今年は地元民でも口にするのが困難な白トリュフをピエモンテ州内の星獲りシェフに腕を振るってもらい、同じくピエモンテ地域のワインとのマリアージュとして楽しんでもらう。そうすることでピエモンテの食のポテンシャルをまずは地元の人に再認識してもらおうという大胆な発想のイベントが開催されています。その名も『Eccellenze del Piemonte in vetrina2021(ショーウィンドウを彩るピエモンテの優れた食材たち)』。イタリア好きピエモンテ州特集に登場したビエッラの星獲りレストラン『Il Patio』のセルジョ・ヴィネイスにもこのイベントの協力シェフとして白羽の矢が立てられました。彼はミシュラン一つ星獲得も今年で連続18年という大ベテランで、しかも彼のレストランの顧客の大半は地元の人たちです。彼の料理は奇をてらわず、誰よりもまず彼自身が好きなんだろうなと思わせる表現と技で、地元の食材を用いた一皿でも、彼が得意とする魚料理でもすっと出してきてくれる。肩肘張らない彼のスタイルを評価し、愛し、定期的に足を運んでくれるお客さまの期待を裏切ることなく、毎年ミシュランガイドの星を手中に収めるのは至難の業だったでしょう。 この夜のセルジョは、イベント主催者らから魔法のごとく提供された見事な白トリュフを、トロトロ、ぷりっぷりのポーチドエッグ、地元産のカリフラワー、パルミジャーノと肉厚のアンチョビにあわせた上にきっちり適量をスライスしていました。面白いのはお皿の上でカリフラワーの香りが驚くほど高く、白トリュフと交互に波のように鼻腔をくすぐりに来ること。なのに口に入れるとカリフラワーは白トリュフと調和を保ちつつさっと身を引いて、白トリュフに主役を譲るんです。最後に、何処でも手に入る食材、けど実は選りすぐりの逸品という役者たち全員をポーチドエッグが包み込んで、華麗な演出を楽しませてくれました。合わせたワインは白ワイン Vigneti Boveri社のティモラッソ『Derthona Munta’ L’e’ Ruma 2018』。重厚な味わいに軽やかな酸味。これ以上のマリアージュはないでしょう。
竹澤 由美(Yumi Takezawa) アマルフィ海岸でのウェディングと観光コーディネート会社Yumi Takezawa & C S.A.S.代表。B&B A casa dei nonni オーナー。
2013年よりアマルフィ市の日本との文化交流コーディネーター。
ロンドンで知り合ったアマルフィ海岸ラヴェッロにのホテルルフォロ四代目との結婚を機に2004年渡伊。
二児の母親業を通じ、濃い南イタリアマンマ文化の興味深さを肌で感じている。
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小林 もりみ(Morimi Kobayashi) 手間と時間を惜しまず丁寧につくる品々、Craft Foodsを輸入する「カーサ・モリミ」代表、生産者を訪ねながら、イタリアの自然の恵みを日本へ届けている。2008年 イタリア・オリーブオイル・テイスター協会『O.N.A.O.O』(Organizzazione Nazionale Assaggiatori Olio di Oliva)イタリア・インペリアの本校にてオリーブオイル・テイスターの資格取得。2009年スローフード運営の食科学大学( Universita degli Studi di Scienze Gastronomiche)にて『イタリアン・ガストロノミー&ツーリズム』修士課程修了。 2014年よりピエモンテ州ポレンツォ食科学大学・修士課程非常勤講師(Master in Gastronomy in the World 日本の食文化:日本酒・茶道)。福島の子どもたちのイタリア保養「NPOオルト・デイ・ソーニ」代表。
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