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ヴェネトの冬!トレヴィーゾ産ラディッキオ タルディーヴォ種 IGP

「ラディッキオ ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ」

出荷前の見た目にも美しいラディッキオ・タルディーヴォ種


ヴェネトの冬の食卓を語るのに、この食材無しにはあり得ない。どの独特の形状とその風味、そして食感。野菜としては美しすぎ、そして個性的すぎる。他のどんなものにも代用は不可なのではないだろうか。

ラディッキオとは、チコリの仲間の野菜である。イタリア国内でも、ヴェネト州のトレヴィーゾ県を中心に、ヴェネツィア県、パドヴァ県の認証地域で栽培される。地区ごとに、その地域性にあった品種が存在し、生産及び出荷期間も冬季限定とはいえ、微妙に異なる。

そのなかでも、特に同素材を他地域にての生産を真似されることなく、この地域ならではの生産物としての誇りとその存在を保っているのが、トレヴィーゾ産赤ラディッキオ、タルディーヴォ種(ラディッキオ ロッソ・ディ・トレヴィーゾ・タルディーヴォ=Radicchio Rosso di Treviso Tardivo)。「タルディーヴォ」とは、「晩生」という意味を持ち、それは、生産・出荷時期がラディッキオの他種に比べて時期が遅めなことからくる。

それに対して早生種である「プレコーチェ」種というのもある。こちらはタルディーヴォ種に比べると、生産方法も単純で、産地呼称であるIGPにこだわらなければ、気候さえ適合すれば、比較的、生産実現が可能とされている。

生産・出荷時期の違いは、IGP認定マークが許可されるのにも目安となるが、毎年平均してプレコーチェ種は9月末、タルディーヴォ種は11月中旬以降となる。

さて、このタルディーヴォ種、なかなかの偏屈もので、生産までの工程には非常に手間がかかる。

その特異な生産工程とは?

植苗は7月後半から8月にかけて行われる。IGP認証を取得するには、苗間の間隔にも規定があるる。夏場の太陽の力をかりて2ヶ月以上畑で生育した苗は、その後冬の訪れがくるとともに寒さから自らを守るかのごとく、外葉が内葉をやや覆うような形になる。生産者は、季節の変わり具合、気候の変化を、畑の変化を感じながら時をじっと待つ。

暑ーい夏期に生産作業は開始します


11〜12月にかけてのラディッキオの畑


寒さが厳しくなってくると、畑でも葉の色が変化してきます


ヴェネトの冬は寒い。
ラディッキオにとっては、この寒さが不可欠なのだ。葉は成長するが、成長しずぎてもいけない。寒さにじっと耐えるためには適度さが必要。そしてその寒さが深くなるにつれ、畑に並ぶラディッキオの葉は、赤く色付き始める。
11月ともなると、冷え込む朝は氷点下まで気温が下がり、畑のラディッキオには一面に真っ白な霜がおりる。キンと冷える薄暗い朝、夜明けとともにキラキラと朝焼けに光る畑は非常に美しい。そして、この霜がおりることによって、産地呼称のIGPが認証され、畑からの収穫が許される。
近年は、気候の変化が顕著であり、今シーズンのIGP認証は、11月の中旬をとうに過ぎた後半期であった。生産物の出来が遅くなることは、現実的には生産農家にとっても非常に痛手でもある。

さて、畑から収穫した株は、これで出荷準備に入るわけではない。この後は、一株ずつを小さなカセットに縦詰めにし、それらを地下水の流れる貯水池にて株の根を浸水させる。水は必ず流水でなくてはならず、この地の地下水でなければならないのも規定として定められている。

地下水の流れるプールに一定期間静置する


同地区は、地下から自然に湧き出る清澄な水が豊富な地域。イタリアを旅行した方ならば必ず一度は手にしたことがあろう、「サン・ベネデット」というイタリア国内最大級の飲料水メーカーのある場所でもあることからも、清澄な水に恵まれている地域であることがお解りいただけると思う。

この水がこのラディッキオを育てる必須要素なのだ。この自然水プールは、日光を遮断され、いわゆる株を軟白させる工程にもあたる。同工程では、収穫により切り落とされた株の根から新根が生え、そこから水を吸い上げることで、株のごく中心部に向けて水から得られるミネラル分を吸収させ独特の甘みを与え、クロッカンテな食感を生み出すのに役立つ。

さらには、暗所に静置することで、葉の持つクロロフィルが後退し、ラディキオ特有の純白な茎と、アントシアニンから発する紫がかった鮮やかな赤色を生み出す。そして、寒さなどの条件を満たすことにより葉が内側に向けてかたく、密に閉じてくる。

約2週間ほどの軟白工程を得た株は、作業場に運ばれ、外葉を大胆に除かれる。真っ黒に腐ったような大きな株は、驚くほど鮮やかで、しかも小ぶりなその美しい姿を露わにする。
とにかく一株一株を人の手によりいくつもの工程を経る必要のある、手間のかかる野菜なのだ。

出荷作業の終盤。掃除し流水で洗ってから箱詰めされる


美味しくラディッキオ料理を食べたい!

実際に手にしたら、どんな料理に合うのか…というと。それがどんな調理法にもオールマイティなのだ。

生でサラダに、縦割りにしてグリルに、衣にくぐらせ油で揚げてフリットに、肉やパンチェッタを巻いてフライパンで焼き付ける、等。サルシッチャと合わせてパスタにしたり、リゾットなどは、冬の定番メニュー。

ラディッキオ料理といえば定番!ラディッキオのリゾット。


ボルレッティ種やラモン種のインゲン豆を柔らかく煮てから漉して作るヴェネト風の「パスタ・エ・ファジョーリ」には、このラディッキオの葉先を乗せ、少し赤ビネガーをたらして食べるのが、地元風だ。

 

 

ヴェネツィアの美味しい季節もの「マザネーテ」

 

「Chi non conosce “le masanete” potete stare certi che no è venexiano」
「”マザネーテ”を知らない奴は、ヴェネツィア人の資格なし」

と言われる食材が、この「マザネーテ(mazanete)」。上記も然り、表記にはよく「maSanete」とSが使われるが、ヴェネツィアでは、このSを濁らせて発音する。

「マザネーテ」って何?

春先や秋口に珍重される、脱皮直後のカニ「モエーケ」が、その後数週間経ち、殻が硬くなったものを指す。ヴェネツィア人には非常に愛着のある食材で、この時期、オンブラ(グラスワイン)のお供として食べる庶民の味だ。この時期、魚屋の店先には、大きなバケツが置かれている。中を覗くと、ガサゴソと生きた小さなカニ、マザネーテがたくさんいる!

魚屋の店先に売られるマザネーテ


ヴェネツィア風「マザネーテ」の食べ方

生きたままを購入し、たっぷりの湯を沸かした鍋に、生きたままのそれらを一気に投入。死んでしまったものは、生臭くなるので、必ず生きたものを使う。火が通ったら取り出し、粗熱をとる。

生き茹でするのが基本


茹で上がり!約15分ほど


まずは足を取り除き、背側の甲羅を一気にはがす。殻の内側に身が残ってしまったら、それも残さずにかきだす。腹側の比較的柔らかめの甲羅は、そのままに。

一つ一つ丁寧に掃除する


掃除を終えたら、調味開始。ニンニクとプレッツェーモロを刻み、オイルを加え、塩、コショウでととのえる。このソースは「ペステジーン=pestesin」と呼ばれる。その意味するところは、小さく(=sin)つぶした(=peste)というもの。ヴェネツィア訛りだ。

これらを全体によーく混ぜ合わせ、味をなじませるためにしばらく置く。食べる直前につくるよりも、作り置きしておくほうがオススメ。

見るだけでワインが進みそうだ


季節のヴェネツィア前菜盛り合わせ!


テーブルに着席して食事するレストランでのメニューでは決してない。立ち飲みしながら、もしくは家庭内またはオステリアのテーブルの端にて、というシチュエーションが必須。

気の使わない仲間や知人とワイワイと喋りながら手も口もソースで汚しながら、バリバリと食べるが旨い。

ヴェネツィア下町の味。

トレヴィーゾ郊外の栗祭り 「フェスタ・デイ・マローニ」

トレヴィーゾ郊外の山間、コンバーイ(Combai)

すっかり秋らしく、冬の足音が聞こえてくるこの時期は、栗の美味しい季節。
トレヴィーゾ県のコンバーイ(Combai)という、プロセッコの里に隣接した山の地域では、産地呼称であるI.G.P.を冠する栗の産地としても有名だ。

その地で毎年10月には、栗の収穫祭が開かれる。ここに辿り着くまでには、プロセッコのブドウ畑の並ぶ急勾配の道を、車でズンズンと登っていく。紅葉の始まりかけた周囲の素晴らしく美しい風景を横目に、目的地へ。石造りの家の立ち並ぶ小さな集落。標高約400mに位置する町だ。
コンバーイはプロセッコの畑を見下ろす場所に位置する街に近ずくにつれて人も車も多くなり、会場から少し離れたところに車を止めるように交通整理員に誘導されて、徒歩で街の中心へ。普段は静かなこの小さな集落は、一年に一度のこの季節となると、車が渋滞するほどの賑わいとなる。

集落の入り口には大きな垂れ幕!


街全体がお祭り会場へ

集落内は全体がお祭り会場と化している。道端には、土地の製品を売る屋台が出店している。美味しそうな地元チーズやヴェネトの太いサラミ、ソプレッサの山は非常に魅力的…。

地元の食料品店の店先。簡易の即売所となる


柔らかく太いヴェネトのサラミ、ソプレッサ


そしてメイン会場へ到着。お昼どきには、ラザニアやニョッキ、スペッツァティーノ(肉の煮込み)などが振舞われており、大混雑の雑踏のなかで食べるそれらはこれまた格別。並べられたテーブルに座ると同席のお隣さんとも親しくなったりする。

牛肉のスペッツァティーノ。付け合わせはお決まりのポレンタで


祭りの目玉、焼き栗を食す!

別会場となる仮設テントは、焼き栗の大きな実演販売と飲食コーナーとなる。
テントの脇には、大きな大きな鉄鍋が設置されており、焼き栗が準備される。このお祭りの名物シーンでもある。チェーンで動作させるほどの大きな鉄鍋は、大量の薪を燃やして栗を焼く。煙がすごいが、気温の下がるこの時期には、暖をとるのにもちょうど良く、周囲には多くの人々が集まる。実際に焼いている人たちは大汗をかきながら作業しているのだが…

大きな鉄鍋で大量の焼き栗をつくる風景は、このお祭りの名物


食券販売所の列に並び、焼きたての焼き栗を注文。食券を持ってカウンターに行くと、焼き栗の袋と交換してもらえる。
熱々の焼き栗を囲んで、手先を真っ黒にしながらとにかく栗を食べる、食べる。食べる…食べ続ける。

真っ黒に焼けた栗。中はホッコリ。旨し!


会場内はテーブルが並べられていて、栗は立ち喰い


焼き栗のお供は…トルボリーノ

そして、焼き栗に欠かせないのが、「トルボリーノ(torbolino)」だ。「トルボリーノ」とは、この時期に飲むワインの前身のようなもの。収穫して間もないぶどうの果汁は、発酵過程を経てアルコールへと変わっていくが、その発酵がまだ完全になされていないこともあり、糖が残りアルコール度数が低い。当然のごとく、澱引きしていないことから、濁っている。「トルビド(=濁った)」であることが、「トルボリーノ」と通称される所以だ。

栗の収穫時期には、ちょうどこの段階のコレが季節的にも、そしてほんのりと残る甘い微発泡のコレが焼き栗に非常に合うことから、焼き栗とトルボリーノとはきってもきれない関係なのだ。
ワインになりきっていないぶどうの果汁という意味で、この会場ではあえて”モスト”と呼んでいる。

濁り酒のトルボリーノ


会場は、地元の子供たちも焼き栗や飲み物の提供をお手伝い。焼き栗の袋詰めやカウンターでワインを注いでくれる子供たちの姿がなんとも可愛くありながら大人びていて、見ていると思わず顔がほころぶ…。

注文のバンコ(カウンター)を守るのは、地元の子供たち


山間の小さな小さな街の大イベントだから、迎える人も訪れる人も喜びを一緒に分かち合う。この季節とこの季節だからこその味覚を皆で大いに楽しむ、そんな楽しいイベントだ。

コンバーイの街の上から。集落内はスパヴェンタパッセリ(かかし)が道案内


 

アジアーゴ高原のマルガにて

アジアーゴ高原は、ヴェネト州のヴィツェンツァ県と、お隣のアルト・アディジェ州トレント県との境に位置する地域。ドロミーテ山麓の始まりで、平地からも比較的気軽に訪れることのできる自然豊かな地区にて、夏場は避暑地として多くの人がバカンスで訪れる場所。冬場はもちろんスキー目当ての客が足を運ぶ場所だ。

アジアーゴと呼ばれる地域内はアルトピアーニ・デイ・アジアーゴ(Altopiano di Asiago)と呼ばれる標高約1000m級の丘陵地をさす。同地区内、緑豊かな高原が連なる広大な地域。軽いハイキングから、リフュージョと言われる山小屋やマルガと呼ばれる牛の放牧場とチーズ製造所等があり、食事などを楽しむ場所であるため、バカンスシーズンはどこも人でいっぱいだ。

そんなマルガのうちのひとつ、今でもかなりアナログな感じでのチーズ作りがされている、カゼイフィーチョ(チーズの製造所)を訪れた。
そう、ここはヴェネトを代表するD.O.P.の認定もあるアジアーゴチーズのオリジナル産地でもある。

スパッチョと呼ばれる売り場に入ると、種類は少ないにしろ、ここで作られるチーズとサラミなどが置かれていて、なかなかいい感じ。売り場脇にある製造現場を覗かせてもらった。
今やほぼ他では皆無に等しい、薪で炊くカルダイア(乳を温める鍋)。ガスなんか使うよりもこの周辺にある木々を使って、経済的にもまたエコ的にも優れているから当然!とご主人は話す。長年の経験での火加減の調節だから、ガスよりも、実際に燃え具合を目で見ながら火力調節、温度調節ができる自然の炎のほうが、彼にとっては簡単なのだそうだ。そして、チーズの熟成室。D.O.P.の認証を得るには、もはや衛生的には検査に通らない木枠。なんともいい味わい。だから、もちろんここのチーズはD.O.P.の認証はない。熟成室の外にはここでできるリコッタを燻製する燻製機が。ちょっと傾いた感じでいるところがこれも味わいのある風景。この時も燻製作業中だ。

ここでチーズが作られるのは、牛の放牧期間である5月から9月いっぱいくらいまで。そのため、フレッシュ、及び熟成期間の短いチーズの販売はこの期間のみ。その後は熟成タイプのもののみが彼らの手元に残る。
そして、10月に入ると、気温がぐっと下がり悪天候も続くため、牛はもっと平野部に近い牛舎へと運ばれる。チーズの美味しさはその原料となる乳に由来するものだから、こんな大自然のなかでのびのびと過ごしている乳牛からとれる乳は美味しく、風味の豊かさが格段によい。見た目も黄色味が非常に強いものとなる。

この高原でつくられる特別に旨いチーズはこの期間限定の搾乳したものからのみ。なかなかとお目にかかれない希少な味わいのチーズだ。

ここで売られている美味しそうなサラミを横目で見つつ…彼らの飼育小屋の豚さん達にも別れを告げた。

ヴェネトのアスパラ第2弾 バドエーレ産アスパラIGP

ヴェネト州でも最も有名なバッサーノ産の白アスパラの産地から少し東にずれた地域にて、同じく春先の名産として知られているのが、トレヴィーゾ県バドエーレ地区を中心としたアスパラガス。

バッサーノは白のみだが、こちらは、白と緑との両方ともが生産され、産地呼称であるIGPに認定されている。生産地区として認定されているのは、トレヴィーゾ、パドヴァ、ヴェネツィア県下の指定地域。

この地域の特徴は、この地区は自然水の湧き出る、水のきれいな地域。ヴェネツィア共和国の影響を大きく受けた場所でもあり、当時の貴族の邸宅が、その水の流れに沿って点在する地域でもある。

毎年5月には、バドエーレの美しいヴェネツィア時代の建物がシンボルである広場にてサグラ(収穫祭)が開催され、生産者及び地元の人が集いその年の収穫の喜びを分かち合あわれる。

町の広場では、各生産者が出品する生産物の品評会会場となる


品評会の表彰式の様子


仮説レストランにて。アスパラずくしのメニューが振舞われる


さて、収穫現場へ…ここはヴェネツィア県下で唯一IGPの認定を受ける自治体であるスコルツェという町の生産者。

アスパラの収穫は朝が早い。特に白アスパラに関しては、日の光が強くなる前に行う必要がある。
収穫方法はバッサーノ産のものとほぼ同様、何列にもなった畝の黒ビニールを一列ずつ外し、土の上に穂先が出ているものをめがけて掘り起こす。

白アスパラの畑。この時期は生産地区ではこの光景があちらこちらに


通常、この畑作りをするのが冬の終わりである2月の終わりごろ。この地区はラディッキオの生産地域でもあるが、その年の出荷作業もようやく終盤を迎え始める時期がそのタイミングだ。
とはいえ、2018年の今年は、春先が低温で雨続きだったため、畑の準備がだいぶ遅れていた。収穫のスタートのタイミングも通年よりも1ヶ月ほどずれてしまったことが心配されたが、その後は気温がグンとあがり、アスパラも順調に生産・出荷が行われている。

白アスパラは盛り上げた土の中で、その温度変化を感じ、それに反応して上方に伸びる。高く盛った土の表面に出るまで日光にあたらないので、茎全体に色素が働かずに白いまま成長する。土表面に出たころには、長さが20㎝以上になっているので、そこでちょうど収穫時期。

ここでも、専用のコテを用い、茎を折らないように掘り起こす。

成長具合を確認しながら一本一本丁寧に掘り起こす


対し、緑のアスパラは、土の上にニョキニョキと伸びたものを収穫。
こちらは日光をいっぱいに浴びて、いわゆるアスパラらしい野生味あふれる香り豊かな美味しさ。

地表にニョキニョキと生えたアスパラ。これも成長具合をみながら収穫


同農家では、毎朝7時から約10人がかりでアスパラ収穫を行う。まずは白アスパラから取り掛かり、緑アスパラまで、約3時間かけて朝の重労働。

畑での作業を終え、次は作業場へ移動。

ここでは、洗浄をしながら太さを選別。ある程度に形の揃ったものを、専用の枠に整然とならべながら束をつくる。この枠にきっちりと入れると重さは1-1.5kgとなる。

専用の枠に綺麗に並べて束をつくる


長さを測って茎下部を切り取り、輪ゴムまたは紐でしばって商品として完成する。

規定の長さに切り揃えて出荷準備OK


経時劣化の早いアスパラは、常に水に放っておくとよい。できあがった束もすぐに冷たい水の入った水槽へ。

同農家で入手したアスパラでつくるリゾット。皮はブロードとして利用し、皿全体が白アスパラの香りでいっぱいとなる。

季節の定番。白
アスパラのリゾット


春ならではの極上を味わえるのも残りあと僅か。

バッサーノ産白アスパラDOP

ヴェネト州にはアスパラ生産で有名な産地がいくつかある。そのなかでも筆頭にあげられるのが、バッサーノ産のそれだ。

フォルムの美しさは品質保証にもつながるもの

産地は、ヴィチェンツァ県バッサーノ・デル・グラッパを中心とした15自治体が該当する。地区が限定されるのは、勿論のこと、産地呼称であるD.O.P. (Denominazione Origine Protetta) に認定されているから。その生産地区は、ドロミーテ山麓を背した地区。この自然環境のもと、山から吹き降ろす風、空気の流れがよく、寒暖の差が激しいこと、また、ここ一帯を縦断するブレンタ川の流れがもたらす、砂や小さな石などを基盤にした土壌が上質のアスパラ栽培には非常に適しているといわれている。



バッサーノのシンボル。アルピーニ橋。アルト・アディジェから流れるブレンタ川に架かる


自然の恵みがもたらす産物とはいえ、そこに人の手がかかることにより、その生産物がひとつのブランドとして確立する。

アスパラは畑に苗を植えることにより、その先10年は生産を続ける。商品として出荷されるのは、3年以降の苗とされ、寒く長い冬が終わるころ、土表に出ている伸びた茎を一斉に刈る。そして、苗の脇を列をつくるように苗上部に土を盛り、畝を形成する。その上に黒いビニールを被せて春を待つ。

季節が以降し、気温があがってくると、アスパラは土の中でその温度を感知し、上方に向けて伸びてくる。アスパラがスクスクと真っ直ぐに伸びるためには、硬い泥状の土よりも、軽い土壌のほうが健やかに育ちやすい、というのが、同地区の土壌に適している所以でもある。

また、黒いビニールを被せる目的は、日光を遮断するため、雨から穂先を守るため、そして保温が目的である。バッサーノのアスパラはDOPとして認証されるものは白のみ。アスパラは土表に出る際に日光をあてることにより、着色してしまうため、とにかく光を遮断することが非常に大切な要因だ。

毎年の気候にもよるが、3月に入るとアスパラの収穫が始まる。朝のできるだけ早い時間、つまりは前述のように、光にあてないことを目的とし、朝日が昇りきる頃には作業は終えていなければならないので、必然的に早朝から収穫がスタートする。

アスパラ収穫は毎早朝からスタート。一本一本を人の手により掘り起こされる


まずは、被せてある黒いビニールシートをはずし、土表にちょこっと顔を出している穂先を見つけては、その地中深くに専用の鉄製のコテを斜めから入れて掘り起こす。そして次に出てくるアスパラのために、専用の木製のヘラのようなもので土の表面を綺麗に戻す。

ひとつの列を端から順番に歩いて収穫タイミングのよいものを掘り起こし終えたら、ビニールシートを再度被せ、次の畝へ…非常に単純ではあるが、この作業が5月いっぱいくらいまで毎朝続く。

収穫したら即座に水に浸す。アスパラは劣化が早いので、常に新鮮さを保つ気遣いが必要


ちなみにバッサーノ産白アスパラDOPにて指定される収穫時期は3月18日のサン・ジュセッペから6月13日のサンタントニオの日まで。ただし、近年は気候の変化もあり,収穫はほぼ5月で終えてしまうらしい。

収穫したものは、作業場に運ばれて水で洗い、太さを合わせて束にする。通常、形態としては1㎏の束をつくるため、それ専用の束をつくる道具が存在する。

輪の中にアスパラを綺麗に並べ、それを柳の若枝で結ぶ。長さを揃えて切り、これで完成。長さや太さ、束の大きさや形、全てに対してここならではの決まりがあり、それに従って各生産農家にて出荷作業が行われる。

アスパラの形状を見ながら丁寧に束をつくる


その日に収穫したものは、作業場で束を完成したらすぐに最寄りの集積所に持ち込まれる。

ここでは、形や色、長さや重量、そして見た目をコントロール。これに合格したものは、ここで初めて、バッサーノ産白アスパラDOPとして認められ、おなじみのタグをつけられる。タグには、生産者の名前を入れてあるので、各束すべてが誰が生産したものかが判断できるようになっている。

集積所にて、品質チェック


そしてここからイタリア国内および国外へ出荷されることとなる。

DOPとして認めらる条件としては、
-とにかく美しい白色であること
-真っ直ぐに伸びていること
-長さ18-22cmであること
-直径最低11mmであること
-全体が丸く美しいカーブを帯びていること
-密がしっかりとしていること
-柔らかく、筋ばっていないこと
-新鮮でアスパラならではの香りを保っていること
-1束は約1.5kgの重量であること
-形が均等であること
-束は柳の若枝でしばってあること
-生産者は組合に登録してあり、生産基準に従った生産がなされていること
等となっている。

バッサーノ産の食べ方として有名なのは、茹でたアスパラにゆで卵を添えること。地元の有名なレストランなどでは、注文すると、まず最初に熱々の茹でたてゆで卵が殻ごと運ばれてくる。これを各自で殻をむき、皿の上でナイフとフォークを使って細かくする。そこに塩、胡椒、オイル、好みでアチェートを加えて自分でソースを準備する。

そうこうしているうちに茹でたてのアスパラがその皿の上にごそっと盛られるので、予め準備したソースをつけていただく…というのが正当派。「白アスパラのバッサーノ風」というメニューはこれにあたる。

最もクラッシックな食べ方。バッサーノ風


春の非常に短い時期に楽しむ旬の賜物。季節となると生産各地では、土地の人々がこの産物の収穫の喜びを分かち合うサグラ(収穫祭)が開催されている。

 

 

パドヴァ名物茹でタコ屋台 「ラ・フォルペリア (La Folperia)」

私の住むパドヴァの旧市街地には、ラジョーネ宮という1200年代に建築された、もと裁判所の建物がある。それを中心に南北をエルベ広場、フルッタ広場、そしてその西側にシニョーリ広場、という3つの大きな広場が位置し、街の最も活気のある中心地として存在する。

日没の遅くなる春先から秋の終わりまでは、この広場周辺のバールが広場にテーブルを出し、アペリティーヴォを楽しむパドヴァーニで賑わう場所。

この広場のひとつ、フルッタ広場の一角に、夕方になると毎日名物屋台が登場する。パドヴァの人ならば、知らない人のいない、夕暮れ時のパドヴァの風景の一部となっている。


この屋台の名物は、「茹でタコ」。店名も「タコ屋(フォルペリア)」という。イタリア語でタコは「ポルポ (polpo)」というが、ここヴェネトでは、訛りで「フォルポ (folpo)」と呼ばれているから、この屋台の目玉はタコ、ということは一目瞭然。

 


夕方になると、赤いひさしの屋台を載せ登場するのは店主のマッシミリアーノ(通称マックス)さん。非常に気さくで実は細かいところによーく気のつく、皆の人気者。

昨今のストリート・フードブームにあやかり、それ関連のガイド本などにも掲載されるようにもなぅた。そんなこともあり、最近ではパドヴァの人だけでなく、観光客なども多く訪れる。


注文は、カウンターの前に並んで自分の順番がくると、マックスが鍋の中からタコを取り出して大きさを見せてくれるので、適当な大きさのものをチョイス。


お互いの同意のもとにて、そのタコをブツブツと一口大に切る。軽く塩をし、特製サルサ・ヴェルデ(パセリとオイル、レモン、少しのニンニクを混ぜたもの)をさっとかけ、さらにレモンをギュッと絞る。


店の周囲のカウンターの空いているスペースを陣取り、お隣さんにもスペースを空けてあげる配慮をしながら、楊枝でつっついて立ち食い、というのがスタンダードなスタイル。

柔らかくて潮味のタコ、最高に美味いアペリティーヴォのお供となる。


飲み物は、隣のバールで調達。店の人たちも事情を承知のうえなので、グラスを持って店を移動しても全く問題なし。

座って食べたい場合には、このお隣のバールのテーブルにタコの皿を運んで、飲み物をオーダーし、落ち着いて食べてもよし。


とにもかくにも、この皿に会うのは間違いなく、冷たく冷えたプロセッコだ。

茹でタコ専門とはいえ、他にもいくつかの魚介の惣菜も用意している。バッカラ・マンテカート、エビのグリル、魚介のフリット・ミスト、他、マックスのアイデア次第で店頭に並ぶものも変わる。

そして、春先から出てくるのは、この「ボヴォレッティ (bovoletti)」。小さなカタツムリ。これは生きたままのものを茹で、タコと同様、サルサ・ヴェルデで和えたもの。楊枝でひとつひとつを中身をすくい出すようにし、手も口のまわりも汚しながら食べる。


広場のこの赤いひさし、夕暮れのパドヴァの街に欠かせない風物詩のひとつ。私の大好きな場所のひとつ。

La Folperia

https://m.facebook.com/la.folperia/?locale2=it_IT