vol.6 エミリア・ロマーニャ特集

vol.62011年8月発行
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イタリアを代表する美食の都としての誇りと伝統を受け継ぐ実直な仕事人があるれるエミリア・ロマーニャへ

小高い丘の上を上がると、ベルティノーロのチェントロだ。
今日はここで、ロマーニャワインと地方料理の祭典がある。
最初の案内人のイタリア人ジャーナリストのロイは、少しせっかちにこれから始まるこの祭典の説明をしてくれた。
広場には、テーブルがセットされ、ワインやチーズの生産者が店を広げていた。
白はアルバーナ、赤はサンジョヴェーゼ、このあたりのワインを代表する品種だ。
皆、試飲グラスを片手に、お気に入りのワインを見つけ、会話も弾む。ワイン祭典は深夜まで続いた。
そこでロイから紹介された、ジャンルーカはオリーヴオイルの生産者だ。
翌日は、彼の農園を訪ねた。研究熱心な彼が、希少品種のブリジゲッラを使って、高品質のオイルを作っている。喉を通る時に、ヒリヒリとする辛さが特長だ。元はフォルリに住む貴族のお嬢様のカンティナだった古城で、現在も高品質のサンジョヴェーゼワインを造るアレッサンドロは、上品で知的な紳士。静かな口調で丁寧に話す彼は、日々、伝統を守りながら、ワイン造りを続けていく難しさも語っていた。
取材した6月は、少し不安定な天候の日が多かった。
その日は、明け方まで降っていた雨が止んでいて、丘を登るにつれ、霧が晴れた向こうに見えたのは、中世の佇まいを残した、ブリジゲッラの美しい村と、それを見守る城塞だった。その美しい村にある、ホテル・リストランテ・ラ・ロッカのダニエレは、まじめで、とても親切な男だった。
彼が作る料理は、この土地で獲れたものを大切にし、伝統を守りながらも、新しいエッセンスを取り入れた、彼の情熱が伝わる味だった。そして、そのダニエレに野菜や果物を提供しているのが、この村で、長く有機栽培で野菜や果物を作るレナートさん。
戦時中は激しい戦いの場となったここで、料理人との信頼関係を築き、「もう引退だよ」と言いながらも、熱い思いを語り、今もまだ現役を続ける彼は、この州の人たちを象徴しているようだった。
レッジョエミリアのパオロは言っていた。「イタリア人の中には、今も中世の気質が流れている」と、ここを旅していると、その言葉の意味がなんとなくわかったような気がした。
伝統と革新が交差した、豊かな地、エミリア・ロマーニャの旅をお楽しみください。

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