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シエナ日本人シェフのコロナ禍からの復活!ミシュランガイド掲載店へ

皆さん、あけましておめでとうございます!

久しぶりの投稿になりますが、イタリアのシエナ情報をお届けしたいと思います。

今回の記事は、以前イタリア好き通信でも取り上げさせていただきました日本人シェフが営むリストランテ『カンポ・チェドロ』の久しぶりの続報となります。

※↓まだ未読の方は、ぜひ記事を読む前にご覧になってくださいね

前回記事⇒シエナに日本人オーナーシェフのリストランテがオープン!(2018.08.22)

この3年間、全世界で誰もが想像だにしなかった新型コロナウイルスの蔓延による大きな被害がありました。亡くなられた多くの犠牲者はさることながら、ワクチンができた後も経済の停滞による2次的な被害も甚大でした。

世界でも有数の観光大国であるイタリアにおいても、その影響は計り知れないものがありました。海外からの観光客は姿を消し、度重なるロックダウン、また日本と同様、ひいてはぶり返す感染者数に多くの雇用が失われ、ホテル、リストランテやトラットリア、バールなどの外食産業も停滞どころか崩壊寸前とまでなりました。

#Andra’ tutto bene(Everything’s gonna be all right)すべてうまくいくさ

コロナ禍の絶望の淵でも、国民は希望を失わないようお互いを奮い立たせ、このようなハッシュタグとともに長い我慢の時を過ごしてきたのです。

シエナの中心街で2018年の5月にリストランテをオープンした日本人の杉原浩介さん(45)も、開店2年目にこのような危機が訪れるとは思ってもみなかったといいます。当初は、発生源がアジアだったということもあり、欧州に住む日本人として地元住民からもあからさまに避けられることもあったとのことでした。また、国からの要請で店を閉めざるを得ないときも、家族と過ごせる時間が多くなったためポジティブに考えようとも努力したそうですが、改善しない状況があまりにも長く続くことに大きなストレスを感じたそうです。

そして、スタッフの雇用もあったため、補助金から賄えなかったスタッフのサラリーに、時には自身の貯蓄を充てるなど経済的にも多くの苦労があったとのことです。

2020年5月 コロナ禍の杉原シェフ
2020年5月 コロナ禍の杉原シェフ


杉原シェフは、シエナ中心街でデリバリーなども行いながらコロナ禍を耐え忍び、その後テラス席限定など条件付きの時期もありましたが、ようやく少しずつ店の営業を再開できるようになりました。2021年になるとイタリア国内だけでなくヨーロッパからの観光客も戻り始め、状況が改善。そして去年、ほぼ通常通りの営業が可能になり、店は再び多くの地元住民や観光客で賑わうようになりました。

そんな中、去年の秋口にさらなる朗報が届きます。世界的な権威のあるミシュランガイドに店が掲載されたのです。ミシュランガイドの公式サイトにおいて掲載されているシエナ中心街のレストランはたった5軒しかありません。日本人オーナーシェフ杉原氏のリストランテ『カンポ・チェドロ』が世界的なガストロノミーガイドに認められたのです。


 

この反響は現在も続いており、店は満席が続き予約を断ることも多くなっている状況だそうです。

去年10月に取材訪問した際、【イタリア好き】記事のために料理を用意してもらい写真撮影をしました。珠玉の料理をご紹介しましょう。

Battuta di Gamberi con salsa tartar e riso soffiato allo zafferano サフランと炊いたお米の揚げ煎餅と生海老つくねのタルタルソース(創業時からの定番の人気前菜)


Risotto con rapa rossa, castelmagno e anguilla カステルマーニョチーズと蒸しうなぎのビーツ(赤カブ)リゾット


Pici con salsiccia, ovuli e cannolicchi サルシッチャと卵茸とマテ貝の手打ちピーチ


Ombrina impanato con maionese al wasabi, crema di limone e capperi ワサビマヨネースとパン粉揚げのオンブリーナのレモンとケッパーソース ポテトピュレとチーマ・ディ・ラーパ添え ※Ombrina ニベ科の魚、ウムブリナ


Cosce di faraona croccante su crema di porri e arancio ほろほろ鳥のクロッカンテ ネギとオレンジソース


Dolce “Terra” cioccolato, nocciola e frutta della passione チョコレートとヘーゼルナッツとフルーツの『土』のデザート



コロナ禍の中でも修行を続ける現地の日本人料理人たち


杉原シェフは、コロナ禍の空き時間を利用し、以前から趣味としていた盆栽などのスキルもブラッシュアップ。様々な作品が店内やテラス席を彩ります。

それぞれ料理のイメージを伝え、隣県アレッツォの職人に手作りしてもらったというこだわりの皿


オープン時と比べ、店のワインリストもトスカーナ州を中心にパワーアップ

銘柄Chianti Classico(キャンティ・クラッシコ)をはじめ、白Vernaccia di San Gimignano(ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ)、 長熟向きの赤Brunello di Montalcino(ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ) など地元の代表的な銘柄を料理に合わせ楽しむことができます。


左から前菜担当伊久良健都さん、オーナーシェフ杉原浩介さん、ドルチェ担当三浦大樹さん、プリモ/セコンド担当遠藤万央(まお)さん ※2022年10月訪問時

※嬉しいことに、遠藤さんは前回のイタリア好きの記事を見て杉原シェフの店を知り、研修することになったそうです。

杉原シェフ曰く

『コロナ禍でも、なんとかやってこれたのは研修に来てくれた日本人料理人やイタリア人たちスタッフみんなのおかげです。あとは自分は運も良かった。2018年に店を開けたんですが、もし翌年に開業していたら間違いなくすぐに閉店する羽目になっていたと思います。初年度にある程度売り上げを立てられたからこそ前年度比の補償も受けることができたし、何より地元やグルメな方たちに名前を知ってもらうことができた。当時から支持してくれたお客さんたちのおかげで今も何とかやっていけています。』

ミシュランガイドに掲載されたことに関して・・

『掲載されたときは、本当に嬉しかったです。研修中のスタッフを含め日本人たち皆(国民性としても)、根性論ではないけれど皆大変でも頑張っている人は多い。そういった努力を見てくれている人はいるっていう嬉しさがありましたし、自信にもなりました。他の情熱のある日本人の料理人の皆さんにもそれを伝えたいと思います。』

『シエナ県の郊外には、現在ミシュラン“星付き”のリストランテがありますが、シエナ中心街には歴史上星付きリストランテが誕生していません。ミシュランが全てというわけではないですが、自分がいつか歴史を変えられたら、という思いはあります。』

 

一歩ずつ着実に歩む新生カンポ・チェドロ。杉原シェフの挑戦は続きます。

日本でもコロナ禍で苦労された飲食店の皆さんは多いと思いますが、地球の裏側でも、頑張って乗り切ろうとしている日本人たちがいます。ようやく規制も緩和されましたから、イタリアも日本も外食産業を今こそ皆で支えて、また盛り上げていきたいですね!

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リストランテ カンポ・チェドロ

(インスタグラム https://www.instagram.com/ristorantecampocedro/

営業時間 ※2023年1月9日から23日まで冬季休暇中

24日㈫から営業再開

ランチ 12 時30分~14時30分 L.O

ディナー 19時30分~22時30分 L.O

定休日 月曜日

住所   Via Pian d’Ovile 54,    53100 SIENA

TEL +39 0577236027

HP(伊語)  http://www.campocedro.com/

メール(日本語可) info@campocedro.com

白が美しいジェノヴァのチーズ

日本とジェノヴァの共通点は何でしょうか?

答えは「長生きする人が多い」です。

ジェノヴァは坂が多い街です。買い物袋を持ったお年寄りたちがレンガを敷き詰めた急な狭い小道をゆっくり、けれども、しっかりした足取りで登っていく光景が良く見られます。

ジェノヴェーゼ達の健康の秘訣ははやり食生活にあるのではないでしょうか。
体に良いと言われているオリーブオイルの中でもリグーリア産のものは抗酸化効果が特に高いことが認められています。

食に関しては保守的なジェノヴァ人。他の国や地方のものをあまり食べたがりませんが、和食には興味津々。

そこで、文化協会DEAIは、リグーリアと和食に関してのフォーラムを企画しました。会場はオリエンターレ市場内にあるフードセンターMOGです。

ジェノヴァのフードセンターMOG

第一回目は、アレルギーの専門家であるパオラ・ミナーレ医師をお迎えして、ジェノヴァのチーズと豆腐を比較しながらお話して頂きました。

パオラ・ミナーレさん


最近、様々な食品が引き起こすアレルギーの問題が取り上げられています。
小麦が食べられない人は、豆などの食材を利用したりなど少し工夫するだけで料理の幅が広がります。

ジェノヴァを中心としたリグーリア料理は野菜を中心とした素朴な料理が多いので健康的です。肉料理より、野菜がたっぷりの料理が多いのは平地が少ないため、放牧に向いていないからです。

最近、チーズはコレステロールの問題があるので、敬遠されがちですが、健康に欠かせない栄養の宝庫です。

フレッシュチーズなら、カロリーも控えめでダイエットにも適しています。

パオロさんがお勧めなのはプレシンスィンスーア。
生産量が少ないので、あまり有名ではありませんが、ジェノヴァのフレッシュチーズであるプレシンスィンスーアprescinseuaは高蛋白質、低脂肪でチーズの中でも最も優れたもののひとつなんだそうです。

写真:Virtus提供
写真:Virtus提供


プレシンスィンスーアの生産者であるパオロ・ベッローニさんにはチーズの作り方や歴史について話て頂きました。

Virtusのパオロ・ベッローネさん



和の味をジェノヴァ人の食卓に取り入れるアイデアとして、
ペーストジェノヴェーゼを作るすり鉢で、ゴマをすり潰してごま塩を作りました。


手前がジェノヴァの青菜のパイ il Genovese 提供
手前がジェノヴァ風トルタ・パスクワリーナ MOG内のil Genovese 提供


プレシンスィンスーアはフレッシュにそのまま食べても美味しいです。軽く塩とオリーブオイルで食べるのも良し、蜂蜜や砂糖、ジャムを加えて、デザートにしても良し。チーズケーキにすると絶品です。

一番伝統的な料理はジェノヴァのパイです。香草とチーズで作ったパイは爽やかな風味でいくらでも食べられてしまいます。

「シンプルな食材をシンプルに食べる。」

「友達とワイワイ楽しんで食べる。」

これがジェノヴァ人たちの健康の秘密です。