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新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その2

皆さんこんにちは!

今回は前回の記事<新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その1>の続きとして、いよいよコッチョペーストタンクの全貌を明らかにしていきたいと思います。

前回記事

古代レシピのセメント

まずコッチョペーストというのは、もちろん素材のことなのですがその起源は2000年以上前の古代ローマ時代にまで遡ります。

当時、家の外壁や道路工事、レンガのつなぎに使われたりしていたセメント、それがコッチョペーストです。

ローマ人は現地で調達することができた自然環境の砂や石、岩を砕き調合して程よいバランスのセメントを作っていました。

その素材レシピを現代にワイン用タンクとして蘇らせたのが、トスカーナ州ピサ県のポンテデーラのドランクタートル社。世界で唯一の“コッチョペースト”タンクの製造者です。


 

コッチョペーストのセメントレシピをベースに強度を加える配合をし、ゆったりと酸化熟成を促すタンクを作りあげました。

醸造・貯蔵タンクは効率・機能性をもたらすため、天井部分と底の部分はステンレスの金具で接続してあります。


単なる“アンフォラ”のタンクではなく、アンフォラの素材要素を加えた近代的醸造のためのタンクと言えます。土器のアンフォラは得てして酸化が激しく進むものが多いのですが、このコッチョペーストはモダンで上品さを纏うワインでありながら通常のステンレス・セメントタンクや木樽では成し遂げなかったような酸化熟成を実現しています。

酸化のスピードは素材の密閉性(密度)によるところが大きいですが、一般的なアンフォラとコッチョペーストとの大きな違いを挙げるとすると、アンフォラが仕上げに火を使用して固めるのに対し、コッチョペーストは自然に冷やし固める方法を取っています。火を使わないことで土素材に密閉性がより保たれるのです。

このことで、木樽のようなミクロの隙間を持っていながら、よりニュートラルな素材であることで、ブドウ本来の資質を素直に熟成によって引き延ばすことができるユニークなタンクとなりました。

この新しいムーヴメントはじわじわと国内外の有数のワイナリーたちの目に留まることに。


地元ワイナリーのカイアロッサ  http://www.caiarossa.com/ja/


同じくドゥエマーニ http://www.duemani.eu/


テヌータ・ディ・ギッザーノ http://www.tenutadighizzano.com/


ダヴィヌム  http://www.davinum.it/site/en/


 

ヨーロッパ各国をはじめ、アメリカ、チリ、オーストラリアなど、コッチョペーストはすでに世界のワイナリーへ輸出されています


チリのディストリビューター


ルーマニアワイナリー、トハニ

その他にも北はリヴィオ・フェッルーガ、中部サンジミニャーノのモルモライアも試験的にコッチョペーストを導入しています。

イタリアワイン界では、今までも時代の移り変わりにより、フレンチオークのバリック樽やステンレスタンクなど色々な醸造・貯蔵設備が導入されてきましたがこのコッチョペーストも時代の支持を獲得するのでしょうか?はたして!?

それでは工房とショールームの写真をご覧ください。













右がコッチョペーストのプロデューサーのエンツォ・ブリーニ、ピサで醸造を学びトスカーナはモンテプルチアーノのワイナリーではプロとして醸造家をしていました。またクラフトジン“ジネプライオ”の造り手でもある若手実業家!

世界で唯一のコッチョペーストタンク、今後もその動向を追っていきたいと思います!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

Instagram @toccaasiena

HP 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その1

皆さんこんにちは!

ご無沙汰しております。今回はイタリア・世界のワインメイキングの新たな試みとしてトスカーナ州に登場したコッチョ・ペーストというワイン用貯蔵タンクをご紹介したいと思います。

皆さんなんのことやら、サッパリ。。ですよね。

ということで、今回はコッチョ・ペーストという貯蔵タンクの話題を取り扱う前に、ひとまずは現代のワイン造りにおける基本的な醸造設備・タンク類についてクローズアップし、お勉強していきましょう。

 

ワインは、ボトリングされるまでは大容量の液体です。

つまりは、ブドウを絞ってできたモスト果汁(伊語、果汁・果皮など)がアルコール醗酵したのち、“ワイン”となってボトリングされるまでは、当然ながら醸造所には、それを収める大きな容器が必要なわけですね。

容器なんて何でもいいのでは?と考えるほどワインの世界は単純ではありません。


こちらはグロッセート県、チェレスティーナ・フェ社の醸造タンク

ところ狭しとステンレス製のタンクが並んでいます。


サンジミニャーノのヴァニョーニ社はステンレスタンクが右側にあり、奥にはセメント製のタンクも確認できます。


モンタルチーノのレ・ラニャイエ社の伝統セメントタンク。

タンクに記載の“HL54”というのは、54ヘクトリットルと読みます。すなわち5400リットル分。ワインとして換算すると7200本(1本750ml)くらいの量です。


トスカーナは海沿い、新鋭フォルトゥッラ社でもステンレスの他、近代的セメントタンクで醸造を行います。


こちらはサンジミニャーノのコロンバイオ・ディ・サンタキアラ社のセメントタンク。使い込んだような古き良き時代のセメントタンクですね。

ワインに関して、一般的には“樽で寝かせる”というイメージが常にありますが、ワイン造りに必要なものは樽だけではありません。

むしろ、木の樽というのはワインを造ったあとに熟成をさせて仕上げていく工程で使用するというようなもの。

つまり、ワイン造りにおいてブドウ収穫後の最初のプロセスである醸造には、得てしてセメントタンクやステンレスタンクが使われることが慣例なのです。

醸造のあと、木の樽に移され熟成させるタイプのワインもあれば、そのままセメントやステンレスで貯蔵され、木の樽での熟成プロセスを踏まないままボトリングされるワインも多くあります。

これらセメントやステンレスといった2つの種類は、単純に素材の違いもありますが、ワイナリーのしっかりとしたワイン造りのヴィジョンのもと、それぞれ理由があってその素材を使っているということを理解しましょう。

2つの共通した特徴は、まずその素材が無機質の要素を持っているところ、つまりニュートラルな素材で素材自体はワインにはどんなエフェクトも与えないということです。

そして、温度を醸造上の適温に抑えることができるところも重要なところです。

アルコール醗酵の際、モストの温度は上がっていきますが、熱はワインにとっては良くない要素ですので冷やしながら醸造を行っていくことが良いワイン造りの基本となります。

温度が高くなってしまうと、酵母がうまく働かず醗酵に障害がでたり、綺麗なブドウ由来のアロマが失われたりと問題を生じてしまいます。(赤ワインは25~28℃前後、白、ロゼは15~18℃前後に調整することが多いようです。)

近代化に伴い導入された醸造用ステンレスタンクというのは、通常温度調整が可能なオプション機能が付いているものが多く、今ではワイン醸造の基礎的設備となっています。外面が2重構造になっていて冷水を巡らせて冷やす方法や、タンクの中に鉄板のような冷却装置を入れて冷やす方法など様々ですが醸造施設に設置された管理機器ですべてのタンクの温度が把握できるようになっています。

余談となりますが、古代ローマ人もワイン造りにおける熱を抑えることの重要さを理解していて、ワイン造りの際はモストの入った土器に水を流しあてながら醸造していたという話もあるようです。

セメントタンクに関しては、元々トスカーナの醸造において広く使われていたタンクの種類で、ニュートラルな素材であり、外部からの影響がない。低温を留まらせる強さのある素材。セメントのしっかりした厚みがある分、外気による温度変化の影響もないという特色があります。かつては温度を下げるために、温度が高くなるごとにワインを別のタンクに移し替えて戻す(デレスタージュする)ことにより温度をある程度下げていたようです。現在は、伝統的なセメントタンクでも温度調整のできる機能を後付けしたところも多くあります。

セメントタンクとステンレスタンクとの違いを一つ挙げるすると、セメントに関してはミクロの単位で酸素が届くことになり、ワインがいわば小さな“呼吸”をすることできるという点です。

※ゆっくりした微量の酸化は、とがったタンニンを柔らかくする効果もあり心地よさにつながります。

つまり、ステンレスと比べ、まったくもって影響のない0ゼロというほど密閉されていない素材ということになります。

そこには、本当に小さな、ワインの成長を促す“変化”を見出すことができるのです。

ステンレスはワインのフレッシュ(新鮮)さやアロマなどを閉じ込める長所的効果がある分、酸化によるワインの進化、成長を期待する容器とは言えません。

それに比べるとセメントタンクはゆったりとした極小さなワインの呼吸による熟成効果も期待できる、ということになります。

これは、どのようなワインを造りたいか、生産者の哲学や好みもあるので、ワイン造りにおいてはこのような手段があるのだという理解に留めるので十分でしょう。

少し長くなってしまいますが、今回はあと一つだけ

モンタルチーノのラ・マジャ社のセラー


同じくモンタルチーノ南部のポッジョ・ディ・ソット社の醸造施設。

これは木の素材の醗酵槽です。前者のラ・マジャ社では、トップラベルであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノに関してのみ木の醗酵槽で醸造。

ポッジョ・ディ・ソット社ではロッソ・ディ・モンタルチーノ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノともに木の醗酵槽にて醸造していきます。(先にワインを造ってから数年後試飲を経てロッソとブルネッロに分けるというやり方)

これは、もともとのワインとなるサンジョヴェーゼ種とそのモストの力強さから、醸造の段階で“より深い呼吸”を促しながらワイン造りを行っていくという一つのテクニックとなります。当然コストや、温度変化による対応もよりマニュアルとなる部分もあるので(ルモンタージュを行いつつ温度を下げるなど)より贅沢で手間のかかる手法ですが、しっかりと熟成を見据えた種類のワインを造っていく上では、近年しばしば見られる種類の醸造設備と言えます。

おまけ


トスカーナはルッカのヴィッラ・サントステファノ社のステンレスタンク。“マイクロ・オキシジェネーション・システム”というミクロの酸素供給(オキシジェネーション)システムにより、タンク内のワインの呼吸強度を設定できるようです。

色々な生産者、色々な醸造設備。ワイン造りも一筋縄ではいきませんね!

次回はいよいよタイトルにありました“コッチョ・ペースト”のタンクの登場です。

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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世界で最も美しい広場、シエナ・カンポ広場の1年

皆さん、こんにちは!

今回はトスカーナ州の中世都市シエナの町の中心にあるカンポ広場(Piazza del Campoピアッツァ・デル・カンポ)を写真とともにご紹介します。


イタリアでは、大なり小なりどのような町に行こうともその中心には人々が集う広場があります。

数多くあるイタリアの美しい広場の中でも、世界遺産シエナの中心街にある『カンポ広場』は世界で最も美しい広場の1つともいわれています。

独特のフォルム

カンポ広場を価値づける大きな特徴の一つがそのデザインです。

9つのラインが引かれるお扇形をした全体のフォルムというのも独特ですが、さらにそこへ傾斜が加わります。


世界の多くの広場は、平面の作りとなっていることが通常ですが、カンポ広場は向い正面のマンジャの塔及びパラッツォ・プッブリコ(市庁舎美術館)を囲むように緩やかな傾斜のある広場となっているのです。

この傾斜は、当時のシエナの貴重な水源として雨水を集める役割があったと言われています。


人々が腰を下ろしたり、恋人同士が寝そべって日向ぼっこしたりとリラックスしやすいのもこの絶妙な傾斜の心地が良いからにほかなりません。

一般的な平地の広場で地べたに座ったりすることには抵抗があるものですが、カンポ広場は不思議なことに人々がいとも簡単に腰を下ろしてしまうのです。


カンポ広場の1年を写真とともにご紹介しましょう。

メルカート・ネル・カンポ

こちらはメルカート・ネル・カンポ(カンポ広場の市場)で通常4月と12月に催される市場です。(初旬2日間ほど)

野菜やサラミ類やペコリーノチーズ(羊のチーズ)などの地元生産者たちが直売しにカンポ広場に集まります。


傾斜がある分、会場作りも大変そうです。笑


ミッレミリア

5月には国際的にも有名なクラシックカーレース『ミッレミリア』がシエナへもやってきます。

北部のロンバルディア州ブレシアから南へ下り、ローマから再びブレシアへと北上します。



2019年(予定)は5月15日(水)ブレシア発

18日(土)に再びブレシアでゴールです。

シエナへは大会3日目の5月17日(金)、ローマ~ボローニャ間でカンポ広場を経由することになります。

毎年、参加されている堺正章さんもシエナを駆け抜けます。

パリオ

シエナといえば伝統行事パリオ!

毎年7月2日と8月16日に行われます。※それぞれ独立したパリオとなります。

中世から続くこのイベントへは世界中からたくさんの観戦客が訪れ、このカンポ広場にてまさしく『伝統』を目撃します。



→イタリア好き通信記事『シエナの伝統行事パリオ!』

年末コンサート


毎年大晦日に行われるカンポ広場のライブコンサートです。

国内の著名アーティストが招かれ、無料でライブが行われます。

その他にも、国内のチョコレートメーカーが集まるイベント『CiocoSI』やクッキングショー、カーニバル、パリオ優勝地区のパレードなどが行われ、カンポ広場はまさにシエナの人々の生活の中心となっている広場です。

また、去年はNETFLIX映画のダイナミックなカーチェイスの撮影も行われました。(今年2019年配信予定 6アンダーグラウンド原題)


600年以上にわたってシエナの中心であり続けるカンポ広場。皆さんも訪れた際にはぜひ横になってシエナの歴史に想いを重ねてみてはいかがでしょうか?

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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マリザおばあさんのブルネッロ

今回は、トスカーナ州モンタルチーノでたった一人でワイナリーを営む86歳のおばあさん、マリザさんをご紹介します。

モンタルチーノ中心街の北側の城壁を抜けてしばらく坂を下ると、地元銘柄ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイナリーの案内看板が見えてきます。


右には『イル・パラディーゾ・ディ・マンフレーディ』、左に『イル・マッロネート』と小さな造り手でありながら日本のイタリアワイン愛好家にもその名が知れたワイナリーたちが。

さらに森の小道を下り、奥まで進んでいくと小さな一軒家がありました。

『モリナーリ・カルロ ポデーレ・レ・フォンティ』

知られざるブルネッロ生産者の一社で、マリザさんのご自宅兼ワイン醸造所です。

畑は目の前にある1ヘクタールにも満たない畑のみ。


マリザさんは、現在この家に一人で暮らしながら畑管理とワイン造りをごく少数のオペレーターと一緒に行っています。


マリザさんは北部ロンバルディア州の出身。20歳の頃にトスカーナの海で知り合った同じロンバルディア州出身のカルロさんと結婚、同州ヴァレーゼで長く暮らしたのち1971年にトスカーナ州へと越してきました。モンタルチーノにその後家を建て、カルロさんのワインへの情熱から1980年にブドウの苗(ブルネッロ種)を一緒に植えました。

1993年がマリザさんたちにとってブルネッロ・ディ・モンタルチーノの初ヴィンテージ。


そのブルネッロ・ディ・モンタルチーノが5年の熟成を経て、ようやく完成した1998年にカルロさんは病に倒れ帰らぬ人になりました。

彼らの一人娘であるエレナさんはサルデーニャ州の家に嫁いでいることもあり、マリザさんは彼と愛したワインを一人で守り抜くことを決意。長年の夢を実現したカルロさんの意思を引継いで今も一人でワイン作りを行っています。

 

マリザさんと猪

このエリアの森にはかつて3匹の大きな猪が住んでいたそうで、収穫のシーズンには甘くて美味しいブドウを食べて畑を荒らしてしまっていたのだとか。


畑を守らなければならないマリザさんにとってブドウを食べてしまう猪たちはまさに天敵です。

そんな中、偶然このエリアに人間のハンターが猪の狩りに来ました。食用にするためで時期によって狩猟解禁となるのです。

しかしマリザさんはその危険を猪たちに知らせ、その場から逃がしてあげたそうです。

いつもは憎い猪たちでも、もしいなくなったらと思うと寂しかったのかもしれませんね。

マリザさんと車

マリザさんはご高齢であるのですが買い物には車ででかけます。数年前に単独の衝突事故をしてしまった時のこと。その時にしていたシートベルトが事故の衝撃で急に締まり胸が非常に苦しかったそうで、それ以来シートベルトはしないことにしたそうです。笑

実際、その後2回目の小さな追突事故がありましたが、シートベルトをしていなかったおかげでケガがなかったと言い放つ始末。地元のおまわりさんも苦笑いです。くれぐれも運転には気を付けてくださいね。

マリザさんとメディア

マリザさんは、商業的なマーケティングやジャーナリストやメディアをあまり信用していません。いかに人々が情報化社会の中で真実を見失い、誘導されてしまうか。

ある時、訪問後帰り際にマリザさんから1本ワインをプレゼントされました。彼らのブルネッロ・ディ・モンタルチーノでヴィンテージは『2002年』。

2002年というのは、業界では言わずもがな、非常に雨が多かった年でイタリアでは不作とされるヴィンテージです。

バッドヴィンテージのワインを渡す際に一言、『飲んでみな』と言われました。

後日ボトルを開けてみると、驚くことに極めて完成度の高いワインがそこにはありました。ハッキリした力強い輪郭と凝縮感。ゆるやかでまとまりのある果実味と、こなれたタンニンで芳醇なワイン。嫌味のない不作の年とは想像ができないようなブルネッロでした。

一般的には評価が低かったとしても試してみなければわからない。はなから決めつけてしまう先入観を持ってしまうのは良くないことだと教わりました。

実際、2002年のように『不作の年』というのは多くのワイナリーで非常に難しいワイン作りを強いられる年であるのは事実ですが、場所や状況によっては被害を逃れた、または最小に抑え対処できたというケースもあるのです。

メディアや世の中の情報に踊らされ過ぎないようニュートラルに物事をみれたらいいですね。



それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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モンタルチーノのワイナリー観光!1ヘクタールの畑の価値は?

皆さん、こんにちは。

今回は、シエナ県南のモンタルチーノのワイン情報です。

 

モンタルチーノの生産者組合


イタリアの中でもトスカーナ州は実にワイン観光が盛んな州で、シーズンを通して多くの国内外のゲストが訪れますが、その中でもモンタルチーノはイタリアにおけるワイン観光の先駆けとなった地域とも言われています。

ワイン観光情報の提供や地域振興に一役買っているのが、地元の生産者組合(コンソルツィオ・デル・ヴィーノ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノConsorzio del Vino Brunello di Montalcino)です。

言わずと知れたモンタルチーノ地区のワイン銘柄『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』の生産者の集いです。


地元の試飲イベント『ベンヴェヌート・ブルネッロ』


1967年に創立、登録は任意(年会費制)となり、現在208のワイナリーが加盟しています。

加盟したワイナリーは、組合が国内外で行うプロモーション活動やイベントに参加することができます。また組合を通じワイナリー訪問・試飲などの観光情報を共有することが可能です。

2015年ベンヴェヌート・ブルネッロ・ジャパンツアー(東京・大阪)


ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ生産者組合ホームページ<日本語>

イタリア中の多くのワイン産地にはこのような生産者組合があり、その土地のワイン銘柄のクオリティー・地位向上のための活動、ワイン観光のサポートなどを行っています。

 

モンタルチーノの広さ

モンタルチーノの町の入口にあるワイナリーの地図


モンタルチーノ地域の総面積が240㎢(平方キロメートル)。そのうち、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイン用の葡萄畑(ブルネッロ種)の総面積は21㎢(2100ha)と規定されています。

東京23区 計619㎢

モンタルチーノ生産地域 240㎢※

ブドウ畑 計35㎢

・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCG 21㎢

・ロッソ・ディ・モンタルチーノDOC 5.1㎢

・モスカデッロ・ディ・モンタルチーノDOC 0.5㎢

・サンタンティモDOC 4.8㎢

・その他 3.6㎢
(※2017年にサンジョヴァンニ・ダッソが編入し、現在モンタルチーノ市の面積は310㎢となっています)
 

生産可能地域に対し約15%がブドウ畑。多くが森林地帯となっている丘陵地で、オリーヴの他、穀物の畑の広がる田園地帯です。南には、アミアータという標高1738mの山がそびえます。また、東京23区の人口密度約15000人/㎢に対し、モンタルチーノは、たった19人/㎢。『人間より猪の方が多い場所』と言われるように、まさに手つかずの自然があふれるエリアです。

 

ブルネッロの畑を所有するためには!?

ワイナリーNOSTRAVITA ノストラヴィータ


世界にその名を轟かすブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイン畑のオーナーになる、そんな夢をお持ちの方はいらっしゃいますでしょうか?

現状ではすべてのブルネッロの畑には各オーナーがいるため、新たにブルネッロの畑を所有するためには、現在のオーナーから畑、または権利を購入する(譲り受ける)他ありません。※現在の2100ヘクタール以上、ブルネッロ用の畑を増やすことができません。

2015年のイタリア経済ジャーナルサイト<イル・ソーレ・24オーレ>の記事によると、モンタルチーノの1ヘクタールの畑は、およそ35万ユーロ~40万ユーロの価値とされています。(現在の日本円で約4500~5140万円。)

イタリア名醸地の1haの畑の平均的な価値

バローロ 約40万ユーロ(クリュによっては100万ユーロ以上)

バルバレスコ 約35万~50万ユーロ

フランチャコルタ 約25万ユーロ

ボルゲリ 約25万~30万ユーロ

 

最後に

ワイナリーCAPARZOカパルツォ


ワイナリーPODERE LE RIPIポデーレ・レ・リーピ


世界に知られるモンタルチーノのワイン。その功績の陰には組合を始め、生産者たちの団結と努力があったのは言うまでもありません。

12月以降の冬の期間でも、訪問が可能なワイナリーはあります。トスカーナを象徴する田園風景に囲まれたモンタルチーノ。ぜひ一度ワイナリー巡りに出かけてみてはいかがでしょうか?

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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ワインを理解する上での心得とは?その2

皆さん、こんにちは。シエナのソムリエ鈴木です。

今回は、“ワインを理解する上での心得とは?その2”と題して、普段ワインに馴染みのない皆さんにもなるべくわかるように、ワインの世界をご案内したいと思います。

ワインを理解する上での心得とは?その1→コチラ


前回もお話ししたように、このワインの世界が難しい理由の一つに、その多様性があります。

ブドウの種類であったり、産地、畑の土壌や気候の条件、またブドウの収穫の仕方や製法により色・香り・味わいに違いがでます。そして瓶詰したあとも熟成において変化が生まれます。

つまり工場でつくられるような飲料は、毎年同じ内容物で常に同じ味わいでなければいませんが、ワインは様々な条件下で味わいに変化・違いが生まれる飲み物なのです。

そのため、プロのソムリエやジャーナリストの方であっても存在する全てのワインを知り尽くすことはできませんし、全てのワインの熟成・変化を完全に理解することはできません。それだけ混沌とした膨大な種類のワインの世界の中に我々はいるのです。

どのように理解していけばよいのでしょうか。

『ワインの理解する上での心得その1』でお話したように、まずはなるべく簡潔に考え、そしてワインの世界を身近に感じるように、何かに例えてみましょう。

 

ワインの世界=音楽の世界

今回は皆さんがよく知っている音楽の世界で例えてみるとします。

音楽には、クラシックからロック、ポップス、R&B、ジャズ、レゲエ、テクノなど、色々なジャンルがあり、それぞれ世界中にたくさんのアーティスト、演奏者がいます。

皆さんも個人的に好きなジャンルの音楽や贔屓のアーティストがいらっしゃるのではないでしょうか?

ワインも同様に色々な種類があり、それを造っているいわばアーティストなる生産者たちが存在しています。原料となるブドウの品種にはそれ自体が甘いアロマやハーブのようなアロマを持っていたり、酸や渋みが特徴的な品種、皮からの色合いが強く抽出される品種、フローラルなアロマやスパイシーなアロマが特徴の品種など、ワインに反映される様々な個性があります。また淡くゆるやかで軽快なワインから濃厚で凝縮感のあるタフなワインまで、その種類は千差万別です。

つまり、皆さんが音楽のジャンル(体系)を理解しているように、まずはワインにどういった味わいの種類があるのか、そしてその個性を理解する必要があります。

注意したいのは、このワインの個性というのは甲乙をつけるべきものではないということです。つまり、どちらの方が優れているとか、劣っているという議論は通常しません。何故なら、ここで話しているのは種類(ヴァラエティー)のことで質(クオリティー)の話ではないからです。
 

ワインにおけるクオリティーとは?

一般的にクオリティーが高いワインというのは、外観、香りや味わいに澱みや雑味(不快な要素)がなく綺麗であること。酸や糖、ミネラル、渋みなど、ワインとしてのバランスの良さ。ブドウからの成分の抽出の強さ、奥深さ、余韻の長さなどの点の評価があります。

クオリティーを得るためには?

日照や気候、土壌の条件に恵まれている産地にもなれば、ワインの質につながる良いブドウが得られる可能性がありますが、それ以外にも、ブドウ畑の仕立て方、その状態、管理や選定の仕方、収穫時の選果やタイミング、醸造の仕方・テクニックなどワイナリーの投資と努力によってもたらされる部分も当然あります。特に選定や選果によって、一つの畑からの得るブドウの生産量(収穫量)を抑えるということは、質(クオリティー)を高める上で重要です。

音楽の話に戻りましょう。

音楽の“ジャンル”をブドウ品種やワインのタイプの“ヴァラエティー”とした場合、“クオリティー”にあたるのは、演奏者のスキル、または音楽が流れるステレオの音質と言えます。

すなわちクオリティーが良くないワインというのは、楽器の音・メロディーがずれていたり、音質に雑音・ノイズが混じっている、音量が小さすぎる・大きすぎるというようなことになります。


ワインの世界を理解し楽しむためには、特別な嗅覚や味覚が必要ではありません。世の中に溢れている音楽のように、ワインを楽しみ、経験を積めばよいだけなのです。

その中で、ワインのタイプとそのクオリティーを理解していくことができるでしょう。

ぜひ色々なワインを味わって、皆さんの好きな音色を探してくださいね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

シエナに日本人オーナーシェフのリストランテがオープン!

皆さん、こんにちは!シエナの鈴木です。

今回はイタリアで頑張っている日本人シェフたちに関するお話です。

イタリア料理は今や世界中に知られる人気料理の一つとなりました。パスタをはじめオリーヴオイルやトマト、ハーブを使った伝統~創作料理、魚介~肉・ジビエ料理まで日本でもたくさんのレストランがあり美味しいイタリアンを楽しむことができます。

日本でイタリアンを身近に楽しめる、そのような環境があるのも日本の情熱ある料理人たちがイタリア料理を学び、それを還元してくれているからに他なりません。そして彼らの中には、日本の調理学校やレストランで経験を積むだけでなく、実際に現地イタリアに修行に来る料理人もいます。

シエナ県サンジミニャーノのミシュラン1つ星CUM QUIBUSで修行中の山本鉄巳さん(右)、シェフAlberto Sparacinoさん(中央)


シエナ県カステルヌオーヴォ・ベラルデンガのミシュラン1つ星BOTTEGA DEL 30で修行中の浅川 真嗣さん(左)、女性シェフHelène Stoqueletさん(中央)


2、30年ほど前は、海を渡ってイタリアで経験を積むというのは情報の少なさや経済面からも決して容易いことではありませんでした。それでも、少しずつ渡航する日本人の料理人が増え、イタリアン人の日本の料理人に対する信頼などを築いてきました。そんな先人たちの繋がりを基盤に、近年はインターネットなどで現地情報も得られ、イタリアの語学学校などのサポートも受けられるような時代になり、多くの未来ある若者がイタリア留学に挑戦しやすい環境となったのです。バスも一日に1本しかないようなトスカーナの田舎町にも、賑やかなレストランの厨房を覗けば日本人の料理人がいる、そんなことすら今では珍しいことではありません。シエナの中心街でも毎年多くの日本の若者がレストランの門をたたきます。

2000年にイタリアへ渡った杉原浩介さんもまた、海外での料理留学を目的としてシエナへ辿り着いた日本人の一人でした。ただ、彼が他の研修生たちと違っていたのは、人生をイタリアに賭け現地で料理を追求し続けたことでした。シエナに生活の拠点を移して18年、今年の5月に念願のレストランをオープンさせたのです。

研修生から現地のリストランテオーナーになるまで、そんな彼のプロフィールをご紹介しましょう。

杉原浩介 シェフ (41) 神奈川県横浜市出身


2000年にイタリア・トスカーナ州シエナへ

地元のレストランで経験を積み、2005年に当時のシエナのミシュラン一つ星リストランテ<イル・カント>の厨房へ。3年間、マルケージ・チルドレン※のシェフ パオロ・ロプリオーレ氏に師事する。

マルケージ・チルドレン イタリア料理界の伝説的シェフである故グアルティエロ・マルケージ氏に師事した、現在ミシュランの星獲得店などで活躍するイタリアのスターシェフたち

その後、シエナ中心街の名店<オステリア・レ・ロッジェ2002~2004、2008~2013年>、<リストランテ・ポッリワン2014~2017>でシェフとして活躍し、2018年にリストランテ<カンポ・チェドロ>をオープン。

カンポ・チェドロはシエナの中心街にあり、早くも口コミで地元食通が通うお店となっています。ある常連客はすでに20回以上来店されているとか。



イタリアのガストロノミー誌<ガンベロロッソ>にも早速取り上げられ、<シエナ・ニューオープンの店として最も期待される店>と紹介されました。


いくつかの彼の料理をご紹介しましょう。


Risotto con asparagi ,robiola affumicata e limone candito

燻製ロビオラチーズと塩漬けレモンのアスパラリゾット


Maialino da latte con salsa allo zenzero e verdure di stagione

乳のみ仔豚のロースト、生姜のソース、旬の野菜添え


Semifreddo di yogurt con mela verde, pompelmo e kiwi, con profumo di bergamotto

青リンゴ、グレープフルーツ、キウイとヨーグルトのセミフレッド ベルガモット風味

洗練されたアイデアとシンプルさ、組み合わせた素材の調律が高い次元にあります。イタリアの食材を理解した、スマートながら味わいの深い上品なお皿が特徴的です。

『18年間イタリアでやってきた自信と経験を日本人である自分の中で消化して体現する料理。枠を作らずに、世界の新しい流れや技術も取り入れて料理を考案しています。そして、特に気を付けていることは初心であること、先人の偉大な料理人たちやイタリア伝統料理の基本を忘れないこと。彼らをリスペクトしながら、変化や遊びを加え現地の素材を活かしきるクリエイティブな料理を追求していきたいと思っています。』と杉原シェフ。

RISTORANTE CAMPO CEDROリストランテ カンポ・チェドロ


営業時間

ランチ 12時30分~14時30分 L.O

ディナー 19時30分~22時30分 L.O

定休日 日曜日

住所   Via Pian d’Ovile 54,    53100 SIENA

TEL +39 0577236027

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杉原シェフを支える大湊アキラさんも日本とイタリアでの調理経験が10年以上の料理人。シエナ県コッレヴァルデルザのミシュラン2つ星アルノルフォでも研鑽を積んだ




今でもスタッフと試行錯誤を繰り返しながら高みを目指す杉原シェフのリストランテ・カンポチェドロ。

シエナへいらした際はぜひお試しください!

そして最後に杉原シェフのメッセージ

『日本の料理人の若者たち、イタリアへ来たらぜひ料理について一緒に熱く語り合おう!』

熱い志をもったソムリエや料理人たち、共にある侍の心で日伊イタリアン業界を盛り上げていきたいですね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

シエナ県ミシュラン星付きリストランテ情報→コチラ

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

シエナの伝統行事パリオ!


皆さん、こんにちは!シエナの鈴木です。

イタリアでも暑い日々が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか?

さて、いよいよ今回は自分が住むトスカーナ州シエナの町の伝統行事『パリオ』についてご案内したいと思います。







 

パリオとは?

パリオは年に2回、夏季の7月2日と8月16日に開催される伝統行事です。

シエナの中心街のカンポ広場で開催され、伝統衣装に身をまとったパレードの後、メインに競馬のレースが行われます。

約4万人を動員。その模様はイタリア全国に生中継され、また毎回、イタリアや国外のVIPもシエナ市に招待され観戦します。

パリオとは、毎回国内外のアーティストによってデザインされる絹の旗織物で競馬の優勝賞品のことを指します。

2016年7月のパリオ(優勝旗)

パリオは伝統そのもの

世界中に伝統的なお祭り・行事は数知れど、パリオほどユニークなイベントはありません。

7月のパリオは、シエナ中心街のプロヴェンツァーノ教会(1604年)の聖母マリアを讃えるために17世紀に創設されましたが、8月のパリオの起源はなんと12世紀まで遡り、聖母マリアの被昇天(アッスンタ)を讃えるものとなっています。

つまり、イタリアの宗教的観点からも信仰心と結びつきの深い神聖なる現代の行事とも言えます。


8月のパリオの優勝地区は、大聖堂にて優勝の感謝の儀式をします。


特別、『競馬』のイベントとして広く知られていますが、そこにはシエナに住む人々の信仰心や伝統、誇り、名誉を賭けた戦いがあるのです。(現在のように、競馬のレースの形となったのは1644年頃とされています。)


オフィシャルサイトでは、1600年代からの約400年分のパリオの記録が残されています。


 

コントラーダ

シエナの町、パリオの歴史と切っても切り離せない『コントラーダ』についてご説明しましょう。

シエナの中心街は、17つの地区に分けられています。

それは13世紀頃シエナが一つの国家であった時代、軍隊を編成するために3分割した町内の線引きが基となっています。

その後、細分化、合併などがあり17世紀後半に現在の17つの地区となりました。

地区はコントラーダと呼ばれ、町内会のような機能を持っています。

パリオは、いわば、このコントラーダ同士による町内対抗戦なのです。



各コントラーダ内には、教会や本部、集会場などがあり、それぞれが独自のカラーリング動物などのシンボルを持っています。

(※ヤマアラシ、キリン、鷲、ドラゴン、がちょう、カタツムリ、芋虫、雄羊、ユニコーン、キリン、亀、雌狼、フクロウ、塔、貝殻、波、豹、など様々なコントラーダがあります。)

ニッキオ(貝殻)地区の2000人規模の夕食会


アクイラ(鷲)地区の行進


各コントラーダでは人々が強い結束力を持ち、ひとつの家族のように1年を過ごします。1年を通しての大きな食事会、イベント、特に夏の時期は、パリオに向けての準備や野外フェスタなど結束力を高める行事もたくさんあります。

また、地区によっては友好関係にある地区や敵対する地区などが存在します。

ブルーコ(芋虫)地区の太鼓と旗振りの行進


そして親から子、先輩から後輩に受け継がれてきた文化が現代まで続いているのです。

ルーパ(雌狼)地区の子供たち


パリオは、これらの伝統と血筋を受け継ぐコントラーダの人々が仲間同士の結束力を深め、栄誉を手にするための戦う伝統行事なのです。



シエナの町に来たときは、コントラーダやパリオの予備知識があると一層滞在を楽しめます!

夏の時期は、コントラーダの庭園で行われる一般参加も可能なお祭りなどもやっていますので機会があればぜひ参加してみてましょう!

今週はブルーコ(芋虫)地区のお祭り『バオベッロ』です!

野外レストラン、ピッツェリア、バーベキュー、ワインバー、ビアガーデン、音楽ライブ、アメリカンバー、などなど盛りだくさんのお祭り


来月は今年2回目のパリオ!どこのコントラーダが優勝するのでしょうか?※7月2日のパリオはドラゴ(ドラゴン)地区が優勝しました。

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

パリオのルールや、観戦情報、チケット手配など、詳細はホームページまで!

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

一度開けたワインをできるだけ保存させるためには?

皆さん、こんにちは

シエナのソムリエ鈴木です。

今回は、ワインを家で楽しむ上で役に立つような情報をお伝えしたいと思います。


ワインの仕事をしていると、多くの方から『一度開栓したあとワインはどのくらいもちますか?』という質問を受けます。

家でワインを飲むけど、一本飲みきれない。

余ったワインはすぐ美味しくなくなってしまうので、料理に使う。

皆さんもそんなご経験はないでしょうか?

ワインをその都度飲み切ってしまうことができれば、それに越したことはありませんが、ご自宅で一人または二人で飲む場合は少しずつ楽しみたいという方も多いことでしょう。

一般的にワインボトル一本750mlで、およそ6杯分となります。つまり二人で3杯ずつ。特別な日ならともかく、日常的には1~2杯で十分な場合もあります。

一度開栓したワインがなぜクオリティーを失っていくのか、その根本的な理由はワインが空気と触れ、酸化するからにほかありません。

酸化が進むと、ワインは香り、味わいのバランスを崩してしまいます。

私たち日本人にとって身近なところでいうと醤油と似ているところがあります。醤油は開栓して空気に触れると次第に味わいに鮮度が感じられなくなり、数日経つと色合いも濃くなり風味を損ねてしまいますよね。また保管条件というのも、あまり暖かいところに置いていると痛んでしまいます。裏のラベルにもよく暗い涼しい場所に保管してください、との記載があります。

つまり酸化を促進させてしまう条件というのが、

空気

直射日光

高温度

なのです。これらの条件を避けることが、酸化させない(酸化を遅らせる)唯一の方法ということになります。

中でも、空気と触れることは著しく酸化を促します。

対処としては、飲んだワインに栓をしておくというのは基本的なことですが、最も気を付けなければならないのはワインボトルの中の空気の量です。

ワインに空気が触れると酸化するといっておいて、ボトルの中にたくさん空気が入っていたら栓をしようが何の対策にもなっていません。

例えば、一度開栓したワインを一滴も飲まずにまたコルクで栓をします。

この状態のワインというのは、一度開栓したことによりわずかな空気は入りますが、ボトル自体はワインのみで満たされており、空気残量はほぼありません。尚且つワインボトルの首のところまでワインが達しているため、空気に触れるワインの表面積というのは、極狭い範囲です。

すなわち一度開栓はしたものの、ほぼ酸化は進まない状態のワインになります。


ワインを飲んで、空気が残る体積が大きくなればなるほどワインに対する空気の量が増え、比例して酸化によるダメージも進みます。空気にふれているワインの表面積にしてもボトルの太い胴部分になるため必然的に大きい範囲になります。


ボトル内の空気の残っている量によって酸化の影響に違いがでますから、一杯だけ飲んで栓をしたワインと4杯ほど飲んで栓をしたワインを1日経って比べた時に、よりダメージを受けているのは当然後者のワインになります。

一番保存が難しい状況は、残りが1杯分くらいになったワインです。5杯分以上は空気で満たされていますから、栓をしたとはいえ酸化ダメージは計り知れません。

ワイングッズでは、ボトル内を真空状態にするようなバキュームポンプ式の栓も販売されています。通常使用には効果的ですが、残り僅かになったワインから完全に空気を取り除くのには限界があります。


では、どのように対処すればワインを日持ちさせることができるのでしょうか?

自分が個人的に最適だと思うワイン保存の方法をお教えしましょう。

飲む量が予め決まっている場合。(半量分け)


ハーフサイズの空のボトルと栓を用意する。

そのハーフサイズのボトルをワインで満たし、空気をなるべく残さずに栓をする。

こうすることで、ほぼ酸化の進まないハーフボトルのワインができます。

残っている半分の量のワインを楽しんで、保存したハーフボトルは次回にキープすることが可能です。

ハーフボトルの方は1週間以内に飲むようであれば、ほぼ問題なく楽しめることでしょう。

量が決まっていない場合

いつも、ハーフサイズだけというよりも、その時の気分で自由に量を決めたい時もありますよね。

バキュームポンプ式の栓を使用

・1~2杯分だけ飲んだ場合

ノーマルのボトル(750ml)でそのまま保存、ただしバキュームポンプ式の栓で空気を抜く。


・半分飲んだ場合(約3杯)

ハーフボトル(375ml)への移し替えでワインを満たして栓をする。

・4杯以上の場合

ハーフボトル(375ml)へ移し替え、さらにバキュームポンプ式の栓で空気を抜く。※次の日に飲むようであれば、ノーマルボトル(750ml)のままバキュームポンプ式の栓だけでもOK

・残り1杯分以下の場合。


飲み干しましょう。笑

 

最後に

ワインの美味しさというのは、誰かが決めることではなく、皆さん自身が感じることです。

酸化を少ししている状態でも飲めないということはありませんし、まして、酸化が健康に良くないということでもありません。

レストランやバールで料金をいただいてワインを提供する立場では、一定のクオリティーを保証する必要がありますし、ワインを別のボトルに移し替えることもできません。しかしながら、家で飲む分にはご自身の尺で自由にワインを楽しむことができるのです。

なにより実際に試して、酸化による変化というのを経験し理解することが重要です。

ワインによっては、1日経って空気の循環により硬さがほぐれ、心地よいバランスのワインになるような気難しいワインもあります。

レストランでも熟成が進んだワインなどはデキャンタといって専用の瓶に移し替えて、あえて酸化を促すケースがあるのです。

人間も、狭いところに長いこと閉じ込められていたら、解放された瞬間に伸びをして、深呼吸して、体をほぐしたくなりますよね。

ゆっくりと空気に馴染んで力強いワインの命が芽吹く場合もあるということを覚えておきましょう。

色々なワインを時間をかけて楽しむことでまた新しいワインの世界が広がるかもしれませんね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

ワインを理解する上での心得とは?

皆さんこんにちは、

シエナの鈴木です。

今回は、イタリアでワインを仕事にしている立場の自分から、ワインに興味のある皆さんのお役に立てるようなコラムにしたいと思います。


『イタリア好き』をフォローされてる皆さんの中には、ワインに興味があって勉強したい、もっと知りたい、でも難しい、と思っている方も多いことでしょう。

中にはワイン関係のご職業で、ワインを説明する立場にいる方もいらっしゃるかもしれません。

自分の考えるワインの世界への入門、ワインを理解していくためのコツをお伝えできればと思います。

 

なるべく簡潔に考える

まず、ワインを学ぶ上で一番重要なことは、その人にとって『わかりやすいかどうか』『理解できるか』です。

イタリアワイン。まずは海外の生産品という時点で言語や文化の違いから、少し壁を感じてしまう部分があります。

というのも、当然イタリアワインのラベルはイタリア語で表記されていますし、日本は近年、ワインが一般生活にも馴染む飲み物になってきたとはいえ、イタリアのように家族・親戚がワインを作っているとか、食卓にはいつもワインがある、というような文化ではありません。

そして何より、イタリアワインは全国20州で生産され、多種多様のブドウ品種、製法があることで複雑な体系をもっています。

つまり、なかなか馴染みのないワインを理解していくためには、最初は可能な限りシンプルな情報だけを学ぶべき、ということになります。

そしてどうにか工夫をして、イタリアワインとの間に距離や壁がないように感じることが必要です。

距離や壁を感じた情報というのは、覚え難いですし、仮に覚えられても残念ながらすぐに忘れてしまいます。

物事の輪郭を捉えること

ワインに限ったことではありませんが、最初に理解するべきことというのは物事の輪郭。

大枠の最も重要な情報のことです。そのあとにディティールを学ぶという流れが理想です。

それはどういうことか、一つ例えをしましょう。

 

推理小説や刑事ドラマの中で、とある事件が起こるとします。

犯人を見たという人物が一人。

重要参考人として調書をとり、モンタージュを作成することになりました。

証言内容。

目は二重だった。

鼻はきりっと高い。

Tシャツを着ていた。

靴はサンダルを履いていた。

 

皆さんはこの情報で犯人のイメージを作ることができるでしょうか?

正確で細かい情報ですが、これらは本質を捉えている情報とはいえません。

まずは最初に必要なのは、大枠の情報。

この場合は犯人が

男性だったのか女性だったのか

背や体形が大きいのか、小さいのかが大枠の情報となり重要です。

まつげが何本あろうが、それを知っても意味がありません。

つまり、これらの細かな情報というのはそれぞれカウントすると1つずつの情報ですが、大枠を捉えた情報と比べその本質に近づくための重要度は全く違うのです。

サンダルを履いていたのは覚えていたけど性別はわからないというのは、テストでは2問中1問正解で半分点数をもらえるかもしれませんが、実践力という部分では0点に近いです。

ソムリエの方であれば、これはワインのテイスティング表現のコメントにも同様にいえることです。

赤系果実と黒系果実の言い回しのニュアンスの違いよりも、

まずは、若々しいワインと熟成感のあるワインの明確な違いなどを理解する必要があります。

細かいテイスティングのコメントよりも、そのワインを一番特徴づけている本質を理解することが最も必要なことです。

つまり、より大枠の基本的な情報から、段階を踏んで、より深い詳細の情報を知っていくということが重要です。


それではなるべく簡潔に大枠を理解するということを踏まえて、トスカーナ州のキァンティワインにまつわるいくつかの情報をピックアップして学んでいきましょう。

1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。

2 キャンティのワインは基本的に赤である。

3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。

4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。

5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。

6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。

7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。


 


1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。

この情報では6という数字自体はさほど重要ではなく、まずはトスカーナ州にはいくつの県があるのか、という好奇心を持つことが大事です。

州の中には県があるということは理解しておくことの一つです。

トスカーナ州は10の県からできています。つまりトスカーナ州の大部分でキァンティは生産される、このことを簡潔に理解することが重要です。要はキァンティは生産地域が広い=生産量が多いということです。

 

2 キャンティのワインは基本的に赤である。

この情報では、キァンティワインになじみのない方は、まず

キァンティは赤ワインという認識を作ることが重要です。

その後、理解ができたら、何故『基本的に』なのかと考えましょう。

 

キァンティには、ヴィン・サントという甘口ワインが存在します。(1)

正確にはヴィンサント・デル・キァンティというものになりますが、キァンティの名が付く以上、キァンティ地方のワインの一種と理解することが必要です。(2)

この甘口ワインは基本的には白ブドウ、トレッビアーノ種やマルヴァジア種という土着品種から作られます。(3)

黒ブドウのサンジョヴェーゼ種のみを使う『オッキオ・ディ・ペルニーチェ』という種類のヴィン・サントもあります。(4)

また、キァンティ・クラッシコのヴィンサントも同じように生産がありますが、キァンティとキァンティ・クラッシコのヴィンサントはDOCG認定ではなく、ともにDOC銘柄となります。(5)

またキァンティ・クラッシコのシンボルである、黒い雄鶏マークはヴィンサント・デル・キァンティクラッシコに使用することができませんが、キァンティ・クラッシコエリアのDOPオリーブオイルには使用が認められています。(6)

(1)から(6)は上から順に覚えていくべき情報です。

3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。

ここでも、まずはキァンティのベースのブドウ品種はサンジョヴェーゼ種という基本を覚えてください。

その後、ブレンド認可のパーセンテージを記憶していきましょう。

キァンティは70%以上、キァンティ・クラッシコは80%以上となります。

そして理解する上で重要なのはDOC・DOCG銘柄は規定があり、使用許可品種、ブレンド配合のレシピのようなものが存在するということです。

4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。

現代のワイン規定では、キァンティとキァンティ・クラッシコの差別化が進んでいます。

発祥のエリアと生産品を保護し、より価値とクオリティーを高めようとする動きがあるからです。

ですので、キァンティの中の1つの種類がキァンティ・クラッシコというよりは、2つの別のDOCGという認識になります。

ヴァルポリチェッラやソアーヴェ、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエジなどのワイン銘柄のクラッシコ表記とはまた一線を画す規定といえます。

→過去の記事 キァンティとキァンティクラッシコ

5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。

これも、また差別化をするための特別な規定です。キァンティとキァンティ・クラッシコの基本情報を理解してから、こういった細かい詳細を知識として知っておきましょう。

6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。

トスカーナ州はサンジョヴェーゼの土地で、赤ワインが生産を占めているということを理解しましょう。

サンジョヴェーゼ種はトスカーナ州をはじめ、エミリア=ロマーニャ州、ウンブリア州やマルケ州などの中部イタリアを中心に多く栽培されている品種ですが、南のプーリア州でも広く栽培されている品種となります。

7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。

シエナは自分が住んでいる街です。シエナ県には、キァンティ発祥の村々、ガイオーレ・イン・キァンティ、ラッダ・イン・キァンティ、カステリーナ・イン・キァンティがあります。

また伝統行事であるパリオ7月2日8月16日という日付は非常に重要ですので必ず覚えましょう。笑

ぜひシエナの歴史を体感しに来てください!


ワインを学んでいくというのは、膨大な情報を記憶していくこととも言えます。

今回の1~7の情報は、この記事を読まれた方それぞれに感じ方、印象が違うと思います。

皆さんご自身の情報の優先順位を考えて、

自分のペースでゆっくり楽しみながらワインを知っていきましょう。

最後に

キァンティというワインは、イタリアのトスカーナ州の赤ワインの銘柄である。

トスカーナ州の代表的なブドウ品種であるサンジョヴェーゼ種が使用され、非常に需要のある人気のワインである。(生産量が多く国内外での市場がある)

甘口のヴィンサントワインもある。

まずはこのことが分かれば初めの一歩が踏み出せたといえますね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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