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友の囲むピエモンテの食卓なら(ミュージック編)

テーブル・セッティング、よし! 炉に大きめの薪もくべ、部屋の温めかたオーケェ!北イタリアの人間は以外に時間厳守、夜8時を過ぎると、ほら、わいわいと友人たちが集まってきましたよ!
キッチンでお鍋のふたを揚げて中をのぞく奴、『料理人の手際は如何に?』と、包丁を握る私の手許を見守るニューフェイス、『持参のトルタは冷蔵庫で冷やしてね』と慎重な手つきで紙箱を取り出してくるマンマ感80%の旧友。
ワイン生産者に怖いもの知らずのクラウディオはボトルの薀蓄をドヤ顔で語りつつコルク抜きに手をかける。

我が家で友人を招いての食事はこんな感じで始まります。と、足りないのは?
『Ehi, manca una bella musica! ベッラ・ムージカ(いい音楽)がたりないよ!!)
集まった連中と料理にピッタリの場を盛り上げるこれがないことには。

今日のメニューは?冬場のピエモンテなら伝統料理バーニャカウダ! 新鮮な季節野菜を好みで集めてきて大勢がテーブルを囲む。
それなら、ピエモンテ出身の大御所カンタウトーレ(シンガーソングライター)パオロ・コンテだろうと思われるかもしれません。が、ここは一つフェイントでジェノバへ。

イヴァーノ・フォッサーティのミュージックビデオは
https://youtu.be/o7EUQDYGqCg (Ivano Fossati:i treni a vapore)

交易の要所として昔から多くの人種が行き交い独特の言葉が発達した町。潮騒をゆりかごに育ったジェノヴェーゼの間には、ファブリツィオ・デ・アンドレやブルーノ・ラウツィ、ジーノ・パオリなどイタリアを代表するカンタウトーレがいます。海の香りを残しつつも柔らかで緻密な旋律のイヴァーノ・フォッサーティがお勧め。バーニャカウダ・ソースはリグーリアの海の香りを凝縮させたようなアンチョビーにオリーブオイルと小粒でも香りのつよーいニンニクを利かせたソース。海に焦がれる山男の思いを満たしているから音楽も海の見えるものを。
イヴァーノ・フォッサーティ自身の曲は詩が美しく優しい、ミーナ、フィオレッラ・マンノイア、パッティー・ブラヴォなどの曲も手がけ、数々のヒット作を出しています。

そして、みんなでボリュームたっぷりにお肉、牛の内臓からお菓子のアマレットやリンゴまで手当たり次第に揚げるフリット・ミストを食べるときこそパオロ・コンテでしょう。もともと弁護士が本業で、趣味で演奏していたのがフランスで人気が出てしまいます。ちょっとジャズっぽく、がさっとした声でちょっと軽く美しい詩を語るように歌うパオロ・コンテ。彼の代表曲『Azzurro』『Genova Per Noi』『 Gelato Al Limone』皆さんもそれと知らずに聞き覚えのあるものがあるかもしれませんね。

パオロ・コンテはこの曲を
https://youtu.be/Pw3kPOGDESg (Paolo Conte: Come-Di)

たらふく食べたら、ウィスキーなんてどう?
こう勧められ、素直にうなずいてしまう男たち。夜も更け、わいわいというよりしんみりと話したくなるころ。
そうなったらボリュームを抑えてヴィニーチョ・カポッセーラをかけてみる。
ちょっとトム・ウェイツっぽいです。スモーキーでメロディアス。いい気分で琥珀色の液体を喉に流し込める。

ヴィニーチョはステージがいつも楽しい
https://youtu.be/OlaaV_X7Niw
(Vinicio Cappossela: Bardamu)

イタリアのカンタウトーレたちは音楽性もさることながら詩の表現力が素晴らしい。
2言、3言で情景全体がうわっと目に浮かぶ。幾重にも折りたたまれた心のひだが広がる。フランス人はイタリア人をライバル視することが多いけど音楽だけは別なのはそんなところに理由があります。イタリア語を勉強している方は是非、彼らのテキストを眺めてみてください。

ああ、冷蔵庫からふわふわシフォンケーキが出てきました!この軽さが怖い、、、
で、おまけです。あまり有名ではありませんが、実力は女性のパトリツィア・ラクイダーラの優しい曲を蜂蜜代わりにたらしましょ。

パトリツィアは現在舞台女優としても活動中です。 (Patrizia Laquidara: Mielato)



若手女性シンガーソングライターのパトリツィア。サンレモ音楽祭の若手部門で優勝。歌唱力も抜群です。
日本で公開になった映画イタリア的恋愛マニュアルの主題歌を歌っています。

ではBUON ASCOLTO ♪