今回紹介するのは、『イタリア好き』アブルッツォ特集号でもとりあげられた、グアルディアグレーレ。
アブルッツォ州の南東に位置するキエティ県の中で9番目に人口が多く、人口は約9千人。標高約600mの丘陵地の斜面に沿って発展した町です。
県庁所在地であるキエティからは路線バス「TUA」で約1時間。町のいたるところからは3,000mに届こうかという雄大な山々を望むことができます。中世から続くその町並みは、「イタリアの最も美しい村」にも登録されています。
国立公園の玄関口に佇む美しい村
アドリア海と地中海を分断するようにイタリア半島を縦貫するアペニン山脈。最高峰は2,910mの高さを誇るコルノグランデ、それに続くのがマイエッラ山系のモンテ・アマーロ(2,793m)です。
これらの山はいずれもアブルッツォ州に属すのですが、グアルディアグレーレはこのモンテアマーロの麓、緑豊かなマイエッラ国立公園内にあります。地名にも「グアルディア(guardia)=見張り役」とあるように、見晴らしの良い丘の上に立つこの町の周囲には、今も中世に建てられた監視塔や町の入場を制限していたであろうゲートが点在しています。
町の中心に建つサンタ・マリア・マッジョーレ教会は13世紀頃のもので、マイエッラの山から削ってきた石で作られています。日曜日になると教会前の広場を中心に市場が立ち、周辺の町や村からも日用品や食材を買い求める人たちでにぎわいます。
アブルッツォを代表する銘菓「修道女のおっぱい」とは?
グアルディアグレーレには、この町を一躍有名にしたお菓子があります。それが「修道女のおっぱい」と呼ばれる「シーセ・デッレ・モナケ(Sise delle monache)」です。
「シーセ」とは、アブルッツォの方言で「おっぱい」のこと。ところがこのお菓子、とんがり山が3つ。「なぜ3つのふくらみがあるのにおっぱい?」という、素朴な疑問がわきます。由来は諸説あるようですが、その日常が少しミステリアスな存在である修道女たちのゆったりとした衣装の下には、もしかして3つのおっぱいがあったりして……という、ちょっとしたファンタジーとユーモアから名付けられたというもの。
たっぷりのカスタードをはさんだ卵の風味が効いたふわふわのカステラ生地の上には粉糖がまぶされ、それが山に降る雪のようにも見えるため、別名「トレモンティ(Tre monti)=3つの山」とも呼ばれています。うれしそうにキエティっ子たちが見守る中、がぶりと思い切りかぶりついて食べましょう。
優美な鉄細工の世界を作り出す職人のまち
グアルディアグレーレは、金属の加工や細工でも有名な町で、14世紀からは鋳造技術を用い硬貨の製造も行われていました。鍋や水瓶などの実用品だけでなく、貴族からの依頼を受けて、優美な装飾を施した燭台やベッドや貴金属品なども、熟練の職人たちが手がけていました。
現在も町の一角にあるサン・ジョヴァンニ門の周辺を中心に工房などが残っており、職人の技を目にすることができます。マッジョーレ教会の鐘楼にも曲線が優雅な鉄細工の鐘が鎮座し、町の伝統工芸を象徴しているようにも見えます。
また、毎年夏には地元の芸術工芸活動を支え手工芸品を普及させていくことを目的とした展覧会が開催されています。金属細工だけでなく、陶芸や彫刻、刺繍など幅広い分野の芸術家や職人達がアブルッツォ中から集まり、作品を紹介する場となっています。
まちなかで「シーセ・デッレ・モナケ」が食べられるのこの2つのお店。
ご近所なので食べ比べも?!
(1)
●名称:パスティッチェリア・エモ・ルッロ(Pasticceria Emo Lullo)
●住所:Via Roma, 105, 66016 Guardiagrele (CH)
●TEL:0871 82242
●営:9:00~12:30、16:00〜19:00
●休:月曜 (祝祭日は休業・時間変更の場合があります)
(2)
●名称:パスティッチェリア・パルメリオ(Pasticceria Palmerio)
●住所:Via Roma, 70, 66016 Guardiagrele (CH)
●TEL:0871 82727
●営:9:00~20:00
●休:月曜 (祝祭日は休業・時間変更の場合があります)
(2019年5月)