バローロやバルバレスコと肩を並べるワインを造りだす醸造家 Presented by モンテ物産

Mr.Maule3ミラノから車で北東に向かうこと約2時間、東西に延びる長い谷をしばらく東に進んだ先にニーノ・ネグリ社がある。「この谷の続くエリア一帯がヴァルテッリーナと呼ばれるのだが、ここに向かいながら、左右に連なる山を見て何か気づかなかったかい?」出迎えてくれた物静かで上品な老紳士という印象のカシミーロ・マウレさんからの、唐突な質問だった。カシミーロ・マウレさんはニーノ・ネグリ社の醸造・経営責任者であり、2007年に年間最優秀エノロゴ(醸造家)に選ばれた同社の大黒柱だ。
「左手、つまり谷の北側の山の斜面にだけブドウ畑が広がっていただろう?向かい合わせの南側の山の斜面は北向きで日光が当たりにくいから、全くブドウ畑が無かったはずだよ。一方北側の山の斜面は南向きなので日当たりはいいが急勾配で、小さな段々畑をたくさん作るしかない上に作業も危険を伴い、足を滑らせて転げ落ちて怪我をするなんてこともあるんだ。通常1ヘクタールあたり年間200~300時間と言われる作業時間もこのあたりでは1000~1100時間にもなる。それでもヴァルテッリーナの農民たちは自分の畑を手放そうとしない。なぜなら畑はこの土地の文化や代々続く家族の繋がりの生き証人であり、歴史だけではなく魂で繋がった存在だからだ。自社畑のブドウだけではなく、昔から目標を共にする農家たちからブドウを購入しているが、彼らのブドウの品質の高さがニーノ・ネグリ社のクオリティーを支えていると言っても過言ではない。我々はワインを通して、我々の誇りであるこの土地と、それに関わる全ての人々の想いを消費者に伝えたいんだ。」
静かな語り口調だが、揺るぎない信念と情熱がひしひしと伝わってくる。

図1
北側に広がるアルプス山脈の山々に沿って東西に伸びているヴァルテッリーナ渓谷。ブドウ畑は渓谷の北側に広がっている。マロッジャ、サセッラ、グルメッロ、インフェルノ、ヴァルジェッラはヴァルテリーナDOCGエリアのSOTTOZONA *(サブゾーン)。
*SOTTOZONA (サブゾーン):DOCGを土壌やミクロクリマの違いなどによりさらにエリア分けしたもの。
5 vigneto Fracia -vendemmia
▲渓谷の北側斜面に広がる段々畑。
ヘリコプターと畑
▲急勾配の段々畑では、収穫時にヘリコプターも使用される
「このエリアの主役はなんと言ってもキアヴェンナスカだね。ピエモンテのネッビオーロと同じブドウだがこの辺りではキアヴェンナスカと呼ばれ、土壌や気候が異なるため違った味わいになる。味わいが変わっても長期熟成のポテンシャルは変わらず、何十年の熟成に耐えられるワインができることも我々が証明済みだよ。」

実際に70年代、80年代のニーノ・ネグリ社のワインを飲んだが、良い熟成をしたバローロやバルバレスコのように深みと複雑さがあり、まだ若々しさも感じられ、そのポテンシャルには驚かされた。
「また、それを陰干ししたスフルサート(スフォルツァート)も今やヴァルテッリーナを代表するワインだ。様々な賞を受賞している我々の“チンクエ・ステッレ(五つ星)”スフルサートは100日間も陰干しをして、水分を30%も落としてから醸造している。非常に凝縮感があるが、100日間も陰干しをするにはまずブドウが非常に健康であることと、常に谷間に吹いている風が必要になる。よくアマローネと比較されることがあるが、醸造工程が似ているだけで、私は似て非なるものだと思うよ。」

ロンバルディア州の中でもピエモンテ寄りの西側ではなく、遠く離れた北東のヴァルテッリーナでもネッビオーロ(キアヴェンナスカ)が栽培されているのは偶然ではなく、きっとその土地を選んだ先人の知恵なのだろう。
まずはキアヴェンナスカとピエモンテのネッビオーロを飲み比べ、さらにスフルサートとアマローネを比較してみるのも面白いだろう。よりヴァルテッリーナの魅力がわかるのではないだろうか。


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