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おうち時間に手作り♪アルト・アディジェの伝統ドルチェ

再びおうち時間が長く続いている今日この頃。

春のロックダウン時にはイーストが品薄となるほど、パンやパスタ、焼き菓子を小麦粉から作る家庭が多かったイタリアですが、我が家も例外ではありません。そしてこの冬も、クリスマスや年末年始のホームパーティ(といっても極少人数でしたが)に合わせ、いろいろと新しいレシピに挑戦しました。

中でも満足度が高く、何度もリピートしているのがリンゴのシュトゥルーデル。


実はドイツ語でシュトゥルーデルは「渦巻き」という意味を持ち、オーストリアではパイ料理全般のこと。なので、中の具は野菜やキノコ類など食事系の場合もあるのですが、やはりリンゴ入りのドルチェ「アップル・シュトゥルーデル」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

薄く切ったリンゴにレーズン、松の実、ラム酒、シナモンなどを混ぜ合わせて生地に包み、オーブンで焼いたものです。


100年ほど前までオーストリア領だったアルト・アディジェでは、アップル・シュトゥルーデルは伝統菓子として大人気。

観光案内所の公式ウェブサイトによると、アルト・アディジェ全体でなんと毎年85トンものアップル・シュトゥルーデルが生産されるそう!それを全て並べると26㎞の長さになって、最大都市ボルツァーノと第二の都市メラーノを結ぶ直線距離と同じなんだとか…ちょっと想像しにくい例えですが、こちらにそう書かれています。

ともあれ、菓子店やベーカリーはもちろん、バールやレストランのデザートメニューにも必ずある一品。ヴェノスタ渓谷(Val Venosta / Vinschgau)がリンゴの名産地であることも、理にかなっている気がします。


おもしろいのは、アルト・アディジェの場合、パイ生地とは限らないこと。パスタ・フロッラと呼ばれるタルト生地で作られることも多いのです。パスタ・フロッラだけでもクッキーのように美味しいものですが、そこに美味しい中身を詰め込むのだから、美味しくなるのも当たり前ですよね。


サクッとした生地の甘み+お口に広がるラム酒やシナモンの香りが、大人向けな味わい。

さらに生クリームやバニラアイスを添える習慣もあるんですよ。カロリーが気になるところではありますが、寒い冬、長いおうち時間、外食もできない…そんな生活の中、手作りドルチェは楽しみの一つにもなっています。

コロナ禍の時事イタリア語から見る歴史&雑学

山岳地帯は真っ白な雪に囲まれ、ウィンタースポーツの楽しいシーズン。本当はそんな冬山の様子をお伝えしたいなと思っていたのですが・・・


春に続いて再び、不要不急の外出自粛が続く中、おうち時間が長~くなっているイタリアより、今回は私がおもしろいなぁと思った、ちょっとマニアックな言語の話をさせてください。

 

日本では今年の漢字や流行語にコロナ関連の言葉が多く見られたようですが、イタリアで今年よく聞いた言葉の1つがquarantena(クアランテーナ)「検疫」という意味を持つ単語です。

 

とはいえ、日常会話では、

「家族が感染したので、私は今クアランテーナ中」とか、

「帰国したら、2週間クアランテーナしなければならない」

というような形で耳にしました。

 

この場合の意味は「検疫」よりも「隔離」

 

英語でもほぼ同じ言葉quarantine(クアランティーン)=「検疫」self-quarantine =「自主隔離」なんて言うので、ご存じの方も多くいらっしゃるかもしれませんね。

この語源を辿ると、ヨーロッパの歴史も垣間見えてきます。

 

この言葉の響きがquaranta(クアランタ)40に近いと気づかれた方も多いでしょう。実はもともとのクアランテーナには【40日間】という意味が含まれており、その由来は中世のヴェネツィア共和国まで遡ります。


14世紀のヨーロッパでは「ペスト」が大流行。ヨーロッパ全体で人口の3分の1が亡くなったと言われるほど猛威を振るったこの感染症は大変恐れられていたものの、当時の医学でははっきりと原因が解明できてはいませんでした。

ただし、人から人へ感染することと、アジアの方から持ち込まれている、ということはなんとなくわかっていたため、地中海を行き来する船は警戒されていたのです。

 

その頃、コンスタンティノープル、現在のトルコ・イスタンブールを通じて、アジアとの貿易を盛んに行っていたヴェネツィアの港では、そんな事情から、船が到着しても荷物や人をすぐには上陸させず、沖に40日間停泊させ様子を窺いました。そして40日後、感染者がいないことを確認した上で、上陸を許可したのだそう。

その40日間がヴェネツィア語*でクアランテーナであり、「検疫」として今のイタリア語にも残り、さらに英語にも使われているというわけです。

[*ヴェネツィア語とは:現在のイタリア語ヴェネト方言のことだが、当時はラテン語由来の一言語として、ヴェネツィア共和国の公用語とされていた。]

 

イタリア語の勉強をしていると、「イタリア(+スイスの一部)でしか話されていないなんて、通用範囲が狭いな」と感じることがあるかもしれません。しかし、専門用語のような難しい外来語や英単語は特に、ルーツをたどるとイタリア語、さらにはラテン語につながることが多く、私は言語を深掘りしながら歴史や文化に触れるのが大好きです。

 

少し話は逸れますが、日本語でもおなじみのマスクという外来語についても少し。その語源は諸説ありますが、ラテン語maschera(マスケラ)とも言われています。


舞台劇などで使用されるお面やヴェルディのオペラ「仮面舞踏会」に見られるような顔や身分を隠すための仮面がマスケラ


ヴェネツィアへ行けば、カーニバル用の様々なマスケラが売られていますが、ここで注目したいのが一際目立つ、白く鼻が嘴のように長く伸びたタイプのもの。実はこれ、ペストの流行時に医者が着用していたマスケラなんです。


なぜこのような形をしているのか?ヒト-ヒト感染防止に距離を保つための嘴かなと思ったのですが、実はこの鼻の部分にハーブを入れ、その香りを吸いながら感染者と向き合っていたそう。効果があったのかは不明ですが、試行錯誤してペストに立ち向かっていた様子が見えてきますよね。

なお、コロナ禍、イタリアにおいても着用義務のある、いわゆる普通のマスクは「小さな」を意味する-inaを語尾につけてmascherina(マスケリーナ)と呼ばれています。

 

最後に余談ですが、集団感染という意味で使われる「クラスター」。これはブドウなどの房や群れ、集団を表す英語clusterですが、イタリア語ではfocolaio(フォコラーイオ)という全く別の言葉を使って集団感染を表します。fuoco(フオーコ)=「火」の派生語です。

フォコラーイオには感染源という意味もあり、それが集団感染につながっていく様子は⇒ ⇒ ⇒小さく発生した火が燃え広がっていくような発想なんだろうなと思うと、なんだか妙に納得してしまうのは私だけでしょうか。

 

さて今回は、コロナ禍における時事単語をお届けしましたが、日本においてもイタリア語(ラテン語由来の言葉)をもとにしたカタカナ語は身近にあり、知らず知らずのうちに使われている可能性があります。気になる言葉を調べてみると、新たな発見があるかもしれません。

絶景360度のモンテバルド縦走 ガルダ湖を眼下に望みながら

コロナによる規制が再び厳しくなってきたイタリアですが、そうなる数週間前、初めてモンテバルド(バルド山)へ山登りに出かけてきました。宿泊可能な山小屋も点在する中、仲間6人でのテント泊です。

11月に入り、雪をかぶったモンテバルド


イタリア最大の湖、ガルダ湖の東側にそびえる南北に長いモンテバルドは、標高2,000m前後の主要な頂が13座連なる山々の総称であり、バルドという山頂は存在しません。

今回の登山は南のヴェローナ側から入り、北のトレンティーノ地方ナーゴ村へとひたすら尾根を歩くルート。出発の前夜、ゴール地点にワゴン車を置きに行き、翌朝、スタート地点のプラダ村へと向かいます。

ガルダ湖の西側はブレーシャ県、東側はヴェローナ県。北端の町、リーバ デル ガルダやトルボレはトレンティーノ地方。


この登山を行ったのが真夏ではなく秋口だったのは、いくつか理由があってのこと。

 

・日差しを避けられないため、夏は暑すぎる

峰から峰へと歩き続ける日陰のないルートのため、暑さが大敵となります。(真夏はもっと標高の高い、涼しい山のほうへと繰り出すことが多いです。)


・湧き水がない

モンテバルドでは、汲めるような湧き水が一切ありません。これは、かなり登山者泣かせ。適度な水分補給が重要となる登山で、家から持って行った貴重な水を、残量を気にしながら飲まなければならないのです。水が限られていることは、酷暑の時期だと危険な状態にもなりえます。(山小屋で買うことは可能)

 

・夏の景色は靄がかっている

上からの眺めが楽しみでもある登山。モンテバルドからは、ガルダ湖を一望できるだけでなく、対岸(ロンバルディア州ブレーシャ県)の山々や反対側のヴェローナ、ポー平原の広がる地帯まで360度のパノラマを見渡せるのですが、真夏はモヤモヤと白っぽくなりがちです。

湖とは反対側の眺望。山の向こうにヴェローナの町があり、ポー平原へと続いている。


これらの理由から、涼しくなった頃に決行したモンテバルド縦走。森林を抜けて稜線まで着くとこの景色が待っていました!

写真左、ガルダ湖の南側にはシルミオーネの半島が見える


ガルダ湖南に突き出た半島、シルミオーネまでくっきり見えたのです。

 

とはいえ、天気が変わりやすいのが山。1日の間に快晴と曇り空を繰り返し、雪まで降り始めて冷えとのたたかいになりました。


常に絶景を見下ろしながら稜線をアップダウンし、時に崖上の狭い箇所を恐る恐る進まなければならないモンテバルドの山道は、険しいというより、とにかく長い!


終わりが見えず、心折れそうになり、ようやくテントを立てたときにはすでに真っ暗になっていました。

遠くにヴェローナの夜景を望みながら、ラーメンをゆがいて食べ、早々に就寝。標高2,000mの氷点下の中、愛用の羽毛寝袋にくるまって暖をとります。外はこんなに寒いのに、一見簡易なテントと寝袋だけでゆっくり眠れる温かさ。テント泊登山の醍醐味です。

 

そして、翌朝-


まさに清々しいという言葉がピッタリの朝を迎え、感動もひとしおでした。

 

さて朝食を済ませたら、再び絶景の中を北進していきます。


しばらく下りが続き、車道に出たところで、州境を越えてトレンティーノ₋アルト・アディジェ州へ。実はこの辺りは一般車でも乗り入れられ、部分的にトレッキングやハイキングを楽しむこともできます。

標高1,400m辺りに駐車場があり、そこまでは一般車も乗り入れ可能


下った分を登り直すように、ここからまた最後の山頂を目指して600mの標高差を登ることになるとは想定外でした。テントは男性陣に担いでもらいましたが、寝袋やマット、着替え、食料、調理具を詰め込んだリュックは12kg超。肩と腰にずっしり、特に後半に重くのしかかります。

最後の頂上を目指しながら振り返ると、歩いてきた尾根が一望できる


 

なんとか最後の頂、モンテ・アルティッシモ(2,074m)にたどり着くも、残念ながら真っ白な霧に包まれていて何も見えず。

濃い霧に包まれたモンテ・アルティッシモの道標


 

ともあれ、登り切った後はゴールを目指してどんどん下りるのみです。下りって楽そうに聞こえて相当、膝に応えるんですよね。

 

こうして夕方6時前、ワゴン車をとめていたナーゴ村の駐車場に到着し、ほっと一息。2日間の総距離にして、なんと32㎞も歩いたんだとか。登った高さは計2,400mもあったというから、出発前に知っていたら、あきらめていたような数字です。正直なところ、こんな大変な登山になるとは思っていませんでした。

が、仲間と一緒だからこそ成し得た素晴らしい経験となりました。

写真右、ガルダ湖の北端にトレンティーノ地方の町、リーバ デル ガルダを望む


なお、ガルダ湖畔の町、マルチェージネからは回転ロープウェイで標高1,800m近くまで上がれるので、もっと気軽に日帰りでモンテバルドを楽しむことも可能です。

毬栗ころころ~秋深まる渓谷を歩いて収穫祭体験

先日、秋色深まるイタリアンアルプスの、とある渓谷を15㎞近く歩いてきました。すでに肌寒い季節ではありますが、青空の下を歩くのは心地よく、夏とはまた違う表情を見せる山々の美しいこと。今回の目的は…「トゥルゲレン」‼

なんと聞きなれない響きでしょう!


それもそのはず。トゥルゲレン(Törggelen)とはこの地方特有の方言。ブドウの収穫を終える9月下旬頃、イザルコ渓谷(伊)/アイザック渓谷(独)を中心に始まる収穫祭を表す言葉です。12月あたりまでゆる~く続き、自由にいつでも誰でも参加可能。ただし、いくつか押さえるべきポイントがあります。

 

まずは
①栗のトレイルからスタート!

「栗のトレイル」のサイン(上:独語/下:伊語)が随所にあるので、わかりやすい


大自然の中を歩いて新鮮な空気を存分に味わいつつ、この時季の風景を楽しむことからトゥルゲレンは始まります。全長60㎞もある栗のトレイルのうち、私たちは一部分のみ歩いてみたのですが、、、


信じられないくらいに栗、くり、クリ!!!

地面いっぱい、毬栗(いがぐり)や毬から飛び出た栗で敷き詰められていました。油断していると、頭上に毬栗が落ちてきて、けっこうトゲトゲが痛いので要注意です。

よく見ると、栗って1つの毬に仲良く3つ入っているんですね。外側の2つがぷくっと膨らみ、真ん中の栗は押しつぶされたような形になっています。


栗がなっているのを見るのは、実は初めてだったのですが、なんとも可愛らしいものでした。

左下のように、真ん中の栗が大きく、両側の2つが押しつぶされているものもある


そんな栗の道を抜けた先には、この絶景が待っています。


 

さらに歩いて山村に到着し、山小屋に寄り道してテラスでランチタイム。


普段は閉まっている農家でさえ、秋から冬にかけてのこの期間だけオープンして伝統料理をふるまってくれるのもトゥルゲレンの醍醐味です。

 

食事は
②大麦スープと肉プレートが定番!


プリモは大麦スープやカネーデルリ、セコンドはソーセージや塩漬け豚肉のザワークラウト添えという風にほぼ決まっているものなので、メニューを見ながら選ぶものではありません。ただし、これらの中から一部だけオーダーするなどの融通はたいてい利くのでご安心を!

アルト・アディジェの伝統料理を味わえる良い機会


 

さて、美味しくいただいてお腹いっぱいになった私たちは、再び栗のトレイルを次の村へと歩き始めました。小さな村が点在しているこの辺りでは、歩いて20分ほどで隣の村に到着します。


そこから駐車場へと引き返すことにしたのですが、帰り道だからといって、まだまだトゥルゲレンは終わっていません。

おやつには
③焼き栗で決まり!


これだけ栗を踏みながら歩いてきたのだから、名物の栗は食べておかなきゃ!ということで、アペリティフを兼ね、ブッシェンシャンク(伊:フラスカ)のテラス席にお邪魔することにします。ブッシェンシャンクとはもともと、ワイン生産者が新酒の時期にテーブルと椅子を出し、自家製ワインを比較的安価でふるまってくれるような場所。気取らずに立ち寄れる雰囲気が素敵なんです。

ブッシェンシャンク(独:Buschenschank)/フラスカ(伊:frasca)


そこで栗のお供に
④ワインジュース!?  Süßenを賞味!

収穫したてのブドウを搾った液体で、発酵が始まる前の段階、つまりはアルコールのほとんどない状態のズゥーセン(Süßen)を飲むのが慣例です。

トゥルゲレンの語源はトルキォ(Torchio)=ブドウ圧搾機。ブドウ収穫とワイン造りを祝う伝統行事であるからには、この年の第一号となる若いワインを飲まずに帰るわけには行きません。

発酵前のワインは贅沢なブドウジュース


濃い果汁が口いっぱいに広がる贅沢なブドウジュースはルビー色も綺麗。ノンアルが物足りない方は、11月に入ると出来立ての新酒を味わえるようになるのでしばしお待ちを!

 

トゥルゲレンに参加するといっても、どこかに届け出をするわけでも、参加費を支払うわけでもなく、好きなところから歩き始めて、好きな場所で食べて飲み、それぞれの飲食に対して支払いをするものです。

決してオシャレはせず、山スタイルでカジュアルに行くのが暗黙のルール。栗のトレイルはしっかり整備されて歩きやすくなっているため、車でアクセス可能な山小屋であっても、ハイキング気分で歩いて行くのがオススメです。標高が高く、ドロミティ山塊までくっきりと望む大パノラマは、見飽きることのない感動があります。


 

本来、トゥルゲレンの夜は各所で賑やかな宴となって盛り上がるのですが、コロナウイルスの状況悪化により、縮小を余儀なくされているのが仕方なくも悲しいものです。

酪農家の娘に聞く 南チロルの郷土食と山村の暮らし

「スペックは自家製。あと、このカミンヴュルストもね。」

前菜にハムやチーズの盛り合わせを頼んで驚いた。家族経営のこのレストランでは、スペック(Speck)やカミンヴュルスト(Kaminwurst)を自分たちで仕込んでいるというのだ。

下に敷かれたスペックと丸く切られたカミンヴュルスト


スペックとは南チロル(アルト・アディジェ)地方の食を語るのに欠かせない生ハムの燻製。料理にもよく使われている。

色の濃い方が自家製スペック


「スペックは正月を過ぎた頃に1年分、家族で作るのよ。カミンヴュルストは豚肉がメインだけど、鹿肉があるときにはミックスするの。野生的というか力強い味わいになるわ。」

カミンヴュルストという細い燻製サラミは、硬めの食感とスモーキーな香りがおつまみにもピッタリだ。

 

ここは標高770mの山村ナッツのレストラン。南チロル第3の町、ブリクセン(独)/ブレッサノーネ(伊)に程近い。

レストラン Walderhof


この建物の構造を見てピンと来た人もいるだろう。ここはかつて、20頭以上の乳牛が飼われていた牛舎であった。6年前に乳牛を手放して改装し、ゲストハウス兼レストランとして2015年にヴァルダーホフ(Walderhof)をオープンしたばかり。木のぬくもりが感じられる心地よさに、南チロルの伝統料理が気軽に楽しめるとあって、毎日多くの客で賑わう。

木のぬくもりが優しい店内 外にはテラス席もある


酪農家の両親、祖父母のもとで育ってきた4人姉妹の長女、カトリンさんの接客は、そんな忙しい最中でも丁寧である。

カトリンさん


とにかく明るくて気さくな彼女は、レストランのオーナー兼シェフである母親の右腕のような存在で、サービス全般を担当。家族間の会話はドイツ語だが、彼女はイタリア語も自在に操り、

「どんなに忙しくてもお客様との会話は大切に。」

と笑顔を絶やさない。

 

「トリスチロレーゼなら、いろんな味が試せるわよ。」

メニューを見ながら迷っていると、チロルの3種盛りを勧めてくれた。カネーデルリという硬くなったパンを牛乳と卵で固めて茹でた団子状の塊は、チーズ入りの楕円形とホウレンソウの入った緑色の計2種。さらに餃子のような形のメッツァルーナが載っていて、3種類の味を楽しめる一皿となっている。

トリスチロレーゼ


三日月及び半月という意味をもつメッツァルーナは、餃子の皮のように丸い形状の生パスタを作り、その中に茹でて細かく刻んだホウレンソウを入れて包み込む。餃子作りと同じ要領で、水を付けながら半分に閉じ、塩を効かせた熱湯で4分、アルデンテに茹でれば出来上がりだ。

メッツァルーナの中にはホウレンソウと少量のリコッタチーズ


カトリンさんによると、クリーミーな食感にするため、隠し味程度にリコッタチーズも具に混ぜる。が、主張しすぎないように控えめにするのがポイント。生パスタの食感が絶妙の一品である。

「カネーデルリをスープに入れるなら、シンプルなスペック&アサツキ入りがいいわね。」

スープに浸したカネーデルリはスペック入り


カネーデルリは刻んだタマネギやパセリ、ホウレンソウ、ビーツ、ニンニク入りなど、挙げればキリがないほどのバリエーションが存在するが、コンソメスープにはスペックから出る燻製の香りがよく合っている。

 

暮らしぶりについてもいろいろと教えてくれたカトリンさん。

「子どもの頃は学校から帰ったら、毎日お手伝い。もちろん週末も。毎日、毎日、休む暇もなかったわよ。牛の乳しぼりだって何だってできるわ。」

得意げにそう言いながらも、将来的に酪農を続けていくことには限界を感じたのだという。

「うちは4姉妹でしょう。結婚相手の男性たちに突然、酪農の仕事をしてもらうのも簡単ではなくてね。」

レストランという形に変えて、家族みんなで協力し合うのがベストという結論になった。

オーナー兼シェフを務めるカトリンさんの母


「私たち4姉妹はね、ママから全然、レシピを習いきれていないの。まだまだ学ぶことがたくさんあるはずなんだけど、ママが元気すぎて、何でも一人でテキパキこなしちゃうから。」

なんて笑いながらも、本当は母親の負担を減らしたいと考えている家族思いのカトリンさん。自身も2人の息子を育てながら、夫家族のブドウ畑も手伝っている、そんなパワフルな女性だ。

 

一方、父親や従兄弟など男性陣はというと-

週に3回程度、狩りに出る。狙いはシカやシャモアで、獲物は自慢のジビエ料理に変身。山に生まれ育つとは、なんとタフなことだろうか。

ジビエのパスタ


アルプスという壮大な自然に囲まれ、登山好きの私としては憧れる山の暮らし。いつでも山に行けていいなぁなんて思っていたらとんでもない。

「山登り?他にやることが多すぎて、それどころじゃないわね。息子たちも連れて行ってあげられない。かわいそうだけど『登山に出たくてウズウズする』という感情すら湧かないものなのよ。行ったことがないから、『また行きたい』とも思わない。」

繁忙期の昼食時に、ウエイターとしてお手伝いしている11歳の長男の姿が印象的であった。

「山登りには行かなくても、あの辺りの森に、薪割りには行くけどね。」

と彼女が指さす方向には、深い緑しか見えない。

 

南チロル地方の夏は、ドイツやオーストリアからも登山客が多く訪れる他、避暑地としても大人気のため、レストランは大忙し。一方の冬も、スキー場が各所にあるため、休んではいられない。おまけに秋にはカトリンさんの夫のブドウ畑が収穫シーズンを迎える。


「リンゴ農園も持っていて、リンゴジュースも自家製よ。」

と言いながら出してくれたリンゴジュースは濃厚で、口の中に果汁の甘みがしっかり残った。山間部に生まれ、自分たちで育てたり作ったりしたものを味わうという、自給自足の生活は最高に美味しい響きだが、生き物や自然を相手にする、その苦労は計り知れないものである。

彼女らにとっての山とは、放牧をし、狩りに出かけ、木を切り倒して薪を割る、という生活の一部。実用的な理由で山に入るのであって、決して娯楽の場ではないのだと痛感した。


「あれもこれもと欲張らず、家族でできる範囲で続けていくつもり。他の食材もすぐそこの農家や牧場に行けば新鮮な状態で手に入るから。」

地産地消にこだわった絶品メニューとカトリンさんのリズミカルなトークが、今日も誰かをもてなしている。

Walderhof
www.walderhof.bz.it
住所:
(独)Schlossergasse 20
39040 Natz-Schabs (BZ)

(伊)Vicolo Schlosser 20
39040 Naz-Sciaves (BZ)

金曜~月曜:11:00-23:00
火曜・木曜:11:00-16:00
水曜:定休日
(2020年10月現在)

世界最古のワイナリー!900年の歴史を誇るノヴァチェッラの修道院

ヨーロッパでは古くから修道士たちが羊毛やハーブ、ワインなどを生産していたという記録が残っていますよね。これらは修道院の資金源となっていたほか、物々交換などにも使われていたそう。今回は、そんな修道院で今なお作られているワインのお話。


ノヴァチェッラ(伊)/ノイシュティフト(独)という村はアルト・アディジェ地方のイサルコ渓谷に位置します。車で30分も北へと走れば、そこはもうオーストリア。ということで、この一帯はイタリア最北のブドウ生産地としても知られているエリアです。


広々とした修道院は一般に開放されている場所もあり、夏には観光客でにぎわいます。

敷地内へ入ってまず目に入るのは、かつて見張り台だったお城。


さらに先へ進むと今でも修道士の暮らす修道院に加え、火事と再建、修復の繰り返されたロココ様式の教会やフレスコ画の見事な回廊など、見どころたっぷり。



始まりは1142年と、およそ900年の歴史を誇り、ヨーロッパ北部からローマやエルサレムへと向かう巡礼者たちの休息所という重要な役割を果たしていたのだそうです。


建設当時から、ドイツ皇帝やローマ教皇のお墨付きだったこの修道院は強大な力を持ち、広大な土地を与えられたことからワイン生産が始められたと言われています。それが現在に至っても続いているという点で、世界的に見ても貴重な、最も古い現存ワイナリーの1つと称されているのです。


圧巻の修道院内部の見学(一部有料)だけでなく、お散歩感覚でブドウ畑を歩くこともでき、この勾配を利用して育てられるブドウ越しに一帯を見渡せます。


標高は1番高いところで900mという、夏でも比較的爽やかで涼しいイタリア最北のブドウ畑。


近年、修道院所有の畑は縮小したものの、周辺のブドウも利用して作られるここのワインは、一級品ながらお手頃な価格帯もあり、ラベルも可愛くお土産としても喜ばれます。

エノテカ内ではテイスティング(有料)も可能


赤ワイン30%に対し、白ワインの生産は70%。

赤はアルト・アディジェ地方特有、力強い味が特徴のラグライン(Lagrein)の他、ピノ・ネロ(Pinot Nero)などが人気。


一方の白は、このイサルコ渓谷特産のケルナー(Kerner)をはじめ、フルーティーな香り広がるゲヴュルツトラミナー(Gewürztraminer)、エレガントな味わいのシルヴァーナ―(Sylvaner)など種類も豊富で目移りしちゃいます。


土地柄、ドイツの白ワインにも近い印象ですよね。


レストラン併設のワイナリーやエノテカでワインテイスティングも楽しめるので、味見しながら、お気に入りの一本を見つけたいものです。


 

夏が旬!? アルト・アディジェのキノコ事情

秋のイメージが強いキノコ狩りですが、あっという間に9月も後半に入り、アルト・アディジェ地方ではピークが過ぎ去ってしまいました。今から旬を迎えるキノコ類もあるけれど、我々の一番の狙いはやっぱりポルチーニ!新鮮なものを調理して食べるにも、乾燥させて保存しておくにも最高のキノコです。

1つ(単数形)だとポルチーノ


が、ここは標高の高いアルプスの山間部。冬の寒さが厳しいのはもちろん、夏は涼しく、春秋でもフリースやジャケットを羽織るほど肌寒いところ。ポルチーニが育つにはある程度の暑さが必要なため、シーズンは早くて7月中旬以降。9月に入ると終わりに近づいてゆくという、2か月足らずの短い期間しかないのです。

深い森に覆われたアルプスの大地


その間、誰でも好き勝手にキノコ狩りを楽しめるわけではありません。イタリアの他の州と同様、アルト・アディジェ地方にも独自のルールが存在し、地域外の住民は、郵便局や観光案内所などで事前にキノコ狩り申請を行う必要があります。1人1日8ユーロ払い、認められるのは全キノコ類合わせてたったの1kgまでと少ないんですよね。。。


従わなければ、パトロール中の森林警察による罰金対象。しかも、キノコは全て踏みつぶされるらしいです。

さらにもう1つ、悩ましいルールが存在します。

実は、キノコを採っていいのは「偶数日」のみ。つまり、20日に大雨であきらめて次の日が晴天でも、21日は禁止!キノコ狩りに行ってはいけないことになっています。

ただし、そんなときには

「ちょっとオーストリアまで行こう!」

なんていう抜け道も。日にち規制のない隣国の森まで出かける人も多くいるのです。キノコを採るために国境越えるなんて、“さすがヨーロッパ”な光景ですよね。

 

さて、雨がたくさん降って森全体が湿った後、太陽がしばらく照った頃を見計らって、名人たちだけでなく素人っぽい私たちも、それぞれ秘密の森へと入ります。

まずパッと目に入るのが、遠くからでも目立つ真っ赤なベニテングタケ。毒々しい見た目の通り、いわゆる毒キノコ!!


ですが、ポルチーニと同じ環境に生息することから、その周辺はポルチーニチャンス。くまなく目を凝らして探します。

ポルチーニは傘がしっかりと硬めで、裏側がひだ状ではなく、スポンジのようにふわっとした感じ。さらに柄(え)の部分が太くがっしりとしていて、見分けやすい特徴を持っています。柄が赤いニセモノも存在するので、その点には注意が必要です!


キノコ狩り歴わずか3年程度の私、最初はキノコの感触が怖くて(?)触るのを躊躇していたくらいですが、最近、良いものを見る目が養われてきたみたい。

※この写真の中にはポルチーニが8本生えています


まるで生まれたてのように、ひょっこりと顔を出しているのを見つけると嬉しくなっちゃいます。


これくらい小さいほうが、新鮮で寄生虫もいないので、そのまま洗って調理するのに最適です。


小さく切って、オリーブオイルとニンニク、バターで炒め、タリアテッレ(フェットチーネ)などのきしめん状パスタと和えれば、相性抜群!この食感がたまりません~


 

生長しながら、スポンジ部分が白から綺麗な黄緑色へと変化して いくポルチーニですが、これが黒っぽくなると、あまり良い状態とは言えず、切り離して捨てなければなりません。


大きな大きなポルチーニを見つけたときは「おぉっ!」となる反面、白い寄生虫がにょろにょろと群がっていたり、ナメクジなどに食べられてしまっていたりすることも多く、「うぅっ…」となることも。


育ちすぎたもの=古いものは、ナイフやブラシなどで汚れを取り除いてスライスし、ストーブで熱を送って乾燥させ、その過程で寄生虫を完全に追い出します。

お手製の網に敷き詰める → ストーブで下から熱を送って一晩待つ


乾燥ポルチーニは、水で戻してリゾットにするのにピッタリです。


瓶に入れて保存しておけば、急な来客の多いイタリアでかなり重宝します。


 

キノコ狩りの許可を得るためにお金を払い、時間をかけて探すくらいなら、買ったほうが確実、と思う人もいるかもしれません。しかし、木々に覆われてひんやりとした森の中を歩くこと自体が楽しみの1つ。苔のじゅうたんのふわっと感が私は大好きです。


なお、売られている乾燥ポルチーニは通常、乾燥控えめ。水分でかさ増しされています。自分たちで採ってきた満足感と凝縮された旨味がより美味しいことは言うまでもありません。

灰色のチーズって?特産「グラウケーゼ」を求めて山登り

アルプスの山々へ出かけると、カランコロンカラン…というベルの音がよく響いています。

壮大な緑の大地に牛や羊、ヤギなどが放牧されているのです。逃げるどころか近寄ってくるし、時には登山道を陣取っていることも。


そんな動物たちと触れ合いながら、マルガ(Malga)巡りをするのも山岳地帯散策の楽しいところ。車でアクセス可能な場所もある一方、山奥の場合は歩いて登っていかなければならず、マルガを目的地として登山に出かけることもよくあります。

このマルガというイタリア語は、なかなか一言で和訳するのが難しいのですが、動物たちを放牧して、その乳から牛乳やバター、チーズなどの乳製品を製造&直売する酪農家の山小屋。その場で料理が提供されていることも多く、新鮮な逸品を味わえるのが醍醐味です。

前置きはこれくらいにして、今回お届けするのは車を停めてから歩いて約2時間、標高差600m登った先にあるマルガ。名物の「グラウケーゼ」(独語Graukäse)を求めて出発です。グラウ=グレー、ケーゼ=チーズなので、つまりは灰色のチーズという不思議な名前。どんなチーズなのでしょうか?

 

しばらくは整備された緩やかな道が続きます。


途中、牛乳やチーズなどを運ぶための小さなロープウェイが。つまり、目指すマルガはこのロープの先。


急な斜面に差し掛かり、ゆっくり休みながらおよそ30分…


なかなかハードな登りを越えて、マルガ“Bärenfiechtalm”に辿り着きました!


 

まずは、殺菌処理されていないバターミルク(バターを作る過程で残った液体)をいただきます。酸味が効いていてさっぱり。


 

そして、グラウケーゼを探しに来たことを伝えたら

「私が作ってるのよ」とこのスマイル。


これが、チーズ職人メラニーさんの作るグラウケーゼ。強烈な香りがツンと漂っています。

 

奥の工房を見せてもらうと、1週間の作業工程を大まかに説明してくれました。

牛乳からバターを作るための脂肪分を取り出し、その残りの部分、いわゆる脱脂乳を使用して作られるのがグラウケーゼです。

「最も脂肪分の少ないチーズなの」とメラニーさん。

低温殺菌中に何度もかき混ぜる


 

脱脂乳を、段階を経ながらゆっくりと50度まで温めて低温殺菌した後、水気を切って塩やコショウを加え、大きな容器に入れて手で押します。2日ほど寝かせ、さらに型にはめて25度の部屋で2日以上、熟成させたら食べ頃。

熟成中のグラウケーゼ 完成まであと1日


気になるお味は…

この白っぽい部分はカビで、この色が灰色と表されて「灰色チーズ」と呼ばれるのだそう


かなり濃い酸味!!というのか独特の味わいでなかなか表現が難しいけれど、コショウがピリッとアクセントに効いていて、チーズ好きの私にはハマるおいしさ!食感は柔らかく、むしろベチャッとしていて、歯にくっつく感じです。

クセが強いので好みが分かれ、実際、香りが苦手で近寄れない人もいるくらい。

かつて貧しかった人々が売るためにバターを作り、その不要な部分を活用して自分たちのためにグラウケーゼを作っていたという-

それが今では特産品となり、アルト・アディジェ地方ではスーパーでも気軽に少量から手に入るため、見かけたらぜひ試してもらいたい一品。私はこの冬、グラウケーゼを使ったスープに挑戦しようと思っています。

ドロミティ歩き:大人気のトレ・チーメに迫る!

今日は珍しく日中30度超えした南アルプスの町、ヴィピテーノ。夜になって17度と心地よくひんやりとしてきました。真夏でも寝苦しくないのが嬉しいものです。

さて、天気の良い日は、周辺の山へトレッキングやキノコ狩りへと出かけることが多いのですが、先月、少し遠出をしてドロミティ山塊の一つ、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレードに行ってきました。

「トレ・チーメ」はドロミティの中でもかなり人気の場所。数年前、8月の休暇真っ只中に行こうとしたら、あまりの渋滞で登山口に近寄ることすらできず。再チャレンジです。

と、このトレ・チーメについて書く前に、2009年、ユネスコの世界自然遺産に登録されたドロミティについて軽く触れておきましょう。(ドロミテという和訳もよく見かけますが、語尾を複数形の“ティ”とすることで、より伊語っぽくなります)

アルト・アディジェ地方から見たドロミティ山塊の一部


14万ヘクタール以上の広さを誇る広大なドロミティ山岳地帯において、世界遺産指定は9つの地域に分けられ、アルト・アディジェ地方をはじめ、トレンティーノ地方やヴェネト州、さらにフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州にもまたがっています。

3,000mを超える山が18峰ある中、最も高い「マルモラーダ」は標高3,343m。「ドロミティの女王」の異名を持ち、ロープウェイでのアクセスが可能です。

ドロミティの山々は尖峰や岩壁とよく表されるように、尖った岩山が垂直に切り立ち、まさに岩の壁を成しています。ロッククライマーにとっては聖地のような場所ですが、私のような一般登山者が気軽に頂上を目指すというようなところではありません。

ヴェネト州の「ラガツォイ」から望む「トファーネ」の山々


しかしながら、その絶景が間近で堪能できるように周辺の登山道が整備されているため、初心者でもハイキングやトレッキングに出かけるにはオススメなんです!

 

今回の行き先、トレ・チーメへは、ミズリーナ湖より脇道を登って駐車場を目指します。

ミズリーナ湖


ドライブ中から、この景色。


さらに、駐車場もこんな感じ。

トレ・チーメの駐車場


ワクワクが募ります。

岩山の麓に駐車場があるため、歩き始めはなかなか全景が捉えられないのですが…


30分も歩いてゆくと

トレ・チーメを脇から見る


どどーんと現れる3つの山!!!


その名もトレ・チーメ!和訳すると「3つの頂」なのです。

山登りというよりは、ピクニック気分でトレ・チーメの周囲をぐるっと一周。

この先に山小屋もある


山小屋でも食事をとれますが、私たちはこの景観の中に腰を下ろし、チーズやスペックを挟んだパニーニとミニトマトでシンプルにランチタイム。甘く瑞々しい、おうち菜園のミニトマトは、喉が渇く登山のお供として我が家の定番となっています。

シンプルでも、山の上でのランチタイムは格別!


休憩時間を除き、歩いたのは4~5時間ほど。

終盤、向かって右から見るトレ・チーメ


標高2,500mあたりとはいえ、刺すような日差しを浴びながらの暑い暑いトレッキングとなりました。

多様な高山植物も見られる


下山して立ち寄ったのは、ここから車で1時間のところにあるブライエス湖。


イタリアで最も美しい湖の1つにも数えられ、遊歩道が整備されているため簡単に歩いて1周できます。


他にも手漕ぎボートで湖上を楽しんだり、ビーチみたいにのんびりしたり、と過ごし方もいろいろ。

緑の木々に囲まれ、岩山をくっきりと映し出す透明度の高い水、そこに太陽光が加わって、息を呑むほどの光景を織り成していました。

この美しい自然がいつまでも続きますように…

アルプスの大自然に魅せられて

はじめまして!この度、トレンティーノ‐アルト・アディジェ州を担当させていただくこととなった新宅裕子です。

この州は北側のアルト・アディジェ地方と南側のトレンティーノ地方に分けて捉えられることも多く、それぞれの地方で自治も行われているのが特徴的。「アルト・アディジェ」は、世界的には「南チロル」という名のほうが知られているかもしれませんね。

この2つの名前の違い、なぜだかわかりますか?

実は「南チロル」はドイツ語名。オーストリアやスイスと国境を接し、歴史的背景によりドイツ語が使用されている地域なのです。

アルト・アディジェの景観


さて、見渡す限りの壮大な自然の中、私が拠点としているのはアルト・アディジェのヴィピテーノ(伊)/シュテルツィング(独)というアルプスの山々に囲まれた谷の町。

看板はドイツ語とイタリア語の二か国語表記


人口7,000人とはいえ、小さな村々が点在するこの辺りでは中心的な存在となっています。オーストリアとの国境、ブレンネル峠までわずか15km、標高1,000mと真夏でも夜は肌寒いほど。避暑地としても人気です。

ヴィピテーノの旧市街


アルト・アディジェ地方の街並みは、いわゆるチロル風。食文化もオーストリアやドイツに近い印象で、イタリアと言えばのワインだけでなく、ビール好きの喉も潤す大きなビールメーカーFORSTもあります。

生ハムの燻製、スペックはこの地方の特産


世界遺産としても有名なドロミティ山塊も多く位置し、車を走らせているだけでも迫力あるゴツゴツした岩山に圧倒されるものですよ。

車窓から望むドロミティの山塊


イタリア人との結婚を機にアウトドア派となった私は、ヴェローナに住みながらも、休みの日にはよくアルト・アディジェの方へと足を延ばし、家族や友人らと山登りにキャンプ、キノコ狩りを楽しんでいます。雄大で美しい大自然の様子とともに独特な文化などについてもお届けしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。