ナポレオン、ハチミツ、エルバーノ
ピオンビーノからカーフェリーに乗り込む。先週までは雨が続いて、天候も良く無かったので心配だったが、11月(取材は2014年11月)だというのにこの日は暖かく、デッキで弾かれていく水面を眺めていても心地良い日だった。もちろんハイシーズンであればフェリーも人々で賑わい、このデッキはバカンスに期待を膨らませた人が、風を受けながら日光浴を楽しんでいるに違いない。でも、ぽつんとひとり初めて上陸するエルバ島への期待に思いを寄せるのも悪くはなかった。
しばらくすると西日の陰になって小高い山が連なる島影が黒く見えてきた。近づいてその姿がはっきりと現れた時、岩場と緑が多いことに気がつく。ポルトフェッライオの港に着くころには、灯台のある高台にかつてのナポレオンの邸宅跡が見える。約1時間弱の船旅の終わりは島取材の始まりだ。
トスカーナ州リボルノ県エルバ島は、1814年ナポレオンが蟄居した島として知る人も多い。2014年はちょうどその200年にあたり、記念の行事も色々とあったようだ。島のあちらこちらに白地に斜めの赤のラインに3匹の蜂が配された島旗がなびいていた。これはナポレオンが立てた旗で、養蜂の盛んな島の蜂を象徴として、養蜂、鉱石、漁業を意味する3匹を配置したものと言われている。
島の人は概ね彼が滞在したことに好感を持っていた。1000人ほどの兵隊を連れて上陸し、町を整え、現在に至る発展の礎をつくったとされ、ある人はナポレオンは島を有名にしてくれたと上機嫌に話していた。
緑の多い島は、クエルチャ(樫)、ミルト(銀梅花)、コルベッツォロ(西洋ヤマモモ)、レンティスコ(乳香樹)、ジネーストラ(エニシダ)などの地中海特有の木々とハーブ類が多く自生しているからだという。そして海岸線の多くは岩場であり、砂浜の数は少ない。
現在の島の主要な産業は観光業。春から10月中旬までは観光客で賑わい、北イタリアをはじめ、ドイツ、スイス、フランスなどからも多くの観光客が訪れている。別荘を持っている人も少なくない。
島は大きく分けて3つの地域に分類できる。細長く地形の延びた東側は、鉄分を多く含んだ土壌でかつて鉄鉱石の採掘で栄えたところだ。中央部は島のいちばんの中心地ポルトフェッライオのあるところで、このあたりは粘土質の土壌。西側部分は、島でいちばん高い山カンパーネ山の火山活動によってもたらされた石灰質の土壌である。島の周囲は約140kmと小さいので1日でも回りきれる。
そんな島に敢えてシーズンオフの晩秋に取材に行った。観光シーズンを避けて島民の生活を見てみると、島本来の姿や観光以外の魅力が分かるような気がしたからだ。シーズンオフでも生産者は休まない。むしろその時期こそ次のシーズンを迎える大切な準備の季節でもある。
エルバーノ(エルバ島の人)は、仲間で集まればグリルをやってワインを飲んで陽気で元気だという。温暖な気候と豊かな自然、そして自慢の海には、島民を島から離さない魅力がたくさん詰まっていた。
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