タグ別アーカイブ: トスカーナ

【トスカーナ州】世界が恋したスクーター「Vespa」の美術館があった!


往年の名画『ローマの休日』で、オードリー・ヘップバーン演じるアン女王が乗っていた小さなスクーターは「ヴェスパ(Vespa)」。イタリアのメーカー「PIAGGIO」のもの。コロンと丸い形がかわいらしく、世界中で愛されるスクーターです。

そんな人気のヴェスパを集めた美術館があります。キュートなフォルムの歴代ヴェスパが並ぶ館内は、車やバイクが好きな方なら垂涎もの。バイクにそんなに興味がない方も、イタリアンデザインの変遷や、工業発展の歴史を追うことができる興味深い美術館です。

ちょうどフィレンツェとピサの間にあり、ちょっと足を伸ばして観光に立ち寄りやすい場所でもある、こちらの「ピアッジョ美術館」をご紹介します。


名車「ヴェスパ」の誕生

ヴェスパを作るPIAGGIOは、今はスクーターを中心に作るメーカーですが、前身はジェノバの造船業者でした。

その後、鉄道の発展に伴い造船の技術を活かし、電車の車体を作るようになります。そして戦争が始まると、軍事用の車両やモーターの生産をするようになりました。戦後、軍事用に開発していたモーターの技術を活かして、一般の人が足代わりに気軽に乗れる小型バイク、スクーターの開発を手がけます。

そうして生まれたのがヴェスパ。
独特のエンジン音が蜂の羽音に似ていることから、イタリア語でスズメバチという名前がつけられました。


世界で愛されるヴェスパの理由はここにある

それからスカートを履いた女性も乗れるようにと、足をそろえてのせられる車体へと改良されたヴェスパ。今でこそ足をそろえて乗るスクーターは当たり前ですが、当時は画期的なものでした。戦後の経済成長とも相まって、庶民の足として爆発的な人気を得ます。
時代のニーズに合った規格もさることながら、何より軽くて強いエンジンでどこまでも私たちを運んでくれる強さが、人々に支持された理由でもあります。

その後も時代に合わせ常に新鮮なデザインを提案し、ターゲットをうまく捉えつつ変遷してきたことで、この小さなスクーターは永く人々に愛されるようになりました。歴代のヴェスパが並ぶこちらの美術館では、その変遷を一目で見ることができます。


もっと広がるヴェスパの世界

人々の生活の中で愛されてきたヴェスパ。丸いかわいらしいフォルムもまた人々に愛される理由の一つです。その見た目のかわいらしさから、映画や芸術のワンシーンに登場することもたくさん。そういった貴重な資料も、こちらの博物館に展示してあります。

写真のものは、映画『007』でジェームス・ボンドが使用した、水陸空兼用の夢のヴェスパ。もちろんそれは映画の中のお話で、実際に飛べたり水の上を行けたりするわけではありません。ですが、そんな夢が広がるインスピレーションを与えてくれる魅力にあふれているところが、ただのスクーターにとどまらない世界で愛される理由なのかもしれませんね。


●名称:ピアッジョ美術館(Museo Piaggio)
●住所:Viale Rinaldo Piaggio, 7, 56025 Pontedera (PI)
●TEL:058-727-171
●公式ホームページ:https://www.museopiaggio.it/
●instagram:https://www.instagram.com/museopiaggio_official/

芸術の原点を探して

はじめまして!藤原亮子、フィレンツェ在住、カメラマンをしています。

イタリアに住むきっかけは短期留学です。撮影の仕事の基盤アップのために美術の基礎を学びたいと思い、学校を探していて見つけたのが、芸術の都フィレンツェで、本物に触れながら学ぶルネッサンス芸術史のコースでした。ルネッサンス!文化復興、古典芸術を見直し、原点に立ち戻ることで新しい文化芸術が花開いた時代、そこを学ぶことは、美術の基礎を知りたい私にピッタリなのでは?と、心惹かれるままに住みはじめたフィレンツェ。

ルネッサンス芸術が花開いたフィレンツェの街並みは悠久の美しさ

毎日見上げる大聖堂に毎日感動して、角を曲がる度に出会う中世の美しい建造物、芸術に毎度感激して、そしてその上に注ぐ日の光の美しさに感嘆する日々。そうする間にこちらで仕事のご縁が繋がって、気がつけば10年以上住んでいますが、フィレンツェの美しさに、毎日毎度、初めて見た時のように感心します。

トスカーナはワインの名産地。街を出ると葡萄畑が広がります

コロナの都市封鎖をきっかけにフィレンツェの中心街から郊外へ引越し、今はキャンティワインの葡萄畑の真ん中に住んでいます。

何気ない風景。でもその時々にハッとするような美しさを見せてくれます

市内から車でたった30分ですが、ところどころに集落と畑はあるものの、主に雑木林。見所を聞かれても特に上げるものはないのです。

ひまわり畑が咲けばいつもはのどかな田園風景が一気に華やぎます

でも、四季折々に違った景色を見せてくれる自然の美しさは何にも代え難いものです。

生を謳歌する生き物たちの姿はエネルギーに溢れています

そしてその中で怏々しく生きる野生動物たちの姿も見ることができます。野うさぎが原っぱを駆け抜け、イノシシが道を遮り、鹿が庭先を渡り、狐が家の窓を覗く、そんな楽しい環境です。

トスカーナでよく見られる糸杉は叙情的な景色をつくりだしてくれます

巡る季節をここで何度か過ごして、その美しさが心に染み渡った今思うのですが、ああ、こんなに芳醇な美しさを持つ自然環境に恵まれているから、ルネッサンス芸術をはじめ、イタリアの圧倒的な芸術センスが生まれるのではないかと。

春には野原をひなげしの花が彩ります

そんなイタリアの日々に溢れる美しさ、ガイドブックに取り留めるようなことでもない、でも胸に留まり心を豊かにするようなイタリアの美しさを切り撮って、少しづつ紹介していけたらと思います。

本日から公開!美しい大自然を堪能できるおすすめイタリア映画「帰れない山」

ゴールデンウィークまっただ中、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はトスカーナ州のピエトラサンタビーチに行ってきたのですが、こんな光景を見ました。



「鯉のぼり!」

・・にちょっと見えませんか?!海岸で凧揚げのカイトを売っていただけなのですが、連なっている感じが遠目に見るとちょっと鯉のぼりっぽくて、ちょうど55日こどもの日に近かったので、そんな風に見えてなんだか嬉しくなりました。


イタリア風鯉のぼりを眺めていてふと、男の子たちの素晴らしい友情を描いたイタリア映画を思い出しました。イタリア好きの皆さんには特におすすめしたい映画「帰れない山」です。

 

イタリア映画祭で多数ノミネート、原作はイタリア文学最高峰の賞を受賞「帰れない山」が公開

イタリア映画「帰れない山」は本日55日から日本で公開されますが、この映画は昨年イタリアで公開されてかなり話題となった作品で、第75回カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞しています。

出典:映画「帰れない山」オフィシャルサイト


舞台はイタリア北部のヴァッレダオスタの雄大なモンテ・ローザ山麓。この村に住む少年ブルーノと夏の間だけトリノからこの村へ来る少年ピエトロの二人の壮大な友情物語で、対象的な二人が成長していく過程で生まれる葛藤や苦悩などからは様々なことを考えさせられる内容です。

出典:映画「帰れない山」オフィシャルサイト


対象的な二人を好演しているのはイタリアで大人気の若手俳優二人ルカ・マリネッリとアレッサンドロ・ボルギ。私は「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2017年公開)で初めてルカ・マリネッリを知ったのですが、その時の凄まじい目力と強烈なオーラを封印して悩める好青年を演じていたのが新鮮で、新たなマリネッリの魅力を堪能することが出来ました。

出典:映画「帰れない山」オフィシャルサイト


さて、気になるイタリアでの評判ですが、私の周りのイタリア人たちに観た感想を聞くと、みんな口々に「Bellissimo(ベリッシモ)=めっちゃいい!」と即答。

私は完全にピエトロ派(ひとつのところにとどまらずさまよい続けるタイプ)なのですが、映画を観た友人たちとピエトロ派かブルーノ派(ひとつのところにとどまるタイプ)か、などと感想を言い合えるのも映画を観た後の楽しみだったりします。

510日にイタリアで開催される、イタリアのアカデミー賞「David di Donatello 2023(ダヴィッド・ディ・ドナテッロ)」では作品賞、監督賞、そして主演の二人がともに主演男優賞にノミネートされるなど、主要部門で多数ノミネートされており、今年のドナテッロの大本命とされている注目作品です。

原作はイタリアを代表する作家パオロ・コニェッティがイタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」を受賞した「帰れない山で、日本を含む39言語に翻訳された世界的ベストレラー小説。なにからなにまで話題が盛り沢山の作品となっていて、私も観る前からとても楽しみにしていた映画でした。

出典:映画「帰れない山」オフィシャルサイト


イタリアの原題は「Le otto montagne(レ・オット・モンターニェ)=8つの山」ですが、タイトルにあるようにこの映画の主役はなんといっても雄大な山。この美しいイタリアの自然と雄大の圧倒的な映像美は映画館の大きなスクリーンで観てこそ良さが引き立つので、映画館で観ることをおすすめします。ちなみに、会話もそれほど難しくないイタリア語が使われている場面も多いので、イタリア語を学習している人にもおすすめしたい映画です。



新宿ピカデリーほか全国公開されているので、是非最寄りの映画館で雄大なイタリアの自然を堪能いてください!次回のイタリア旅行にイタリアの美しい山脈ハイキングを組み込みたくなること間違い無しの作品ですよ。

映画「帰れない山」(配給:セテラ・インターナショナル)
URL: http://www.cetera.co.jp/theeightmountains/

映画「帰れない山」で雄大な山の雪景色を眺めていて、ふと今年の冬に訪れた雪山の景色が素晴らしかったマッラーディのことを思い出しました。そんなわけで、3ヶ月半ほど前の内容になってしまいますが、マッラーディやトスカーナ州などから招待してもらって参加してきた栗のイベントについて次回ご紹介したいと思います。この秋冬にイタリア旅行を計画されている方に是非おすすめしたい可愛らしい街&美味しい栗づくし料理・スイーツを沢山ご紹介するので、お楽しみに!