感動しました。

 すべてが揃っていることはもちろん、私がお願いした項目を確認して食材のイメージからシェフとカメラマンの配色のこだわりがすごかった! 1カット撮るのに載せるお皿、背景、配色、などかなり試行錯誤しています。



黄色が基調のアンティークの肘掛け椅子を使って ポンピーアの位置を決めるのにmm単位で調整中 筆者撮影

自然光で撮影するのにテーブルを動かしたり、ソファーを出したり、ポンピーアにはサルデーニャのまな板やナイフだったり、キノコ狩りをするときに使うかごや、ポルチーニ茸が生えることが多い栗の枯れ葉などなど細部を見られるとかなりおもしろいと思います。

 記事を書くにあたり、本誌に載せたレシピは日本語に起こした後、すべて自宅で試作してみました。はっきり言います。

「全部おいしいです!」

なので、皆さんも是非試してみてください。

 可能な限り保存食の作り方を見せて欲しい、そして食材として料理にどうアレンジしていくかがポイントでした。

 ドライトマトのような馴染みの食材は、イタリアでは誰でも使うのでは? と思われるかもしれませんが、北イタリアでは使っているのを見たことがない。そのまま使うの? どうやって保存すれば良いの?と取材中に質問がどんどん出てきます。

ドライトマトもポルチーニも、乾物の戻し方は冷水でゆっくり。なるほど日本の乾物の扱いとも似ているなあと再確認しました。

 塩分があると言ってもこんなにドライトマトを戻すのに時間をかけるのか! 塩分は抜け過ぎないの? と思われた方も多いはず。

「味見してみてちょうどトマトのサラダを作る時のように、ちょうど良い塩加減になっているくらいが目安だよ。だから必ず、戻したら味見をしてみて。感覚的なことだけれど大事だよ。」

とミルコさん。

 カルチョーフィのオイル漬けにしても、手がかかるカルチョーフィは、イタリア人であっても敬遠する人が多いのも事実。割高ですが、大型スーパーなどは下処理をしたものが売っていることもしばしば。カメラマンのジュイリアさんが「えーこんなに下処理に時間がかかるの」と撮影しながら……



蕾の外側は捨てずに、スープストックに使うのも良いよとミルコさん 筆者撮影

 そんな手間をかけても、自分で作るときは材料を吟味して作ることができるのが魅力なんです。撮影で使用したのはミルコさん手作りの厳選されたカルチョーフィにオリーヴオイルだったし、下処理の白ワインもワインビネガーもこだわりがあるものだから市販品と比べると、まず歯応えに驚き、劇的においしかった。アレンジをしなくても、これだけで十分完成された物だよ。と言い切られたのは、オイル漬けに自信があったからかと食べて納得した次第。思わず次の日に市場に出かけ、自家製のワインとワインビネガーを使って仕込みました。



そろそろ食べごろになってきたカルチョーフィとドライトマトのオイル漬け

 これはサラダや誌面の都合でご紹介しきれなかったブルスケッタにして、自家製のバルサミコ酢でにんまりしながら食べようと思っています。だって手がかかっているんだもの。

 ひなどりの骨を外すなんてなかなか家庭ではされないかもしれませんが、骨から筋肉を少しずつ剥がしていく感じにするとうまくいきます。

 ハーブ塩もこの材料にこだわらず、自宅にあるハーブを刻んで、塩と混ぜて乾かすを基本にして作ってみても楽しいです。



初夏になって育ってきた我が家のセージとオレガノこれでハーブ塩作ります。

 サルデーニャ島の一部にしか育たない柑橘類ポンピーアは、ミルコさんがわざわざサルデーニャ島から持ち帰ったものを使っています。文章だけではわかりにくいという方は、ミルコさんがYouTobeで作り方を紹介していますので、イタリア語ですが是非ご覧になってください。

本誌の記事がもっと楽しく読めるはず!

イタリアモデナまでバルサミコ酢の醸造室を見学に来たい!という方、私のサイトサイトまでご連絡ください。

 


皆さんとイタリアでお会いできることを楽しみにしております。

 

ボッビオの橋と秋の味覚

10月の中旬たまたまトリノの仕事の帰りに、日本人の友人の取材の運転手としてランゲ地方を回り、ピアチェンツア県のボッビオに同行することになった。



標高が高い場所は、ずいぶん紅葉していた。

地図上で見るといつも通る道の、一本山側の道を通るくらいだから、距離的に大した差はない。と甘く見ていたらとんでもない!ワイナリーの取材を終え、陽もすっかり沈んだトルトーナから19時半出発。国道にもかかわらず、どんどん狭くなる道、街灯一つなく、周りも真っ暗で右に左にカーブする道。対向車も、追従車もほとんどなし。野うさぎが飛び出して来て、慌ててブレーキを踏むと今度は車の前をウロウロ。やっと発進させると、今度は狐の影。



ボッビオ近隣の地図 トレッビア川の周りは全て山に囲まれているのがわかる

そんな道をそろそろ1時間半もたとうかという頃、ボッビオの標識が出てほっとしたのも束の間、突如村が出現した。夜の村は静かで中世にタイムスリップしたかのよう。



こんな石造りの街の中を歩いていると中世にタイムスリップしたかの様

ボッビオはエミリア・ロマーニャ州の北西の端リグーリア、ピエモンテ、ロンバルディア州の州境に近いところに位置する。「I Borghi più belli d’Italia イタリアの最も美しい村」の一つに認定されている。

大きな大きな聖コロンバーノ修道院。

614,アイルランド人コロンバーノ修道士が創設した。



聖コロンバーノ 平和の象徴である白い鳩コロンバが肩に乗っている

その後中世の宗教や政治だけでなく文化の拠点として栄え、村の横を流れるトレッビア川の横をジェノバからピアチェンツアに塩をはじめとする物資を運ぶ幹線道路が通っており、商業の重要な拠点として栄えていた。

重厚な石造の修道院や街並み、ドゥオモをはじめとする教会など観光も楽しいが1番の見所がボッビオにある。それはヴェッキオ橋。猫背の橋、悪魔の橋など異名を持つ。

全長280mの大きな大きな橋で、橋を支える11のアーチは一つとして同じ大きさはなく、おそらくローマ時代にかけられたであろうと推定されているが年代は定かではない。

土曜の朝7時教会の鐘の音が鳴り響くのを合図に、トラックが何台も入ってくる音が聞こえる。

毎週土曜の午前中は村中に市が立つ。衣類、食品、雑貨、造花や、農工器具、ハンティング用品専門のテントが並ぶ。地元の方や、近隣の村からもずいぶん人が来ているようで、昼近くにはかなりの数の観光客や、ツーリングとおぼしきライダースーツに身を包んだグループも多く見られた。確かに通って来た山道をバイクで走るのは楽しそうだ。



村の入り口 左手にツーリストインフォメーションがある

山間だけにポルチーニを扱う店も多い。手打ちパスタを売る店では、郷土料理のパスタが置いてある。



村の手打ちパスタを売るお店

ピサレイ(pisarei)というパン粉を練り込んだパスタはピアチェンツア出身の姑が話していたっけ。ボルロティという赤い模様のあるインゲン豆と合わせる。方言ではピサレイ エ ファゾ(Pisarei e fasò)と言う名でレストランのメニューにもあった。

昼は近隣で朝取ってきたばかりと言うポルチーニ茸のフライコリコリとした食感の残るフリットは絶品!

ピノーリと呼ばれる小麦粉とじゃがいも、リコッタ、青菜を練り込んだパスタにポルチーニ茸を合わせたもの。

皆さんも秋ならではの味覚を満喫しに、足を運んでみてはいかがだろうか?

ちなみにサラミを買ったお肉屋さんの話では、ジェノバ、ピエモンテ側からはかなりの山道なので、車でのアクセスはピアチェンツアからが一番いいそう。



品揃えの良いサルミ類、乾燥ポルチーニパスタなど色々取り揃えてある。

公共機関ではバスで一本。ピアチェンツアから村の入り口までおよそ1時間半。およそ1時間ごとに出ているが学校の夏休み期間は本数が減るので注意。

イベント、交通アクセスについてのサイトはこちらから(イタリア語/英語)

https://emiliaromagnaturismo.it/it/localita/bobbio

モデナで伝統的な製法でバルサミコ酢を醸造しています。バルサミコ酢醸造の裏話や、モデナ近隣の食習慣、レシピなどを紹介しているので、ぜひ覗いてみてください。

https://miamodena.it/

それでは皆さん秋を満喫いたしましょう!

 

秋の葡萄祭り

今年も葡萄の収穫が始まりました。


我が家のバルサミコ酢造りに使う、トレッビアーノの収穫も始まっています。

そんな9月の最終週の土、日に、私の住むノナントラでは「Sóghi, Saba e Savór 」というまさにとれたての葡萄を使ったお祭りが行われます。


ソーギとは葡萄の果汁を小麦粉で固めたプディング↓

サバは葡萄の果汁を煮詰めて作るシロップのモデナの呼び名。

サヴォールは(過去の記事がございます)

季節の果物が入ったコンフェトゥーラ。



2019年の様子 今年は皆さんマスクをしていました。

様々な屋台が出ますが、なんといってもその目玉はバルサミコ酢愛好者協会のノナントラ市支部が主催するブース。伝統的な製法のバルサミコ酢がずらっと勢揃い。無料で味見がし放題。



沢山のバルサミコ酢一つ一つ味が違います

しかも市場に出していない、個人所有の伝統的な製法で作られ、大事に守られてきたバルサミコ酢が堪能できるのです。

その横のブースでは、モストコット(葡萄の汁を煮詰めたもの)を作る作業。こちらも味見できますが、ノナントラの市所有の醸造室にあるバルサミコ酢の原料として使われます。

この醸造室、お祭りの間、開放しており、バルサミコ酢の味見ブースで申し込みをすると、ガイド付きで案内をしてくれます。醸造室に向かう階段の踊り場からの眺めも素敵。



モデナ方面に立つモデナの塔

教会の横では、地元のボランティア団体が作るニョッコフリットが売られて、熱々のニョッコフリットを食べるのもよし、サルミ類を追加してもらうのもよし。

旧市庁舎の脇の公園では熱々のパペック(もしくはカルツアガッティ)と呼ばれるポレンタの中にインゲン豆や、チッチョリというサルミを混ぜて、ラードで揚げたものが売られ地元の方が列をなしています。

ソーギ(葡萄プディング)や、サボール(季節のフルーツのコンフェトゥーラ)もそのほか季節の野菜や果物、パルミジャーノや、生ハムなどが購入できます。

昔使われていた農耕器具を使って、葡萄を潰す作業の体験(お子様限定)ができたり、

初夏に仕込んだノチーノという青胡桃を使って作るリキュール(作り方の動画はこちらから)の試飲もありました。

一年のうちで、小さな町が一番盛り上がるお祭り。

雰囲気を味わっていただくために動画を作りました。

 ↓ ↓ ↓


リンクはこちらから👉イタリア 秋の葡萄祭りの様子

葡萄を始め、秋の収穫の喜びを感じられるローカルなお祭りに、ぜひ一度いらしてみてはいかがでしょうか?

バルサミコ酢の醸造についてホームページ「ミアモデナ」はこちらからブログ、Vlogでモデナの色々を紹介しています。

ミアモデナ

5代続く製粉所の誇り ガスパリ製粉所 後半

今日は38日、国際女性デーの日としてミモザの花を女性に贈る日。

なのですが、モデナは34日から行動制限が出てしまい、残念ながらお花屋さんもお休み。

何もしないのはつまらない。庭に咲く花を摘んで、ミモザを模したミモザケーキを作りました。

もちろん小麦粉は

先日ご紹介したガスパリ製粉所のもの

石臼挽きの粉は混ぜるときにふんわりと良い香り。

さて先日の5代続くガルパリ製粉所の記事の続きです。

小麦粉は白くない?!

小麦粉の色は?と聞いたら白に決まっているよ。と言いたくなりますが実はあの白い粉は精製過程で表皮と胚芽を取り除いたものなのです。

製粉過程でまず、ゴミや不純物を取り除き、小さく粉砕したあとににふるいにかけられ、比重ごとに分けて行きます。



選別機を通る小麦

通常大きな工場では何百キロと言う小麦を数分で挽くそうで、粉砕時にかなりの熱を持つそうです。その後16ほどの工程を経て選別ふるい分けをされます。

小麦のビタミンミネラル分は精製過程で表皮と胚芽が取り除かれるだけでなく、製粉工程の熱により、残っていた微量のビタミン、ミネラルもほぼ消失してしまうそうです。



石臼で挽かれたばかりの小麦の色はベージュで、ほんのり温かく、とてもいい匂いがする

石臼で挽かれた小麦は37度ほんのり暖かくとてもいい匂い、舐めてみると甘い!色も黄色みがかった薄いベージュ。1時間に挽ける小麦の量は最大500kgとのことでした。


 

小麦粉の添加物、保存料不使用は当たり前のことではない?!

スーパーの棚に陳列されている小麦粉の原材料を見ても保存料の記載は見当たらず、わざわざ製粉所の謳い文句にする必要があるのか?と聞いてみました。

EUの規定では小麦粉にグルテン、酵素を添加することは、元々小麦に含まれる成分ゆえ、食品表示に記載しなくても良いと言う規定があるのだとか。

調べると、日本でも加工時に用いられ、食べる際にはもう効果を持たない添加物は「加工助剤」と呼ばれ、パッケージに原材料として表示する必要がないと言う添加物に入っているようです。したがって、消費者が小麦粉のパッケージを見ても、グルテン、酵素の使用の有無はわかりません。


一体何故、グルテンや酵素を添加させる必要があるのでしょう?

小麦は農産物ですから、毎年出来が違います。そのため、できる小麦粉も質が違ってくる。昔はパン屋さんを始め、消費者はそういった、新粉の癖を毎年調整して使っていたそうです。でも今はクレームが来る。一定の膨らみ具合。少ない粉でふわふわの柔らかなパンを短時間で作りたい。そこでグルテンと酵素の登場。どちらも短時間で膨らみをよくする働きがあり、科学的に抽出したものを添加することで解消されてしまうわけです。

このグルテンの添加、近年イタリアを始め欧米諸国で激増している小麦アレルギーに一役買っていることは間違いない。ちょっと怖い話です。

こちらのフェルナンダさんはお姉さんと共に、ひどい化学物質アレルギーがあり、自分たちが食べられないものは作らない、作ってはいけないと確信し、お祖父さん達の製粉技術を継承し、すべての製品に一際添加物、保存料を使用しないと言う方針に決めたそうです。



選別機の調整をする息子さん

ある程度一定品質の小麦粉を作るために、毎年45種類の性質や成分の異なる小麦をブレンドして調整し、挽いているとの事でした。


エミリアロマーニャ州の軟質小麦粉

エミリアロマーニャ州のパスタと言えば、タリアテッレに、トルテッリーニ、ラザニア、など。これは軟質小麦粉のなせる技。卵をつなぎに使い薄ーく薄く伸ばして卵色のパスタを打ちます。ツルッとした食感。同じ軟質小麦でパンも郷土菓子も作られてきました。

南イタリアのセモリナ粉と呼ばれる小麦粉は硬質小麦から作られ、全く手触りも食感も異なります。砂のような粒子状。粒の大きさにより名前が変わります。大変給水率が高いことから、モチモチとした歯触りの色々な形のパスタを作り出すことができます。もちろんパンにもお菓子にも使います。

どちらも美味しいし、適材適所によって使い分ける必要がある。軟質小麦は灰分の量によって名前が異なります。

スペルト小麦や色々な古代小麦もいい。かと言って、現代の小麦が悪いわけではなく、製粉の工程で良し悪しが変わるのだとフェルナンダさん。

石臼で挽いた粉はパンを作る時、倍以上の発酵時間がかかりますが香りが高くて、噛めば噛むほど味があり、砂糖を入れなくても優しい甘み。なによりも腹持ちが良いそうです。時間をとるのか、便宜性をとるのか?

何千年も前、人類が粉を弾き始めた頃と変わらない石臼に、現代のコンピュータ制御新旧の融合された機械に、5代続く製粉場の揺るぎない誇りと良いものを作りたいと言う決意を見せていただきました。



Akane in balsamicland の動画より ガスパリ製粉所4代目のフェルナンダさん

取材をさせていただいたガスパリ製粉所の動画(You Tobe チャンネル Akane in balsamicland ) を撮ってきましたので、ぜひ合わせてご覧ください。

ガスパリ製粉所

MOLINO GASPARI SRL

定休日 日曜日

住所 : VIA MUZZA 2095

41017 RAVARINO FRAZ.STUFFIONE MO

サイトはこちらからhttps://www.molinogaspari.it/

 

私たち夫婦が作っているバルサミコ酢を14年目にして、初めて日本に売り出すことにいたしました。伊勢丹 新宿店 da Roma店頭での販売とオンラインショップでの販売がございます。ぜひ覗いてみてください。https://daromashop.thebase.in/

バルサミコ酢造りのサイトはこちらから

伝統的製法で作る魅惑のバルサミコ酢の世界をご紹介します。

 

 

 

5代続く製粉所の誇り ガスパリ製粉所 前半

イタリア好きの皆さん大変ご無沙汰しております。

日を追うごとに本格的な春が近づいてきているモデナです。

2月中旬から我が家の葡萄畑も剪定作業が始まり、人間は行動が制限されても、自然はどんどん動いています。

 なんだか、外に出かけるのも憚られるご時世。出かけるのは子供達の学校の送り迎えと、日々の買い物か近所の散歩ですが、広大な畑に囲まれた田舎家ですから庭仕事に、葡萄仕事、バルサミコ酢の醸造と養蜂箱の手入れなどなどやることは山ほど。

特に春の始まりは忙しい。

買い物は地元の生産者さんのところへ直接買い物に行くこともしばしば。特に主食のパンや、パスタは手作りする事が多いので、いつもの製粉場に粉を買いに行くと、真新しい大きな石臼が稼働しているではないですか!



コンピュータ管理システムが入った大きな大きな石臼

お話を聞きたいとお願いをしたら、日曜日の朝いらっしゃいと奥様フェルディナンダさん。お言葉に甘えてお邪魔することにしました。

エミリア・ロマーニャ州はイタリアの中でも小麦の大生産。



6月になると小麦畑が黄金色になる

なんといってもパダーナ平原と言う日本で言えば関東平野のような大きな平原と、イタリア最大のポー川のおかげで、イタリアのみならず、ヨーロッパの中でも有数の農産地域です。私が住むモデナも例外ではありません。

モデナ住むようになり、数年過ぎた頃(かれこれ10年前)家の前の小麦畑を見ながら、製粉場で挽きたての粉買えないかな?と思ったのが、今回ご紹介するMorino Gaspari ガスパリ製粉場との出会いでした。

販売所の扉を開けてびっくり、日曜日の朝9時というのに、製粉所のメンバーが勢揃い。奥様フェルナンダさんが販売を切り盛りし、旦那さんや2人の息子さんたちが製粉部門を担当する5代続く家族経営の製粉所。


ガスパリ製粉所 Molino GASPARI

こちらは奥さんが販売を切り盛りし、旦那さんや2人の息子さんたちが製粉部門を担当しています。

5代続く家族経営の製粉場。地元モデナ、ボローニャ、フェララーの3県から採れる小麦を挽いています。添加物、保存料を一切使用しないというのがこちらのポリシー。



近隣3県から採れる小麦を、自社でブレンドし、バランスの取れた小麦粉を作る

挽きたてを販売しています。

 2019年より耐震工事を始めるにあたり、大きな大きな石臼を導入し、販売所を新設。先日リニューアルオープンをされたそうです。この石臼、とても大きなもので、従来の石臼と比べ、小麦との接触面積が広いため挽いている間に小麦がの温度が上がりにくいという利点があります。コンピュータ管理システムが入っている世界初!の巨大石臼だとか!

コロナ禍で

コロナ禍ではスーパーマーケットの小麦粉の棚が空っぽにというニュースが流れたのを記憶していらっしゃる方も多いと思います。



去年のロックダウンが始まってすぐのスーパーの小麦粉の棚

大元の製粉場はさぞかし儲かったのでは?と思ってしまいますが、現実はそうではありませんでした。

なぜなら、ガスパリ製粉所のような家族経営の小さなところは、ほとんどの顧客はパン屋、ピザ屋、レストラン、小売店などに卸していることがほとんどで、スーパーで扱っている大手製粉会社の小麦粉とは卸すルートが違うのだそうです。

ロックダウン中の飲食店の営業禁止や、観光客の断絶。年間1617万人の観光客が来る観光立国イタリアですから、売り上げに影響がないわけがない。



コロナ禍で小売部門を強化した

年間小売部門を強化したことで随分と助かったとのことですが、厳しい状況は続いています。

実際の製粉作業の様子は後半に続きます。

ガスパリ製粉所のサイトはこちらから

↓ ↓ ↓

https://www.molinogaspari.it/

 

【お知らせ】

私たち夫婦が作っているバルサミコ酢を14年目にして、初めて日本に売り出すことにいたしました。伊勢丹 新宿店 da Roma店頭での販売とオンラインショップでの販売がございます。ぜひ覗いてみてください。

取材をさせていただいたガルパリ製粉所の動画を作りましたので、ぜひ合わせてご覧ください。

私たち夫婦が作っているバルサミコ酢を14年目にして、初めて日本に売り出すことにいたしました。伊勢丹 新宿店に入っているda Roma店頭にて販売しています。オンラインショップでの扱いもございますのでご利用ください。

私たち夫婦が作るバルサミコ酢造りのサイトはこちらから

伝統的な製法で作られる、魅惑のバルサミコ酢の世界

https://miamodena.it/

 

マラテスタの要塞とリミニの海

残暑お見舞い申し上げます。

イタリア好きの皆さんいかがお過ごしですか?

夏のイタリアは遊ぶ季節!長い短いに関わらず、イタリア人は真剣に遊ぶそんな夏の話を紹介したいと思います。

夏の日のある土曜日、日帰りで、エミリアロマーニャ州はリミニに実家がある友達を訪ねに来ました。リミニはアドリア海に面しており、遠浅の海、何キロメートルにもわたる砂浜に延々と色とりどりのビーチパラソルが並んでいます。

 各海の家によってビーチパラソルの色やデザインが違い海の家の作りもテーマが違います。

大体バールが併設されていて、朝から晩まで海に入るというより、快適なビーチシートに横になりゆっくり過ごすのですが、一般的。

コロナ渦ではこのビーチシートも予約制にと言うニュースが流れているイタリア。

前日友人に連絡をとると、

「予約制でも特に週末は海沿いはびっくりするような人出だから、人が少ない丘の上の街に昼を食べに行って、午後遅くに海に行こう。」と言うことになりました。

訪れたのは、中世以前からリミニをはじめこの地域を広く治めた要塞のある街ヴェルッキオ(Vercchio)。ちょうどサンマリノ(写真)の向かいの丘で、360度周りが一望できる丘の上にある街です。

マラテスタの要塞(Rocca Malatestiana)

受付に行くと、アクリルパネルが設置されて、受付の方もマスク。見学時、同じ部屋に違うグループがいたら、退出してから入室する様にと注意を受け、アルコール消毒をしてからいざ中へ。

お城のイメージで中へ入ると、拍子抜けするほど質素な作り。

王様の執務室と寝室ですら、これと言った調度品もなく、木製ベッド、顔を洗う桶が狭いスペースに簡単な間仕切りをして置かれているくらい。

それもそのはず、眺望が効く立地を最新鋭の兵器を有していた活かした戦いのための要塞で、城壁内には兵士が長く籠城できるような設備も備えた難攻不落の要塞だったそうです。

もちろん地下には拷問室など、限られたスペースに機能性を考えて作られているのが伺えます。

急で細い階段を上がりきった最上階の見晴台からは、

周りの丘陵にはオリーブの木、葡萄の木、小麦栽培などがみてとれ、その下の平地には太陽パネルが設置された工業地帯が海沿いまで続く、まさにエミリア ロマーニャ州の経済を支えている産業を象徴するような景色が広がっていました。

兵士の士気を高めたであろうテラスの横には、大窯で煮炊きをしたであろう台所も。


支配者が代わると同時に攻撃機能も弱体化され、要塞としての機能を果たさなくなったようですが、戦う城を見たい方にはお勧めのスポットです。

街をぐるっと歩いてから、友人のご両親が若い頃からあると言うピアディーネリーアへ車で移動。バール イルデBar Ilde

ピアディーネリーアとはピアディーナを専門店のこと。

ピアディーナとは、小麦粉、ラードもしくはオリーブオイル、塩、水、重曹で作った円形の薄い生地を鉄板で焼いたトルティーヤのような食べ物で、中にハム、チーズなど色々なものを挟んで食べるロマーニャ地方のソウルフードとも言える食べ物です。方言では「ピアーダ」とも呼ばれています。

生ハム、squacqueroneスクワックエローネ、生ソーセージのグリル、ポルケッタ(豚のローストの一種)、野菜のグリル、サラダなどなど色々なコンビネーションを選ぶことができます。

夏野菜のパン粉焼きを副菜に頼んで、思い思いの具材が挟まったパリパリ熱々のピアディーナを食べ始めると、お喋りなイタリア人もしばし食べることに没頭。

夏の暑い日はワインよりビールが進みます。

もちろんこちらも、店内で飲食する場合は要予約。体温を計測されて、アルコール消毒して、マスクは案内された席まで着用が義務付けられていました。

夕方16時ごろ浜辺に行ってみると、

散歩をしている人たち、カードゲームに興じている熟年夫婦のグループ、ビーチバレーやビーチサッカーを楽しむ若者、思い思いに楽しむ人たちの姿が。海の家で働く若者の腕に、使い捨てのマスクが腕輪のようにハマっていること以外は、いつもと変わらない夏の姿。

友達と夕暮れの海でアペリティーボを楽しみながら、こんな普通のことが、幸せなんだよなと飛んでいくカモメを眺めながらしみじみ感じたのでした。


今回ご紹介した場所のリンク

マラテスタの要塞https://castelliemiliaromagna.it/it/s/verucchio/6056-rocca_malatestiana

ピアディーネリーア Bar Ilde

https://www.barilde.it/

 

エミリアロマーニャ州をYouToube動画でご紹介しています。醸造しているバルサミコ酢のこと、養蜂のこと、お料理のことなどなどモデナでのスローどころか、サバイバルライフの様子を紹介してますので、是非覗いてみてくださいませ。

YouTobe チャンネル Akane in balsamicland

https://www.youtube.com/channel/UCaL8SHTuzQLOpX-woBWxTtg

モデナ人とノチーノ


本格的な暑さが始まったイタリア。

皆さんいかがお過ごしですか?

624日はサンジョバンニ(洗礼者ヨハネ)の聖人の日です。毎年モデナのスピランベルト市の守護聖人であるため、例年であれば、前後の週末にスピランベルトでは市を挙げてお祭りがあり、バルサミコ酢の品評会が行われるのですが、今年は残念ながら中止。来年に期待がかかります。

さてこのサンジョバンニの日を境に仕込む、青いクルミを使ったリキュールの話をしたいと思います。

ノチーノくるみ酒という意味で、

サンジョバンニバッティスタ(洗礼者ヨハネ)の聖人の日624日からサン・ピエトロ(聖ペテロ)の日629日の間に収穫する、青いくるみはまだ包丁で切れる位の柔らさのものを使います。

あの硬いくるみを想像すると青い実部分を使うのかと驚かれる方もいるかもしれませんがとてもいい香りなのです。

モデナの郷土料理レストランに行くと必ずと言っていいほど、食後にノチーノはいかがですか自家製のものがありますよ。と勧めてくださいます。グラッパやリモンチェッロなんかもお盆に乗ってくることはありますが、モデナに来たらやっぱりノチーノを選ぶのがツウではないでしょうか?

地元の人ならば、飲んだ後あーやっぱり家のノチーノ方がおいしいなぁなんて一言。そこですかさずレシピを聞いて回って集まったレシピまあこんなにバリエーションがあるのかとびっくり。

私の個人調査結果では、

1Lのアルコールに対して7個から35個のくるみの開きがあり、入れるスパイスもまあ色々。何も入れないという人、シナモンとクローブが王道ですが、レモン、オレンジの皮を入れる人、はたまたコーヒー豆、リクイリツイア(甘草)を入れるなどなど

切り方も半分、1/4に切る、半量は半分残りの半分は1/4にして混ぜるはたまた丸のままなど

アルコールとくるみスパイスを漬け込む、すぐに砂糖も投入する、砂糖は後から入れる、冷暗所に保管、ガラス瓶を夏の太陽に当てるまあいろんなレシピが出てくる出てくる。

寝かせる期間も半年から数年。人によっては木樽で寝かせる。樽の木の種類もバルサミコ酢の樽のお膝元だけに、くるみか、西洋オーク、はたまた他の材質かそこまで考えるとレシピは無限です。

バルサミコ酢の鑑定仲間の中にはモデナノチーノ協会の人もおり、ずいぶんとお誘い頂いたのですが、会場から車で帰れなくなること必須なので、丁重にお断りしております。

写真はモデナ ノチーノ協会のHPより(過去の写真です。)
興味半分聞いてみると、

「ノチーノ鑑定会は楽しいよお。大体3番目のサンプルくらいからみんなすごーく陽気になるからさあ。バルサミコ酢みたいに真面目な顔でやれないよワッハッハー」


スピランベルト市長も参加(モデナノチーノ協会 HPより)

楽しそうです。さすがアルコール度数30-40度。

少量では消化を助け、健胃作用があると言われていますが、地元のお爺さんが「ノチーノはどんな病気よりもモデナ人を殺したという格言があるくらいだから」と教えてくれました。確かに口当たりが良くて女性も好みなお味。ついつい飲み過ぎてしまう危険なリキュール。イタリア全土で作られているようですが、モデナの人に他の地域でも作られていますよね。と口を滑らそうものなら、モデナのものが一番に決まっているさ!と説教されること間違いなし。それだけモデナ人が愛してやまないリキュールです。

我が家でもクルミの数を変え、作り方を変え試しに試し出来上がった、我が家のレシピをYouTobe動画にてご紹介します。

YouTobe 動画 Akane in balsamicland

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https://www.youtube.com/channel/UCaL8SHTuzQLOpX-woBWxTtg?view_as=subscriber

皆さんも青いくるみが手に入ったら作ってみては?

そして、お好みのものができたら、うちのものは最高だよ。と食後にお客さんに勧めてみて下さい。

春の養蜂作業

イタリア好きの皆さんこんにちは!

数ヶ月前まで世界がこのような状態になるとは想像もできず、ウェブページもなんだか書くことができずにおりました。

人間が戸惑う中、季節が進みイタリアは春真っ盛り。たくさんの花が咲き、そんな自然の不偏さが嬉しい今日この頃。そんな自然の恩恵を感じる養蜂の春の作業をご紹介します。

以前にも養蜂について記事を書きましたが、

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https://italiazuki.com/2019/09/17/%e9%a4%8a%e8%9c%82%e3%81%a8%e3%81%b6%e3%81%a9%e3%81%86%e3%81%a8%e8%9c%82%e8%9c%9c%e3%81%a8/

現在我が家には現在西洋ミツバチの巣箱が8箱あり、無事冬を越すことができました。


 

ミツバチにとって冬はとても過酷です。越冬の条件は春までのミツバチの貯蔵があること、女王蜂が若くて健康であること、そして群の蜂が健康で病気を持っていない事が大事です。冬の間女王蜂を囲んで働き蜂たちは羽を動かして暖をとっており、どんなに気温が下がっても巣箱の中は37度に保たれています。なので冬の間、巣箱の温度が下がってしまうのを防ぐため、無闇に開ける事はできません。3月気温が高くなってきた頃巣箱の検査を始めます。

今年は320日から内見を始めました。

まず注意しなくてはいけない事は,女王蜂や働き蜂の健康状態。卵を産み始めていて、群の数が順調に増えていっているか。ダニなどの寄生虫がないだろうか。病気にはなっていないか。蜂蜜と花粉のある巣板は何枚あるか、分峰の兆候である王椀や王台があるかどうかそういったことをチェックしていきます。暖かくなるとたくさんの花が咲くのでいろいろな蜜を集めてきてくれます

我が家の採蜜は年に一度だけなので、特定した花の蜜は採取せず、日本で言う百花蜜になります。イタリア語ではミッレフィオーリと言って、千の花の蜜と言う意味の名前がついています。

どんな花の蜜を集めているのでしょう?

 

私が春先から今まで確認しただけでも、オオイヌノフグリ、タンポポ、桃、梅、プラム、桜、りんご、ラベンダー、キンポウゲ、プリモナリア、ヒイラギメギ、ローズマリー、ラベンダーと忙しく飛び回っているのが見えました。

夏までどんどん花が咲きますので、本当にたくさんの花の蜜が集積されることになります。

養蜂はやりたいと思えば、誰でも始められますが、条件があります。

ー工場の排煙やや農薬で汚染された場所でないこと

ー巣箱近くを人が通らないこと 巣箱の前6mは攻撃位置になるので絶対に前を横切ってはいけません。もちろん囲いも必要です。

ー朝日が必ず巣箱の前に当たる場所で、比較的日当たりが良い場所

であること 

ー水場が近くにあること 水がなくては蜂は死んでしまいます。

この条件をクリアして、養蜂を始めたら、イタリアでは必ず市町村に届けることが義務付けられており、世話ができなくなった場合など放置することは許されておらず、巣箱を焼却処分することが義務付けられています。そのほかにも、蜂の疫病、寄生虫





発生した場合など報告の義務があります。

春から夏にかけては巣箱を毎週一回から10日ごとにチェックして記録をつけていきます。

昆虫や虫は好きではない、刺されないのか?怖い。と言ったイメージが一般的ではないでしょうか?

ではどのように蜂と接するべきでしょうか?

-大きな音を立てたり巣を揺すったり脅かさない。敵が襲撃しに来たと思われる。

-蜂をむやみに手で払って潰したりしない 潰すとその香りで他の蜂が攻撃態勢に入る

-パニックにならない。アドレナリンが出るので、それを察して大群で攻撃されるので、心穏やかにいることが大事です。

ー走って逃げない 走ると追いかけてきます。もし、蜂が攻撃態勢に入り大群で押し寄せてきても、走って逃げたりせず、巣箱を閉じて、ゆっくりとその場を歩いて離れる必要があります。

:これは養蜂家の心得ですが、ハイキングなど中など間違えて巣に近づいてしまった場合などにも応用できるのではないかと思います。

しっかりお世話をしてあげれば、一箱の養蜂箱から30kg以上の蜜が採れるのです。

採れた蜜の味はイタリアの太陽の味。

古代ローマ時代のはるか昔から天然甘味料として珍重され、神々へのの捧げものでもあり時には通貨の役割も果たしたと言われています。

糖や微量のビタミン、ミネラルを含む蜂蜜はミツバチが集めてくれる花蜜の種類によって蜂蜜の色、粘度、香り、風味は様々。同じ百花蜜でも毎年気候条件が違うので、当然毎年味が違います。

当然、我が家では使い切れないので、今年は売上金を今新型コロナウイルスの終息に全力で取り組んでいるイタリアの赤十字に寄付したいなと考えているところです。 

こんな時期だから、イタリアの良いところを見直そう!世界にアピールしようと頑張っている方がたくさんいます。

私も微力ながらバルサミコ酢の醸造室の様子や、モデナの郷土料理のビデオを作りました。もちろん、今回の養蜂の様子も動画にしましたのでよろしかったら覗いてみてください。


動画リンクはこちらから

↓   ↓   ↓

https://www.youtube.com/channel/UCaL8SHTuzQLOpX-woBWxTtg

質問やコメントなど動画にコメントを頂けたら嬉しいです。

終息したらイタリアで皆さんにお会いできる事を願って!

ファエンツアの陶器産業を覗き見る

エミリア ロマーニャ州、エミリア街道沿いにあるラベンナ県ファエンツア市。中世以来陶器の街として栄え、イタリア最大の国際陶磁器博物館(イタリア:Museo Internazionale delle Ceramiche Faenza MIC)は、世界で最も重要な陶器博物館の1つで、町の中にも沢山の工房があり、そぞろ歩きも楽しい街です。


今回はそんなファエンツアの街中ではなく、陶器産業を支える郊外の工業地帯にお邪魔しました。

ボローニャ方面からファエンツア方面に車を走らせると高速道路の脇には大手の陶器の製造工場、ストック、運送会社など大きな建物からどんどん大きなトラックが出入りしているのがみえます。

バルサミコ酢の入れ物を作りたくて相談していたのが、イタリア好き通信でもお馴染みマルケ州に住む陶芸家の林由紀子さん。一つ一つ手作りで、ろくろ氏さんにひいてもらったタラーニョに色味は見てもらった方がいいからとまずは釉薬や顔料を選ぶところから。

容器は、食品を入れるもので、お酢だけに酸度があるため、鉛の入った顔料はもちろん使うことができない。マヨリカ焼きの焼成温度は日本の陶器よりも低く、1000度以上で溶ける顔料は使えないなど。ちなみに日本の土でマヨリカ焼きを作るとか、その反対にイタリアの土で日本の陶器を作ろうとしてもできないんだそうです。

全く知らない分野だけに、あり得ない質問をどんどんしてしまう私。

この透明感素敵!これはガラスの粉を置いて焼いた物だから平たいものでないと無理よ。

こんな感じでボカした感じうーんこの釉薬では無理。

このガサガサした感じをツルツルにかけるのは?それは全部ツルツルになっちゃうよ。

などなど根気よく頓珍漢な質問に答えてくれる林さん。

顔料はKg単位で売ってくれて、水で溶かして一晩置いてからの方が気泡が入ってしまったりしないとか、ピカッとして色の発色が良いものはほとんど鉛などの重金属が入っているらしい、陶器と磁器の釉薬は違うとか絵付けなのか、シールみたいなものを貼って作る場合もあるとか、素地の色が赤か白かによって出る色が違うなどなど奥が深い。狭い店内で、たくさんある色見本から焼成後に出る色を想像して色選びできるというのは、職人技だと感心しながら、次は素焼の陶器選びへ。

どう見ても倉庫にしか見えない、看板も出ていない鉄の重い扉を開けると、薄暗い埃っぽい室内に所狭しと大きさ違いのお皿、カップに小鉢、クリスマスオーナメント、壺、水差しが迷路のように鉄のラックが組まれ置いてある間にいくつもの焼成窯がいくつも奥に入っていくとオーナーらしきおじいさんが、黙々と作業をしていました。

こちらではシリコンなどの型を使い型取りをした陶器を焼いて売っているのだそう。陶芸というと、土をこねて形を作るところから絵付けをして完成するまでをいうのかと思い込んでいたのですが、イタリアでは一般的に使われる食器は、素焼き師、ろくろ師という職業の人がいて、絵付け師がいてと分業するそうなのです。おそらく、西洋の食器は大きさが決まっているからできることなのかもしれません。もちろんアート性が高いものは、一から土をこねて作るそうです。

絵付けしてもらいたいお皿や小鉢がいっぱい。蓋物も欲しい!それではろくろ師の方がいいからと2軒目。

こちらのろくろ師さんは今年60才。現在でも一番年少者だそうで、後継者不足が深刻なんだそうです。 2人のお子さんは別の道を選び、それでもしょうがないよ、自分で事業を起こさなかったら、ここまでやって来たかどうかわからないしなぁ。後は俺たちが居なくなったら、誰かが必要に駆られてやるんじゃないのか?とそうは言っても8時から20時まで毎日働いていらっしゃるそう。やはり情熱がないと務まらないのでしょう。型抜きの素焼きのものと比べると、繊細なデザインの物も多く技量の高さが伺えます。

作って頂いたタラーニョもあまりに容量が100mlと小さいため受けてくれるろくろ師が居らず、こちらにお願いをした経緯がありました。林さんに絵付けをしてもらい専用の木箱を作って日本に送った写真を見せると、本当に嬉しそうにしていらっしゃったのが印象的でした。

タラーニョにつける釉薬を選びに行くのがメインだったのですが、衝動買い的に買ってしまった素焼き。絵付けをお願いするには、まず自分のつけて欲しい柄を考えて、林さんの時間の余裕のある時に絵付け頂くという長期プロジェクト。お皿に乗せるお料理を想像して、付けて欲しい柄を考えるという贅沢な時間を過ごせるなと、まだ見ぬ特別なお皿を想像してはにんまり。

e13年目のバルサミコ酢デビューに林さん作の限定20個のタラーニョを我が家の醸造室を見にきて頂いた方だけに販売いたします。初お披露目は54日にいたしますので、お楽しみに。

13年物蔵出しバルサミコ酢お披露目会のお問い合わせはこちらから

https://www.facebook.com/events/176606216942784/

バルサミコ酢醸造室の見学試飲講習会、お食事会などは随時受け付けております。気軽にお問い合わせ下さい。

https://www.facebook.com/balsamicland/