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日本初上陸!自然派ワインのイベントRAW WINE TOKYOへ!

皆さん、こんにちは!

近年、日本でも盛り上がりを見せる自然派ワイン界隈。
先月、5月12日(日)、13日(月)には東京・天王洲で世界中の自然派ワインのイベント『RAW WINE ロウ・ワイン』が開催されました。

世界15ヵ国より120以上の自然派ワイナリーが日本へ集結。イタリアからは最も多い21ワイナリーが出展しました。

彼らの造る自然派ワインを試飲しつつ、色々とお話も聞けましたのでレポートしていきたいと思います!

 

記事の構成

1. RAW WINEとは?

2. 自然派ワインって何?

3. イタリア自然派ワインをテイスティング

4. まとめ&最後に

 

 

1.RAW WINEとは?

今回のイベントである『RAW WINE 』は、フランス人※マスター・オブ・ワインのイザベル・レジェロン(Isabelle Legeron)女史により起ち上げられた自然派ワインのコミュニティで、世界中でワインフェア(試飲イベント)を開催しています。ワイナリーやワインショップのメンバーは世界で1300社以上!

www.rawwine.com

@rawwine

※マスター・オブ・ワイン・・・英)世界最難関のワイン試験をパスしたプロフェッショナルに与えられる称号。世界で415人ほど(2022年)

Isabelle Legeron MW Raw Wineより


イザベル・レジェロンさんは、2009年にフランス人女性として初めてマスター・オブ・ワインとなり、10年以上に渡り、世界中で自然派ワインの啓蒙活動を行っています。その活躍ぶりに、2017年にはFortune誌に『飲食業界で最も革新的な女性』、Vanity Fair誌に『世界に最も影響力のあるフランス人50名』にそれぞれ選出されました。

※著書である『NATURAL WINE -an introduction to organic and biodynamic wines made naturally- 自然派ワイン入門』は日本でも翻訳され出版されています。写真も多めに入っていて読みやすいですよ!

世界中を巡る自然派ワインイベントRAW WINEフェア。次回は今週末にコペンハーゲンで開催!-RAW WINE HPより


賑わいを見せるRAW WINE TOKYOフェア会場内。業界関係者だけでなく、一般のワインラヴァーも参加できるイベントです!一般8000円、業界関係者7000円。PRを行ったサニーサイドアップ社によると、2日間でそれぞれ午前の部、午後の部400名ずつの入場。チケットは完売とのことでした!


 

2.自然派ワインって何?

そもそも、自然派ワインとは何なのでしょうか?私の立場から簡単にご説明しましょう。

“自然派”ワインとは人間の介入が少ない、より自然界に寄り添って作られるワインというような言い方ができるかと思います。

『自然のワイン』というものが存在するならば、木にそのまま瓶詰されたワインがなって収穫できるというようなことですから、自然のワインなどは存在し得ません。

ですが、なるべく自然に、人間ができる限り介入せずにワインを作ることは出来るでしょう。

畑にミミズなどの虫や微生物、あるいは鳥などの小動物が生き生きと生息し、なおかつ多様性のある植物と共存しているような自然のサイクルがある環境でブドウに目一杯育ってもらう。ブドウに付いている酵母やセラーに存在する天然の酵母にてブドウジュースを自然にアルコール醗酵。害虫や病気も自然由来のもので対処する。そんなイメージです。

つまるところ

・非効率化(非機械化)

・無農薬、無添加物(無もしくは低酸化防止剤)

・天然酵母(培養酵母でない)による自然発酵

・無濾過、無清澄など

欧州のオーガニックの認証基準よりもさらに厳格に、化学的な除草剤、農薬や添加物を使わずに、酸化防止剤(亜硫酸塩SO2)の使用なども無添加もしくは極力抑えたワインというものが多いです。

ワインは醗酵飲料であり、酸化する飲み物ですので、殺菌や酸化防止の目的から微量の亜硫酸塩の添加がワイン業界では一般的です。(微量の使用は人体の健康に影響はありません。)

※ワインの含まれる亜硫酸塩について詳しく知りたい方は、ワインショップチェーンENOTECAさんや輸入商社のFIRADISさんによる大変わかりやすい記事がありますのでご参考ください。

酸化防止剤(亜硫酸塩)がワインに与える効果と影響(Enoteca Online)

ワインの添加物について、ちゃんと知りたい①「亜硫酸塩(前編)」(Firadis Wine Column)

そのため亜硫酸塩の使用を控えるということは、外観、香りや味わいが安定しないワインになるリスクもあるため、ワイン造りは一筋縄ではいきません。実際、自然派ワインと呼ばれるものの中にはクセの強い香りのワインなど、バランスが不安定なものを目にすることもあるでしょう。

しかしながら、上手に出来あがった時の生酒のようなエキスたっぷりの自然なブドウ由来のワインは、良い意味で田舎的で、世界中のファンを虜にしています。

今回のイベントも、ただ単に酸化防止剤無添加、自然発酵で造ったワインが集まりました、という試飲会ではなく、まさに職人的技術で仕上げられたすっと収まる味わいで、雑味が無いワインの造り手も多く驚かされました!

 

3.イタリア自然派ワインをテイスティング!

それでは『イタリア好き』フォロワーの皆さんへ、お待ちかねのイタリアの自然派ワインを写真とともにご紹介しましょう!

ピエモンテ州


Marco Curto マルコ・クルト(輸入予定・株式会社ヴィーノフェリーチェ)

笑顔が素敵なオーナーのナディアさん。いきなりバローロです。(笑)

イタリアを代表する高級銘柄のバローロで低酸化防止剤というのは初めて体験したかもしれません。常識的に長期熟成するようなワインはそれだけ酸化のリスクも伴うように思いますが、添加の亜硫酸塩はごくわずか。それにも関わらずとても綺麗な造りで美味しくいただきました。BRAVA!

バローロを代表する村の一つであるラ・モッラ村より。ナディアさんは、バローロ・ボーイズの革新的生産者、エリオ・アルターレの姪だそうです。父や叔父に伝統的な製法や近代的な製法を学んだ上で、彼女は酸化防止剤を極力少なくワインを仕上げる技術と製法を取り入れました。

ブドウ品種 ネッビオーロ、バルベーラ、フレイザなど


Poderi Cellario ポデーリ・チェッラーリオ(輸入・株式会社クオーレクール)

来日のシモーネさん。曾祖父母の代からの家族経営、亜硫酸塩アレルギーのファミリーの方針で自然派ワイン造りへ転換。遊び心あるデザインのラベルですが、中身もジューシーでフレッシュ+程よい濁りがあり、飲み心地の良い※ペット・ナットワインが多かったです!パーティーやカジュアルに飲みたい時に気持ちが上がるようなセレクションでした!

※仏Pétillant Naturel(ペティアン・ナチュール)醗酵途中のワインを瓶詰して、瓶内で醗酵を完了させる。微発泡の泡が残るスパークリングワインで、酵母の澱もあり濁りがある。アンセストラル方式とも呼ぶ。伊Metodo Ancestraleメトード・アンチェストラーレ

ブドウ品種 ナシェッタ、グリニョリーノ、バルベーラ、ドルチェット、モスカート、マンツォーニなど

エミリア・ロマーニャ州


Podere Sottoilnoce ポデーレ・ソットイルノーチェ(日本未輸入)

モデナの丘陵地より微発泡のランブルスコワイン。

オーナーのマックスさん。こちらは一次醗酵後、瓶内にブドウ果汁を添加、再醗酵(二次醗酵)させて微発泡ワインに。澱抜き(デゴルジュマン)は行わないので澱が残ります。近代的なアウトクラーヴェ(密閉式のステンレスタンク)が導入される以前のランブルスコの製法だそうです。※およそ60年前くらい!?

通年の生産20000本はアメリカなどへの輸出もあり完売。現在30000本生産になり、日本への輸出分も視野に入れることができるようになった、とマックスさん。
今はまだ未輸入ですが近く日本へ入ってくる可能性アリです!ラベルも素敵ですね!

ブドウ品種 ウーヴァ・トスカ トレッビアーノ・ディ・スパーニャ ランブルスコ・グラスパロッサなど


Franchina e Giaroneフランキーナ・エ・ジャローネ(日本未輸入)

ポデーレ・ソットイルノーチェとご近所さんのモデナの生産者。

オーナーのルカさん。法律を勉強していたがその情熱からワイン農家に。2015年からプロジェクトを始め2020年に自分のラベルで販売開始。購入した樹齢35年の畑で地ブドウを使った自然派ワイン造り。微発泡の澱引きなしの瓶内二次発酵。素朴さとブドウのエキス、酸のバランスが心地よいワイン。手作りの味わい深さを感じました!試飲中の女性たちもルカのワインにご満悦な様子!

ブドウ品種 トレッビアーノ・ディ・スパーニャ、トレッビアーノ・ディ・モデナ、ランブルスコ・グラスパロッサなど

アブルッツォ州


Caprera カプレーラ(日本未輸入)

2013年に設立したアブルッツォ州の小さな生産者。5種類のラベルを生産。Gran Sassoグランサッソと呼ばれる山(ぜひ写真検索してみてください。独創的で美しい山です。)と海の狭間の自然環境。原産地呼称ワインのモンテプルチアーノ・ダブルッツォ(赤)、トレッビアーノ・ダブルッツォ(白)、チェラスオーロ・ダブルッツォ(ロゼ)などを生産。穏やかな酸で丸みのある柔らかい印象のワイン!

ブドウ品種 モンテプルチアーノ、トレッビアーノ、ペコリーノなど

プーリア州


L’Archetipo ラルケーティポ(日本未輸入)

プーリア州ジョイア・デル・コッレの南、バジリカータ州境にもほど近いエリアの生産者。南イタリアのプーリア州でありながら、残糖感も少ない低アルコールの優しい口当たりのワインを土着品種で生産。自然派の造り手としては、かなり大きい33haのブドウ畑を所有していますが、低酸化防止剤の水準やクオリティは抜かりの無い仕上がり。プーリアは平野部も多いですが、標高300m以上の丘陵、海から約45kmの距離、所謂南らしいしっかりしたボディのワインというよりは、涼しさのある、繊細で綺麗な味わいのワインという印象でした。飲み疲れしなさそうなワイン、日本に輸入されるといいですね!

ブドウ品種 プリミティーヴォ、ススマニエッロ、マレスコ、ヴェルデカ、アリアニコ、フィアーノ・ミヌートロなど

サルデーニャ州


Tenute Dettori テヌーテ・デットーリ(輸入・株式会社ヴィントナーズ)

現当主のアレッサンドロ・デットーリさん

Raw Wine立ち上げ当初からのメンバーのアレッサンドロさんは、まさに自然派イタリアワインの先駆者の一人。もともとのご家族で造っていたワインは従来の造り方でしたが、1998年頃に若くしてワイン生産に参画すると自然派ワイン造りを開始。その当時は健康で、熟した良いブドウを使ったワイン造りを実践したに過ぎなかったそうで、後々その造りがヴァンナチュール(ヴィーノナトゥラーレ)、いわゆる自然派ワイン製法ということを周りに聞かされ知ったとのこと。

Raw Wine2012年の第一回ロンドンフェアから参加しているようです。自分も今回テイスティングを楽しみにしていた生産者でもありました。

『日本で味わえる本物のSUSHI鮨と一緒、良いものほど素材が大事でしょ?魚にしろ米にしろ。ワインも同じで畑でどれだけ健康で良いブドウを原材料にできるかどうか』と茶目っ気ある様子で語ってくれました。

9ラベルのワインの生産をされているそうですが、白はなんと酸化防止剤無添加

まさに職人的味わいとクオリティ。癖のないブドウのゆるやかな優しい味わいを感じられるワインです。白は酸化防止剤無添加とは信じがたい出来。(要は添加せずに自生する亜硫酸塩でプロテクトされているようで安定性があります。)

※写真右。過去にトスカーナ州でワイナリー訪問をアテンドしたワインラヴァーのお客様と偶然再会!世界は狭いですね。一緒にデットーリのワインで乾杯!

ブドウ品種 カンノナウ、モニカ、ヴェルメンティーノ、モスカート、パスカーレなど

シチリア州


Cantina del Malandrino カンティーナ・デル・マランドリーノ(日本未輸入)

シチリア州のエトナ山の東側、海から10kmほどにあるワイナリー。約3.5haの畑から土着の品種で醸したワインを生産。

葉山のシチリア料理店『ピスカリア』オーナーシェフの出雲さんとご交流のある自然派ワイナリーということで、日本人の女性スタッフがお手伝いされていました。(出雲さんは2日目に来場されたようです。)飲食業の他、シチリアの自然派ワインの輸入業もされているそうで、今回のCantina del Malandrinoも輸入検討中と相まってサポートされていたようです。

まさにエキスたっぷりのワイン。火山性のエトナ山の恵み+地中海由来のミネラルを味わえます!ラベルもアーティスティックなシチリアワインでした!輸入が楽しみですね!

ブドウ品種 カッリカンテ、シャルドネ、ミンネッラ、ネレッロ・マスカレーゼ、ネレッロ・カップッチョ

※2015年にイタリア好きイベントが催された際の記事@ピスカリア

※2020年にイタリア好きイベントが催された際の記事@ピスカリア


Porta del Vento ポルタ・デル・ヴェント (輸入・株式会社小川正見&Co.)

シチリア州北西パレルモの生産者、ポルタ・デル・ヴェントです。Marco Sferlazzoマルコ・スフェルラッツォさんにより設立されたワイナリー。澱入りのペット・ナットワインの他、土着品種のスティルワイン(赤白ロゼ)を生産しています。

Terre Siciliane IGT Catarratto Saharay


こちらお気に入り!シチリアの土着品種カタラット100%、大樽熟成で造られる白ワイン。自然派だから、自然派でないから、という括りは置いておいて、シンプルに『上品で伸びのある果実味とミネラル感』。恐れ入りました。

ブドウ品種 カタラット、グリッロ、ペッリコーネ、ネロ・ダーヴォラなど

 

4.まとめ

日本初開催となったRAW WINEフェア、決して安価なチケットではありませんでしたが完売&大盛況!生産者とゲストとの交流、活気ある場内はまるでイタリアの試飲会のようでした!(※イタリアでは全州でワイン造りが行われているだけあって、一般参加のワイン試飲イベントが各地であります。)

今回、世界中から来日してくれた生産者の皆さんや出展の関係者の皆さんへ感謝を伝えたいですね!改めて自然派ワインの注目度の高さを窺い知ることができました。

熟練された職人の自然派ワインはとてもユニークで、素晴らしいポテンシャルを感じられます。添加する酸化防止剤が極少量だったり、無添加のものでも上品な仕上がりのワインが多数あり驚きました。

 

最後に

今回は午後の部(14:30-18:00)の参加でしたが、全く持って時間が足りず(笑)、他国どころかイタリアの生産者を全て回ることも出来ませんでしたので、次回是非リヴェンジしたいと思います!その時は日本や他国の自然派ワインも試してみたいですね!

また今回のように一般のワインラヴァーの皆さんも参加できる有料試飲イベントが日本でもっと増えるといいな、と率直に思いました!

この記事が皆さんにとって少しでも有益な情報であれば幸いです。良いワインライフを!ではでは!

 

・私、鈴木暢彦は日本未輸入イタリアワイン生産者の仲介業をしております。日本で輸入業をされている、もしくは輸入業をご検討されている方のサポートを承りますのでご希望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。今回のRaw Wineには来日しませんでしたが、Raw Wineのコミュニティに所属している日本未輸入の自然派ワイナリー2社(トスカーナ)のご紹介・サンプルお取り寄せ等も承ります。

info@agente-n.com

www.agente-n.com

【トスカーナ州】シエナの南でワインとトリュフ三昧!「アジエンダ・ロギ」を訪ねる

シエナ県の南に位置する、2017年よりモンタルチーノ市に編入したサンジョヴァンニ・ダッソ。ここで高品質のトリュフとワインを生産する農家「アジエンダ・ロギ」をご紹介!



観光化されていない隠れたトスカーナの田舎は、トリュフの名産地


中世の頃からトリュフの産地であったというサンジョヴァンニ・ダッソでは、1980年代初頭にシエナ産トリュフ生産者組合が設立され、今ではシエナ県より約300の生産者が登録するほどの規模となりました。毎年11月には白トリュフの祭典も開催され、試食やコンクール、マーケットなどで大変なにぎわいをみせます。

このサンジョヴァンニ・ダッソにて200年以上続く家系をもつ、ロギ社(アジエンダ・ロギ)のヴァレンティーノとエレナ。ヴァレンティーノの父は1985年頃に土地と家、1.5haのトリュフ狩りのできる森を購入。2000年にヴァレンティーノがロギ社を設立し、2002年から2005年に新たにブドウ畑を植え、ワイン生産も開始しました。現在では、12 haのブドウ畑、3 haのオリーヴ畑、そしてトリュフ収穫可能区域を含むおよそ30 haの森や畑を所有しています。


トリュフハンティングに、ランチやディナー


ロギ社に訪れたゲストは、約1時間半のトリュフハンティング体験や、トリュフをふんだんに使ったビュッフェ、ランチやディナーなどを体験することができます。トリュフ(tartufo)の種類は、季節によって下記のように変わります。

・1月1日~4月30日
 タルトゥーフォ・マルツォーロ(3月=Marzoに由来するこの時期に採れるトリュフ)

・6月1日~9月9日
  タルトゥーフォ・スコルゾーネ(黒トリュフ、サマートリュフ、タルトゥーフォ・ネーロ・エスティーヴォとも呼ばれます)

・9月10日~12月31日
  タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャート(クレーテ・セネーゼの白トリュフ、香りも芳醇な最高級トリュフ)


トリュフの名産地で造るオーガニックワイン


さらにロギ社では、オーガニックのワイン造りを実践しています。ベースとなる白ワインは、トレッビアーノ種70%とマルヴァジア種30%の混醸。一日、果皮に漬けられます(スキンコンタクト)。赤はサンジョヴェーゼ種70%にメルロー種を30%(メルローのみ古いバリック樽での熟成あり)。また、「セニーパレ」という酸化防止剤無添加のサジョヴェーゼ100%のワインが、四千本のみ生産されています。

最近のニュースでは、このエリアから10kmほど離れた世界に誇るワイン名醸地・モンタルチーノに、3haの畑をリースで手に入れたこと。彼らの高級ブルネッロ・ディ・モンタルチーノも限定本数生産が始まりました。

イタリアの忙しい観光地に疲れたら、田舎でトリュフ体験とワインに舌鼓を打つのもいいですね!


アジエンダ・ロギ(Azienda Loghi)
●住所:Loc. I Loghi SP75, 53024 Montalcino(SI)
●TEL:339-182-4946
●営:5月は訪問不可
●HP:https://www.aziendaloghi.com/

(2019年6月)

シエナ日本人シェフのコロナ禍からの復活!ミシュランガイド掲載店へ

皆さん、あけましておめでとうございます!

久しぶりの投稿になりますが、イタリアのシエナ情報をお届けしたいと思います。

今回の記事は、以前イタリア好き通信でも取り上げさせていただきました日本人シェフが営むリストランテ『カンポ・チェドロ』の久しぶりの続報となります。

※↓まだ未読の方は、ぜひ記事を読む前にご覧になってくださいね

前回記事⇒シエナに日本人オーナーシェフのリストランテがオープン!(2018.08.22)

この3年間、全世界で誰もが想像だにしなかった新型コロナウイルスの蔓延による大きな被害がありました。亡くなられた多くの犠牲者はさることながら、ワクチンができた後も経済の停滞による2次的な被害も甚大でした。

世界でも有数の観光大国であるイタリアにおいても、その影響は計り知れないものがありました。海外からの観光客は姿を消し、度重なるロックダウン、また日本と同様、ひいてはぶり返す感染者数に多くの雇用が失われ、ホテル、リストランテやトラットリア、バールなどの外食産業も停滞どころか崩壊寸前とまでなりました。

#Andra’ tutto bene(Everything’s gonna be all right)すべてうまくいくさ

コロナ禍の絶望の淵でも、国民は希望を失わないようお互いを奮い立たせ、このようなハッシュタグとともに長い我慢の時を過ごしてきたのです。

シエナの中心街で2018年の5月にリストランテをオープンした日本人の杉原浩介さん(45)も、開店2年目にこのような危機が訪れるとは思ってもみなかったといいます。当初は、発生源がアジアだったということもあり、欧州に住む日本人として地元住民からもあからさまに避けられることもあったとのことでした。また、国からの要請で店を閉めざるを得ないときも、家族と過ごせる時間が多くなったためポジティブに考えようとも努力したそうですが、改善しない状況があまりにも長く続くことに大きなストレスを感じたそうです。

そして、スタッフの雇用もあったため、補助金から賄えなかったスタッフのサラリーに、時には自身の貯蓄を充てるなど経済的にも多くの苦労があったとのことです。

2020年5月 コロナ禍の杉原シェフ
2020年5月 コロナ禍の杉原シェフ


杉原シェフは、シエナ中心街でデリバリーなども行いながらコロナ禍を耐え忍び、その後テラス席限定など条件付きの時期もありましたが、ようやく少しずつ店の営業を再開できるようになりました。2021年になるとイタリア国内だけでなくヨーロッパからの観光客も戻り始め、状況が改善。そして去年、ほぼ通常通りの営業が可能になり、店は再び多くの地元住民や観光客で賑わうようになりました。

そんな中、去年の秋口にさらなる朗報が届きます。世界的な権威のあるミシュランガイドに店が掲載されたのです。ミシュランガイドの公式サイトにおいて掲載されているシエナ中心街のレストランはたった5軒しかありません。日本人オーナーシェフ杉原氏のリストランテ『カンポ・チェドロ』が世界的なガストロノミーガイドに認められたのです。


 

この反響は現在も続いており、店は満席が続き予約を断ることも多くなっている状況だそうです。

去年10月に取材訪問した際、【イタリア好き】記事のために料理を用意してもらい写真撮影をしました。珠玉の料理をご紹介しましょう。

Battuta di Gamberi con salsa tartar e riso soffiato allo zafferano サフランと炊いたお米の揚げ煎餅と生海老つくねのタルタルソース(創業時からの定番の人気前菜)


Risotto con rapa rossa, castelmagno e anguilla カステルマーニョチーズと蒸しうなぎのビーツ(赤カブ)リゾット


Pici con salsiccia, ovuli e cannolicchi サルシッチャと卵茸とマテ貝の手打ちピーチ


Ombrina impanato con maionese al wasabi, crema di limone e capperi ワサビマヨネースとパン粉揚げのオンブリーナのレモンとケッパーソース ポテトピュレとチーマ・ディ・ラーパ添え ※Ombrina ニベ科の魚、ウムブリナ


Cosce di faraona croccante su crema di porri e arancio ほろほろ鳥のクロッカンテ ネギとオレンジソース


Dolce “Terra” cioccolato, nocciola e frutta della passione チョコレートとヘーゼルナッツとフルーツの『土』のデザート



コロナ禍の中でも修行を続ける現地の日本人料理人たち


杉原シェフは、コロナ禍の空き時間を利用し、以前から趣味としていた盆栽などのスキルもブラッシュアップ。様々な作品が店内やテラス席を彩ります。

それぞれ料理のイメージを伝え、隣県アレッツォの職人に手作りしてもらったというこだわりの皿


オープン時と比べ、店のワインリストもトスカーナ州を中心にパワーアップ

銘柄Chianti Classico(キャンティ・クラッシコ)をはじめ、白Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ)、 長熟向きの赤Brunello di Montalcino(ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ) など地元の代表的な銘柄を料理に合わせ楽しむことができます。


左から前菜担当伊久良健都さん、オーナーシェフ杉原浩介さん、ドルチェ担当三浦大樹さん、プリモ/セコンド担当遠藤万央(まお)さん ※2022年10月訪問時

※嬉しいことに、遠藤さんは前回のイタリア好きの記事を見て杉原シェフの店を知り、研修することになったそうです。

杉原シェフ曰く

『コロナ禍でも、なんとかやってこれたのは研修に来てくれた日本人料理人やイタリア人たちスタッフみんなのおかげです。あとは自分は運も良かった。2018年に店を開けたんですが、もし翌年に開業していたら間違いなくすぐに閉店する羽目になっていたと思います。初年度にある程度売り上げを立てられたからこそ前年度比の補償も受けることができたし、何より地元やグルメな方たちに名前を知ってもらうことができた。当時から支持してくれたお客さんたちのおかげで今も何とかやっていけています。』

ミシュランガイドに掲載されたことに関して・・

『掲載されたときは、本当に嬉しかったです。研修中のスタッフを含め日本人たち皆(国民性としても)、根性論ではないけれど皆大変でも頑張っている人は多い。そういった努力を見てくれている人はいるっていう嬉しさがありましたし、自信にもなりました。他の情熱のある日本人の料理人の皆さんにもそれを伝えたいと思います。』

『シエナ県の郊外には、現在ミシュラン“星付き”のリストランテがありますが、シエナ中心街には歴史上星付きリストランテが誕生していません。ミシュランが全てというわけではないですが、自分がいつか歴史を変えられたら、という思いはあります。』

 

一歩ずつ着実に歩む新生カンポ・チェドロ。杉原シェフの挑戦は続きます。

日本でもコロナ禍で苦労された飲食店の皆さんは多いと思いますが、地球の裏側でも、頑張って乗り切ろうとしている日本人たちがいます。ようやく規制も緩和されましたから、イタリアも日本も外食産業を今こそ皆で支えて、また盛り上げていきたいですね!

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リストランテ カンポ・チェドロ

(インスタグラム https://www.instagram.com/ristorantecampocedro/

営業時間 ※2023年1月9日から23日まで冬季休暇中

24日㈫から営業再開

ランチ 12 時30分~14時30分 L.O

ディナー 19時30分~22時30分 L.O

定休日 月曜日

住所   Via Pian d’Ovile 54,    53100 SIENA

TEL +39 0577236027

HP(伊語)  http://www.campocedro.com/

メール(日本語可) info@campocedro.com

新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その2

皆さんこんにちは!

今回は前回の記事<新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その1>の続きとして、いよいよコッチョペーストタンクの全貌を明らかにしていきたいと思います。

前回記事

古代レシピのセメント

まずコッチョペーストというのは、もちろん素材のことなのですがその起源は2000年以上前の古代ローマ時代にまで遡ります。

当時、家の外壁や道路工事、レンガのつなぎに使われたりしていたセメント、それがコッチョペーストです。

ローマ人は現地で調達することができた自然環境の砂や石、岩を砕き調合して程よいバランスのセメントを作っていました。

その素材レシピを現代にワイン用タンクとして蘇らせたのが、トスカーナ州ピサ県のポンテデーラのドランクタートル社。世界で唯一の“コッチョペースト”タンクの製造者です。


 

コッチョペーストのセメントレシピをベースに強度を加える配合をし、ゆったりと酸化熟成を促すタンクを作りあげました。

醸造・貯蔵タンクは効率・機能性をもたらすため、天井部分と底の部分はステンレスの金具で接続してあります。


単なる“アンフォラ”のタンクではなく、アンフォラの素材要素を加えた近代的醸造のためのタンクと言えます。土器のアンフォラは得てして酸化が激しく進むものが多いのですが、このコッチョペーストはモダンで上品さを纏うワインでありながら通常のステンレス・セメントタンクや木樽では成し遂げなかったような酸化熟成を実現しています。

酸化のスピードは素材の密閉性(密度)によるところが大きいですが、一般的なアンフォラとコッチョペーストとの大きな違いを挙げるとすると、アンフォラが仕上げに火を使用して固めるのに対し、コッチョペーストは自然に冷やし固める方法を取っています。火を使わないことで土素材に密閉性がより保たれるのです。

このことで、木樽のようなミクロの隙間を持っていながら、よりニュートラルな素材であることで、ブドウ本来の資質を素直に熟成によって引き延ばすことができるユニークなタンクとなりました。

この新しいムーヴメントはじわじわと国内外の有数のワイナリーたちの目に留まることに。


地元ワイナリーのカイアロッサ  http://www.caiarossa.com/ja/


同じくドゥエマーニ http://www.duemani.eu/


テヌータ・ディ・ギッザーノ http://www.tenutadighizzano.com/


ダヴィヌム  http://www.davinum.it/site/en/


 

ヨーロッパ各国をはじめ、アメリカ、チリ、オーストラリアなど、コッチョペーストはすでに世界のワイナリーへ輸出されています


チリのディストリビューター


ルーマニアワイナリー、トハニ

その他にも北はリヴィオ・フェッルーガ、中部サンジミニャーノのモルモライアも試験的にコッチョペーストを導入しています。

イタリアワイン界では、今までも時代の移り変わりにより、フレンチオークのバリック樽やステンレスタンクなど色々な醸造・貯蔵設備が導入されてきましたがこのコッチョペーストも時代の支持を獲得するのでしょうか?はたして!?

それでは工房とショールームの写真をご覧ください。













右がコッチョペーストのプロデューサーのエンツォ・ブリーニ、ピサで醸造を学びトスカーナはモンテプルチアーノのワイナリーではプロとして醸造家をしていました。またクラフトジン“ジネプライオ”の造り手でもある若手実業家!

世界で唯一のコッチョペーストタンク、今後もその動向を追っていきたいと思います!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

Instagram @toccaasiena

HP 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

新しいワインの貯蔵タンク、コッチョ・ペーストとは。その1

皆さんこんにちは!

ご無沙汰しております。今回はイタリア・世界のワインメイキングの新たな試みとしてトスカーナ州に登場したコッチョ・ペーストというワイン用貯蔵タンクをご紹介したいと思います。

皆さんなんのことやら、サッパリ。。ですよね。

ということで、今回はコッチョ・ペーストという貯蔵タンクの話題を取り扱う前に、ひとまずは現代のワイン造りにおける基本的な醸造設備・タンク類についてクローズアップし、お勉強していきましょう。

 

ワインは、ボトリングされるまでは大容量の液体です。

つまりは、ブドウを絞ってできたモスト果汁(伊語、果汁・果皮など)がアルコール醗酵したのち、“ワイン”となってボトリングされるまでは、当然ながら醸造所には、それを収める大きな容器が必要なわけですね。

容器なんて何でもいいのでは?と考えるほどワインの世界は単純ではありません。


こちらはグロッセート県、チェレスティーナ・フェ社の醸造タンク

ところ狭しとステンレス製のタンクが並んでいます。


サンジミニャーノのヴァニョーニ社はステンレスタンクが右側にあり、奥にはセメント製のタンクも確認できます。


モンタルチーノのレ・ラニャイエ社の伝統セメントタンク。

タンクに記載の“HL54”というのは、54ヘクトリットルと読みます。すなわち5400リットル分。ワインとして換算すると7200本(1本750ml)くらいの量です。


トスカーナは海沿い、新鋭フォルトゥッラ社でもステンレスの他、近代的セメントタンクで醸造を行います。


こちらはサンジミニャーノのコロンバイオ・ディ・サンタキアラ社のセメントタンク。使い込んだような古き良き時代のセメントタンクですね。

ワインに関して、一般的には“樽で寝かせる”というイメージが常にありますが、ワイン造りに必要なものは樽だけではありません。

むしろ、木の樽というのはワインを造ったあとに熟成をさせて仕上げていく工程で使用するというようなもの。

つまり、ワイン造りにおいてブドウ収穫後の最初のプロセスである醸造には、得てしてセメントタンクやステンレスタンクが使われることが慣例なのです。

醸造のあと、木の樽に移され熟成させるタイプのワインもあれば、そのままセメントやステンレスで貯蔵され、木の樽での熟成プロセスを踏まないままボトリングされるワインも多くあります。

これらセメントやステンレスといった2つの種類は、単純に素材の違いもありますが、ワイナリーのしっかりとしたワイン造りのヴィジョンのもと、それぞれ理由があってその素材を使っているということを理解しましょう。

2つの共通した特徴は、まずその素材が無機質の要素を持っているところ、つまりニュートラルな素材で素材自体はワインにはどんなエフェクトも与えないということです。

そして、温度を醸造上の適温に抑えることができるところも重要なところです。

アルコール醗酵の際、モストの温度は上がっていきますが、熱はワインにとっては良くない要素ですので冷やしながら醸造を行っていくことが良いワイン造りの基本となります。

温度が高くなってしまうと、酵母がうまく働かず醗酵に障害がでたり、綺麗なブドウ由来のアロマが失われたりと問題を生じてしまいます。(赤ワインは25~28℃前後、白、ロゼは15~18℃前後に調整することが多いようです。)

近代化に伴い導入された醸造用ステンレスタンクというのは、通常温度調整が可能なオプション機能が付いているものが多く、今ではワイン醸造の基礎的設備となっています。外面が2重構造になっていて冷水を巡らせて冷やす方法や、タンクの中に鉄板のような冷却装置を入れて冷やす方法など様々ですが醸造施設に設置された管理機器ですべてのタンクの温度が把握できるようになっています。

余談となりますが、古代ローマ人もワイン造りにおける熱を抑えることの重要さを理解していて、ワイン造りの際はモストの入った土器に水を流しあてながら醸造していたという話もあるようです。

セメントタンクに関しては、元々トスカーナの醸造において広く使われていたタンクの種類で、ニュートラルな素材であり、外部からの影響がない。低温を留まらせる強さのある素材。セメントのしっかりした厚みがある分、外気による温度変化の影響もないという特色があります。かつては温度を下げるために、温度が高くなるごとにワインを別のタンクに移し替えて戻す(デレスタージュする)ことにより温度をある程度下げていたようです。現在は、伝統的なセメントタンクでも温度調整のできる機能を後付けしたところも多くあります。

セメントタンクとステンレスタンクとの違いを一つ挙げるすると、セメントに関してはミクロの単位で酸素が届くことになり、ワインがいわば小さな“呼吸”をすることできるという点です。

※ゆっくりした微量の酸化は、とがったタンニンを柔らかくする効果もあり心地よさにつながります。

つまり、ステンレスと比べ、まったくもって影響のない0ゼロというほど密閉されていない素材ということになります。

そこには、本当に小さな、ワインの成長を促す“変化”を見出すことができるのです。

ステンレスはワインのフレッシュ(新鮮)さやアロマなどを閉じ込める長所的効果がある分、酸化によるワインの進化、成長を期待する容器とは言えません。

それに比べるとセメントタンクはゆったりとした極小さなワインの呼吸による熟成効果も期待できる、ということになります。

これは、どのようなワインを造りたいか、生産者の哲学や好みもあるので、ワイン造りにおいてはこのような手段があるのだという理解に留めるので十分でしょう。

少し長くなってしまいますが、今回はあと一つだけ

モンタルチーノのラ・マジャ社のセラー


同じくモンタルチーノ南部のポッジョ・ディ・ソット社の醸造施設。

これは木の素材の醗酵槽です。前者のラ・マジャ社では、トップラベルであるブルネッロ・ディ・モンタルチーノに関してのみ木の醗酵槽で醸造。

ポッジョ・ディ・ソット社ではロッソ・ディ・モンタルチーノ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノともに木の醗酵槽にて醸造していきます。(先にワインを造ってから数年後試飲を経てロッソとブルネッロに分けるというやり方)

これは、もともとのワインとなるサンジョヴェーゼ種とそのモストの力強さから、醸造の段階で“より深い呼吸”を促しながらワイン造りを行っていくという一つのテクニックとなります。当然コストや、温度変化による対応もよりマニュアルとなる部分もあるので(ルモンタージュを行いつつ温度を下げるなど)より贅沢で手間のかかる手法ですが、しっかりと熟成を見据えた種類のワインを造っていく上では、近年しばしば見られる種類の醸造設備と言えます。

おまけ


トスカーナはルッカのヴィッラ・サントステファノ社のステンレスタンク。“マイクロ・オキシジェネーション・システム”というミクロの酸素供給(オキシジェネーション)システムにより、タンク内のワインの呼吸強度を設定できるようです。

色々な生産者、色々な醸造設備。ワイン造りも一筋縄ではいきませんね!

次回はいよいよタイトルにありました“コッチョ・ペースト”のタンクの登場です。

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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世界で最も美しい広場、シエナ・カンポ広場の1年

皆さん、こんにちは!

今回はトスカーナ州の中世都市シエナの町の中心にあるカンポ広場(Piazza del Campoピアッツァ・デル・カンポ)を写真とともにご紹介します。


イタリアでは、大なり小なりどのような町に行こうともその中心には人々が集う広場があります。

数多くあるイタリアの美しい広場の中でも、世界遺産シエナの中心街にある『カンポ広場』は世界で最も美しい広場の1つともいわれています。

独特のフォルム

カンポ広場を価値づける大きな特徴の一つがそのデザインです。

9つのラインが引かれるお扇形をした全体のフォルムというのも独特ですが、さらにそこへ傾斜が加わります。


世界の多くの広場は、平面の作りとなっていることが通常ですが、カンポ広場は向い正面のマンジャの塔及びパラッツォ・プッブリコ(市庁舎美術館)を囲むように緩やかな傾斜のある広場となっているのです。

この傾斜は、当時のシエナの貴重な水源として雨水を集める役割があったと言われています。


人々が腰を下ろしたり、恋人同士が寝そべって日向ぼっこしたりとリラックスしやすいのもこの絶妙な傾斜の心地が良いからにほかなりません。

一般的な平地の広場で地べたに座ったりすることには抵抗があるものですが、カンポ広場は不思議なことに人々がいとも簡単に腰を下ろしてしまうのです。


カンポ広場の1年を写真とともにご紹介しましょう。

メルカート・ネル・カンポ

こちらはメルカート・ネル・カンポ(カンポ広場の市場)で通常4月と12月に催される市場です。(初旬2日間ほど)

野菜やサラミ類やペコリーノチーズ(羊のチーズ)などの地元生産者たちが直売しにカンポ広場に集まります。


傾斜がある分、会場作りも大変そうです。笑


ミッレミリア

5月には国際的にも有名なクラシックカーレース『ミッレミリア』がシエナへもやってきます。

北部のロンバルディア州ブレシアから南へ下り、ローマから再びブレシアへと北上します。



2019年(予定)は5月15日(水)ブレシア発

18日(土)に再びブレシアでゴールです。

シエナへは大会3日目の5月17日(金)、ローマ~ボローニャ間でカンポ広場を経由することになります。

毎年、参加されている堺正章さんもシエナを駆け抜けます。

パリオ

シエナといえば伝統行事パリオ!

毎年7月2日と8月16日に行われます。※それぞれ独立したパリオとなります。

中世から続くこのイベントへは世界中からたくさんの観戦客が訪れ、このカンポ広場にてまさしく『伝統』を目撃します。



→イタリア好き通信記事『シエナの伝統行事パリオ!』

年末コンサート


毎年大晦日に行われるカンポ広場のライブコンサートです。

国内の著名アーティストが招かれ、無料でライブが行われます。

その他にも、国内のチョコレートメーカーが集まるイベント『CiocoSI』やクッキングショー、カーニバル、パリオ優勝地区のパレードなどが行われ、カンポ広場はまさにシエナの人々の生活の中心となっている広場です。

また、去年はNETFLIX映画のダイナミックなカーチェイスの撮影も行われました。(今年2019年配信予定 6アンダーグラウンド原題)


600年以上にわたってシエナの中心であり続けるカンポ広場。皆さんも訪れた際にはぜひ横になってシエナの歴史に想いを重ねてみてはいかがでしょうか?

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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マリザおばあさんのブルネッロ

今回は、トスカーナ州モンタルチーノでたった一人でワイナリーを営む86歳のおばあさん、マリザさんをご紹介します。

モンタルチーノ中心街の北側の城壁を抜けてしばらく坂を下ると、地元銘柄ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイナリーの案内看板が見えてきます。


右には『イル・パラディーゾ・ディ・マンフレーディ』、左に『イル・マッロネート』と小さな造り手でありながら日本のイタリアワイン愛好家にもその名が知れたワイナリーたちが。

さらに森の小道を下り、奥まで進んでいくと小さな一軒家がありました。

『モリナーリ・カルロ ポデーレ・レ・フォンティ』

知られざるブルネッロ生産者の一社で、マリザさんのご自宅兼ワイン醸造所です。

畑は目の前にある1ヘクタールにも満たない畑のみ。


マリザさんは、現在この家に一人で暮らしながら畑管理とワイン造りをごく少数のオペレーターと一緒に行っています。


マリザさんは北部ロンバルディア州の出身。20歳の頃にトスカーナの海で知り合った同じロンバルディア州出身のカルロさんと結婚、同州ヴァレーゼで長く暮らしたのち1971年にトスカーナ州へと越してきました。モンタルチーノにその後家を建て、カルロさんのワインへの情熱から1980年にブドウの苗(ブルネッロ種)を一緒に植えました。

1993年がマリザさんたちにとってブルネッロ・ディ・モンタルチーノの初ヴィンテージ。


そのブルネッロ・ディ・モンタルチーノが5年の熟成を経て、ようやく完成した1998年にカルロさんは病に倒れ帰らぬ人になりました。

彼らの一人娘であるエレナさんはサルデーニャ州の家に嫁いでいることもあり、マリザさんは彼と愛したワインを一人で守り抜くことを決意。長年の夢を実現したカルロさんの意思を引継いで今も一人でワイン作りを行っています。

 

マリザさんと猪

このエリアの森にはかつて3匹の大きな猪が住んでいたそうで、収穫のシーズンには甘くて美味しいブドウを食べて畑を荒らしてしまっていたのだとか。


畑を守らなければならないマリザさんにとってブドウを食べてしまう猪たちはまさに天敵です。

そんな中、偶然このエリアに人間のハンターが猪の狩りに来ました。食用にするためで時期によって狩猟解禁となるのです。

しかしマリザさんはその危険を猪たちに知らせ、その場から逃がしてあげたそうです。

いつもは憎い猪たちでも、もしいなくなったらと思うと寂しかったのかもしれませんね。

マリザさんと車

マリザさんはご高齢であるのですが買い物には車ででかけます。数年前に単独の衝突事故をしてしまった時のこと。その時にしていたシートベルトが事故の衝撃で急に締まり胸が非常に苦しかったそうで、それ以来シートベルトはしないことにしたそうです。笑

実際、その後2回目の小さな追突事故がありましたが、シートベルトをしていなかったおかげでケガがなかったと言い放つ始末。地元のおまわりさんも苦笑いです。くれぐれも運転には気を付けてくださいね。

マリザさんとメディア

マリザさんは、商業的なマーケティングやジャーナリストやメディアをあまり信用していません。いかに人々が情報化社会の中で真実を見失い、誘導されてしまうか。

ある時、訪問後帰り際にマリザさんから1本ワインをプレゼントされました。彼らのブルネッロ・ディ・モンタルチーノでヴィンテージは『2002年』。

2002年というのは、業界では言わずもがな、非常に雨が多かった年でイタリアでは不作とされるヴィンテージです。

バッドヴィンテージのワインを渡す際に一言、『飲んでみな』と言われました。

後日ボトルを開けてみると、驚くことに極めて完成度の高いワインがそこにはありました。ハッキリした力強い輪郭と凝縮感。ゆるやかでまとまりのある果実味と、こなれたタンニンで芳醇なワイン。嫌味のない不作の年とは想像ができないようなブルネッロでした。

一般的には評価が低かったとしても試してみなければわからない。はなから決めつけてしまう先入観を持ってしまうのは良くないことだと教わりました。

実際、2002年のように『不作の年』というのは多くのワイナリーで非常に難しいワイン作りを強いられる年であるのは事実ですが、場所や状況によっては被害を逃れた、または最小に抑え対処できたというケースもあるのです。

メディアや世の中の情報に踊らされ過ぎないようニュートラルに物事をみれたらいいですね。



それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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モンタルチーノのワイナリー観光!1ヘクタールの畑の価値は?

皆さん、こんにちは。

今回は、シエナ県南のモンタルチーノのワイン情報です。

 

モンタルチーノの生産者組合


イタリアの中でもトスカーナ州は実にワイン観光が盛んな州で、シーズンを通して多くの国内外のゲストが訪れますが、その中でもモンタルチーノはイタリアにおけるワイン観光の先駆けとなった地域とも言われています。

ワイン観光情報の提供や地域振興に一役買っているのが、地元の生産者組合(コンソルツィオ・デル・ヴィーノ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノConsorzio del Vino Brunello di Montalcino)です。

言わずと知れたモンタルチーノ地区のワイン銘柄『ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ』の生産者の集いです。


地元の試飲イベント『ベンヴェヌート・ブルネッロ』


1967年に創立、登録は任意(年会費制)となり、現在208のワイナリーが加盟しています。

加盟したワイナリーは、組合が国内外で行うプロモーション活動やイベントに参加することができます。また組合を通じワイナリー訪問・試飲などの観光情報を共有することが可能です。

2015年ベンヴェヌート・ブルネッロ・ジャパンツアー(東京・大阪)


ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ生産者組合ホームページ<日本語>

イタリア中の多くのワイン産地にはこのような生産者組合があり、その土地のワイン銘柄のクオリティー・地位向上のための活動、ワイン観光のサポートなどを行っています。

 

モンタルチーノの広さ

モンタルチーノの町の入口にあるワイナリーの地図


モンタルチーノ地域の総面積が240㎢(平方キロメートル)。そのうち、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイン用の葡萄畑(ブルネッロ種)の総面積は21㎢(2100ha)と規定されています。

東京23区 計619㎢

モンタルチーノ生産地域 240㎢※

ブドウ畑 計35㎢

・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノDOCG 21㎢

・ロッソ・ディ・モンタルチーノDOC 5.1㎢

・モスカデッロ・ディ・モンタルチーノDOC 0.5㎢

・サンタンティモDOC 4.8㎢

・その他 3.6㎢
(※2017年にサンジョヴァンニ・ダッソが編入し、現在モンタルチーノ市の面積は310㎢となっています)
 

生産可能地域に対し約15%がブドウ畑。多くが森林地帯となっている丘陵地で、オリーヴの他、穀物の畑の広がる田園地帯です。南には、アミアータという標高1738mの山がそびえます。また、東京23区の人口密度約15000人/㎢に対し、モンタルチーノは、たった19人/㎢。『人間より猪の方が多い場所』と言われるように、まさに手つかずの自然があふれるエリアです。

 

ブルネッロの畑を所有するためには!?

ワイナリーNOSTRAVITA ノストラヴィータ


世界にその名を轟かすブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワイン畑のオーナーになる、そんな夢をお持ちの方はいらっしゃいますでしょうか?

現状ではすべてのブルネッロの畑には各オーナーがいるため、新たにブルネッロの畑を所有するためには、現在のオーナーから畑、または権利を購入する(譲り受ける)他ありません。※現在の2100ヘクタール以上、ブルネッロ用の畑を増やすことができません。

2015年のイタリア経済ジャーナルサイト<イル・ソーレ・24オーレ>の記事によると、モンタルチーノの1ヘクタールの畑は、およそ35万ユーロ~40万ユーロの価値とされています。(現在の日本円で約4500~5140万円。)

イタリア名醸地の1haの畑の平均的な価値

バローロ 約40万ユーロ(クリュによっては100万ユーロ以上)

バルバレスコ 約35万~50万ユーロ

フランチャコルタ 約25万ユーロ

ボルゲリ 約25万~30万ユーロ

 

最後に

ワイナリーCAPARZOカパルツォ


ワイナリーPODERE LE RIPIポデーレ・レ・リーピ


世界に知られるモンタルチーノのワイン。その功績の陰には組合を始め、生産者たちの団結と努力があったのは言うまでもありません。

12月以降の冬の期間でも、訪問が可能なワイナリーはあります。トスカーナを象徴する田園風景に囲まれたモンタルチーノ。ぜひ一度ワイナリー巡りに出かけてみてはいかがでしょうか?

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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ワインを理解する上での心得とは?その2

皆さん、こんにちは。シエナのソムリエ鈴木です。

今回は、“ワインを理解する上での心得とは?その2”と題して、普段ワインに馴染みのない皆さんにもなるべくわかるように、ワインの世界をご案内したいと思います。

ワインを理解する上での心得とは?その1→コチラ


前回もお話ししたように、このワインの世界が難しい理由の一つに、その多様性があります。

ブドウの種類であったり、産地、畑の土壌や気候の条件、またブドウの収穫の仕方や製法により色・香り・味わいに違いがでます。そして瓶詰したあとも熟成において変化が生まれます。

つまり工場でつくられるような飲料は、毎年同じ内容物で常に同じ味わいでなければいませんが、ワインは様々な条件下で味わいに変化・違いが生まれる飲み物なのです。

そのため、プロのソムリエやジャーナリストの方であっても存在する全てのワインを知り尽くすことはできませんし、全てのワインの熟成・変化を完全に理解することはできません。それだけ混沌とした膨大な種類のワインの世界の中に我々はいるのです。

どのように理解していけばよいのでしょうか。

『ワインの理解する上での心得その1』でお話したように、まずはなるべく簡潔に考え、そしてワインの世界を身近に感じるように、何かに例えてみましょう。

 

ワインの世界=音楽の世界

今回は皆さんがよく知っている音楽の世界で例えてみるとします。

音楽には、クラシックからロック、ポップス、R&B、ジャズ、レゲエ、テクノなど、色々なジャンルがあり、それぞれ世界中にたくさんのアーティスト、演奏者がいます。

皆さんも個人的に好きなジャンルの音楽や贔屓のアーティストがいらっしゃるのではないでしょうか?

ワインも同様に色々な種類があり、それを造っているいわばアーティストなる生産者たちが存在しています。原料となるブドウの品種にはそれ自体が甘いアロマやハーブのようなアロマを持っていたり、酸や渋みが特徴的な品種、皮からの色合いが強く抽出される品種、フローラルなアロマやスパイシーなアロマが特徴の品種など、ワインに反映される様々な個性があります。また淡くゆるやかで軽快なワインから濃厚で凝縮感のあるタフなワインまで、その種類は千差万別です。

つまり、皆さんが音楽のジャンル(体系)を理解しているように、まずはワインにどういった味わいの種類があるのか、そしてその個性を理解する必要があります。

注意したいのは、このワインの個性というのは甲乙をつけるべきものではないということです。つまり、どちらの方が優れているとか、劣っているという議論は通常しません。何故なら、ここで話しているのは種類(ヴァラエティー)のことで質(クオリティー)の話ではないからです。
 

ワインにおけるクオリティーとは?

一般的にクオリティーが高いワインというのは、外観、香りや味わいに澱みや雑味(不快な要素)がなく綺麗であること。酸や糖、ミネラル、渋みなど、ワインとしてのバランスの良さ。ブドウからの成分の抽出の強さ、奥深さ、余韻の長さなどの点の評価があります。

クオリティーを得るためには?

日照や気候、土壌の条件に恵まれている産地にもなれば、ワインの質につながる良いブドウが得られる可能性がありますが、それ以外にも、ブドウ畑の仕立て方、その状態、管理や選定の仕方、収穫時の選果やタイミング、醸造の仕方・テクニックなどワイナリーの投資と努力によってもたらされる部分も当然あります。特に選定や選果によって、一つの畑からの得るブドウの生産量(収穫量)を抑えるということは、質(クオリティー)を高める上で重要です。

音楽の話に戻りましょう。

音楽の“ジャンル”をブドウ品種やワインのタイプの“ヴァラエティー”とした場合、“クオリティー”にあたるのは、演奏者のスキル、または音楽が流れるステレオの音質と言えます。

すなわちクオリティーが良くないワインというのは、楽器の音・メロディーがずれていたり、音質に雑音・ノイズが混じっている、音量が小さすぎる・大きすぎるというようなことになります。


ワインの世界を理解し楽しむためには、特別な嗅覚や味覚が必要ではありません。世の中に溢れている音楽のように、ワインを楽しみ、経験を積めばよいだけなのです。

その中で、ワインのタイプとそのクオリティーを理解していくことができるでしょう。

ぜひ色々なワインを味わって、皆さんの好きな音色を探してくださいね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

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シエナに日本人オーナーシェフのリストランテがオープン!

皆さん、こんにちは!シエナの鈴木です。

今回はイタリアで頑張っている日本人シェフたちに関するお話です。

イタリア料理は今や世界中に知られる人気料理の一つとなりました。パスタをはじめオリーヴオイルやトマト、ハーブを使った伝統~創作料理、魚介~肉・ジビエ料理まで日本でもたくさんのレストランがあり美味しいイタリアンを楽しむことができます。

日本でイタリアンを身近に楽しめる、そのような環境があるのも日本の情熱ある料理人たちがイタリア料理を学び、それを還元してくれているからに他なりません。そして彼らの中には、日本の調理学校やレストランで経験を積むだけでなく、実際に現地イタリアに修行に来る料理人もいます。

シエナ県サンジミニャーノのミシュラン1つ星CUM QUIBUSで修行中の山本鉄巳さん(右)、シェフAlberto Sparacinoさん(中央)


シエナ県カステルヌオーヴォ・ベラルデンガのミシュラン1つ星BOTTEGA DEL 30で修行中の浅川 真嗣さん(左)、女性シェフHelène Stoqueletさん(中央)


2、30年ほど前は、海を渡ってイタリアで経験を積むというのは情報の少なさや経済面からも決して容易いことではありませんでした。それでも、少しずつ渡航する日本人の料理人が増え、イタリアン人の日本の料理人に対する信頼などを築いてきました。そんな先人たちの繋がりを基盤に、近年はインターネットなどで現地情報も得られ、イタリアの語学学校などのサポートも受けられるような時代になり、多くの未来ある若者がイタリア留学に挑戦しやすい環境となったのです。バスも一日に1本しかないようなトスカーナの田舎町にも、賑やかなレストランの厨房を覗けば日本人の料理人がいる、そんなことすら今では珍しいことではありません。シエナの中心街でも毎年多くの日本の若者がレストランの門をたたきます。

2000年にイタリアへ渡った杉原浩介さんもまた、海外での料理留学を目的としてシエナへ辿り着いた日本人の一人でした。ただ、彼が他の研修生たちと違っていたのは、人生をイタリアに賭け現地で料理を追求し続けたことでした。シエナに生活の拠点を移して18年、今年の5月に念願のレストランをオープンさせたのです。

研修生から現地のリストランテオーナーになるまで、そんな彼のプロフィールをご紹介しましょう。

杉原浩介 シェフ (41) 神奈川県横浜市出身


2000年にイタリア・トスカーナ州シエナへ

地元のレストランで経験を積み、2005年に当時のシエナのミシュラン一つ星リストランテ<イル・カント>の厨房へ。3年間、マルケージ・チルドレン※のシェフ パオロ・ロプリオーレ氏に師事する。

マルケージ・チルドレン イタリア料理界の伝説的シェフである故グアルティエロ・マルケージ氏に師事した、現在ミシュランの星獲得店などで活躍するイタリアのスターシェフたち

その後、シエナ中心街の名店<オステリア・レ・ロッジェ2002~2004、2008~2013年>、<リストランテ・ポッリワン2014~2017>でシェフとして活躍し、2018年にリストランテ<カンポ・チェドロ>をオープン。

カンポ・チェドロはシエナの中心街にあり、早くも口コミで地元食通が通うお店となっています。ある常連客はすでに20回以上来店されているとか。



イタリアのガストロノミー誌<ガンベロロッソ>にも早速取り上げられ、<シエナ・ニューオープンの店として最も期待される店>と紹介されました。


いくつかの彼の料理をご紹介しましょう。


Risotto con asparagi ,robiola affumicata e limone candito

燻製ロビオラチーズと塩漬けレモンのアスパラリゾット


Maialino da latte con salsa allo zenzero e verdure di stagione

乳のみ仔豚のロースト、生姜のソース、旬の野菜添え


Semifreddo di yogurt con mela verde, pompelmo e kiwi, con profumo di bergamotto

青リンゴ、グレープフルーツ、キウイとヨーグルトのセミフレッド ベルガモット風味

洗練されたアイデアとシンプルさ、組み合わせた素材の調律が高い次元にあります。イタリアの食材を理解した、スマートながら味わいの深い上品なお皿が特徴的です。

『18年間イタリアでやってきた自信と経験を日本人である自分の中で消化して体現する料理。枠を作らずに、世界の新しい流れや技術も取り入れて料理を考案しています。そして、特に気を付けていることは初心であること、先人の偉大な料理人たちやイタリア伝統料理の基本を忘れないこと。彼らをリスペクトしながら、変化や遊びを加え現地の素材を活かしきるクリエイティブな料理を追求していきたいと思っています。』と杉原シェフ。

RISTORANTE CAMPO CEDROリストランテ カンポ・チェドロ


営業時間

ランチ 12時30分~14時30分 L.O

ディナー 19時30分~22時30分 L.O

定休日 日曜日

住所   Via Pian d’Ovile 54,    53100 SIENA

TEL +39 0577236027

HP(伊語)  http://www.campocedro.com/

メール(日本語可) info@campocedro.com

Facebook https://www.facebook.com/campocedro/






杉原シェフを支える大湊アキラさんも日本とイタリアでの調理経験が10年以上の料理人。シエナ県コッレヴァルデルザのミシュラン2つ星アルノルフォでも研鑽を積んだ




今でもスタッフと試行錯誤を繰り返しながら高みを目指す杉原シェフのリストランテ・カンポチェドロ。

シエナへいらした際はぜひお試しください!

そして最後に杉原シェフのメッセージ

『日本の料理人の若者たち、イタリアへ来たらぜひ料理について一緒に熱く語り合おう!』

熱い志をもったソムリエや料理人たち、共にある侍の心で日伊イタリアン業界を盛り上げていきたいですね!

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

シエナ県ミシュラン星付きリストランテ情報→コチラ

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シエナの伝統行事パリオ!


皆さん、こんにちは!シエナの鈴木です。

イタリアでも暑い日々が始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか?

さて、いよいよ今回は自分が住むトスカーナ州シエナの町の伝統行事『パリオ』についてご案内したいと思います。







 

パリオとは?

パリオは年に2回、夏季の7月2日と8月16日に開催される伝統行事です。

シエナの中心街のカンポ広場で開催され、伝統衣装に身をまとったパレードの後、メインに競馬のレースが行われます。

約4万人を動員。その模様はイタリア全国に生中継され、また毎回、イタリアや国外のVIPもシエナ市に招待され観戦します。

パリオとは、毎回国内外のアーティストによってデザインされる絹の旗織物で競馬の優勝賞品のことを指します。

2016年7月のパリオ(優勝旗)

パリオは伝統そのもの

世界中に伝統的なお祭り・行事は数知れど、パリオほどユニークなイベントはありません。

7月のパリオは、シエナ中心街のプロヴェンツァーノ教会(1604年)の聖母マリアを讃えるために17世紀に創設されましたが、8月のパリオの起源はなんと12世紀まで遡り、聖母マリアの被昇天(アッスンタ)を讃えるものとなっています。

つまり、イタリアの宗教的観点からも信仰心と結びつきの深い神聖なる現代の行事とも言えます。


8月のパリオの優勝地区は、大聖堂にて優勝の感謝の儀式をします。


特別、『競馬』のイベントとして広く知られていますが、そこにはシエナに住む人々の信仰心や伝統、誇り、名誉を賭けた戦いがあるのです。(現在のように、競馬のレースの形となったのは1644年頃とされています。)


オフィシャルサイトでは、1600年代からの約400年分のパリオの記録が残されています。


 

コントラーダ

シエナの町、パリオの歴史と切っても切り離せない『コントラーダ』についてご説明しましょう。

シエナの中心街は、17つの地区に分けられています。

それは13世紀頃シエナが一つの国家であった時代、軍隊を編成するために3分割した町内の線引きが基となっています。

その後、細分化、合併などがあり17世紀後半に現在の17つの地区となりました。

地区はコントラーダと呼ばれ、町内会のような機能を持っています。

パリオは、いわば、このコントラーダ同士による町内対抗戦なのです。



各コントラーダ内には、教会や本部、集会場などがあり、それぞれが独自のカラーリング動物などのシンボルを持っています。

(※ヤマアラシ、キリン、鷲、ドラゴン、がちょう、カタツムリ、芋虫、雄羊、ユニコーン、キリン、亀、雌狼、フクロウ、塔、貝殻、波、豹、など様々なコントラーダがあります。)

ニッキオ(貝殻)地区の2000人規模の夕食会


アクイラ(鷲)地区の行進


各コントラーダでは人々が強い結束力を持ち、ひとつの家族のように1年を過ごします。1年を通しての大きな食事会、イベント、特に夏の時期は、パリオに向けての準備や野外フェスタなど結束力を高める行事もたくさんあります。

また、地区によっては友好関係にある地区や敵対する地区などが存在します。

ブルーコ(芋虫)地区の太鼓と旗振りの行進


そして親から子、先輩から後輩に受け継がれてきた文化が現代まで続いているのです。

ルーパ(雌狼)地区の子供たち


パリオは、これらの伝統と血筋を受け継ぐコントラーダの人々が仲間同士の結束力を深め、栄誉を手にするための戦う伝統行事なのです。



シエナの町に来たときは、コントラーダやパリオの予備知識があると一層滞在を楽しめます!

夏の時期は、コントラーダの庭園で行われる一般参加も可能なお祭りなどもやっていますので機会があればぜひ参加してみてましょう!

今週はブルーコ(芋虫)地区のお祭り『バオベッロ』です!

野外レストラン、ピッツェリア、バーベキュー、ワインバー、ビアガーデン、音楽ライブ、アメリカンバー、などなど盛りだくさんのお祭り


来月は今年2回目のパリオ!どこのコントラーダが優勝するのでしょうか?※7月2日のパリオはドラゴ(ドラゴン)地区が優勝しました。

それでは、また次回もお楽しみに!

鈴木暢彦

パリオのルールや、観戦情報、チケット手配など、詳細はホームページまで!

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com