「良いワインは、良いブドウから。ワインの質は、90%がブドウ畑での仕事で決まる。」
この哲学のもと徹底したブドウの収量制限を行い、その土地を表現した類まれなワインを生み出すピエモンテの名門、ラ・スピネッタ社。イタリアワインガイドのガンベロ・ロッソ誌では、最高評価のトレビッキエーリ(3グラス)を全ワイナリーの中で3番目に数多く受賞しているスターワイナリーだ。今回は、2001年よりスタートしたそのラ・スピネッタ社のトスカーナワインについて話したい。
ラ・スピネッタ社が誕生したのは1977年。現オーナーのリヴェッティ3兄弟の両親、ジュゼッペとリディアがピエモンテ州バルバレスコのエリア近く、アスティ県カスタニョーレ・デッレ・ランツェの村で甘口発泡のモスカート・ダスティ造りから始めた。
その後1985年に、ラ・スピネッタ社が初めて手がけた赤ワインとなる、バルベーラ種を使った“カ・ディ・ピアン”をリリース。90年台後半には、3兄弟の末っ子でエノロゴ(醸造責任者)のジョルジョ・リヴェッティさんのもと、単一畑の3種のバルバレスコ、“ガッリーナ”、“スタルデリ”、“ヴァレイラーノ”で一躍脚光を浴びると、2000年に単一畑シリーズに新たに加わった”カンペ”バローロと合わせて、世界中のワインラヴァーを魅了した。ラ・スピネッタ社のワインを飲むと、生き生きとした果実の凝縮感が口の中いっぱいに広がり、幸せを感じる。
そしてそのジョルジョ・リヴェッティさんの醸造スタイルは、トスカーナにおける彼らのワインにも共通している。
フィレンツェから西に車で1時間。ピサの南東に位置するテッリッチョラという村に、ラ・スピネッタ社のワイナリー“CASANOVA(カサノーヴァ)”がある。出迎えてくれたのは、トビア・チョニーニさん。
「ここのワイナリーの建物は、2005年に完成したもの。
ほら、あれを見てごらん、目の前に広がるブドウ畑を。もともとワイン生産地としてはあまり注目されていなかったエリアだったのだが、土壌がピエモンテに似ていて、日当たりや風通しの良さなど理想的なミクロクリマ(微気候)だったことから、リヴェッティが購入を決めたんだ。他にも、国際品種があふれるトスカーナのワインに対して、地場品種にこだわったワインを作りたかったというのも彼がこの土地に畑を購入した理由の一つだったんだよ。」
トスカーナの畑は、45ヘクタールの“カサノーヴァ・テッリッチョラ”と15ヘクタールの“カッシャーナ・テルメ”に分かれている。
“カサノーヴァ・テッリッチョラ”は、白のヴェルメンティーノ種と赤のサンジョヴェーゼ種を栽培しており、貝殻の化石を含む砂質土壌からは、エレガントで繊細なワインが生まれる。
一方“カッシャーナ・テルメ”は、赤のサンジョヴェーゼ種、プルニョーロ・ジェンティーレ種、コロリーノ種を栽培。粘土や石灰、トラヴェルティーノと呼ばれる石灰質沈殿岩を含み、骨格・ボディのしっかりとしたワインが生まれる。
この2つの畑の土壌や丘の上から見渡した風景は、ピエモンテのバローロエリアを彷彿させる。
同じエリア内でも少し場所が変われば土壌の性質も異なる点、またトスカーナは非常に長いなだらかな斜面を持つ丘が多い中で、ラ・スピネッタ社のトスカーナの畑はバローロエリアのようにいくつもの丘が連なっていることなどがその理由だろう。
ところで、ラ・スピネッタ社のラベルといえばドイツ・ルネサンス期のアルブレヒト・デューラーの「サイ」が大きくあしらわれているのがとても印象的である。
実は、案内人トビア・チョニーニさんの父親ガブリエーレさんがラベルにサイを用いるよう進めたのだ。
ガブリエーレさんはジョルジョ・リヴェッティさんの親友で、ピサで唯一のミシュラン星付きレストランのシェフでもあった。ジョルジョ・リヴェッティ氏が彼のお店に通ううちに親しくなったそう。
リヴェッティさんのトスカーナでの挑戦を近くで見ていたガブリエーレさんは、目標に向かって前に突き進むリヴェッティの姿とサイを重ねて、ラベルにサイを使うことを提案したのだそうだ。
マイナーなトスカーナの土地で、誰も作らなかった素晴らしいワイン、国際品種ではないトスカーナの地場品種によるワインを作りたい。そう思い猛進したジョルジョ・リヴェッティさんの姿が思い浮かぶ。
さて、ワイナリーの内部の話に進めていこう。
ワイナリーの中の醸造設備はとても清潔で、ワインのアルコール発酵が行われていた。
中サイズの発酵タンクが数多く並んでいる。
「ここでは、特徴の違う畑ごとにワインを醸造し、最後にそれらをブレンドするんだ。そうすることで、華やかな香り、骨格の強さなど、それぞれの特徴がそのままワインに残り、複雑なニュアンスを作り上げることができるのさ。
また、赤ワイン用の発酵は、横長の回転式タンクを導入したロータリー・ファーメンテーションです。タンクの中のステンレスの棒がアルコール発酵中にゆっくりと回り(最初は1日6回、最後は1日1回)、余計な渋みを残さず、ブドウの果皮からフレッシュな果実味をすばやく引き出します。」
冒頭で述べたようにジョルジョ・リヴェッティさんのブドウ栽培へのこだわりの一つは、ブドウの収量を低くすることだ。トスカーナでもピエモンテ同様に低い収量を保つことで、高品質で味わいのたっぷり詰まった凝縮感のあるブドウを収穫している。そしてそのブドウからタンニンなどの成分を丁寧にじっくりと発酵しながら抽出することで、凝縮した果実味とエレガントさの両方を兼ね備えたラ・スピネッタ社のワインがトスカーナでも生まれているというわけだ。
なので、同じスタイルをトスカーナのワインの味わいにも感じるのだが、ワイン畑の仕事と地場品種にこだわるラ・スピネッタ社であればこそ、このトスカーナのワインそれぞれを飲み比べるとピエモンテとは異なる品種の個性と、土壌の特徴が現れていて、とても面白い。
例えば、同社の白ワイン「ヴェルメンティーノ・トスカーナ」には、貝殻の化石などからくるキリッとしたミネラル感と白桃や洋ナシの爽やかなフルーティさを感じる。
また、上品な薄ピンク色が特徴的なロゼワイン「ロゼ・ディ・カサノーヴァ・トスカーナ」には、きれいな酸とサンジョヴェーゼ、プルニョーロ・ジェンティーレの高貴な果実味があり、単醸で作られるそれぞれの赤ワインには、それぞれの品種の個性が味わい深くエレガントに表現されている。
ラ・スピネッタ社の、高品質なワイン造りへの姿勢は常にぶれることはない。
それは、同社のトスカーナワインを一口飲むと確信に変わる。
全てのワインがラ・スピネッタ社のピエモンテワインに比肩する優れた品質を兼ね備えており、「未開の地であったエリアでのワイン造り」という彼らの挑戦が、しっかりと実を結んでいることもまたそのワインたちが教えてくれた。
前に突き進むサイとも例えられるように、熱く、まっすぐなワイン造りへの情熱を持ったジョルジョ・リヴェッティさん。ピエモンテのワインだけではない、彼の思いが注がれたトスカーナでの傑作ワインの数々を、ぜひ皆さんにも一度試してみていただきたい。
左から、
「ヴェルメンティーノ・トスカーナ」
「ロゼ・ディ・カサノーヴァ・トスカーナ」
「“イル・ネーロ・ディ・カサノーヴァ” テッレ・ディ・ピサ・サンジョヴェーゼ」
「“イル・コロリーノ・ディ・カサノーヴァ” トスカーナ・ロッソ」
「“イル・ジェンティーレ・ディ・カサノーヴァ” トスカーナ・ロッソ」
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
▼ラ・スピネッタ社のページはこちらから↓↓▼
http://www.montebussan.co.jp/wine/spinetta.html
この哲学のもと徹底したブドウの収量制限を行い、その土地を表現した類まれなワインを生み出すピエモンテの名門、ラ・スピネッタ社。イタリアワインガイドのガンベロ・ロッソ誌では、最高評価のトレビッキエーリ(3グラス)を全ワイナリーの中で3番目に数多く受賞しているスターワイナリーだ。今回は、2001年よりスタートしたそのラ・スピネッタ社のトスカーナワインについて話したい。
その後1985年に、ラ・スピネッタ社が初めて手がけた赤ワインとなる、バルベーラ種を使った“カ・ディ・ピアン”をリリース。90年台後半には、3兄弟の末っ子でエノロゴ(醸造責任者)のジョルジョ・リヴェッティさんのもと、単一畑の3種のバルバレスコ、“ガッリーナ”、“スタルデリ”、“ヴァレイラーノ”で一躍脚光を浴びると、2000年に単一畑シリーズに新たに加わった”カンペ”バローロと合わせて、世界中のワインラヴァーを魅了した。ラ・スピネッタ社のワインを飲むと、生き生きとした果実の凝縮感が口の中いっぱいに広がり、幸せを感じる。
そしてそのジョルジョ・リヴェッティさんの醸造スタイルは、トスカーナにおける彼らのワインにも共通している。
フィレンツェから西に車で1時間。ピサの南東に位置するテッリッチョラという村に、ラ・スピネッタ社のワイナリー“CASANOVA(カサノーヴァ)”がある。出迎えてくれたのは、トビア・チョニーニさん。
ほら、あれを見てごらん、目の前に広がるブドウ畑を。もともとワイン生産地としてはあまり注目されていなかったエリアだったのだが、土壌がピエモンテに似ていて、日当たりや風通しの良さなど理想的なミクロクリマ(微気候)だったことから、リヴェッティが購入を決めたんだ。他にも、国際品種があふれるトスカーナのワインに対して、地場品種にこだわったワインを作りたかったというのも彼がこの土地に畑を購入した理由の一つだったんだよ。」
トスカーナの畑は、45ヘクタールの“カサノーヴァ・テッリッチョラ”と15ヘクタールの“カッシャーナ・テルメ”に分かれている。
“カサノーヴァ・テッリッチョラ”は、白のヴェルメンティーノ種と赤のサンジョヴェーゼ種を栽培しており、貝殻の化石を含む砂質土壌からは、エレガントで繊細なワインが生まれる。
一方“カッシャーナ・テルメ”は、赤のサンジョヴェーゼ種、プルニョーロ・ジェンティーレ種、コロリーノ種を栽培。粘土や石灰、トラヴェルティーノと呼ばれる石灰質沈殿岩を含み、骨格・ボディのしっかりとしたワインが生まれる。
この2つの畑の土壌や丘の上から見渡した風景は、ピエモンテのバローロエリアを彷彿させる。
同じエリア内でも少し場所が変われば土壌の性質も異なる点、またトスカーナは非常に長いなだらかな斜面を持つ丘が多い中で、ラ・スピネッタ社のトスカーナの畑はバローロエリアのようにいくつもの丘が連なっていることなどがその理由だろう。
ところで、ラ・スピネッタ社のラベルといえばドイツ・ルネサンス期のアルブレヒト・デューラーの「サイ」が大きくあしらわれているのがとても印象的である。
実は、案内人トビア・チョニーニさんの父親ガブリエーレさんがラベルにサイを用いるよう進めたのだ。
ガブリエーレさんはジョルジョ・リヴェッティさんの親友で、ピサで唯一のミシュラン星付きレストランのシェフでもあった。ジョルジョ・リヴェッティ氏が彼のお店に通ううちに親しくなったそう。
リヴェッティさんのトスカーナでの挑戦を近くで見ていたガブリエーレさんは、目標に向かって前に突き進むリヴェッティの姿とサイを重ねて、ラベルにサイを使うことを提案したのだそうだ。
マイナーなトスカーナの土地で、誰も作らなかった素晴らしいワイン、国際品種ではないトスカーナの地場品種によるワインを作りたい。そう思い猛進したジョルジョ・リヴェッティさんの姿が思い浮かぶ。
ワイナリーの中の醸造設備はとても清潔で、ワインのアルコール発酵が行われていた。
中サイズの発酵タンクが数多く並んでいる。
「ここでは、特徴の違う畑ごとにワインを醸造し、最後にそれらをブレンドするんだ。そうすることで、華やかな香り、骨格の強さなど、それぞれの特徴がそのままワインに残り、複雑なニュアンスを作り上げることができるのさ。
また、赤ワイン用の発酵は、横長の回転式タンクを導入したロータリー・ファーメンテーションです。タンクの中のステンレスの棒がアルコール発酵中にゆっくりと回り(最初は1日6回、最後は1日1回)、余計な渋みを残さず、ブドウの果皮からフレッシュな果実味をすばやく引き出します。」
冒頭で述べたようにジョルジョ・リヴェッティさんのブドウ栽培へのこだわりの一つは、ブドウの収量を低くすることだ。トスカーナでもピエモンテ同様に低い収量を保つことで、高品質で味わいのたっぷり詰まった凝縮感のあるブドウを収穫している。そしてそのブドウからタンニンなどの成分を丁寧にじっくりと発酵しながら抽出することで、凝縮した果実味とエレガントさの両方を兼ね備えたラ・スピネッタ社のワインがトスカーナでも生まれているというわけだ。
なので、同じスタイルをトスカーナのワインの味わいにも感じるのだが、ワイン畑の仕事と地場品種にこだわるラ・スピネッタ社であればこそ、このトスカーナのワインそれぞれを飲み比べるとピエモンテとは異なる品種の個性と、土壌の特徴が現れていて、とても面白い。
例えば、同社の白ワイン「ヴェルメンティーノ・トスカーナ」には、貝殻の化石などからくるキリッとしたミネラル感と白桃や洋ナシの爽やかなフルーティさを感じる。
また、上品な薄ピンク色が特徴的なロゼワイン「ロゼ・ディ・カサノーヴァ・トスカーナ」には、きれいな酸とサンジョヴェーゼ、プルニョーロ・ジェンティーレの高貴な果実味があり、単醸で作られるそれぞれの赤ワインには、それぞれの品種の個性が味わい深くエレガントに表現されている。
ラ・スピネッタ社の、高品質なワイン造りへの姿勢は常にぶれることはない。
それは、同社のトスカーナワインを一口飲むと確信に変わる。
全てのワインがラ・スピネッタ社のピエモンテワインに比肩する優れた品質を兼ね備えており、「未開の地であったエリアでのワイン造り」という彼らの挑戦が、しっかりと実を結んでいることもまたそのワインたちが教えてくれた。
前に突き進むサイとも例えられるように、熱く、まっすぐなワイン造りへの情熱を持ったジョルジョ・リヴェッティさん。ピエモンテのワインだけではない、彼の思いが注がれたトスカーナでの傑作ワインの数々を、ぜひ皆さんにも一度試してみていただきたい。
「ヴェルメンティーノ・トスカーナ」
「ロゼ・ディ・カサノーヴァ・トスカーナ」
「“イル・ネーロ・ディ・カサノーヴァ” テッレ・ディ・ピサ・サンジョヴェーゼ」
「“イル・コロリーノ・ディ・カサノーヴァ” トスカーナ・ロッソ」
「“イル・ジェンティーレ・ディ・カサノーヴァ” トスカーナ・ロッソ」
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