うなぎの誘惑と憂鬱
「わたし、ウナギが嫌いなの」今回の取材で、ポー川河口デルタ・デル・ポーの案内をしてくれた、フランチェスカはそう言った。僕らがウナギを「うまい!うまい!」と食べている横で、気味悪そうにそれを眺めている。
日本人はウナギが好きだ。世界中で獲れるウナギの、実に7割ほどを日本人が食べているというから驚きだ。古くは万葉集にも詠まれている。それだけ古来より日本人にはウナギが好まれていたということだろう。
この取材では、デルタ・デル・ポーの2軒の店で食べたけれど、(→p34、36)どちらもきちんと開いてある。それも腹側から開いてあるので、日本でいえば関西風ということになるだろうか。
以前、サルデーニャで食べた時には、ぶつ切りにした身を串刺しにして、炭火で焼いたものだったけれど、今回は2軒とも見事に開いてあった。それには感心した。開いたうなぎを炭火で焼き、味付けはいたってシンプルな塩だけ。白焼きだ。
そして、なんの飾り気もない大きな銀皿にドン!
うーんイタリアらしいと言えばそうかもしれない。僕は意外とこういうザックリとしたサービスが好きだ。
ウナギは日本ではもう珍しくなってしまった天然もの。
そういえば、今年の夏(2013年)は日本でウナギを食べていなかったなーなんて思い返しながら、ナイフとフォークでそのウナギを口に運ぶ。
肉厚でずっしりとした身は、脂のノリもちょうどよく、やわらかい。口にふくめば炭火焼の香ばしい香りと共に、口の中に甘みがトロける。豪快だが意外にも繊細だった。
うまいね~。
ニホンウナギとヨーロッパウナギ、元々の品種は違うらしいが、日本では希少で高価となってしまったため、うやうやしく、ありがたーくいただくしかない天然もののウナギを、ここデルタ・デル・ポーでは、こうやってカジュアルに食べられるのがうれしい。
魚介好きのフランチェスカには、ウナギのおいしさを話し、何度も勧めてみたけど、結局彼女は口にすることはなかった。
もったいない。
東京の某高級うなぎ店の天然うなぎはヨーロッパものだというし、稚魚としては、日本にも輸入されているかもしれないデルタ・デル・ポーのウナギ、ぜひ現地でお腹いっぱい味わってみてはいかが。
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