vol.11 アブルッツォ特集

vol.112012年11月発行
在庫なし

山岳地帯の、
豊かな自然の中で、
暮らす

取材最終日の朝、僕はマイエッラ国立公園内の山歩きに出た。出発までの限られた時間だったが、最後にどうしてもアブルッツォの自然の中にもう一度身を置きたかった。

東側をアドリア海に面し、アペニン山脈の中でも、最高峰のグランサッソと、マイエッラを擁するこの州は、3分の2は山岳地帯で、自然保護区域も多く存在する。
 目の前に大きくそびえる山は、岩肌がゴツゴツ見えるところと、深い緑に覆われているところとが、混在している。手前から奥に見えた景色が、進むにつれ、どんどん変化していく。太陽が徐々に登り始めると、目の前の山は、その姿を現し、山道を曲がるごとに、新しい山が見えてくる。そして、さらにその先の向こうにある山の姿が、どんなものなのか想像を駆り立てた。眼下を見下ろせば、朝もやの向こうに、遠く、薄っすらとアドリア海が見える。

取材の拠点にしたグアルディアグレーレは、アドリア海に面した街、ペスカーラから50kmほど内陸に入った、この豊かな山の麓にある町だ。「ヴィッラ・マイエッラ」はこの町にある。母、ジネッタさんの店を引き継いだ、ペッピーノさんはそこのオーナーだ。

そして、この山を越えた反対側は、中世の面影を強く残す町、スルモナ。

 目の前に大きく迫るマイエッラ山脈が、町のどこかしこから見え、まるで町を見守っているかのようだ。そんな町の中心に、少し遠慮がちに「リストランテ・ジーノ」はある。ジャコモさんは、父親の後を継ぎオーナーとなり、母のルチアさんは、お嫁さんたちと店の味を守る。

ペッピーノさんとジャコモさん。ふたりは、店で働く親の姿を見て育ち、今ではそれぞれレストランのオーナーとして店を切り盛りしている。そして店や、料理を通して、アブルッツォらしさを伝えている。しかし、そのスタイルは好対照であり、店で出される料理も全く違う。

ペッピーノさんは、伝統を守りながらも、常にアグレッシブであり、発信の場を広く世界に求め、そのことで、アブルッツォ、ひいてはグアルディアグレーレその良さを引き継いでいけると考えている。一方で、ジャコモさんは、身の丈にあった中で最高のサービスの提供を心がけ、顧客の満足を得ることで、守れるものがあると。
 伝統を踏まえて、さらに革新を求める。あくまでも、伝統的なスタイルを守る。マイエッラ山脈を挟んだ、ふたりのスタイルはそれぞれに異なるように見える。しかしアブルッツォという恵まれた自然の中で育ってきたふたりの根底には、この豊かな伝統を守っていこうということは共通するところのようだ。ただそのためにつくり上げたスタイルが違うだけだ。

大自然の持つ豊かさは、懐深く人を包み込み、豊かさの本質が分かる人を育んでいるのだろう。

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