ローマで肉屋へ行こう。(表紙にキズあり)
ローマ特集である。20州巡って考えた結果。ローマ特集は肉屋の特集となった。
なんで?「なんだか肉屋って面白い」そんな単純な理由からである。
かつてローマのテスタッチョには、マッタトイオ(食肉解体場)があった。
そこで働く労働者が安い賃金を補うために、売り物にならない部位や臓器を、安値で横流ししたり、自ら持ち帰って食べたりしていた風習が、現代のローマの名物料理に繋がって残っているという。そんな話を聞くにつけ、肉とローマとの関係、何かこだわりがありそうで興味もあった。
イタリアで肉食文化が庶民にまで浸透したのは中世のことで、その頃は、豚肉が食肉の中で一級の価値を持っていて、羊は主に生きたまま活用されていた。その後、鶏類から牛肉(特に仔牛肉)への嗜好が強くなっていったという。
イタリアのどこの町や村に行っても必ず肉屋がある。取材先で入る肉屋には、生活臭が充満している。吊り下げられた生ハムやサラミ、惣菜などが並ぶ。取材に対して無防備な住人が買物袋を下げて入ってくる。入口でチケットを切り、番号を呼ばれるまでショーケースの中のブツを物色している。皮を剥いだままのウサギや、子羊の頭、牛の脳みそなど日本ではあまり馴染みの無いものも多い。「今夜は何にしようか?」「おーいい色の肉があるなー」などと思いながら。
一方、ケースの向こう側では、注文を受けると、分厚いまな板の上、良く切れる大きな包丁で、塊から気持ちよく切る。ある時は鉈のようなもので「バン!」と硬い関節を叩く。豪快だ。
客は自分の番が回ってくると店員と会話を交わして、好みの量や、形を注文する。肉は量りに載せられて、そして紙に包まれる。この紙に包まれる様子がまたいい。金具に引っ掛けられたロゴが入った包み紙を「ビリッ」切り取り包む。1色刷りのそのロゴがちょっとレトロな感じだったりするとかなりそそられる。
そんな小売店の面白さをイタリアの肉屋は持っている。多くは長年続く老舗であって、代々その地に腰を据えて暮らす人々の食を支えてきた。店は時代とともに変化し、扱う食材も増えたり、安全性を考えたりと小売店も生き残りに必死だ。
今回紹介する5軒+1軒はそれぞれが個性と工夫とアイディアがありそれゆえ客で賑わっていた。
小売店には、スーパーやコンビニでは味わえない対面販売の面白さや、店と客の個別の信頼関係、同じ嗜好の客同士の交流など人と人がつながる店先の物語があるのだ。
イタリアはまだまだ小売店が面白い、ローマに行ったら肉屋へ行こう!
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