マンマのレシピ

マンマの紹介

  • ローザ・オルランド(Rosa Orlamd) さん,ルチア・ヴァッディーニ(Lucia Vadini)さん(中),マヌエラ・ディ・トゥッリオ(Manuela di Tullio)さん(右)
  • アブルッツォ州ペスカーラ在住
  • 【得意料理】豆や野菜を使った料理と手打ちパスタ

お料理説明・背景

アブルッツォ州は、東にアドリア海、内陸にはアペニン山脈、中でも最高峰のグランサッソとマイエッラを有していて、2/3を山岳地帯が占めていている一方で、海側もブルーフラッグビーチと呼ばれる美しいビーチもあり、自然豊かなところです。そういう自然の中で育まれたせいか、アブルツェーゼのキャラクターを「Forte e gentile(強くて、やさしい)」と表現した作家もいました。確かに取材中にそう感じることが幾度となくありました。

取材は2019年の6月。このときは3世代3人のマンマが役割分担してアブルッツォらしい3種類の粉物をご馳走してくれました。彼女たちの住まいはぺスカーラ県の内陸にあり、自然栽培の野菜や果実を生産しながら、それらを加工品として販売する店も経営しています。

3人の中でも御歳85歳のルチアさん(写真中央)は、12歳の頃からパスタを打っているからキャリア73年の超ベテラン。体に染み付いたパスタ打ちの感覚は他の二人とは少し違うようでした。分量の水を混ぜて手の感触で少しずつ補水していきます。そして少し硬めの生地を、腰を入れてしっかり混ぜる姿はとても力強く、その生地を麺棒でいとも簡単に伸ばす様は、熟練のそば職人のようです。そんなルチアさんを見て、孫のマヌエラさん「私はまだこれはできないわ」と笑っていました。でも今はもう娘と孫の二人に料理は任せているというから、二人にはきちんとその技が仕込まれているはずでしょう。この日は取材ということもあって特別にパスタ打ちを披露してくれたのだ。

サーニェと呼ばれるこのパスタは、セモリナ粉と水で作るとてもシンプルなショートパスタです。使っている粉は、娘ローサさんのご主人ロベルトさんが完全自然栽培しているもの。ソースに使っている白インゲン豆は、Tondino del tavo(トンディーノ・デル・ターヴォ)。ルチアさんたち家族が暮らすぺスカーラの西側ロレンツォ・アプルティーノ辺りの丘陵地帯を流れるグランサッソを源流とするTavo(ターヴォ)川流域の土壌で栽培されている豆です。真珠のような白さで、皮が薄く、軟らかくて調理しやすいのが特徴です。水質がよく、寒暖差が激しいことで栄養価の高い豆になるようです。2018年にスローフードにも認定されました。

羊肉のポルペットーニ・トマトソースローザさんの作ってくれたパスタはキタッラで、これもアブルッツォの伝統的パスタの一つ。ギターのような弦を張った専用の道具で切った四角い形のパスタで、この日は羊肉のポルペットーニのトマトソースでいただきました。

マヌエラさんは、アブルッツォの郷土菓子のひとつフィアドーニを作ってくれました。小麦粉と卵を練って作った薄い生地の中に、ペコリーノ、リガティーノ、パルミジャーノの3種のチーズを混ぜて作ったフィリングを入れてオーブンで焼き上げたも。
フィアドーニ外はサクっと、中はモチっとして、チーズの風味がおいしい。本来はパスクアで食べられるお菓子です。 静かな笑顔が印象的なルチアさん、若々しくかわいらしいローサさん、溌剌として希望に満ち溢れるマヌエラさん。3人の素敵なマンマに感謝です。
Grazzie!

文:イタリア好き編集長 マッシモ 写真:遠藤素子

★『イタリア好き』本誌vol.38アブルッツォ特集

強くて、優しいぜ、アブルッツォ
取材班はキエティ県ファーラ・フィリオールム・ペトリという丘の村の知人宅で、1週間お世話になった。近くにマイエッラ山塊を望む静かなところだ。夕食のワインはいつもチェラスオーロ。箱の中のラミネートに入ったいかにも地元っぽいワインをガラス瓶に移し、冷蔵庫で冷やしておく。それを炭酸水で割って飲むのが主人エンニオさんのお気に入りだ。真似て飲む。暮らすように旅をするのがいちばん楽しい。
https://italiazuki.com/?p=34871

材料

手打ちパスタサーニェの白インゲン豆のトマトソース(8人分)

【パスタ:サーニェ】
・セモリナ粉1kg
・水400cc程度
・塩少々
【白インゲン豆の煮込み】
・白インゲン豆(乾燥)250gマンマはTavo産を使用
・セロリ1/2本粗みじん切り
・タマネギ1/2個粗みじん切り
・塩適量
・オリーヴオイル大さじ2
【トマトソース】
・トマトソース700cc
・タマネギ1/2個分
・塩適量
・オリーヴオイル大さじ2
・オレガノ少々

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  • 作り方

    手打ちパスタ サーニェを作る

    1. パスタ台にセモリナ粉を広げ、塩を入れて混ぜ、真ん中にくぼみを作り、水を加えながら粉を混ぜる。こねながらおよそ耳タブより少し硬めになったらひとまとめにして布巾を被せて30分から1時間ほど寝かせる。(*水加減は様子を見ながら適宜調整)(写真a,b 参照)
    2. 1を麺棒で厚さ1mm、直径80cm程度の大きさまで伸ばす。(写真c 参照)
    3. 2を麺棒に巻き付けたまま上部を包丁で切り、さらに横半分に切り、それを1cm程度の幅に切り分ける。長さ5cm、幅1cm程度のサーニェのできあがり。(写真d,e,f 参照)
    4. 切り分けたパスタには粉を振っておく。(写真g 参照)

    白インゲン豆のトマト煮込み作り~仕上げ

    1. 豆を3~4時間冷水に浸す。
      *戻し時間は豆の種類により異なり、この豆は皮が薄く戻し時間が短い。
    2. 戻した豆の水を切り鍋に入れ、冷水を豆よりも3cmほど上まで入れ火にかける。
    3. 沸騰したら火を弱めアクを取り除き、塩と粗みじん切りにしたタマネギ(1/4個)とセロリを加え中火で1時間程ふたをせずに加熱する。ときどきかき混ぜながら、豆の頭が出ないように必要に応じて湯を足す。
    4. 豆を煮ている間に、フライパンにオリーヴオイルを引き、残りの粗みじん切りしたタマネギ(1/4個)をきつね色になるまで中火で炒め香りを出しておく。
    5. トマトソースを作る。別の鍋にオリーヴオイルを引き、みじん切りにしたタマネギを加えて炒め、タマネギの香りが出たらトマトソースと塩を加え弱火で30分以上(トマトとオイルが分離する程度まで)煮込む。
    6. 2の鍋に3と、4を半分程加えて、オレガノを入れて15分ほど弱火で煮込む。
      *デリケートな豆の煮崩れを防ぐため、それぞれを別々に作り最後に混ぜる。(写真h 参照)
    7. 沸騰した湯にパスタを入れ、再沸騰したらパスタを取り出しボウルのような器に入れる。
    8. 白インゲン豆のトマト煮込みと残しておいたトマトソースを好みの割合で和える。(写真i 参照)
    • a. 粉と塩に水を加えながら混ぜる
    • b. 耳タブより少し硬めになったら寝かせる
    • c. 厚さ1mm、直径80cmの大きさに伸ばす
    • d. 麺棒に巻き付けたまま上部を包丁で切る
    • e. さらに横半分に切る
    • f. 1cm程度の幅に切り分ける
    • g. 切り分けたパスタに粉を振っておく
    • h. 豆の煮込みとトマトソースを合わせる
    • i. ゆでたパスタにソースを絡める

    お料理ポイント

    風味よく仕上げるために、タマネギを別で炒めておいて後で加えるの。 ターヴォ産のインゲン豆は軟らかくやさしい味。それを一緒に食べることを考えて、サーニェは短めに切って加えるのがポイント。インゲン豆は軟らかいものを選んでね。