「イタリア料理」と聞いて、みなさんはどんな風景を思い浮かべますか?
今回の舞台は、フィレンツェから少し西へ。なだらかな丘が続く美しい村、モンタイオーネ(Montaione)です。
ここで先日、ちょっと特別なディナーイベント「Locale, di Gusto!(ロカーレ・ディ・グスト)」が開かれました。これは「美味しいお店」という意味と、「地元の(ローカルな)味」という意味をかけたネーミングで、その土地の美味しいものを丸ごと味わおう!というプロジェクトなんです。ただ美味しいものを食べるだけじゃない、トスカーナの食のルーツに触れる素敵な一夜だったので、その様子をリポートします。
おじいちゃんの味を守る、兄弟のレストラン
会場になったのは、モンタイオーネで愛され続けているレストラン「I’ Ciampa(イ・チャンパ)」。
ここは、1956年から続く老舗で、今は、フィリッポさんとレナートさんという二人が、おじいちゃんの代からの味と伝統をしっかり守っています。「昔ながらの味」が恋しくなったらここに来れば間違いない、そんなお店です。
「貧しい料理」って、どういうこと?
この夜、私たちをナビゲートしてくれたのが、フランチェスカ・ピノキ(Francesca Pinochi)さん。
彼女はジャーナリストであり、食とワインのプロフェッショナル。しかも、このモンタイオーネの文化担当の評議員も務めているという、まさにこの土地の「語り部」のような女性です。
フランチェスカさんが熱く語ってくれたのが、トスカーナ料理の根っこにある「クチーナ・ポーヴェラ(Cucina Povera=貧しい料理)」のお話。
「“貧しい”なんて名前だけど、決して味が劣るわけじゃないのよ」と彼女は言います。
「それは、食材を一切無駄にせず、ありあわせのものから最高の美味しさを引き出す、農民たちの知恵と愛情のことなの」
硬くなったパンをスープにしたり、余ったお肉を別の料理に変身させたり。そう、トスカーナ名物の「リボッリータ」など、まさにその代表格。今でいう「サステナブル」や「フードロス削減」を、トスカーナの人々は何百年も前から、当たり前の「美味しい日常」としてやってきました。
地元の食材を使うことの「本当の豊かさ」
そしてもう一人、この夜の大切なキーパーソンがいました。このイベントのプロジェクト「ヴェトリーナ・トスカーナ(Vetrina Toscana)」を担当している、ダニエラ・ムニャイ(Daniela Mugnai)さんです。
フランチェスカさんが「知恵」の話をしてくれたのに対し、ダニエラさんが語ってくれたのは「食材」への愛でした。
「近くの畑で採れたものを、その土地のやり方で料理して食べる。シンプルだけど、それは本当の贅沢だし、この美しい風景や地域を守ることにもつながるのよ」
彼女の言葉からは、地元食材を使うことが単なる消費ではなく、土地への敬意であることが伝わってきました。そんな二人の話を聞いてから料理に向き合うと、ひとくちの重みが変わってくる気がします。
優しくて力強い、伝統の味のフルコース
さて、お待ちかねの「貧しい料理」のご紹介です!
まずは、トスカーナの食卓の定番「レバーペーストのクロスティーニ」。そして冬の味覚、「黒キャベツとラルド(豚の背脂)」のクロスティーニ。素朴だけど、地元の素材の力がみなぎっていて、ついついワインが進んじゃう味です。
続いて出てきたのが「パッパ・アル・ポモドーロ」。イタリア好きな皆さんならご存知のトスカーナの名物料理。硬くなったパンとトマトを煮込んだスープなんですが、口に入れた瞬間、ホッとするような優しさが広がります。まさに、代々受け継がれてきた家庭の温もりそのもの。
そしてパスタは「カサレッチェのイノシシソース」 。「カサレッチェ」は、ソースがよく絡むようにねじれた形をしたショートパスタのこと。ここに、トスカーナの森の恵みであるイノシシをじっくり煮込んだ濃厚なラグー(ミートソース)を合わせます。力強いお肉の旨みをパスタがしっかり受け止めていて、噛み締めるたびに幸せな気分!
リコッタチーズとほうれん草のニョッキ「ニューディ」も、優しい味わいです。
そしてメインディッシュは、「フランチェジーナ(Francesina)」。
これぞクチーナ・ポーヴェラの傑作! 前日にスープを取るために茹でたお肉(Lesso=レッソ)を、たっぷりの赤玉ねぎとトマトで煮込み直した料理です。「残り物」が、じっくり炒めた玉ねぎの甘みで、極上のご馳走に生まれ変わります。この玉ねぎの甘みがきいた料理は、まさに日本人好みです。付け合わせはこちらもトスカーナ料理に欠かせない白インゲン豆のトマト煮「ファジョーリ・アル・ウッチェレット」です。
合わせるワインはもちろん地元のものを。提供される料理の味を引き立てるよう厳選された3種類のワインとのペアリングが行われました。もちろん、ソムリエであるフランチェスカさんからワインの詳しい説明を聞くこともできました。
前菜とともにCingalino – Rosso di Toscana 2024 (Villa Pillo)/プリモとともにBorgoforte – IGT 2023 (Villa Pillo)/セコンドとともにBordocampo – IGT 2022 (La Rimessa)
食後酒には、レストランの自家製ヴィンサントを堪能。
市長も一緒にテーブルを囲む、温かい夜
この特別なディナーには、モンタイオーネのパオロ・ポンポーニ(Paolo Pomponi)市長も駆けつけ、市長自らがテーブルを囲んで、地元の人など参加者たちと一緒にワイワイ食事を楽しみました。この街でもやはり「食」は誇りであり、みんなを繋ぐ絆なんだなぁと実感しました。
この魅力的なイベントですが、トスカーナ州のプロジェクト「Vetrina Toscana(ヴェトリーナ・トスカーナ)」の一環として開かれました。このプロジェクトが目指していること、それは単なるグルメイベントではありません。トスカーナが持つ豊かな「食とワインの遺産」を、もっと旅の楽しさに繋げていこうという試みなのです。
畑で野菜を作る人、それを運ぶ人、料理するシェフ、そしてそれを楽しみに来る旅行者……。「生産から観光まで」に関わるすべての人たちが手を取り合って、トスカーナの美味しい伝統を守り、その価値をみんなで分かち合おう。そんな温かい想いが込められた連携プロジェクトなんです。
ミシュランレストランなど派手な高級料理もいいけれど、こういう土地の歴史を噛みしめるような食事もまた、最高の「贅沢」なのかもしれません。
みなさんもトスカーナに行くときは、フィレンツェから少し足を延ばして、ぜひモンタイオーネへ出かけてみては。そこには、心もお腹も満たされる、とびきりリッチな「貧しい料理」が待っていますよ!
【次回の予告】レストラン:Ristorante I’ Ciampa (Montaione) 住所: Via Chiarenti, 46, Montaione, Italy https://www.facebook.com/ristoranteiciampa
Vetrina Toscana(ヴェトリーナ・トスカーナ)のURL: https://www.vetrina.toscana.it/
さて、トスカーナの美味しい旅はまだまだ続きます。
今回は「おじいちゃん」から受け継がれたレストランの味でしたが、次回は「おばあちゃんの味」をそのまま大切に守り続けている、ある“とっておきの商品”についてお伝えしようと思います。昔ながらの知恵と愛情がぎゅっと詰まったその逸品が一体何なのかは……次回の更新までのお楽しみ!
【お知らせ】
私からひとつお知らせがあります。
この度、J-WAVEの日曜朝の人気番組『ACROSS THE SKY』に、3度目となる出演が決まりました!
いよいよ開催が近づく「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」にちなんで、開催地の一つであるコルティナ・ダンペッツォやミラノの魅力について番組ナビゲーターの女優の小川紗良さんと語ります。コルティナが持つ独特の歴史や文化、美しい街の雰囲気、そしてオリンピックとの深い繋がりについて。もちろん、コルティナで飲みたい「お酒」やおすすめスポットなんかもお話しする予定です。日曜の朝、コーヒー片手にぜひラジオ(またはradiko)を聴いてみてくださいね!
J-WAVE 81.3FM『ACROSS THE SKY』
出演日時: 2月1日(日)AM 9:20〜9:40頃
テーマ: ミラノ・コルティナダンペッツォ特集(歴史、文化、五輪、おすすめスポットなど)
★今年こそは(今更ですが・・)インスタグラムもなるべく発信していこうと思っていますので、良かったらフォローしてください↓↓更新の励みになります!https://www.instagram.com/makokobayashi_firenze/
◆現在の様子◆
◆完成予想図 ダイアモンドのようなガラス張りドーム◆
◆Quattro Palazziの彫刻◆
◆地下鉄の入り口には神殿の写真が…◆
◆駅の中の様子です◆










同地区内、緑豊かな高原が連なる広大な地域。軽いハイキングから、リフュージョと言われる山小屋やマルガと呼ばれる牛の放牧場とチーズ製造所等があり、食事などを楽しむ場所であるため、バカンスシーズンはどこも人でいっぱいだ。
売り場脇にある製造現場を覗かせてもらった。
今やほぼ他では皆無に等しい、薪で炊くカルダイア(乳を温める鍋)。ガスなんか使うよりもこの周辺にある木々を使って、経済的にもまたエコ的にも優れているから当然!とご主人は話す。長年の経験での火加減の調節だから、ガスよりも、実際に燃え具合を目で見ながら火力調節、温度調節ができる自然の炎のほうが、彼にとっては簡単なのだそうだ。
そして、チーズの熟成室。D.O.P.の認証を得るには、もはや衛生的には検査に通らない木枠。なんともいい味わい。だから、もちろんここのチーズはD.O.P.の認証はない。
熟成室の外にはここでできるリコッタを燻製する燻製機が。ちょっと傾いた感じでいるところがこれも味わいのある風景。この時も燻製作業中だ。
ここでチーズが作られるのは、牛の放牧期間である5月から9月いっぱいくらいまで。そのため、フレッシュ、及び熟成期間の短いチーズの販売はこの期間のみ。その後は熟成タイプのもののみが彼らの手元に残る。
チーズの美味しさはその原料となる乳に由来するものだから、こんな大自然のなかでのびのびと過ごしている乳牛からとれる乳は美味しく、風味の豊かさが格段によい。見た目も黄色味が非常に強いものとなる。




「かわいい女の子は、自分のルックスもサービスに含むと思い込んでるんじゃないか、と、時々心配になる。」
翌朝は6時の開店と同時に仕事前のちょっと元気を出したい男たち、まぎれてスポーティーなおばちゃん達がカップっチーノを啜りにやってくる。
イタリア人、特に60年、70年代生まれの男二人の間で心を通わす場面に必要なのは? 正しい答えはありません、判断はそれぞれにお任せします。
「サヴィーノが僕のために持ってきてくれたサラミも一緒に切ろう。僕の友人は料理だけでなくてサラミ作りでもイタリア随一の腕前だ。ほらこれ!」
















