今年はぶどうの生育が良さそうだ。8月末から9月にかけての収穫までの間、雨が続いたりヒョウが降ったり…などが起きると状況は一転してしまうが、それがないことを天に願いつつ、現在のところ元気よく成長を続けている。
ぶどう畑では、勢いを増してそれぞれの樹からツルを上へ上へとのばしている。
ワッサワッサという成長音がまるで聞こえてくるのではないか、と思うほどだ。
この季節のぶどう畑はほんとにいい。生きよう!という”気”がみなぎっている感じがする。
しばらくしたら夏の剪定作業が始まる。
ここは、フリウリでオーガニックのワインをつくる生産者の畑。ぶどうと地表の草で、眩しいほど一面に鮮やかな緑色が広がる。
“白ワインの聖地”とも呼ばれるこの地は、質のよいぶどうを生育するための自然環境が整っている。
背後には3000m級の山脈、そしてその向かい側にはアドリア海。1時間ほどそれぞれの方角に車を飛ばせば、山、海ともに到着する。そんな環境にあるため、山から海に向かって風が吹き下ろすポイントになっているようだ。とにかく風通しが良い。真夏でも特に夜間には怖いくらいの強風がふき、気温がグッと下がる。
南地域に比べて夏を迎える季節の変化とそれに伴う温度の上昇が緩やかなこと、そして昼夜の寒暖差が大きいことなどの要因は、自然からの恵みだ。
それにより、果実に適度な酸味を残し、深みのある甘みを与える。果実の熟成ポイントの訪れるタイミングには、酸味と甘みのバランスが非常によく保たれることとなる。
また、風通しの良さは、湿気を溜め込まないという点からもオーガニック栽培を無理なく実現するには、最高の条件でもある。
イタリア最北西という特異な土地環境は、文化および食文化にも同様に影響している。そして、ここにはこの土地ならではの希少なぶどう品種が存在する。いわゆる土着品種と言われるものだ。
そもそもイタリアは、その土着品種の数が世界中でも圧倒的に多く、ソムリエ試験を受ける者泣かせであるが、フリウリはその品種の数が特に多い。
ぶどうの樹は、品種によってもちろん顔が変わる。それもかなり大きな差が。判りやすいのは、葉の形。そして果実のつき方。
この時期は、花が終わり、実がその姿を露わにするときだ。今の畑はその違いが非常にわかりやすい。そして、それぞれの個性がすでに頭角が現れている。そのうちの一部をご紹介。
まずは「(トカーイ)フリウラーノ/ Friulano」 。
“トカーイ”と呼ぶことができなくなり、”フリウラーノ”と呼ばなければいけないのだが、この土地ではこの品種はやはり”トカーイ”と呼ばれる。
見てわかりやすいのは、上方両脇に耳のような形に実がついていること。この部分は「翼=アリー (alì)」と表現される。
そして「リボッラ・ジャッラ / Ribolla gialla」 。
この土地で近年非常に注目されている品種。今年は結実も早く、熟成も早めではあるが、同品種の収穫のタイミングを見計らうのは難しい。もともと酸味が極めて強い品種であるがゆえ、糖度の適当な具合を判断するには生産者の様々な考えがある。
通常、収穫は白品種から始まることが多いが、この種に限ってはメルローなどの黒ブドウ品種よりも収穫が後回しになることも珍しくはない。
これは「スキオッペッティーノ / Schioppettino」 。
このぶどう畑のあるプレポット (Prepoto) という小さな地域のオリジナル品種だ。
縦長の大きな房。実のつき方もお互いが離れてバラバラな感じだ。
同品種は、その性格がまるで”聞かん坊”のよう、とも言われる。葉も実も好き勝手にあっちこっちに向かって成長する。湿度に非常に敏感で、病気になりやすいにも関わらず、硫黄系の散布剤に非常に弱い。つまりはオーガニック栽培が実現しずらい品種でもある。
「レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ / Refosco dal peduncolo rosso」 。
“ペドゥンコロ”とは、茎の部分を指す。ここが赤い(ロッソ)から、この名前がついている。
仕上がるワインは色あいは深く、エレガントでタンニンの存在もしっかり感じるもの。この時点で、他との品格の差を見せつけているような、そんな気品がある。
そして「ピノ・グリジョ / Pinot grigio」 。
品種としては土着品種ではないが、一般的に周知の通りフリウリの同種は非常に評価が高く、また生産量も高い。
この品種は非常に密にコンパクトに実をつける。早熟な品種でもあるので、見るからに他に比べて結実がよい。当然のごとく収穫も大抵は、このピノ・グリジョからスタートする。
今年は特に、この”密さ”が顕著に感じる。
ぶどう畑にいて、ぶどう自体と同じくらいいつも目を奪われるのが、これ。ヴィティッチ (viticci) と呼ばれる部分。
上方に伸びる性質のぶどうは、何かに頼っていかなければ立ち上がれないので、介在を探す。そこに細い新茎、いわゆる巻きひげをぐるぐると巻きつけて立ち上っていく。
これがものすごい力の持ち主。これがあるから、力強く成長する樹を支えていける。
ぶどうの収穫が終わり、葉を落としてもなお、このヴィティッチはしつこくも巻き付いたまま。冬の剪定時にも、1シーズンを終えて枯れているかと思いきや、最後の残された力でこれをはずすのに、結構な力を入れる必要があるくらい。
静かに、必死に、そしてひたむき。
ここからいろいろなことを教えてもらっている。
ぶどう畑では、勢いを増してそれぞれの樹からツルを上へ上へとのばしている。
ワッサワッサという成長音がまるで聞こえてくるのではないか、と思うほどだ。
この季節のぶどう畑はほんとにいい。生きよう!という”気”がみなぎっている感じがする。
しばらくしたら夏の剪定作業が始まる。
ここは、フリウリでオーガニックのワインをつくる生産者の畑。ぶどうと地表の草で、眩しいほど一面に鮮やかな緑色が広がる。
“白ワインの聖地”とも呼ばれるこの地は、質のよいぶどうを生育するための自然環境が整っている。
背後には3000m級の山脈、そしてその向かい側にはアドリア海。1時間ほどそれぞれの方角に車を飛ばせば、山、海ともに到着する。そんな環境にあるため、山から海に向かって風が吹き下ろすポイントになっているようだ。とにかく風通しが良い。真夏でも特に夜間には怖いくらいの強風がふき、気温がグッと下がる。
南地域に比べて夏を迎える季節の変化とそれに伴う温度の上昇が緩やかなこと、そして昼夜の寒暖差が大きいことなどの要因は、自然からの恵みだ。
それにより、果実に適度な酸味を残し、深みのある甘みを与える。果実の熟成ポイントの訪れるタイミングには、酸味と甘みのバランスが非常によく保たれることとなる。
また、風通しの良さは、湿気を溜め込まないという点からもオーガニック栽培を無理なく実現するには、最高の条件でもある。
イタリア最北西という特異な土地環境は、文化および食文化にも同様に影響している。そして、ここにはこの土地ならではの希少なぶどう品種が存在する。いわゆる土着品種と言われるものだ。
そもそもイタリアは、その土着品種の数が世界中でも圧倒的に多く、ソムリエ試験を受ける者泣かせであるが、フリウリはその品種の数が特に多い。
ぶどうの樹は、品種によってもちろん顔が変わる。それもかなり大きな差が。判りやすいのは、葉の形。そして果実のつき方。
この時期は、花が終わり、実がその姿を露わにするときだ。今の畑はその違いが非常にわかりやすい。そして、それぞれの個性がすでに頭角が現れている。そのうちの一部をご紹介。
まずは「(トカーイ)フリウラーノ/ Friulano」 。
“トカーイ”と呼ぶことができなくなり、”フリウラーノ”と呼ばなければいけないのだが、この土地ではこの品種はやはり”トカーイ”と呼ばれる。
見てわかりやすいのは、上方両脇に耳のような形に実がついていること。この部分は「翼=アリー (alì)」と表現される。
そして「リボッラ・ジャッラ / Ribolla gialla」 。
この土地で近年非常に注目されている品種。今年は結実も早く、熟成も早めではあるが、同品種の収穫のタイミングを見計らうのは難しい。もともと酸味が極めて強い品種であるがゆえ、糖度の適当な具合を判断するには生産者の様々な考えがある。
通常、収穫は白品種から始まることが多いが、この種に限ってはメルローなどの黒ブドウ品種よりも収穫が後回しになることも珍しくはない。
これは「スキオッペッティーノ / Schioppettino」 。
このぶどう畑のあるプレポット (Prepoto) という小さな地域のオリジナル品種だ。
縦長の大きな房。実のつき方もお互いが離れてバラバラな感じだ。
同品種は、その性格がまるで”聞かん坊”のよう、とも言われる。葉も実も好き勝手にあっちこっちに向かって成長する。湿度に非常に敏感で、病気になりやすいにも関わらず、硫黄系の散布剤に非常に弱い。つまりはオーガニック栽培が実現しずらい品種でもある。
「レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ / Refosco dal peduncolo rosso」 。
“ペドゥンコロ”とは、茎の部分を指す。ここが赤い(ロッソ)から、この名前がついている。
仕上がるワインは色あいは深く、エレガントでタンニンの存在もしっかり感じるもの。この時点で、他との品格の差を見せつけているような、そんな気品がある。
そして「ピノ・グリジョ / Pinot grigio」 。
品種としては土着品種ではないが、一般的に周知の通りフリウリの同種は非常に評価が高く、また生産量も高い。
この品種は非常に密にコンパクトに実をつける。早熟な品種でもあるので、見るからに他に比べて結実がよい。当然のごとく収穫も大抵は、このピノ・グリジョからスタートする。
今年は特に、この”密さ”が顕著に感じる。
ぶどう畑にいて、ぶどう自体と同じくらいいつも目を奪われるのが、これ。ヴィティッチ (viticci) と呼ばれる部分。
上方に伸びる性質のぶどうは、何かに頼っていかなければ立ち上がれないので、介在を探す。そこに細い新茎、いわゆる巻きひげをぐるぐると巻きつけて立ち上っていく。
これがものすごい力の持ち主。これがあるから、力強く成長する樹を支えていける。
ぶどうの収穫が終わり、葉を落としてもなお、このヴィティッチはしつこくも巻き付いたまま。冬の剪定時にも、1シーズンを終えて枯れているかと思いきや、最後の残された力でこれをはずすのに、結構な力を入れる必要があるくらい。
静かに、必死に、そしてひたむき。
ここからいろいろなことを教えてもらっている。