タグ別アーカイブ: ホワイトアスパラ

ヴェネトのアスパラ第2弾 バドエーレ産アスパラIGP

ヴェネト州でも最も有名なバッサーノ産の白アスパラの産地から少し東にずれた地域にて、同じく春先の名産として知られているのが、トレヴィーゾ県バドエーレ地区を中心としたアスパラガス。

バッサーノは白のみだが、こちらは、白と緑との両方ともが生産され、産地呼称であるIGPに認定されている。生産地区として認定されているのは、トレヴィーゾ、パドヴァ、ヴェネツィア県下の指定地域。

この地域の特徴は、この地区は自然水の湧き出る、水のきれいな地域。ヴェネツィア共和国の影響を大きく受けた場所でもあり、当時の貴族の邸宅が、その水の流れに沿って点在する地域でもある。

毎年5月には、バドエーレの美しいヴェネツィア時代の建物がシンボルである広場にてサグラ(収穫祭)が開催され、生産者及び地元の人が集いその年の収穫の喜びを分かち合あわれる。

町の広場では、各生産者が出品する生産物の品評会会場となる


品評会の表彰式の様子


仮説レストランにて。アスパラずくしのメニューが振舞われる


さて、収穫現場へ…ここはヴェネツィア県下で唯一IGPの認定を受ける自治体であるスコルツェという町の生産者。

アスパラの収穫は朝が早い。特に白アスパラに関しては、日の光が強くなる前に行う必要がある。
収穫方法はバッサーノ産のものとほぼ同様、何列にもなった畝の黒ビニールを一列ずつ外し、土の上に穂先が出ているものをめがけて掘り起こす。

白アスパラの畑。この時期は生産地区ではこの光景があちらこちらに


通常、この畑作りをするのが冬の終わりである2月の終わりごろ。この地区はラディッキオの生産地域でもあるが、その年の出荷作業もようやく終盤を迎え始める時期がそのタイミングだ。
とはいえ、2018年の今年は、春先が低温で雨続きだったため、畑の準備がだいぶ遅れていた。収穫のスタートのタイミングも通年よりも1ヶ月ほどずれてしまったことが心配されたが、その後は気温がグンとあがり、アスパラも順調に生産・出荷が行われている。

白アスパラは盛り上げた土の中で、その温度変化を感じ、それに反応して上方に伸びる。高く盛った土の表面に出るまで日光にあたらないので、茎全体に色素が働かずに白いまま成長する。土表面に出たころには、長さが20㎝以上になっているので、そこでちょうど収穫時期。

ここでも、専用のコテを用い、茎を折らないように掘り起こす。

成長具合を確認しながら一本一本丁寧に掘り起こす


対し、緑のアスパラは、土の上にニョキニョキと伸びたものを収穫。
こちらは日光をいっぱいに浴びて、いわゆるアスパラらしい野生味あふれる香り豊かな美味しさ。

地表にニョキニョキと生えたアスパラ。これも成長具合をみながら収穫


同農家では、毎朝7時から約10人がかりでアスパラ収穫を行う。まずは白アスパラから取り掛かり、緑アスパラまで、約3時間かけて朝の重労働。

畑での作業を終え、次は作業場へ移動。

ここでは、洗浄をしながら太さを選別。ある程度に形の揃ったものを、専用の枠に整然とならべながら束をつくる。この枠にきっちりと入れると重さは1-1.5kgとなる。

専用の枠に綺麗に並べて束をつくる


長さを測って茎下部を切り取り、輪ゴムまたは紐でしばって商品として完成する。

規定の長さに切り揃えて出荷準備OK


経時劣化の早いアスパラは、常に水に放っておくとよい。できあがった束もすぐに冷たい水の入った水槽へ。

同農家で入手したアスパラでつくるリゾット。皮はブロードとして利用し、皿全体が白アスパラの香りでいっぱいとなる。

季節の定番。白
アスパラのリゾット


春ならではの極上を味わえるのも残りあと僅か。

バッサーノ産白アスパラDOP

ヴェネト州にはアスパラ生産で有名な産地がいくつかある。そのなかでも筆頭にあげられるのが、バッサーノ産のそれだ。

フォルムの美しさは品質保証にもつながるもの

産地は、ヴィチェンツァ県バッサーノ・デル・グラッパを中心とした15自治体が該当する。地区が限定されるのは、勿論のこと、産地呼称であるD.O.P. (Denominazione Origine Protetta) に認定されているから。その生産地区は、ドロミーテ山麓を背した地区。この自然環境のもと、山から吹き降ろす風、空気の流れがよく、寒暖の差が激しいこと、また、ここ一帯を縦断するブレンタ川の流れがもたらす、砂や小さな石などを基盤にした土壌が上質のアスパラ栽培には非常に適しているといわれている。



バッサーノのシンボル。アルピーニ橋。アルト・アディジェから流れるブレンタ川に架かる


自然の恵みがもたらす産物とはいえ、そこに人の手がかかることにより、その生産物がひとつのブランドとして確立する。

アスパラは畑に苗を植えることにより、その先10年は生産を続ける。商品として出荷されるのは、3年以降の苗とされ、寒く長い冬が終わるころ、土表に出ている伸びた茎を一斉に刈る。そして、苗の脇を列をつくるように苗上部に土を盛り、畝を形成する。その上に黒いビニールを被せて春を待つ。

季節が以降し、気温があがってくると、アスパラは土の中でその温度を感知し、上方に向けて伸びてくる。アスパラがスクスクと真っ直ぐに伸びるためには、硬い泥状の土よりも、軽い土壌のほうが健やかに育ちやすい、というのが、同地区の土壌に適している所以でもある。

また、黒いビニールを被せる目的は、日光を遮断するため、雨から穂先を守るため、そして保温が目的である。バッサーノのアスパラはDOPとして認証されるものは白のみ。アスパラは土表に出る際に日光をあてることにより、着色してしまうため、とにかく光を遮断することが非常に大切な要因だ。

毎年の気候にもよるが、3月に入るとアスパラの収穫が始まる。朝のできるだけ早い時間、つまりは前述のように、光にあてないことを目的とし、朝日が昇りきる頃には作業は終えていなければならないので、必然的に早朝から収穫がスタートする。

アスパラ収穫は毎早朝からスタート。一本一本を人の手により掘り起こされる


まずは、被せてある黒いビニールシートをはずし、土表にちょこっと顔を出している穂先を見つけては、その地中深くに専用の鉄製のコテを斜めから入れて掘り起こす。そして次に出てくるアスパラのために、専用の木製のヘラのようなもので土の表面を綺麗に戻す。

ひとつの列を端から順番に歩いて収穫タイミングのよいものを掘り起こし終えたら、ビニールシートを再度被せ、次の畝へ…非常に単純ではあるが、この作業が5月いっぱいくらいまで毎朝続く。

収穫したら即座に水に浸す。アスパラは劣化が早いので、常に新鮮さを保つ気遣いが必要


ちなみにバッサーノ産白アスパラDOPにて指定される収穫時期は3月18日のサン・ジュセッペから6月13日のサンタントニオの日まで。ただし、近年は気候の変化もあり,収穫はほぼ5月で終えてしまうらしい。

収穫したものは、作業場に運ばれて水で洗い、太さを合わせて束にする。通常、形態としては1㎏の束をつくるため、それ専用の束をつくる道具が存在する。

輪の中にアスパラを綺麗に並べ、それを柳の若枝で結ぶ。長さを揃えて切り、これで完成。長さや太さ、束の大きさや形、全てに対してここならではの決まりがあり、それに従って各生産農家にて出荷作業が行われる。

アスパラの形状を見ながら丁寧に束をつくる


その日に収穫したものは、作業場で束を完成したらすぐに最寄りの集積所に持ち込まれる。

ここでは、形や色、長さや重量、そして見た目をコントロール。これに合格したものは、ここで初めて、バッサーノ産白アスパラDOPとして認められ、おなじみのタグをつけられる。タグには、生産者の名前を入れてあるので、各束すべてが誰が生産したものかが判断できるようになっている。

集積所にて、品質チェック


そしてここからイタリア国内および国外へ出荷されることとなる。

DOPとして認めらる条件としては、
-とにかく美しい白色であること
-真っ直ぐに伸びていること
-長さ18-22cmであること
-直径最低11mmであること
-全体が丸く美しいカーブを帯びていること
-密がしっかりとしていること
-柔らかく、筋ばっていないこと
-新鮮でアスパラならではの香りを保っていること
-1束は約1.5kgの重量であること
-形が均等であること
-束は柳の若枝でしばってあること
-生産者は組合に登録してあり、生産基準に従った生産がなされていること
等となっている。

バッサーノ産の食べ方として有名なのは、茹でたアスパラにゆで卵を添えること。地元の有名なレストランなどでは、注文すると、まず最初に熱々の茹でたてゆで卵が殻ごと運ばれてくる。これを各自で殻をむき、皿の上でナイフとフォークを使って細かくする。そこに塩、胡椒、オイル、好みでアチェートを加えて自分でソースを準備する。

そうこうしているうちに茹でたてのアスパラがその皿の上にごそっと盛られるので、予め準備したソースをつけていただく…というのが正当派。「白アスパラのバッサーノ風」というメニューはこれにあたる。

最もクラッシックな食べ方。バッサーノ風


春の非常に短い時期に楽しむ旬の賜物。季節となると生産各地では、土地の人々がこの産物の収穫の喜びを分かち合うサグラ(収穫祭)が開催されている。