タグ別アーカイブ: トリュフ

【トスカーナ州】シエナの南でワインとトリュフ三昧!「アジエンダ・ロギ」を訪ねる

シエナ県の南に位置する、2017年よりモンタルチーノ市に編入したサンジョヴァンニ・ダッソ。ここで高品質のトリュフとワインを生産する農家「アジエンダ・ロギ」をご紹介!



観光化されていない隠れたトスカーナの田舎は、トリュフの名産地


中世の頃からトリュフの産地であったというサンジョヴァンニ・ダッソでは、1980年代初頭にシエナ産トリュフ生産者組合が設立され、今ではシエナ県より約300の生産者が登録するほどの規模となりました。毎年11月には白トリュフの祭典も開催され、試食やコンクール、マーケットなどで大変なにぎわいをみせます。

このサンジョヴァンニ・ダッソにて200年以上続く家系をもつ、ロギ社(アジエンダ・ロギ)のヴァレンティーノとエレナ。ヴァレンティーノの父は1985年頃に土地と家、1.5haのトリュフ狩りのできる森を購入。2000年にヴァレンティーノがロギ社を設立し、2002年から2005年に新たにブドウ畑を植え、ワイン生産も開始しました。現在では、12 haのブドウ畑、3 haのオリーヴ畑、そしてトリュフ収穫可能区域を含むおよそ30 haの森や畑を所有しています。


トリュフハンティングに、ランチやディナー


ロギ社に訪れたゲストは、約1時間半のトリュフハンティング体験や、トリュフをふんだんに使ったビュッフェ、ランチやディナーなどを体験することができます。トリュフ(tartufo)の種類は、季節によって下記のように変わります。

・1月1日~4月30日
 タルトゥーフォ・マルツォーロ(3月=Marzoに由来するこの時期に採れるトリュフ)

・6月1日~9月9日
  タルトゥーフォ・スコルゾーネ(黒トリュフ、サマートリュフ、タルトゥーフォ・ネーロ・エスティーヴォとも呼ばれます)

・9月10日~12月31日
  タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャート(クレーテ・セネーゼの白トリュフ、香りも芳醇な最高級トリュフ)


トリュフの名産地で造るオーガニックワイン


さらにロギ社では、オーガニックのワイン造りを実践しています。ベースとなる白ワインは、トレッビアーノ種70%とマルヴァジア種30%の混醸。一日、果皮に漬けられます(スキンコンタクト)。赤はサンジョヴェーゼ種70%にメルロー種を30%(メルローのみ古いバリック樽での熟成あり)。また、「セニーパレ」という酸化防止剤無添加のサジョヴェーゼ100%のワインが、四千本のみ生産されています。

最近のニュースでは、このエリアから10kmほど離れた世界に誇るワイン名醸地・モンタルチーノに、3haの畑をリースで手に入れたこと。彼らの高級ブルネッロ・ディ・モンタルチーノも限定本数生産が始まりました。

イタリアの忙しい観光地に疲れたら、田舎でトリュフ体験とワインに舌鼓を打つのもいいですね!


アジエンダ・ロギ(Azienda Loghi)
●住所:Loc. I Loghi SP75, 53024 Montalcino(SI)
●TEL:339-182-4946
●営:5月は訪問不可
●HP:https://www.aziendaloghi.com/

(2019年6月)

2021年秋、ピエモンテからちょっぴり白トリュフ情報

この夏のピエモンテはとにかく暑かった!気象台の情報によると過去64年間の観測史上11番目の暑さだったとか。と、耳にしてまもなく、8月半ばに気温が下がり、そのままあっけなく夏が終わってしまいました。山間部では真夏日数が平年の夏に比べて半分の15日、熱帯夜はたったの4晩。どこかの誰かさんがごとく、頭にかっと血が上ぼるけど根に持たない、そんな気性(?)の夏でした。適当な時期の降雨に恵まれず、トリュフハンターの友人たちが心配していたとおり、秋になっても世界中のグルメが待ち焦がれていた『白トリュフ』は土深くに眠ったままトリュフ犬の豚鼻レーザーをすり抜けてしまい、かなりのはずれ年なようです。


ランゲ地方のお肉屋さん、イタリア好きの読者の皆さんもご存知のフランコが『見てみるか?今年のはこうさ。こんなの売るのも恥ずかしい!』と言って白トリュフの入ったガラス瓶を取り出して見せてくれました。私の親指の頭より小さい!例年ならトリュフ犬の訓練の仕上げに使うような代物です。それが今年は卸しで100グラム350ユーロ。消費者価格で600から800ユーロ、いやもっとする。地元のトリュフ取扱店でも、今シーズンの販売を完全に見送るところもあります。だから手に入れられるだけマシ。
いえいえ、小さくとも侮るなかれ!ものによりますが、逆に香り、味わい共にここ数年にはないほど凝縮された逸品で、財布の紐を解いて無理をしても口にする値のあるものもある。

今年は地元民でも口にするのが困難な白トリュフをピエモンテ州内の星獲りシェフに腕を振るってもらい、同じくピエモンテ地域のワインとのマリアージュとして楽しんでもらう。そうすることでピエモンテの食のポテンシャルをまずは地元の人に再認識してもらおうという大胆な発想のイベントが開催されています。その名も『Eccellenze del Piemonte in vetrina2021(ショーウィンドウを彩るピエモンテの優れた食材たち)』。イタリア好きピエモンテ州特集に登場したビエッラの星獲りレストラン『Il Patio』のセルジョ・ヴィネイスにもこのイベントの協力シェフとして白羽の矢が立てられました。彼はミシュラン一つ星獲得も今年で連続18年という大ベテランで、しかも彼のレストランの顧客の大半は地元の人たちです。彼の料理は奇をてらわず、誰よりもまず彼自身が好きなんだろうなと思わせる表現と技で、地元の食材を用いた一皿でも、彼が得意とする魚料理でもすっと出してきてくれる。肩肘張らない彼のスタイルを評価し、愛し、定期的に足を運んでくれるお客さまの期待を裏切ることなく、毎年ミシュランガイドの星を手中に収めるのは至難の業だったでしょう。
この夜のセルジョは、イベント主催者らから魔法のごとく提供された見事な白トリュフを、トロトロ、ぷりっぷりのポーチドエッグ、地元産のカリフラワー、パルミジャーノと肉厚のアンチョビにあわせた上にきっちり適量をスライスしていました。面白いのはお皿の上でカリフラワーの香りが驚くほど高く、白トリュフと交互に波のように鼻腔をくすぐりに来ること。なのに口に入れるとカリフラワーは白トリュフと調和を保ちつつさっと身を引いて、白トリュフに主役を譲るんです。最後に、何処でも手に入る食材、けど実は選りすぐりの逸品という役者たち全員をポーチドエッグが包み込んで、華麗な演出を楽しませてくれました。合わせたワインは白ワイン Vigneti Boveri社のティモラッソ『Derthona Munta’ L’e’ Ruma 2018』。重厚な味わいに軽やかな酸味。これ以上のマリアージュはないでしょう。

地元に住んでいても、毎年口に出来るわけじゃないし、お財布に思い切りの良さがなけりゃ口にできない白トリュフ。口にするなら「伝統のパスタ タヤリンやラビオリよ。」「否、山羊乳のフレッシュなロビオラチーズと。」「違う、違う、最高のフォンティーナチーズを探してきて作るフォンドゥータにスライスするのが正統よ!」喧々諤々議論が沸いてそこから既にお楽しみが始まる初冬のピエモンテ 食卓の主役。これを誰もが知る食材たちで少しよそ行きにして楽しませてくれたセルジョの匠にお店にテーブルを囲んだ人たちからため息と共に賞賛の言葉が贈られていました。

今日では白トリュフも一人歩きを始め、ロンドン、NYなど世界の大都市はもちろん日本のあちらこちらであの得も言われぬ香りを放ち世の人を楽しませてくれていますが、つい30年ぐらい前は、ランゲやモンフェッラートの人たちが畑仕事やハンティングの傍らに見つけてきて、家庭でほそぼそ楽しんでいたものです。

トリュフを見つけた後、褒めてもらって喜ぶプートゥ君!


私も15年ぐらい前、モンフェッラートで親戚筋にあたるフランカ姉さんがプロの白トリュフハンターで、朝霧の中を寒さをこらえてトリュフ獲りに連いていったのを思い出しました。あの時のトリュフも親指や人差し指の頭大ばかり。
ふわっと目玉焼きを焼いた上に指先つまんで手を怪我しないようにそっと薄めにスライスし、白トリュフの香りを必死で嗅ぎ分け、脳裏に叩き込んだ、あれが白トリュフ原体験だったのでした。