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知ったかぶりはご法度!一癖あるヴェローナ人御用達トラットリア


「いいかい、、、(くりくりした瞳をさらに見開いて続けるレオ)はじめに儲けありきではこの商売はやってけない。」
あまーくて、ぷっくりして、エメラルドにも似た輝きのグリンピースを手打ちのパスタと頬張り、こっくり頷く私たち。
タリヤテッレに茹でたグリンピースがそのまま和えられた一見シンプル極まりない一皿であるのに、この元気いっぱいの青さとコクは一体どこから来るのか!?
北イタリアはヴェネト州ヴェローナの町の中心部。夏のオペラ・フェスティバルで知られるアレーナからアレアルディ橋に向かって徒歩10分ほどのところにある老舗トラットリア。どのアングルにカメラのレンズを向けてもフォトジェニック!
『Antica Trattoria Tipica Al Bersagliere(アンティーカ・トラットリア・ティピカ アル・ベルサリェレ)』の人の心を動かす一皿を、足をばたつかせて喜びたくなるほど美味いグラス一杯のワインを口にできるのは、このレオの素材に対する飽くなき探求心と郷土愛があってこそなのです。
イタリアに来て、地方都市に足を運んだら、やっぱりその町の伝統料理を食べてみたいもの。野菜、肉、魚の使い方、塩加減、熱の通し方や色合いを知れば、その町の素顔が言葉を交さずとも説得力をもって舌と心に浮かんでくるもの。

何百件、何千件の飲食店がひしめくイタリアの中核都市。ところが暇を厭わず足繁く生産者を訪ね、小さな素材も侮らずに品定めし、厨房での味の吟味にも気を抜かない、伝統にのっとりつつもパワー全開でどのお皿もテーブルに運べる店はほんの一つか二つ。三つ挙げられる町があったらめっけもの!
ヴェローナでそんなお店を挙げるなら、この『アル・ベルサリェレ』はそんな一つでしょう。
若かりし頃にはギンギンのレーサーだったレオ。移動は苦じゃない。年を重ねた今はお腹はちょっとポッコリしているけど、街中では自転車に、ヴェローナ郊外ならご自慢のハーレーにひらりと跨り、あっちこっちに出かけていく。そうやって収集したレシピの数は相当なもので、装丁も美しいレシピ集として出版されています。 ワインも手頃なお値段のものからワイン通なら垂涎ものまで彼の目にかなったものが並ぶだけでなく、グラッパやウィスキー、ラム酒まで蒸留酒のセレクションもかなりのもの!ヴェローナといえばワイン国際見本市『ヴィーニタリー』の開催地ですが、そのオーガナイザーたちがほっと一息入れたいとき、無意識に足を向けてしまうお店もここなのです。

因みにホールという表舞台を仕切るのがレオなら、厨房で彼のレシピを忠実に再現しているのが奥さんのマリーナと息子のアレッサンドロ。アレッサンドロはヴェネツィア大学で日本語を専攻し、奨学生として日本に留学していたこともある秀才だけど、やっぱり厨房の面白さに憑りつかれて家業に専念しています。
家族が生み出すポレンタの練り具合や焼き加減は絶妙。干ダラも臭みをとるのにかける手間暇は絶対に惜しまない。ガチョウの煮込みは緩めに仕上げたポレンタにお皿の上でざっくりと混ぜて口に含む。この地域の人たちの体を数世紀に渡り温め続けてきたガチョウのラグーのコクたるや唸らずにはいられません。

ちょっと褒めすぎ? あります、難点も。それはレオ自身。曲がったことがきらい、行儀の悪い人も嫌い。知ったかぶりはご法度。レオとパルスを合わすのは結構難しい。
が、波長が合えば、ヴェロネーゼの真骨頂が見えてくる!
皆さんもヴェローナに行く機会があれば、この町の人たちのための不思議な空間に是非異次元トリップしてみてください。


(仕事の合間にレオが特別に連れて行ってくれたヴェローナ市議会場。暗い大広間の窓からアレーナが2000年の歴史を誇っているのが見えました。)

[ショップデータ]
Antica Trattoria Al Bersagliere
住所 Via Dietro Pallone, 1, 37121 Verona VR

営業時間 12:00/14:00   19:15 /21:45(LO)休業日 日・月

TEL+39 045 800 482
http://www.trattoriaalbersagliere.it/

イタリアならでは、『友達づくり』講座-番外編―

イタリア―ニ達の間ではどうやって友情が生まれるのか、イタリア好きな皆さんにはちょっと気になるところではありませんか?

私はピエモンテ州の小さな村に嫁いで18年。少し手前味噌になってしまいますが、私の夫クラウディオはこれと決めた人(特にワインや美味しいものの生産者や本好き、映画好き、音楽好きなどの中で人間味豊かな人)に正面からアプローチをかけ、心に入り込む達人です。

『イタリア好き』最新号31号掲載のイタリア好き通信で紹介させていただいたアグリ『ロカンダ・デッリ・ウルティミ』のシルヴィオさんのところに初めてワインを買いに行った時も、面白そうな人だと見た途端、瞬く間に共通言語を見つけ出し、パタパタパタっと交流のきかっけを作ってしまいました。

その場面が結構おもしろく、私がコラムを担当しているイタリアのWebマガジン『Il Golosario』で取り上げたのですが、イタリア人にも面白かったのか、今年、最も好評だった記事の一つになりました。記事はイタリア語ですので、その日本語原文をここに掲載してみたいと思います。
イタリア人、特に60年、70年代生まれの男二人の間で心を通わす場面に必要なのは? 正しい答えはありません、判断はそれぞれにお任せします。
因みに文中のサヴィーノさんは、『イタリア好き』ロンバルディア州号にも登場してもらったトラットリアの親父さんです。
さらに付け加えると、イタリア人には政治信条が生活スタイルに影響を与えることが往々にしてあります。でも、それは特別なことではない。『ロカンダ・デッリ・ウルティミ』のシルヴィオとクラウディオの場合は共通言語はワインと味覚など直球の他にそんな変化球も飛び出しました。傍観者の私には最も楽しいジャンルの交流でした。

では、Buona Lettura!

Sempre per Sempre Grignolino!
(邦題:グリニョリーノよ、永遠に!)
www.ilgolosario.it 掲載
https://www.ilgolosario.it/assaggi-e-news/attualita/grignolino-morando-silvio-vignale

「カミさんは完璧主義でね、、料理も準備からきっちり始めたい性質なんだ。だから、いまさら人数が増えたらなんて言うか、、、」シルヴィオは頭を掻きながらもう一度繰り返した。
「贅沢は言わない。それに、隣にいるサヴィーノはブレシア一の料理人だ。冷蔵庫さえ見せてくれればどんなものでも彼があっという間に旨い料理にしてくれる。それで皆一緒にお昼を食べればいい。」強気に迫るクラウディオの隣で件のサヴィーノが綿菓子のように優しく笑って頷いた。
この時シルヴィオは、『ただ人生をもっとややこしくするために作ってしまった』アグリ『Locanda Degli Ultimi(ロカンダ・デッリ・ウルティミ)』のことを私たちの前で口にしなければよかったとちょっと後悔したかもしれない。クラウディオが畳みかけるように続けた。
「サヴィーノが僕のために持ってきてくれたサラミも一緒に切ろう。僕の友人は料理だけでなくてサラミ作りでもイタリア随一の腕前だ。ほらこれ!」
ふっくらとしてサラミをシルヴィオの手に置いた。口ごもっていた彼も最後には降参し、アグリに戻って母親に客が3名増えると告げるようにと娘に言いつけ走らせた。
(さらに…)