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保存食をもっと楽しんでいただく 本誌取材の裏側

 51日に発行されたイタリア好きVol.49、読まれましたか?

 「知恵とうま味が詰まった 保存食でフルコース」を担当させて頂きました。

本誌には載せきれなかった、取材の裏側をご紹介したいと思います。

 2月中旬が過ぎた頃、イタリア好き編集部より、イタリア好きVol.36に紹介した出張料理人のミルコ・ピンナ(Mirko Pinna)さん(第11弾のマッシモツアーでも紹介されております)に、イタリアの保存食の紹介とアレンジする術を紹介してくださいませんか? というお話を頂きました。

 取材依頼をするミルコさんは、サルデーニャ島出身の両親の元にモデナで生まれ育った方で、最近忙しくしているらしいというのは分かっていたのですが、連絡が取れない。電話は留守電、メッセージとメールを散々送りつけ、やっと連絡がきたのが20日の夜中。



Mirko Pinna
Photo by Giulia Pini

「喜んで引き受けたいけれど、問題はスケジュール。今仕事でサルデーニャなんだ」

というメッセージ。ともかく私の予定はどうにか合わせるからと数日後、日にちを決めようとサルデーニャ島から戻ってきたところを捕まえて、打ち合わせしました。

「イタリアの保存食と保存食の活用」を踏まえて、イタリア土産とし皆さんが一度は買ったことがある、もらったことがある、馴染みがあるもの、物語性があるものちょっと珍しいものなどの保存食を11候補ほど挙げ、アレンジ術は3〜4候補出してすり合わせて、編集部に送る候補リストを作り、取材撮影日を決めました。

 当初予定していたカメラマンは日程が合わず、急遽ミルコさんに紹介してもらい、37日、8日にミルコさんの事務所で取材撮影することになりました。

 事務所と言ってもお客様を招いてお食事会や、料理教室、奥でケータリングの準備ができるスペースで、アンティーク家具やケータリングの名脇役になるようなお洒落な瓶詰め、スパイスなど色々なものがあってとってもおもしろいのです。



撮影に使ったミルコさんの事務所 Photo by Giulia Pini

今回のカメラマンは、モデナを拠点とするジュリア・ピーニさん。ウエディング、企業のピーアール、食関係の雑誌などで活躍されています。

 撮影当日、プロの仕事とはこういうものだ! と感動しました。

 すべてが揃っていることはもちろん、私がお願いした項目を確認して食材のイメージからシェフとカメラマンの配色のこだわりがすごかった! 1カット撮るのに載せるお皿、背景、配色、などかなり試行錯誤しています。



黄色が基調のアンティークの肘掛け椅子を使って ポンピーアの位置を決めるのにmm単位で調整中 筆者撮影

自然光で撮影するのにテーブルを動かしたり、ソファーを出したり、ポンピーアにはサルデーニャのまな板やナイフだったり、キノコ狩りをするときに使うかごや、ポルチーニ茸が生えることが多い栗の枯れ葉などなど細部を見られるとかなりおもしろいと思います。

 記事を書くにあたり、本誌に載せたレシピは日本語に起こした後、すべて自宅で試作してみました。はっきり言います。

「全部おいしいです!」

なので、皆さんも是非試してみてください。

 可能な限り保存食の作り方を見せて欲しい、そして食材として料理にどうアレンジしていくかがポイントでした。

 ドライトマトのような馴染みの食材は、イタリアでは誰でも使うのでは? と思われるかもしれませんが、北イタリアでは使っているのを見たことがない。そのまま使うの? どうやって保存すれば良いの?と取材中に質問がどんどん出てきます。

ドライトマトもポルチーニも、乾物の戻し方は冷水でゆっくり。なるほど日本の乾物の扱いとも似ているなあと再確認しました。

 塩分があると言ってもこんなにドライトマトを戻すのに時間をかけるのか! 塩分は抜け過ぎないの? と思われた方も多いはず。

「味見してみてちょうどトマトのサラダを作る時のように、ちょうど良い塩加減になっているくらいが目安だよ。だから必ず、戻したら味見をしてみて。感覚的なことだけれど大事だよ。」

とミルコさん。

 カルチョーフィのオイル漬けにしても、手がかかるカルチョーフィは、イタリア人であっても敬遠する人が多いのも事実。割高ですが、大型スーパーなどは下処理をしたものが売っていることもしばしば。カメラマンのジュイリアさんが「えーこんなに下処理に時間がかかるの」と撮影しながら……



蕾の外側は捨てずに、スープストックに使うのも良いよとミルコさん 筆者撮影

 そんな手間をかけても、自分で作るときは材料を吟味して作ることができるのが魅力なんです。撮影で使用したのはミルコさん手作りの厳選されたカルチョーフィにオリーヴオイルだったし、下処理の白ワインもワインビネガーもこだわりがあるものだから市販品と比べると、まず歯応えに驚き、劇的においしかった。アレンジをしなくても、これだけで十分完成された物だよ。と言い切られたのは、オイル漬けに自信があったからかと食べて納得した次第。思わず次の日に市場に出かけ、自家製のワインとワインビネガーを使って仕込みました。



そろそろ食べごろになってきたカルチョーフィとドライトマトのオイル漬け

 これはサラダや誌面の都合でご紹介しきれなかったブルスケッタにして、自家製のバルサミコ酢でにんまりしながら食べようと思っています。だって手がかかっているんだもの。

 ひなどりの骨を外すなんてなかなか家庭ではされないかもしれませんが、骨から筋肉を少しずつ剥がしていく感じにするとうまくいきます。

 ハーブ塩もこの材料にこだわらず、自宅にあるハーブを刻んで、塩と混ぜて乾かすを基本にして作ってみても楽しいです。



初夏になって育ってきた我が家のセージとオレガノこれでハーブ塩作ります。

 サルデーニャ島の一部にしか育たない柑橘類ポンピーアは、ミルコさんがわざわざサルデーニャ島から持ち帰ったものを使っています。文章だけではわかりにくいという方は、ミルコさんがYouTobeで作り方を紹介していますので、イタリア語ですが是非ご覧になってください。

本誌の記事がもっと楽しく読めるはず!

イタリアモデナまでバルサミコ酢の醸造室を見学に来たい!という方、私のサイトサイトまでご連絡ください。

 


皆さんとイタリアでお会いできることを楽しみにしております。

 

秋の葡萄祭り

今年も葡萄の収穫が始まりました。


我が家のバルサミコ酢造りに使う、トレッビアーノの収穫も始まっています。

そんな9月の最終週の土、日に、私の住むノナントラでは「Sóghi, Saba e Savór 」というまさにとれたての葡萄を使ったお祭りが行われます。


ソーギとは葡萄の果汁を小麦粉で固めたプディング↓

サバは葡萄の果汁を煮詰めて作るシロップのモデナの呼び名。

サヴォールは(過去の記事がございます)

季節の果物が入ったコンフェトゥーラ。



2019年の様子 今年は皆さんマスクをしていました。

様々な屋台が出ますが、なんといってもその目玉はバルサミコ酢愛好者協会のノナントラ市支部が主催するブース。伝統的な製法のバルサミコ酢がずらっと勢揃い。無料で味見がし放題。



沢山のバルサミコ酢一つ一つ味が違います

しかも市場に出していない、個人所有の伝統的な製法で作られ、大事に守られてきたバルサミコ酢が堪能できるのです。

その横のブースでは、モストコット(葡萄の汁を煮詰めたもの)を作る作業。こちらも味見できますが、ノナントラの市所有の醸造室にあるバルサミコ酢の原料として使われます。

この醸造室、お祭りの間、開放しており、バルサミコ酢の味見ブースで申し込みをすると、ガイド付きで案内をしてくれます。醸造室に向かう階段の踊り場からの眺めも素敵。



モデナ方面に立つモデナの塔

教会の横では、地元のボランティア団体が作るニョッコフリットが売られて、熱々のニョッコフリットを食べるのもよし、サルミ類を追加してもらうのもよし。

旧市庁舎の脇の公園では熱々のパペック(もしくはカルツアガッティ)と呼ばれるポレンタの中にインゲン豆や、チッチョリというサルミを混ぜて、ラードで揚げたものが売られ地元の方が列をなしています。

ソーギ(葡萄プディング)や、サボール(季節のフルーツのコンフェトゥーラ)もそのほか季節の野菜や果物、パルミジャーノや、生ハムなどが購入できます。

昔使われていた農耕器具を使って、葡萄を潰す作業の体験(お子様限定)ができたり、

初夏に仕込んだノチーノという青胡桃を使って作るリキュール(作り方の動画はこちらから)の試飲もありました。

一年のうちで、小さな町が一番盛り上がるお祭り。

雰囲気を味わっていただくために動画を作りました。

 ↓ ↓ ↓


リンクはこちらから👉イタリア 秋の葡萄祭りの様子

葡萄を始め、秋の収穫の喜びを感じられるローカルなお祭りに、ぜひ一度いらしてみてはいかがでしょうか?

バルサミコ酢の醸造についてホームページ「ミアモデナ」はこちらからブログ、Vlogでモデナの色々を紹介しています。

ミアモデナ