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唐辛子じゃないよ、ペペローニだよ

8月に入ったころから州のあちこちで収穫が始まるのがペペローニ(単数形でペペローネ)。
パプリカよりもピーマンや万願寺唐辛子に近い夏野菜で、大雑把にピーマンに近い甘口・唐辛子に近い辛口の2種類があります。


夏になると大量に採れるので、タコ糸などで茎の部分を繋ぎ乾燥させます。
もちろん手作業ですが、子供も手伝える楽しい作業。
黙々と1人で作業するのが好きな人もいますが、我が家はみんなで作業します。


品種は村ごとに異なる、と言われるほどバリエーションに富んでいて、コロンとした形の物を作る地域もあります。

呼び名も村ごとに異なります。そして実は味も微妙に異なるので「ウチのが一番おいしい」の代表的な食べ物ですね(笑

地味なところで違いを張り合うのが結構好きなんです、カラブリア(笑


緑色の頃に乾燥作業を始める地域もあれば、赤くなったものを乾燥させる地域もありますが、乾燥後は洗わずに使うので空気が綺麗な場所で作るのが一般的です。

私もコセンツァ市の家では作らず、州北部山村部の家で作るようにしています。

作り方も色々で、天日干しの地域もあれば、影干しの地域もあります。
日光が強烈すぎる州の中部以南は影干しが多い印象。

私が作る山間部の家の近くには川があって、夏でもそれなりに朝露が出るので夜間は室内に取り込み、日中は天日干しします。


カピカピに乾燥したら出来上がり。
地域にもよりますが、1か月くらいかかります。

出来上がりは納屋や屋根裏部屋に吊るして保存し、使う分だけ紐から外して利用します。

石臼で挽いて粗挽きにしたものを調味料として使ったり、ミキサーにかけて粉にしたものを冬に行う豚肉加工に使いますが・・・
私が最も好きなのは、素揚げ。
乾燥したペペローニを素揚げした後、香りが移った油で目玉焼きを作ると最高に美味。パンを添えても良いですね。

さらに、郷土料理でバカラ(塩鱈)を調理する際には、必ず乾燥ペペローニを素揚げした油を使います。
自家製のオリーブオイルと「ウチの」乾燥ペペローニから得られる風味豊かな油で揚げた塩鱈。クリスマス時期のお料理です。

とにかくコレが無いと始まらない郷土の味。
今年は州内どこも豊作で、真っ赤なペペローニがにぎやかに軒先を飾るお宅を多く見かけます。

乾燥作業が終わりそうになると、見た目もカピカピな感じになってくるペペローニ。
乾燥ペペローニ作りが終わると、カラブリア州はいよいよ本格的な秋の訪れです。(ポルチーニの季節♡)

カラブリア州のワイナリーVol.4  頑固おやじ達の風変わりなワイナリー・スピリティエッブリ(Spiriti Ebbri)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第四弾は、コセンツァ市郊外の相当風変わりなワイナリー、スピリティエッブリです。


カラブリア州北部コセンツァ県の、シラ国立公園の入り口辺りにワイン醸造所があって、ブドウの生産は醸造所近辺と州最北のポッリーノ国立公園付近で行っています。


ワインが好きな3人が集まって、自分たちの好きなワインを作り始めたのがそもそもの始まり。
開業当初から独特のポリシーを持っていて、まぁ風変わりなワイナリーだと地元ソムリエの間では有名です(笑

独自ポリシーその1:健康なブドウからならワインは作れるので、醸造家はいらない。

現地でも賛否両論ありますが、毎年それなりの味に揃えてきます。特に近年はロゼを高く評価するソムリエが増えてきていて、生産本数も少ないので毎年奪い合いの状況(笑

ちなみに、年間1万本ちょっと生産しています。


独自ポリシーその2:単一品種で作らない。

そもそも「この地域の昔ながらのワイン」を作りたいスピリティエッビ。ブドウの品種にさほど注意していなかった40年ほど前、つまり彼らが子供頃に舐めさせてもらったワインの味を目指しています。

当時、シラ国立公園の入り口付近の農家さんは、良く育つブドウの苗をとりあえず植えて自家用にワインを作っていました。
なので、彼らのワインも土着品種にこだわるものの、単一品種で作ろうとは思わないんだそうです。
そして、裏ラベルに大きく「カラブリア」の文字。

これだけ大きくカラブリアの字を入れているラベルを私は知りません。それだけ地元が好きでカラブリア産ワインと言ったら本来こういう物だった!という、彼らなりの強いアピールなんだそう。


頑固おやじ3人組のうちの1人、ピエルパオロさん。ご専門のせいでもあるけれど、非常に化学的なアプローチをされる方です。
そしてワインが好き(笑

独自ポリシーその3:地元農家に還元したい

頑固おやじ3人組は、それぞれの分野でそれなりに成功した人たちで、地元で頑張っている農家さん達のブドウを適正価格で買い付けることで、地元を応援したいという考えも持っています。
そのため、コセンツァ市から少し遠い州の北限、ポッリーノ国立公園界隈からもブドウを買い付けています。

本年はコロナ禍で大変だろうと、自社畑からのブドウもあるのに買い付け量を増やし、農家さんを支援する予定だそうです。


映画館を改装したワイナリーで、小さいながらも雰囲気があります。
近年はあちこちから評価も受けていますが、彼らは「自分の親や祖父母たちが飲んでいたであろう地ワインの味」の探求を今後も続ける予定。

流行を全く気にしない、地元愛溢れる風変わりなワイナリーです。

 

Spiriti Ebbri(

Via Roma 87053  Celico (Cs)
それぞれ別のお仕事をされているので、訪問は数週間~数日前までに要予約。

カラブリア州のワイナリーVol.3 「自分たちが飲みたいワイン」を作りたい。テヌータデルトラヴァーレ(Tenuta del Travale)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第三弾は、コセンツァ市郊外のコダワリが強いワイナリー・テヌータデルトラヴァーレです。

 


カラブリア州北部・コセンツァ県のコセンツァ市郊外、シラ国立公園の入り口あたりに位置し、所有する畑は2ha。
家族経営の小さなワイナリーで、地元のワイン好きの間では「とにかく素晴らしい赤を生産しコダワリも凄い」と有名です。


奥様のラファエッラ(Raffaella Ciardullo)さんにご案内いただきましょう。
ワイナリーで生産しているのは2種類のワインのみ。
どちらも赤で、年間最大1万本しか作れません。

なお、天候不順だった2018年は500本のみ生産とのこと。
え? 500本・・??

コダワリその1:ブドウの樹1本からは1㎏だけ


作っているワインは赤のみ。
ブドウも2種類しか作っていません。

・Nerello Mascalese
・Nerello Cappuccino

Nerelloはシチリア産。。と思われる方もいるかもしれませんが、実はカラブリア産。しかもカラブリア州北部のコセンツァ県が原産で、カラブリアからシチリアに渡った「黒いカラブリア」のブドウの1つと言われています。

耕作面積が小さい為、樹ごとに収穫時期を決定できるのが利点とか。
11月中旬に収穫と、霜害とにらめっこの遅めの収穫が可能なのも、この1本1本のブドウの樹へのお手入れからなんだそうです。

コダワリその2.BIOにこだわらない


基本的にはBIO以上の厳しい管理で作っていますが、気象条件次第では薬剤の限定的な使用もやぶさかではない、とラファエッラさんは断言されます。

BIOマークを得ることで発生する様々制限が、逆に製品の質を落としてしまう可能性を考慮すると、あえてBIOマークを得ないで「必要な際は薬剤を使います」と正直に言いたい、というポリシーだそうです。

畑・ブドウ・生産方法にかけた愛情をワインを通じて感じて貰えればうれしい、と。

コダワリその3.「売れるワイン」は作らない


祖父の代からワイン作りをしていたけれど、販売用に作ろうと思ったのは2007年。初めて製品を出したのは2014年と、学びの時間を長くかけたワイナリーです。

そして、彼らのモットーは「自分たちが飲みたい、エレガントなワインを作りたい」。

このため、量は少なく・質は高くのポリシーを貫いて生産しています。「売れなかったら自分たちが飲めばいいんだし。」と笑顔のラファエッラさん。

いや、売らなきゃダメでしょ。。(笑

1stラインはステンレス製タンクで4か月熟成の後、ナラの樽(仏産)と栗の樽(伊産)で計18か月熟成させます。2ndラインは、樽熟成が15か月。
ワイン好きな方はここで「栗の樽!?」と思われるかと。(私もビックリしました)

カラブリア州のこの辺り、1500m級の高原域の入り口で栗の木はいっぱいあるんです。なので、伝統的に栗を木材として多用する地域です。
この辺りが原産のNerelloは、同じくこの辺りに多い栗の樽と相性が良いだろう。。と言う事で、栗材をシチリアの樽加工職人にお願いして樽にしてもらっているんだそうです。

で、この栗の樽が良い仕事するんですよ。。


ボトリングを待つ、2ndライン(1stより樽熟成が3か月短い)をステンレスタンクから直接試飲させていただきました。

あぁ。全然まだまだな余韻を残しつつもすでにエレガントすぎる・・


他にも色々コダワリがあるのですが、長くなるので割愛(笑

ブランドロゴの中央、ブドウの実をかじる犬の図案は、ラファエッラさん一族の紋章です。

ワインを作ろうと思った時、一族の紋章にこんな図案が使われていて運命だと思った、とラファエッラさん。

テヌータデルトラヴァーレの醸造家はあのエミリアーノ・ファルシーニ(Emilliano Falsini)。
Nerelloではイタリア随一の専門家をして「ここのNerelloで自分は初めてこのブドウのポテンシャルを感じた!」と言わしめたワインを生産できる土地でワイン作りをしているのは、まさしく運命なんじゃないかな。。と思います。


試飲でうれしくなっちゃってるワタクシの図w

生産開始後、すぐに各方面から高い評価を受けています。本年のVinitalyでは某特別展示に出展予定でしたが・・秋に延期となりました。Vinitalyご参加の方は、ぜひぜひ試飲されてみてください。

コダワリが過ぎているので(笑)価格帯は高めですが、Nerello好き・エレガントな赤をお探しの方、ぜひどうぞ。

Tenuta del Travale(
Loc. Travale 13, 87050 Rovito (Cs)
Googleだと絶対迷います。
ご案内しますので、お気軽にお声がけください♪

パンを寄付する人

カラブリア州の西岸域。
サンタドメニカタラオ村のクリスティーナさんは、年に2回パンをたくさん焼いて教会に寄付しています。

これは、息子のアンジェロ氏が幼少時に病に倒れ、もうどうすることもできなくなった際に願掛けをしたから。
そして、その願いがかなったから。
貧しくて医者も頼めず、薬も買えなかった。アンジェロの命を助けて頂けたら、パンを寄付しますとお祈りした。
とクリスティーナさんは言います。


その後アンジェロさんは無事に回復。
この年から、クリスティーナさんはもうすでに50年以上、パンをカゴにいっぱい焼いて教会に寄付しています。


この村の窯は、室内にあります。
薪を運ぶのも大変だし、窯を準備するのも大変で、高齢なクリスティーナさんは「今年で最後」「今回で最後」といいながら、それでも毎年パンを焼き続けています。
しかも、家族には手を出させないんですよね。

自分で焼かないと意味が無いんだとか。徹底してます。

病で大変だったアンジェロさんは、今では筋骨隆々とした農家さんでお孫さんもいるんですが・・クリスティーナさんにとって、あの日のお祈りは神聖な物。
自分の健康が許す限りパンを焼き、寄付を続けるんだそうです。


皮が硬く、日持ちがするカラブリア州のパン。
クリスティーナさんに言わせれば、白い小麦だけを使ってパンを焼けるなんて、なんという贅沢なんだろう!と。


ずっしり思いクリスティーナさんのパン。
今年も腰が痛い足が痛い言いながら焼かれていました。コロナ禍騒動もあり心配していましたが、お元気そうで何より。

 

今でこそ風光明媚な立地を生かした観光業もぼちぼち頑張っているサンタドメニカタラオ村ですが、アンジェロさんから伺う「貧しさ」は、想像を絶しています。
カラブリア州でも貧しいころの記憶を持っている人たちがすっかり少なくなってしまいました。
正しく記録し、伝えていく大切さを日々感じています。

カラブリア州のワイナリーVo.2 土着品種に魅せられて。カンティーネエリシウム(Cantine Elisium)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第二弾は、コセンツァ市郊外の新しいワイナリー・カンティーネエリシウムです。
第一弾のワイナリーはこちら(

カンティーナエリシウムはDOP・Terra di Cosenza(テッラディコセンツァ)に位置していて、場所はだいたいこの辺り。


コセンツァの裏山・シラ国立公園の入り口付近の空気が大変清涼な地域で、この地域が発祥と言われている土着品種を作っています。
作付面積4.5ヘクタール、年間生産数(最大で)12000本の小さな小さなワイナリーです。


 

土着品種愛が強すぎて、土地を購入→開墾→植樹→ワイン作りを初めてしまったアンドレアとマルコ兄弟。(写真はアンドレア)
「本当はアグリツーリズモ開業の予定だったんだけどワイン作りが楽しくてね・・」と農家仕事が楽しくて仕方がないアンドレア氏。もともとは経済関連の専門家です。


 

訪問した際は、ちょうどブドウの剪定作業が行われていました。

写真ですごい斜面に見えているこちらの畑、ブドウの前に立っているのが辛いぐらいの急斜面です。

この傾斜があるため、特別な水やりが必要なく、谷から吹き上げる風によってカビ病などの発生を防ぐことが出来ているんだとか。

この斜度の為、ブドウの収穫作業はとんでもなく大変。
私は秋に収穫のお手伝いに行くことになっていますが、一緒に収穫体験したい方はどうぞご遠慮なくお問い合わせください。
アンドレアと私が喜びますw


 

清潔に保たれたワイナリーでは、土着品種の

マリオッコ ドルチェ (Magliocco Dolce)
ペコレッロ(Pecorello)

の2種から作られるワインを作っています。
(この他メルローも作付けしていますが、作業を手伝ってくれる農家さんの自家消費用。ボトリングはしていません。)


 

ワインは3種類。白・ロゼ・赤を生産し、今年からリセルバもボトリングが始まる予定です。
全て単一品種のワインなので、白はペコレッロ100%、ロゼと赤はマリオッコ100%。

ブドウの収穫段階から温度・酸素濃度に気を使って作られている芳醇な香りのワインは、小さな新興ワイナリーにあるまじき完成度です(←褒めていますw


 

ペコレッロはそもそもDopコセンツァのサヴート川一帯が原産とされている土着品種。
このサヴートの源流域で作られる、正真正銘のペコレッロを作りたいと言うのがアンドレアの野望。
試飲させて貰った限りでは、もうかなり高いレベルで実現しているように思うんですが。。まだまだ高みを目指したいらしいです。

端的に言って、ココのペコレッロ(白のくせにアルコール度数14%)は試飲の価値があると思いますョ。


 

リセルバの実験もしていて、仏製の樽が並んでいました。今年からボトリングする予定とか。
さらに接ぎ木苗が一般的になっているブドウ栽培を実生苗で育てる実験をしていたり、数年先も楽しみなワイナリーです。


 

試飲スペース脇のパノラマテラスからの眺め。広大なコセンツァの平原が広がります。
写真の奥が西。夕日を眺めながらゆっくり乾杯したいなぁ。。

試飲スペースは小さなトラットリアの様でつい長居しがち。
私は訪問するたびに白・ロゼを中心に爆買いをしてしまう、お勧めワイナリーさんです。

 

Cantine Elisium di Fratelli Andrea e Marco Caputo/カンティーネエリシウム(
Contrada Serre, 8, 87100 Cosenza CS
※少し不便な場所ですが、グーグルさんにお任せで問題なく到着できます。コセンツァ市から車で20分くらい。

カラブリア州、電車でのアクセスが(少し)便利になります。

イタリア国内の旅行に欠かせない鉄道網。
イタリア好きの皆さんはご存知のように、国鉄・Trenitalia(トレニタリア)と赤い車体のItalo(イタロ)がイタリアの2大鉄道会社です。

カラブリア州内の鉄道はナポリ~シチリア線上の西海岸・ティレニア海側が主要路線で、主要駅となる特急相当の急行が停車する駅は北から
・パオラ(Paola)
・ラメッツィアテルメ(Lamezia Terme)
・ヴィッラサンジョバンニ(Villa San Giovanni)
・レッジョカラブリア(Reggio Calabria)
の4駅。

旅行者には空港が近いラメッツィアテルメ駅と、シチリアへの玄関であるヴィッラサンジョバンニ駅がお馴染みかもしれませんね。

電車好きの方の中には、トレニイタリアの特急が「フレッチャロッサ(Frecciarossa)」と呼ばれていることをご存知の方もいるかもしれません。
実はこのフレッチャロッサ。カラブリア州は未踏で、特急相当の急行電車・フレッチャアルジェントなどが運行しておりました。

ところが。最近になって民営Italoさんが「俺たちが特急でカラブリアまで到達するよ!」と言い出したところ、トレニイタリアも負けてられんとこの夏からレッジョカラブリアまでやってくることになりまして、地元ではお祭り騒ぎとなっております。


出典:Stretto web(

トレニイタリアは、トリノ~レッジョカラブリアを約11時間で結ぶ路線を発表しました。
11時間・・どんな修行ですかw

記事中にも記載がありますが、停車駅は
Torino Porta Susa, Milano Centrale, Milano Rogoredo, Reggio Emilia, Bologna Centrale, Firenze Santa Maria Novella, Roma Tiburtina, Roma Termini, Napoli Afragola, Napoli Centrale, Salerno.

カラブリア州内に入って、 Paola, Lamezia Terme, Rosarno, Villa San Giovanni e, Reggio Calabria.
と、大人の理由からロサルノ駅が停車駅に追加されました。


この発表の少し前、トレニイタリアは北の果て・ボルツァーノ~シバリ間の路線も整備していて、カラブリア州内の鉄道網はこんなカンジに。
シバリは巨大ビーチリゾートの建設も予定されている地域で、古代ギリシャ遺跡もたくさんある場所柄。
簡単に行けなかった場所への鉄道網がやっと整備されたことになります。


出典:Infopinione(

イタロさんも負けずと、新たな特急停車駅・スカレア(Scalea)を発表しました。
こちらは、7月2日から停車するとのこと。

スカレアは、カラブリア州ティレニア海北部の拠点となる街で、ポッリーノ国立公園のふもと。
海も綺麗で山も近く、お値段控えめのバカンスが出来る穴場ながら急行がたまーにしか止まらない駅で、特に外国人旅行客には利用し難い場所でした。

ここに! トリノ発のイタロがやって来る!!とあって、地元では「新幹線が来るぞ~‼」的なお祭り騒ぎになっております。

ちなみにスカレアは地図上の黄色印のところ。↓↓


コセンツァ脇の赤印がパオラ駅。距離にして約40㎞ほど離れていて、スカレア周辺の陸の孤島感が半端ないですね・・。

 

イタロさんが頑張ってくれたおかげでトレニイタリアも本気を出して、カラブリア州までの鉄道網がほんの少し便利になります。

まだイタリア旅行が難しい時期ではありますが、ゆったり旅ができる際には電車での旅程を練ってみても楽しいかも。その際は「ナポリ以南は遅延する。ひどい時は2時間ほど」を念頭に、ゆとりある旅程を作ってくださいね(笑

父の日のお菓子・ゼッポレ

コロナウイルス関連騒動で大変なイタリア。それでも季節は廻ります。
19日はサンジュゼッペ、イタリアでは父の日。
この日、私の知る限り、イタリア各地では「ゼッポレ」と呼ばれるお菓子が作られているはずでして。
父の日のゼッポレ、南伊では一般的なのですが・・北伊でも作るのかな?

ゼッポレ文化のある地域でも、実は地域ごとに形状が異なる「ゼッポレ」。カラブリア州内でも、数種類のゼッポレが存在します。
そして、それぞれが「ウチのゼッポレ」を誇りに思っているんですが、私が住むカラブリア州コセンツァ市ではシュー生地で作るゼッポレが「ゼッポレ」でございます。

作り方は非常にシンプル。
シュー生地を小さなドーナツ型に絞ります。小さければ小さい程可愛らしくて良し。食べやすいしね。

食いしん坊が多い我が家はそれでも少し大きめに作るので、このくらいの大きさで。
我が家は焼きますが、揚げるご家庭もあります。揚げゼッポレはもう少し小さく作ると良いですよ。
ただでさえカロリー爆弾気味なゼッポレですが、揚げゼッポレは最上級のカロリー爆弾になります。そして危険に美味です。
カロリーが気にならない猛者はお試しあれ。

カスタードクリームは中にたっぷりが我が家流。
上にもたっぷり乗せる家庭もありますが、せっかくの縞々模様が見れなくなるのは悲しいので。。中にとにかく詰め込みます。

上に乗せるのはこのくらい。
可愛らしくデコレーションするのが難しいんですよね。


シロップ漬けのアマレーナを乗せて出来上がりです。シロップも大切なので、忘れずにシュー生地に軽くしみこませておきます。
おひとついかがですか?

北伊を中心とする深刻な状況が日々報道され、外出が厳しく制限されているイタリアですが、それぞれが率先して「おこもり生活」をしています。
曜日さえ忘れがちなおこもり生活の中で、季節の行事をきちんとお祝いできる事に感謝して。

Andrà tutto bene.

 

カラブリア州のワイナリーVo.1 カラブリアでバルベーラ? 新進気鋭のロッカブレッティア(ROCCA BRETTIA)

カラブリア州のワイナリーをご紹介するシリーズ・第一弾は、コセンツァ市郊外の新しいワイナリー・ロッカブレッティア(ROCCA BRETTIA)です。


法務の専門家として働いていたローマから出戻ってワイン製造を始めちゃったのが、若き社長・アレッサンドロ。
自分の生まれ育った土地で、大自然を相手にしたワイン作りが楽しくて仕方がないエレガントな貴公子です。(すいません、主観が入りました)
※ちなみに、ワイン作りというか自分の畑についての話が始まると、情熱ほとばしってすごーく長いです。

ロッカブレッティアはDOP・Terra di Cosenza(テッラディコセンツァ)に位置していて、


地図上だとこんなカンジ。コセンツァ市から車で15分ほど、ラメッツィア空港からだと約1時間かかります。


「自分たちで畑の管理ができ、納得できる品質のワインを少量作りたい」というアレッサンドロのポリシーもあって、現在約4ヘクタールのブドウ畑しか持たない、小さな小さなワイナリーです。訪問時はちょうど選定が終わったところでした。
主なブドウ品種は以下の通り

アリアニコ (Aglianico)
マリオッコ (Magliocco)
グレコビアンコ (Greco Bianco)
バルベーラ (Barbera)
ピノ・ビアンコ (Pinot Bianco)
その他国際品種

※バルベーラは主にピエモンテ州など北部イタリアで生産されているブドウ品種。ピノ・ビアンコはフリウリやロンバルディアなどが主な生産地で、こちらも「北のブドウだな」といった品種です。


小規模に初めて、やっと3年目に突入。
小さいながらもブドウ生産・収穫・ワイン作り・ボトリングと、すべての作業を自社内で行える施設を備えています。
海抜約500mほどの急峻な崖に作られた段々畑。崖の下には夏でも枯れることの無い川があって、日暮れと共に川から上って来る冷たい空気で一気に一帯の気温が下がります。
温暖なイメージのカラブリア州ですが、ここでは一番寒い時期には雪が降ることもある、そんな土地柄。
訪問時、2020年新登場のマリオッコ100%のリセルバ(Riserva)は鋭意ボトリング中でしたが、リセルバ以外の商品ラインナップがこちら。
赤3本は単一品種のみで作られ、カラブリア州産ワインらしい力強さが自慢です。

すっきりシンプルなデザインのラベルは、コセンツァ市のシンボル・スヴェ-ボ城の形状をデフォルメしたロゴとざらっとした紙を使った物。なんでもアレッサンドロ氏の肝いりで作られたものらしいですよ。

試飲会用の建物も準備中で、春には畑を眺めながらの試飲も可能になる予定。
将来的にはブドウ畑とワイン作りを中心に置き、宿泊もできるサービスも提供したいと意欲的な挑戦が続いています。

 

ROCCA BRETTIA/ロッカブレッティア (
Contrada Verzano snc, Frazione Donnici Inferiore, Cosenza
※コセンツァ方面から車で15分ほど。脇道に入るところに看板が出ています。


 

カラブリア州より、明けましておめでとうございます。

クリスマス飾りを1月6日まで出しておくイタリア。
年末年始は日本のお正月とミックスカルチャーなデコレーションな在伊日本人家庭も多いのではないでしょうか。

カラブリア州では年末に大量の雪が降り、コセンツァ市の裏山・シラ国立公園内のスキー場もオープンしました。

州内スキー場についてはこちらをどうぞ

6月にはVol.34のカラブリア特集で紹介された生産者やマンマを回る欲張りな旅・「第12弾 編集長マッシモと行く 輝くカラブリア、地元密着の旅9日間」が企画されておりますよ。(詳細はこちら

イタリア半島南端の州・カラブリアより、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

澤井 英里 拝

揚げ物大好き&自家製はちみつたっぷりな、カラブリア州コゼンツァ市のクリスマス郷土菓子。

去年もご紹介した()カラブリア州北部・コゼンツァ県コゼンツァ市のクリスマス郷土菓子。
私が住むコゼンツァ市(Cosenza)では、はちみつたっぷりな伝統菓子を大量に作り、クリスマス期間中にゆっくり消費します。

今年は昨年から始めた養蜂の成果・自家製ハチミツで作るクリスマス菓子とあって気合も変に入っておりまして、そんな南伊の片隅のクリスマス菓子事情などを鼻息荒く、字数相当オーバーな勢いでお伝えします。結果、2600字超になっちゃっております。スイマセン・・


まずは購入する物からご紹介しましょう。
北イタリアの郷土菓子的存在、パネットーネとパンドーロは大量に購入します。あ、日本でも大人気のシチリアのメーカーさんのも見えますね。

クリスマス用、大みそか用、××さん達を招待した日用、××さん家にお邪魔するときお土産用などと用途ごとに購入していくんですが、お会計の際にひっくり返るような額になるのも毎年のことです(笑


さらに、カラブリア州南部・レッジョカラブリア県のクリスマス郷土菓子であるトローネも忘れず購入します。

ローストしたアーモンドを使ったよくあるトローネは自家製するんですが、レッジョカラブリアのトローネは海峡を挟んでお隣のシチリアの影響を強く受けていて、カラブリア州内でも異質の存在。すっごくアラブな雰囲気で素敵に美味なんです(笑

カラメルで閉じ込めたアーモンドをさらにチョコレートコーティングしたり、スパイスで包み込んだリッチバージョンが我が家のお気に入りです。


今年は乾燥いちじくも購入しました。こちら、コゼンツァ県のDOP食材・ドッタート種です。

こちらも本来は自家製する物なのですが。。。夏から秋にかけて忙しくて作っていられなかったんですよね。。。大失敗。。

乾燥イチジクはクリスマス時期に常に食卓に出して置くもの、というのが義母の教え。
クリスマスの挨拶にいらっしゃる方やお茶の時間におススメする定番アイテムで、相当地味な食材なんですが、これが無いとクリスマスの雰囲気が出ないこの時期ならではの重要食材だったりします。

それでは、ここからどこかで見たことがあるような気もするかもしれない、自家製するお菓子たち~
こちら、Ciccitieddri(チチティェッドゥリ)。ひよこ豆大の大きさの簡単な生地を揚げてハチミツを絡めるお菓子です、ナポリのStruffoli(ストゥルッフォリ)由来のお菓子で、一粒食べ始めると永久に食べ続けちゃう危険な仔。

ちなみにこのお菓子にこの名前を使うのは、コゼンツァ県コゼンツァ市とその周辺だけですのでご注意ください。
他地域だとチチェラータの方が通じやすいんですが、The・方言の呼び方ってなんだか愛着が150%増しになって好きです♡


一見良くわからない形状をしているこちらがScalilli(スカリッリ)。アニス入りの生地を揚げて、こちらは贅沢に砂糖たっぷりのアイシングです。

野生のアニスは黄金よりも単価が高い超高級スパイス。コゼンツァ市の裏山・シラ国立公園内に自生している場所があって、アニスハンターによって収穫されています。
アニスを手に入れることが出来、高価だった砂糖を使うことが出来た、リッチ階級の家庭に伝わる伝統菓子で、こちらも州内で場所が変わると名前が同じながらも形状が変わるお菓子です。
コゼンツァ市のはサクサク生地なんだけれど、一般的なのはパン生地を揚げたもの、かな。

アニスハンター。名前がダサいけど、本当にお仕事にされている方たちがいるんですよ。。。


こちらはモスカートを入れた生地をニョッキ状に成型し揚げてハチミツ掛けするTurdiddri(トゥルディッドゥリ)。イタリア語だとTurdilli(トゥルディッリ)ですね。

本来は栗のハチミツを使うのでかなーり黒い仕上がりになります。日本のかりんとうみたいなお菓子で、モスカートとハチミツの質が出来上がりを左右します。

 

この他、ナッツたっぷりのカカオ&チョコクリームを半月状の生地で閉じ込めたChinuliddri(キヌリッドゥリ)も作ります。Chinuliddri(キヌリッドゥリ)については、去年の記事()をどうぞ。

そして・・コゼンツァ市民に絶対欠かせないのがこちら!

 


Pitta ‘mpigliata(ピッタンピリャータ)です。
たいへん日持ちがするので、大きさや形状を変えてたくさん作ります。
シラ国立公園内のサンジョバンニフィオーレ村が元祖で、シラ国立公園域一帯で色々な形状で作られていますが、
  • はちみつたっぷり
  • ナッツ類たっぷり
  • スパイスたっぷり
というのは不変のルール。くれぐれもカラブリア州カタンツァーロ県のピッタンキューザ(Pitta nchiusa)と混同しないでね♡

ってこれ、去年も言ってる(笑

さらにさらに、


デコレーションが楽しいMostacciolli(モスタチョッリ)。
コゼンツァ県内の山間部に行くと、未婚の女性にデコレーション方法を伝授するお教室やデコレーションの美しさを競う会なども開催されている伝統菓子です。

豊かになった現代では色々なキラキラデコレーションが可能ですが、つい最近までは生地だけを使っていかに美しく装飾を施すか、が腕の見せ所だったお菓子。
生地を作るのも実は大変なんですが、教会への奉納菓子に使う村もあるお菓子です。

ま、このあたりを数日かけてだだーっと作りまして。
ついでに番外編で、


揚げドーナツのようなこちらのcuddrurieddru(カタカナ表記は難しいんですが、強いて言うならクッドルゥルリェデドゥ。書いている本人もはやナゾ)も作ります。

コゼンツァ県内ではCrustoli(クルストゥリ)って言えばまず間違いなく通じます。イタリア語ではCiambella calabrese(チャンベッラカラブレーゼ)。
マンマのレシピvol115()でもご紹介したこちらの揚げドーナツは、いわゆる「イブ=大切な祭日の前日」に食べるものです。

さんざんクリスマス用のお菓子作っているのに、大切な日の前日には絶対作り、仕事場に持って行ったり、振る舞い菓子にも使うし、砂糖バージョン・シンプルバージョン両方作るべき日っていうのもあります。
コゼンツァ人、揚げ物好きすぎでしょ。。
この時期は露店もいっぱい出て、旅行者でも気軽に楽しめますよ♪

さて。今年もいよいよクリスマスシーズン到来。
皆さま、素敵なクリスマスシーズンをお迎えください。

 

カラブリア州でチーズ工房見学するなら、やっぱり「カラブリア州らしい」チーズ工房がお勧め。お勧めの理由と工房の様子

州内の約7割が山岳地帯のカラブリア州では体の大きな牛の飼育が難しく、伝統的に牛の飼育をしていた地域はごく限られています。
そんな限られた地域の一つ、コセンツァ県内のシラ国立公園。古代種・ポドリカ牛*の飼育でも有名な地域です。


シラ国立公園域のチーズといったら、DOP食材でもあるシラのカッチョカバッロ(Caciocavallo Silano)。ポドリカ牛のお乳100%の物も生産されていて、チーズ工房もあちこちにあります。
そんな中でおススメのチーズ工房は、
近代化って何? なThe・家内工業っぷりが素晴らしい小さな小さな工房。
ちなみに、ただ今凝固の様子を目視で見極めている所。これ、間違えると本日の生乳をすべて廃棄することになる大変重要な作業なんですが・・。見ている方がドキドキする(笑
機械に頼らず経験がすべての世界です。

カラブリア州内にはもちろんこんな近代的な工房(工場?)もあるし、どちらかと言うとこのような規模の近代的な施設が増えているけれど、せっかくカラブリア州を訪問されるなら、なんというか。。。「カラブリアらしい」「まだ残ってる」的な工房をお勧めしたいなーと思います。

実は、地元では家内工業的に作られたチーズの方が(若干高価ですが)評価が高いです。
なぜなら、カラブリア州ではまだ「人の手で作られたもの」が評価されるから。
シーズンや気象条件によって生乳の品質も若干異なるのでチーズの味も一定にならず、この味の「揺れ」も評価されます。
一年を通して一定な味は自然じゃない。そんな感覚で生活できるって逆に贅沢だなーと私は思います。

そして、あちこちゆるーく生活しているこんなカラブリアの姿を見て頂きたいな、と思うわけです。
この辺りでは、チーズ作りは女性の仕事。この工房でも伝統通りに女性たちが工房内を取り仕切っています。
搾りたての生乳を温めて、凝固剤(自然の物です)を入れて。チーズ作りは力仕事。
工房見学に行くと、生乳を温めるところからすべての行程を見学できます。
そして・・

あ。モッツアレラ作ってくれてる♡

工房見学では、モッツアレラ、リコッタなど出来立てチーズの試食もさせてもらえます。出来立てで熱々のリコッタチーズはココでないと食べることが出来ない贅沢品ですよ。

条件が整っている日なら、放牧中の牛さんの様子も見学できます。
シラ国立公園内では放牧が基本。乳牛は夜に牛舎に戻るし、寒さに弱いので冬期は完全に牛舎に入りますが、強靭な古代種・ポドリカ牛は基本的に完全放牧です。(お産を控えているなど管理が必要な牛は、冬期だけ牛舎へ。)
そんな牛さんたちの生育の状況も見ることが出来ると「チーズができる工程をいただく」よりも、もっと食材に対して愛着がわくと言うか理解が深まると言うか。

ポドリカ牛100%のカッチョカバッロは春~初夏までがシーズン。この時期なら一般的な乳牛のカッチョカバッロと食べ比べもできるかも!?


※ポドリカ牛:中央アジア原産と言われる古代種。古代ローマ時代にはすでにカラブリア州~アブルッツォ州辺りで飼育されていた。
四角く灰色の大きな体に角があり、人間に慣れず、狭いところも苦手なフリーダムを愛する性格。
肉牛でもあり乳牛でもあるオールマイティーさん。年中外を歩いているため、赤身がちのお肉は地元で大変珍重されている。
コセンツァで極上牛肉と言ったらポドリカ>>神戸です。