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大量収穫したそら豆の楽しみ方と冬まで美味しい保存方法

5月下旬から6月にかけてそら豆が旬を迎えていました。

家族や近所の人が栽培し収穫したそら豆が大量に回ってくるので、この頃はディナーに呼ばれても主役は「そら豆」。

新鮮なそら豆でお迎えすることこそがおもてなしになります。


どれも自家製だというチーズや生ハム、ソーセージ、野菜と共にドーンとテーブルに鎮座するのは大量のそら豆。

それも火を通していない生のそら豆です。


サヤを剥くと中から薄緑色の小さなそら豆が出てきます。

中の皮はお好みで剥いてそのまま又はオリーブオイルと塩で食べます。

みんなせっせと皮を剥いて旬の味に舌鼓を打ちます。

合間にも「これが食べやすくて美味しいよ」と、比較的中の皮が柔らかくて渋みが少ない若いそら豆を選んで私の元に放り投げてくれる友人たち。

豆の甘さに爽やかな青いほろ苦さが残っていてなんとも美味しい。パンやチーズとの相性も抜群。この時期たけのお楽しみです。

大量に収穫できるそら豆をしっかり保存しておくことも忘れません。

アブルッツォで私がマンマと慕っているアンナマリアの家にお昼ご飯を食べに行った日のこと。

ダイニングテーブルが大量のそら豆で山盛り。


聞くと裏の畑で育てたそら豆が食べ頃なので、昨日のうちに近所の人たちと収穫しサヤを剥いておいたのだとか。

これから冬の間まで美味しく食べられるように、一粒ずつ皮を剥いて冷凍しておくと言います。

それにしても大量のそら豆。ひと粒ずつ皮を剥くなんて気の遠くなる作業です。

いつもお世話になってばかりなのでこんな時くらいは、と手伝うことに。


まずは沸騰したお湯でさっと湯がき皮を剥きやすくします。


さっと湯がき終えた大量のそら豆。

ここで取り出すのは食卓でも料理でもよく登場するあの(あまり切れない)ナイフ。


このナイフで中の豆を傷つけないように黒い部分を切り取り穴を開け、そこから豆をプリッと押し出します。

傷んだ豆がないかも見分けながら後はひたすらその作業を繰り返します。
途中、お茶をしに来た近所の人や親戚たちも「あら、そら豆じゃない」と言いながら、「せっかくだから」と作業に加わったりで、賑やかに出たり入ったりしながらようやく作業が終ったのは夕飯の支度が始まる頃でした。


丁寧に皮を剥いた後は使いやすい量に分けて袋づめして冷凍庫へ。

勿論お手伝いした人たちにもお裾分け。

これでしばらくは新鮮なそら豆を美味しくいただけます。


ちなみにこの日は、新鮮なそら豆を玉ねぎとパンチェッタで香り付けし、これまたマンマ自家製のニョッキと頂きました。

ホクホクのそら豆とモチモチニョッキの相性バツグン。そら豆の甘さが口いっぱいに広がります。

いつもなんでも食べさせて貰ってばかりですが、毎日水を遣って雑草を抜いて大切に育ててくれる人と、気の遠くなるような地味な下処理を手を抜かずやってくれる人がいるからこその美味しい食卓。しみじみと感謝の気持ちでいっぱいになります。

後日談/冷凍しておいたそら豆は後日、早速テーブルに登場。

この日はサルシッチャやトマトソースと一緒に煮込んでソープ仕立てに。なるほど、新鮮なそら豆の風味は健全です。

ここのところ食べすぎていた胃に優しく沁みました。


 

聖ゾピートの牛祭り

ワインやオリーブオイルの産地として知られるロレート・アプルティーノ。

この町の守護聖人である聖ゾピートの牛祭り(Festa di Bue di SanZopito)へ。毎年復活祭の50日後の日曜日とその次の月曜日に行われる宗教行事です。

1711年、当時まだ町の守護聖人がなかったロレート・アプルティーノの人たちが聖ゾピートを聖人として迎えようと、隣町ペンネから聖ゾピートの聖遺物を運ぶ行列を再現。町を行列が練り歩きます。

ザンポーニャという羊の皮と葦でつくられた楽器を演奏する人たちに誘導されて飾り付けられた白い牛が登場。この白い牛に乗るのは天使に扮した町の男の子で清純のシンボルである白い傘を差しています。



白い牛と天使に続いて聖ゾピート像とロバや馬に乗った当時の村人に扮した町の人たちが続きます。



更にその後ろを大勢の見物者が続きます。


そして、この祭りの最大の見せ場は、この白い牛が教会の前に来て跪く瞬間。

これは、当時聖人が運ばれてくる行列に特に興味のなかった農夫の横で、それを見ていた農夫の牛が聖人に向かって跪いたという伝説に基づくもの。その様子を見た農夫が聖人の存在を信じ行列に加わったと言います。

行列はまず町の入り口にある聖アントニオ教会に向かい、その前で牛が跪きます。成功すると見学者からは大きな拍手が湧きます。


さらに行列は町を練り歩き、聖ゾピートの聖遺物のある聖ピエトロ教会へと向かいます。


この祭りの最高の瞬間を見届けようと、先回りして聖ピエトロ教会へ。


町の最も高いところに建つ教会からは美しい景色が広がります。


町をゆっくりと回ってきた行列がいよいよ聖ピエトロ教会に到着。見物者の数もどんどん増え、小さな町が人で溢れかえります。


遂に司祭(写真左端手前)の前まで辿り着いた白い牛と天使。

最高の瞬間を見届けようとシャッターを構える人たちに混ざって私もなんとか様子が見える場所をキープできました。


そして、見事に跪きに成功した瞬間。大きな拍手が起こります。


大役を果たした天使君も安堵の瞬間?

ちなみに、以前は教会の中でこの跪く儀式が行われており、教会内に牛が残した糞の大きさでその年の農作物の収穫量を占っていたそうです。衛生面等の理由からか現在は教会の中ではなく教会の前で行われています。

行列はさらにいくつかのポイントを巡りながらゆっくりと町を回り、大きな広場まで戻ってきます。

無事、跪く瞬間を見届けることができた私たちは先に広場に戻り、広場の前にある小さな食材屋さんでアブルッツォ名物Fiadoniをつまんで小腹を満たして帰路へ。


削ったペコリーノチーズが入ったお菓子。ふんわりチーズの風味が口の中に広がります。

 

アブルッツォの魅力をすこしずつ・・

はじめまして。これからアブルッツォ州の情報をお届けします保坂優子と申します。

今回は、最初の自己紹介代わりにダイジェストでアブルッツォ州をご紹介します。

ツアーで訪れる様な主要な観光地がないためあまり馴染みの無い方も多いかも知れませんが、実はローマがあるラツィオ州に隣接したイタリアの中央に位置しています。フィウミチーノ空港から車で約2時間半で海辺の町ペスカーラに到着します。


自然豊かな「ヨーロッパ緑の州」

イタリア半島最高峰のグランサッソを含むアペニン山脈とアドリア海に挟まれたアブルッツォ州は、州土の約75%が標高700m以上の山岳・丘陵地です。

こうした地理的特徴から、公共交通こそあまり発達していませんが、豊かな自然がつくりだすダイナミックな景観が魅力です。また、3つの国立公園をはじめ自然保護区域も多く、ヨーロッパを代表する「緑の州」として知られています。

カンポインペラトーレからグランサッソを臨む


国立公園内に流れる透明度の高い川


海沿いはオリーブやワインの産地が続きます


個性豊かな小さな村々

深い山の中に突如姿を見せる小さな村々もアブルッツォの魅力のひとつ、工芸、食、祭りなど独自の文化が引き継がれています。

山の尾根に沿って広がる村


四方を山に囲まれた村


羊で発展した州

アブルッツォは中世以降、季節移動の羊牧(トランスマンツァ)によって経済発展してきました。

これによって生まれた文化や風習が今も色濃く残ります。

牧羊


羊飼いたちの拠り所でもあった小さな礼拝堂


海の幸と山の幸

海と山の豊かな自然に育まれて来た食も、アブルッツォの大きな魅力のひとつです。

名物羊の串焼き


捕れたての新鮮な魚介も


自然とうまく共存しながら培われてきたアブルッツォのくらしや文化について、これから少しずつ掘り下げて紹介して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。