東シチリア、アーチレアーレの
ホスピタリティに包まれる
どことなく田舎臭くて、素朴な包みが僕は好きだ。深夜にB&Bに到着して部屋に入ると、ベッド数が足らない。よくあることだが、ダブルで二人分とカウントされている。メッセージしてあったのに~。仕方がないその夜は一人が椅子を並べて寝ることになった。翌朝、フランチェスカさん(P7)が近くに住む親戚からベッドを借りてきてくれた。これで煩わしい部屋探しをしなくて済んだ。その後、日曜日の家族とのランチを一緒にした。
食事の準備ができるまで、アーチレアーレの海岸を一望できる屋上に案内されて、街のこと、家族のこと、いろいろと話してくれた。「暖かくなったらここで食事するからその時もぜひ」と、笑顔のフランチェスカさん。部屋に戻ると、ワイン片手にニコニコ顔で現れたお父さんに導かれ、ご自慢のアンティーク家具の見学会が始まった。たった数時間で心地よい家族の風に包まれていた。
そういえば、早朝に取材した「ドルチェリーア・ベッラ」のアンジェラさん。白髪にヴィオラ色のニットと艶やかな口紅が美しい。彼女が店に入ってくるとたちまち晴れやかな空気に包まれ、大袈裟じゃなく幸せのシャワーを浴びた感じがした(P12)。「いつも笑顔で自分の舞台を演じるのよ」という母親の教えどおり、彼女の楽しむ姿が周りの人たちも楽しませているのだ。
サルヴァトーレさん(P14)は、常連客に囲まれてゆったりマイペースでサービスをする。そのおおらかさで店内はまったりとした空気に包まれている。笑顔でいるからこそ得られる豊かさがあると、人生を謳歌している。
ところで「包」の字源は、人が子供を身ごもっているさまを象ったもの。大切なものを「つつむ」ことを源とする言葉だ。だからだろう、何かの「包み」には、包んだ人の気持ちも一緒に包まれているように感じることがある。
B&Bの椅子で夜を過ごしたときにはどうなることかと思ったが、取材を終えてみれば、明るくて社交的で、ホスピタリティにあふれているアチェージ(アーチレアーレの人)の、質素でピュアなもてなしに包まれた、いい時間だった。
発行編集人 マッシモ松本
(本誌より抜粋)
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