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秋のイタリアでやりたいこと3選

青い空、青い海、太陽の国というイメージのイタリアですが、四季折々の情緒にあふれた国でもあります。そんなイタリアの秋は、美しい秋色の景色と、美味しいものにあふれた魅力的な季節です。

トスカーナ州、キャンティ地方の秋の風景
イタリア大好き、主要観光地はほぼ行った、というイタリア通の方に、そしてたまたま秋に旅行するという方にも参考にしていただきたい「秋のイタリアでやりたいこと3選」をご紹介します。


美しい秋色の景色を堪能する!
日本で紅葉といえば、赤いモミジを想像しますが、イタリアの紅葉は赤色ではなく、黄色や茶色に色づくものがほとんどです。ちょっと地味かなと思いますが、いえいえ、秋の爽やかな光に照らされて、黄金色に輝く紅葉は、それはされでえもいわれぬうつくしさです。

カステルベッロ=チャルデス(トレンティーノ=アルト・アディジェ州ボルツァーノ自治県)を走る列車
紅葉がみられる場所でおすすめは、やっぱり山岳部。雄大なドロミテ山塊のあるボルツァーノや、アルプス山塊のアオスタは電車でも行けるので、レンタカーをしない観光客にもオススメです。


収穫祭へ出かける!
収穫の秋、美食天国イタリアでも獲れたての美味しいものがたくさんです。ぶどう、オリーブ、ポルチーニ茸、栗、トリュフなど、など、など。
各地でそれぞれの特産物にまつわるお祭が行われます。お祭りでは、直売所にイートインコーナー、また楽しいイベントなども行われるので、かなり楽しめます。

開催情報はネットに出ていますので、お祭りを意味する「Sagura」または「Fiera」と入れて、あと場所名と年、例えば「Firenze 2023」などと入れると情報がヒットすると思います。英語での案内も多く出ていますので、検索も便利です。

ワインの名産地グレーベ・イン・キャンティで行われたワイン祭りの様子
ワインが好きな方なら是非行ってみたいのがワイン祭り。その土地のワイナリーが集まって、試飲会をします。有名ワイナリーから小さなワイナリーまで集まりますので、市場には出回らない、その土地ならではの掘り出し物のワインや、また飲み比べができますので、自分好みのお気に入りワインに出会えますよ。


今しか味わえない絶品、一番搾りのオリーブオイルを味わう!
旬の味覚はたくさんありますが、中でも、収穫の季節、現地だけで味わえる特別な美味しさといえば「オリーブオイル」を一番に挙げたいと思います。

収穫を待つオリーブの実
イタリアのオリーブオイルの美味しさをご存知の方も多いかと思いますが、摘みたてのオリーブから絞ったオイルの美味しさは格別なのです。まず、色、とても美しい緑色をしています。そして、香りと味わい、まるで緑のブーケのように爽やかでありつつ、ほんのり辛味を伴うコクのある旨味。べったりとしたオイルらしさはなく、サラサラと滑らかなのです。

どうして、この一番搾りが現地だけで味わえるのかというと、オリーブの実は摘み取られた時から酸化を始めます。ですので、摘み取ってすぐに搾油したものは、特に新鮮で、オリーブらしさをしっかり残した味わいたっぷりの美味しさなのです。イタリアの人はみんなこの一番搾りの美味しさを知っていて、家庭では毎年出始めの頃に買いだめしたりします。

収穫時期は地方によって違いますが、大体11月に入ってから。その年始めのオリーブオイルは「Olio Nuovo」として、季節になると各所で売り出されますので、その時期にイタリアにいかれたら是非チェックしてみてください。

(2018年10月)

トレヴィーゾ郊外の栗祭り 「フェスタ・デイ・マローニ」

トレヴィーゾ郊外の山間、コンバーイ(Combai)

すっかり秋らしく、冬の足音が聞こえてくるこの時期は、栗の美味しい季節。
トレヴィーゾ県のコンバーイ(Combai)という、プロセッコの里に隣接した山の地域では、産地呼称であるI.G.P.を冠する栗の産地としても有名だ。

その地で毎年10月には、栗の収穫祭が開かれる。ここに辿り着くまでには、プロセッコのブドウ畑の並ぶ急勾配の道を、車でズンズンと登っていく。紅葉の始まりかけた周囲の素晴らしく美しい風景を横目に、目的地へ。石造りの家の立ち並ぶ小さな集落。標高約400mに位置する町だ。
コンバーイはプロセッコの畑を見下ろす場所に位置する街に近ずくにつれて人も車も多くなり、会場から少し離れたところに車を止めるように交通整理員に誘導されて、徒歩で街の中心へ。普段は静かなこの小さな集落は、一年に一度のこの季節となると、車が渋滞するほどの賑わいとなる。

集落の入り口には大きな垂れ幕!


街全体がお祭り会場へ

集落内は全体がお祭り会場と化している。道端には、土地の製品を売る屋台が出店している。美味しそうな地元チーズやヴェネトの太いサラミ、ソプレッサの山は非常に魅力的…。

地元の食料品店の店先。簡易の即売所となる


柔らかく太いヴェネトのサラミ、ソプレッサ


そしてメイン会場へ到着。お昼どきには、ラザニアやニョッキ、スペッツァティーノ(肉の煮込み)などが振舞われており、大混雑の雑踏のなかで食べるそれらはこれまた格別。並べられたテーブルに座ると同席のお隣さんとも親しくなったりする。

牛肉のスペッツァティーノ。付け合わせはお決まりのポレンタで


祭りの目玉、焼き栗を食す!

別会場となる仮設テントは、焼き栗の大きな実演販売と飲食コーナーとなる。
テントの脇には、大きな大きな鉄鍋が設置されており、焼き栗が準備される。このお祭りの名物シーンでもある。チェーンで動作させるほどの大きな鉄鍋は、大量の薪を燃やして栗を焼く。煙がすごいが、気温の下がるこの時期には、暖をとるのにもちょうど良く、周囲には多くの人々が集まる。実際に焼いている人たちは大汗をかきながら作業しているのだが…

大きな鉄鍋で大量の焼き栗をつくる風景は、このお祭りの名物


食券販売所の列に並び、焼きたての焼き栗を注文。食券を持ってカウンターに行くと、焼き栗の袋と交換してもらえる。
熱々の焼き栗を囲んで、手先を真っ黒にしながらとにかく栗を食べる、食べる。食べる…食べ続ける。

真っ黒に焼けた栗。中はホッコリ。旨し!


会場内はテーブルが並べられていて、栗は立ち喰い


焼き栗のお供は…トルボリーノ

そして、焼き栗に欠かせないのが、「トルボリーノ(torbolino)」だ。「トルボリーノ」とは、この時期に飲むワインの前身のようなもの。収穫して間もないぶどうの果汁は、発酵過程を経てアルコールへと変わっていくが、その発酵がまだ完全になされていないこともあり、糖が残りアルコール度数が低い。当然のごとく、澱引きしていないことから、濁っている。「トルビド(=濁った)」であることが、「トルボリーノ」と通称される所以だ。

栗の収穫時期には、ちょうどこの段階のコレが季節的にも、そしてほんのりと残る甘い微発泡のコレが焼き栗に非常に合うことから、焼き栗とトルボリーノとはきってもきれない関係なのだ。
ワインになりきっていないぶどうの果汁という意味で、この会場ではあえて”モスト”と呼んでいる。

濁り酒のトルボリーノ


会場は、地元の子供たちも焼き栗や飲み物の提供をお手伝い。焼き栗の袋詰めやカウンターでワインを注いでくれる子供たちの姿がなんとも可愛くありながら大人びていて、見ていると思わず顔がほころぶ…。

注文のバンコ(カウンター)を守るのは、地元の子供たち


山間の小さな小さな街の大イベントだから、迎える人も訪れる人も喜びを一緒に分かち合う。この季節とこの季節だからこその味覚を皆で大いに楽しむ、そんな楽しいイベントだ。

コンバーイの街の上から。集落内はスパヴェンタパッセリ(かかし)が道案内