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マルケで発足!食と文化のアソシエーション”マッカ•ローニ”

皆さんこんにちは!
今日は、ちょっと(凄く)嬉しいお知らせが
マルケ州の食をこよなく愛する友人たちと長年温めていた企画、マルケの食文化を発信するアソシエーション”マッカ•ローニ”が遂に去年の末から発足しました!
発起人は私を含む10人前後のメンバーで、郷土料理研究家であり、こちらイタリア好きさんで紹介させて頂いたマンマのレシピのフランチェスカ、アンナの他に食の歴史家の方や生産者さんなどなどバラエティーに富んだメンバー。我らが基地はここウルバーニア、マルケ州北部の美しい小さな街であり、かつてカステルドウランテと呼ばれたマヨリカ焼きの有数の産地でもあった歴史深いこの街。ウルビーノを中心としたモンテフェルトロ領でもあることから、文化、芸術、歴史がクロスする私の中での小さなパワースポットなんです。
こちらは先日あったアソシエーションがオーガナイズしたワークショップの様子。今日のテーマは”チーズを使った料理を楽しむ”でした。
そうそう、私たちの本部はアンナさんの経営するB&B,ムリーノ•デッラ•リカバータ(Mulino della ricavata)。文化財にもなっている川の水力でかつて粉を挽いていた小屋を改造して作った素晴らしい建物。建物がテレビでも紹介されるなど、見学するだけでも価値のある文化的建造物なんです。
こちらがその建物の内部。一部小さな鍾乳洞のようになっている空間にオリーブを挽くための石臼と小麦を挽くための石臼が一室に両方並んでいる珍しい例でもあります。
さて、ワークショップの楽しそうな様子も紹介していきましょう。
今日の参加者は若いカップルから年配のおばちゃんたちまで様々皆興味津々でじっくりと手順を見ています。先生はもちろんアンナとフランチェスカ。
それぞれレシピ本を出版していたりと地元では食のエキスパートの二人。この二人と出会ったことで、食文化の素晴らしさや大切さに目覚めたと言っても過言ではない、大切な友人です。
いつでも真剣に、でもお茶目にお話をするフランチェスカ。お惣菜店を家族で経営しながら歴史深い郷土食を研究しています。マンマのレシピでも数回登場してくれました。
多くのレシピを研究し、ごく最近までアグリを経営していたことからお料理の腕はお墨付き、海外にもファンの多いアンナさん。私とはハーブ好きの仲間でもあります
🌿。
そもそも、なぜ私たちのアソシエーションがMac caroniという名前なのかちょっとお話しましょう。
時代は第2次世界大戦後、イタリアも参戦した国の1つですが、戦後のイタリアは職が無く多くのイタリア人は仕事を求めて海外へ。海外へ行けどやはり血はイタリア人、食べるものと言えばパスタ、パスタ、そしてパスタ(笑)だったそうです。当時は時代柄あまり学がなかった田舎出身の労働者も多く、そんなパスタばかり食べ田舎者的な振る舞いをしていたイタリア人たちは、総合的なパスタの別名、マッカローニばかりを食べる人種として、ちょっとした中傷的な意味も含めて食べ物そのものの名前で呼ばれていたのです。
そんな時代に想いを馳せた時、確かにこのような時代はあったにせよ、田舎で生まれたミクロテリトリー的な食文化や無数のマンマのレシピは今のイタリア食のべースになっていることは紛れもない真実ですから、そんな貧しい時代のイタリアから仕事を求めて移民として移住し、図らずも食の風習を継承していった多くの人々に敬意を払うと同時に、埋もれつつある食に光を当てたい、文化としての食にふれ合う機会を作りたい、という気持ちからこのマッカローニという名前が生まれました。

さて、ワークショップに話を戻しましょう。
チーズがテーマの食材だったこの回、どんなお料理を作ったのかご紹介しましょう。

こちらは3種の前菜、3色の野菜(インゲン、根セロリ、ニンジン)のテリーヌ、カショッタ•デイ•ウルビーノというチーズのラデイッキョ巻き、鶏肉のサラダのゴルゴンゾーラソース。どれもさっぱりとしていながらチーズの濃厚な美味しさは存在感があり、思わずおかわりしてしまいます😆。
これがカショッタ•デイ•ウルビーノというチーズです。かのミケランジェロのお気に入りのチーズとして注文したという1545年付けの文書が残っており、DOPも獲得した牛乳と羊乳半々で作られた歴史の深いチーズです。
こちらはカプリーノというヤギのお乳のチーズを使った爽やかな1品。紫ビートの汁で作ったジュレを乗せて色鮮やかに。
そしてこの不思議なパスタはこの日のメニューの主役です!
パスタ•アル•サッコと呼ばれるこの1品。
その名の通り、イタリア語では”袋のパスタ”。
そう、このパスタ、チーズと小麦粉、卵を混ぜた生地を布袋に入れて、直接スープの中で煮るというとても珍しいパスタなんです。
生地をよーく混ぜて…
清潔な木綿の袋に入れます。
しっかりと紐で袋を結び、
鶏と野菜たっぷりのスープにポン!笑。
あとは1時間ほど煮込みます。
このパスタは今ではすっかり作る人が減ってしまったいわゆる幻のパスタ。
今60代以上の方は小さい頃に良く食べたわー、とお話ししてくれましたが、私も見たのは今日がはじめて。
少しの生地でもスープをタップリ吸って膨らむので、家族の多かった農家などでは重宝されていたレシピだったそうです。これも僅かな食材でいかに家族全員のお腹を一杯にするかの工夫から生まれたものなのよ、とおしゃべりも弾みます🎵
さて煮終わったパスタは袋から出されます。
固まりになってゴロリ。
これをこうしてキューブ状に切って煮るのに使ったスープに戻します。
こんな風に素敵な1品に💕
南マルケのマチェラータでは、このパスタを3色に分けて作るそうで、スープに綺麗に映えるとか。それは是非やってみたい!と叫ぶ私•笑。
一気にたくさん作ったので、皆さんちょっと一息。
暖炉の炎の暖かさがゆるりとした空気を作り出してくれます。
デザートはプリンの原型と言われているラッタローロというお菓子。みんなフランチェスカの話を真剣に聞いています。
こちらはチーズは入っていませんが昔からの農家の贅沢おやつとして紹介。レシピの歴史が大好きなフランチェスカ、彼女の昔のお話と絡めながら作っているとポピュラーなプリンも奥深いお菓子だと言うことに気着くのです。
型から無事に出てきてくれました。
スープを取った鶏肉もまだまだ旨味が残っています。
細かく裂いて、オレンジとゴルゴンゾーラソースのサラダに。スミレの甘い香りが一杯の大変美味なサラダでした。

こんな風に和気あいあいと終わったワークショップ。
このアソシエーションが発足したのをきっかけに、これからも仲間たちと文化、食、歴史と芸術も絡めつつ面白い企画をたくさん紹介していければと思います。
共に過ごす、共に食することも料理を完成するエッセンスとして大切にする、Conviviale という素晴らしい言葉。この言葉をキーワードとしてまた色々なイベントを紹介していきますね。

それでは、また!😊





春の野草をマルケの薄焼きパン、クロストロと食む🎵

皆さんこんにちは!
朝晩は冷え込みますが、お天気の良い日中はポカポカ陽気のマルケの田舎。
こんな日は、ちょっくら野に出て野草を摘んでくるのにピッタリ!スーパーへ買い物に行く代わりに、野原で食べられる野草摘みを楽しむのは、いい運動にもなるし、食材も調達出来ます😊
我が家から数分車を走らせれば、すぐにこんなマルケらしい丘の連なりに出会えます。
美味しい空気ときれいな景色を楽しみながら、常備している篭とナイフを持ってテクテク。
野を歩くと、普段は雑草と思い込んでいるものでも知識さえあれば、食べられるものが沢山あるんです。
これはオニノゲシ。春の野草の代表格の1つです🎵
思えばこの田舎に引っ越してきて約10年。はじめのうちは野に出てちょこちょこ何か摘んでいるイタリアおばちゃんたちを見ながら、一体何を摘んでいるのだろうと思ったものですが、少しずつおばちゃんたちにくっついて摘みに行くようになり、随分たくさんの種類の野草やそれらを使ったレシピを覚えました💓
こんな茂みにも、食べられる野草が沢山と思うとワクワクします🎵😆
この日収穫したのは主にこの3種類。
セイヨウヒナゲシ、オニノゲシ、和名では見つからなかった、イタリア語でAspraggineという野草の若葉。
へえ~、イタリア料理と野草??
と不思議に思われる方も多いかも知れませんが、古くは修道院のレシピから、農家の郷土料理のレシピにまで、薬草(オフィシナル)や野草は実は幅広く利用されていたんです。もちろん農家では大勢の家族にいかにして栄養価がありかつ経済的な食材を求めた時に、野に出ればいくらでも足元にあった野草たちは、とても重宝されていたはず。それらを食文化に刷り混んで行き、食文化の1つとして残ったと言えるでしょう🎵
こちらはネトル(セイヨウイラクサ)を生地に練り混んだ詰め物パスタ、カッペラッチ。私の大得意の手打ちパスタです。
ふんわり香る野草の香りとリコッタチーズのデリケートな組み合わせは絶品です!
さて、この日収穫した野草はよく洗い蒸したあと、ニンニクと。オリーブオイルでソテーに。
一番オーソドックスな調理方法と言えます。
まずは下の部分に切り込みを入れて均等に火が通るようにします。
春先の柔らかい野草であれば蒸すことをお勧めします。
栄養も逃げませんし、香りもしっかりと残ります。
蒸し上がった野草を刻んだニンニク、オリーブオイルと一緒にソテーに。
そしてこのソテーが何より合うのが、以前マンマのレシピでも紹介させていただいた、ラードを練り混んだ薄焼きの渦巻きパン、クロストロ。
豚の解体が終わったばかりでたっぷり新鮮なラードがあるので、早速仕込みです!
ぐるぐるに巻いた生地を休ませて、丸く伸ばし、鉄板で色よく焼いて….
そしてこちらもマイ豚さんの美味しいサルシッチャをじゅ~っと焼いて💓🐷
熱々のうちに、クロストロに野草のソテーと一緒に挟んでかぶりつきます!!
これはマルケ北部を旅する時には絶対に食さなければいけない1品。私のソウルフードと言っても過言ではありません🎵
そう言えば、2年前にアレンジした、”マルケで春の野草を楽しむ”というレアな旅に参加してくださった皆さんの為に作った小冊子。出来るだけ分かりやすく楽しく野草摘みをしてもらえるように用意したのですが、この年の春は例年よりも1ヶ月ほど前倒しで気温が上がり、5月の末に皆さんがいらっしゃった時には野草は既に夏草と化していたので一緒に摘むのが叶わなかった…という切ないエピソード。でもきちんと4月一杯皆さんの分を摘んで、下処理しておきました。
ボリジやダンデライオンなど、日本でもお馴染みのものから、あまり知られていないシラタマソウなどなど💓編集していても楽しかったです。
誰かマルケで一緒に野草摘みをして、お料理しませんか??😉🌿☘🍀


マルケの豚仕事!小さな農家でサラミ作り

皆さんこんにちは!
今日はマルケ州の大切な冬の食文化、豚仕事についてお話を🎵🐖
12月の末から1月一杯にかけて、中世の時代から各農家や田舎の家庭で豚を潰して解体し、サラミやハム、ソーセージに加工して1年のタンパク源として大切に食べていくという風習は冬の大きなイベントでした。
昔は家庭でも大切に育てた豚を自宅の仕事場で解体して、毛は筆に、血は料理やお菓子に使い、肉は全て無駄なく加工していたのは当たり前の習慣だったそう。
今は衛生法上家庭でのトサツが難しくなり、内臓を検査され、健康だったと判断された豚だけがトサツ場で半身にされ、それが各工房で加工するのが主流になってきています。パーツに分けられたお肉は冷蔵庫で順番待ち。
今回訪問したのは、ご近所で親戚も昔からの付き合いのあるアンジェロさんの小さな家族経営の工房。奥さんのガブリエラさんと2人で切り盛りしています。
こじんまりとした工房内は質素で飾り気は全くありませんが、長年培ってきたサラミ熟成のための要素、田舎の美味しい空気、部屋の温度や湿度、熟成を促す良い菌がぎゅっとここに詰まっているのだな、と感じられる空間です。
二人の工房があるのはトリュフで有名なアクアラーニャの丘の上。冬は寒さが厳しいですが、キーンと気持ちのよいきれいな空気。
工房内には熟成の終わったサラミたちがぶら下がり、熟成の香りが漂っています。
彼の作るカポコッロのサラミは今まで食べた誰のものよりも絶品!!
奥さんが休憩しつつ暖炉の薪で焼いてくれる新鮮なお肉が美味しすぎる!!シンプルにパンと一緒に。
腿のプロシュットになる部分の掃除はやっぱり見応えあり!立派な腿の持ち主は200キロくらいだったそうです。
私はサルシッチャ作りのお手伝い😆。
腸に味を着けて挽いた肉を詰めていく作業はこの機械で。もちろん保存料も着色料も一切使いません。
あるのは塩とコショウのみ!
サラミもきれいに出来ました!
あとは3ヶ月ほど熟成して美味しいサラミの出来上がりです!
豚を解体すると副産物として出来る沢山の上質なラード。これは揚げ物に持ってこいなんです。高温にしても質が変わりにくい豚のラード。思ったよりさらっとカラッと揚がるんですよ!
季節は奇しくもカルネバーレ。この季節に何故揚げ菓子が多いのか、豚仕事の歴史と絡めて考えればなるほど頷けます。我が家もマルケのカルネバーレの揚げ菓子、チチェルキアータを早速作りました!
スローフードに登録されている特産品、チチェルキアというお豆の形にちなんでいると言うこのお菓子、我が家も全員大好物です。

また今年もこの季節が終わり、お肉の熟成と共に春を待つとします。
消え行く小さな生産者さんたちに影ながらエールを贈りつつ。
それでは、また!!

マルケで楽しむトリュフ狩り&バロックの晩餐会🌹

皆さんこんにちは!

クリスマスも無事に終わり、我が家はマンマのレシピでも紹介させていただいたカペレッテイ•イン•ブロードを2日かけて仕込み、25日のランチで美味しくいただきました💓皆さんはどんなお料理を作られましたか?


今年の仕事を振り返り、マルケらしさがあり特に喜んでもらえた内容だったかを考えていたのですが、11月にアレンジさせていただいた、”トリュフ狩り体験と、採れたトリュフでいただく晩餐”というのがとても好評でしたので、その様子をご紹介いたします。🎵

マルケの冬の大切な食材である白トリュフ。私の住む村から3分程の所に、マルケ州のトリュフの聖地•アクアラーニャがあり、10月末から11月にかけてトリュフ祭りが開かれます。


産地だけあって地元の友人知人はトリュフハンターばかり。お仕事でしている人もいれば趣味でする人もいたりと様々。でもトリュフ狩りと一言で言っても、トリュフが育つ環境を見極めることはもちろん、香りを辿ってトリュフを見つけてくれる犬を調教するのが何よりも大変なんだとか。


どの犬でもいいと言う訳ではなく、向き不向きや犬の性格、雄か雌かによっても出来は様々。中にはとても優秀だったので地元の伝説に残るワンチャンもいます。

トリュフは土の中でいつも香っているのではなく、熟した時に最高の香りを放つもの。気温や降雨量に左右されたり、良いタイミングを逃して森の動物たちに食べられてしまったり…探しに行けば見つかる、というものでもないんです。

さて、それではどのようにトリュフな1日を過ごしたか、追ってみましょう🎵。


この日来てくれたのは、プロのハンターさん、アレッサンドロ。朝早く山に入り、穴場を案内してくれました😊!


霧雨のような朝でしたが、どんどんと山へ入って行きました。


結構歩いたころ、原っぱのような開けた所で、ワンチャンたちがそわそわし始め、何かを嗅ぎ付けたような雰囲気が…。


 

それらしき場所を見つけてアレッサンドロがトリュフを掘る道具で丁寧に穴を掘ります。何か出てくるかな?!


おお!小さいけれども白トリュフが見つかりました!


いい香りが手のひらから広がります🎵皆さんからも歓声が💓


2時間ほどかけて、白と黒のトリュフがいくつか見つかりました。

収穫されたトリュフは、採れたてホヤホヤがそのまま餐のメニューに変身します!新鮮さからくる香りが勝負のトリュフを味わうには一番の方法です。

このイベントは、お客様が宿泊されたマルケ北部のウルバーニアという街がウルビーノのモンテフェルトロ家が、狩猟を楽しむための地域として別荘を構えて休暇を楽しんでいたことから、ルネッサンスからバロック時代に作られていたお料理を、トリュフとジビエというテーマで再現し、音楽と共に楽しんで貰おうという粋な企画。


隣接するモンテフェルトロ家の別荘、バルコも風格があって素敵です。

綺麗にセッテイングされたテーブルに、マンマの。レシピでもお馴染みのフランチェスカさんのお料理が並びます。


バロック音楽の調べを楽しみながらホールにはいい香りが漂い…


惜しみ無く各自のお皿にトリュフがスライスされます😋!


トリュフの香りが漂うタルタルや..


ポルチーニとトリュフのポタージュ、


キジ肉の詰め物のトルテッローニなど..美味しい料理を堪能していただきました🎵


貴族の晩餐を再現した夕食会は蝋燭の光に照らされて幕を閉じました💓

このように、テーマのある食を楽しむ良さも、イタリアの歴史の一部を知る良さであり、旅の醍醐味であるのでは、と思います。

来年も、マルケの色々な旅の楽しみ方をご紹介できるように頑張りますね🎵💪。

皆さんもどうぞ良い新年をお迎えください~!

 

(さらに…)

洞穴熟成!ハーブの芳香漂うフォッサチーズのオープンデー

こんにちは!

今日は先日訪れた、マルケ州特産のフォッサチーズのオープンイベントのご紹介です!フォッサとは、その名の通りイタリア語で洞穴、そしてその洞穴の中で熟成されたペコリーノチーズが、Formaggio di fossa 、フォッサチーズと呼ばれる独特な熟成方法で熟成されたチーズに変身するのです🎶


さてこの不思議なチーズには、どのような歴史的背景があるのでしょう?

一説には1800年代に度々起こっていたバーバリーなどの盗賊による襲撃から食物を守るために、農民達が地下の洞穴にチーズを隠していた際に偶然に起こった熟成がチーズを劇的に美味しく変化させたことがはじまりとか。確かにチーズは冬の間の大切な食料でありタンパク源だったので、飢饉などで作物の収穫が少ない年は、農家では盗賊達に大切な食料を狙われることも見通していたのでしょう、床下などの空間に隠され密封状態になったチーズは自然発酵をはじめ、濃厚で深みのある味に変化し、チーズを再び開封したときに更に美味しく変化したチーズに驚き、独特の熟成方法として浸透して行ったのかも知れません。

近代に入り、更に香り豊かなフォッサチーズを作り出そうと、様々な野のハーブが一緒に仕込まれるようになり、熟成士さんたちの個性が現れるようになりました。

現在ではその洞穴がオープンが、美食家達のお楽しみのイベントとして開催されるようになりました。

ではイベントの様子をご紹介!



マルケ州北部のカルトチェートという丘の上の美しい村。美味しいオリーブオイルでも有名なこの村で、有名なチーズの熟成士、ベルトラミさん。


ご主人のヴィットーリオさんは熟成を、奥さまはヤギのチーズカプリーノを作られており、娘さんのクリステテイアーナは販売を担当されています🎶


1700年代には位の高い僧、枢機卿の住宅だったこの建物。煉瓦の色合いが時代を感じさせてくれます。


こちらが洞穴を開いた状態。はじめはセメントで完全に密封されていたのを、原始的に叩き壊していきます。洞穴が開いた瞬間、何とも言えないチーズとハーブが熟成した香りが立ち込めます!🎶


洞穴の中、見えるでしょうか?

布袋に入った沢山のチーズの上にはハーブのブーケが。ハーブ自体にもビッシリとカビが生えているのが見えます。

ハーブの種類はローズマリー、タイム、ローリエや野生のハーブが色々🌿チーズに芳香を移し役目を終えたハーブたちはもはやドライフラワー•笑。ご苦労様でした!

この洞穴の中の温度は密封して発酵中、30~35度くらいになるそう。洞穴の壁面部分をびっしりと藁で囲うのも良い発酵を助ける大切な要素です。


こんな風に布袋の中に5、6個くらいのペコリーノチーズのホールが入れられているんです。


生まれたばかりのチーズ、今日ばかりは食べ放題です!!💓このまま食べてももちろん美味ですが、お料理の仕上げに削ったものをさっと散らすだけで、さらに深みのある美味しさになるのがこのチーズの良いところです🎶


この日はとにかく人、人、人!

イタリアじゅうの美食家が集って、地元のワインとチーズのマリアージュや、オイルのテイステイングも楽しみます!

さて、この翌日にあった別の洞穴チーズのオープニングも見てきたので、そちらも一緒にレポしましょう。


こちらはマルケ北部にあるサッソコルバーロという美しい村。

ここの村にある古い教会の裏にあるプライベートな1室にある洞穴。


こんな風にひっそりとした佇まいも素敵です💓
こちらの洞穴は、蓋が作りつけられており、ガラス部分から中を覗くことができます。

発酵によって発生した熱から生まれた水蒸気がガラスにびっちり着いている様子を覗く息子氏•笑。


さあ、いよいよオープン!!

エミリオ君は、熟成士でもあり、2000頭の羊を飼い美味しすぎるチーズを作っている、本当に若くて才能のある生産者さんなんです💓


こちらも小さな部屋に人が一杯!

洞穴オープンの瞬間を一目見ようと遠くからやって来た人達ばかり。


わ~、こちらも美しい洞穴!

竹と藁で壁が作られていて、カレープラントのハーブの束が幾つも縁から吊るされています💓🌿

洞穴の深さは3m50cmくらい。いつもはここに1000個程のチーズが入るそうですが、この夏は干ばつで野の草が少なく、羊のお乳も少な目だった為に、今年は600個程を仕込んだのだそう。


羊さんたちは、ウルビーノ近郊の山の中でのびのびと生活しています。この写真は夏の終わりに訪問した時に撮ったもの。色々な種類の野草を食べたお乳で出来たチーズは味や香りにも草の爽やかな香りが感じられる、とエミリオ君は教えてくれました😊。


カレープラントの束はこんな風にカビカビ(良いカビ!)になりぶら下がっており…💓

記念に1束貰ってしまいました🎶

エミリオ君は、敢えてチーズの香りを重要視するために入れるハーブは1種類にするのだとか。

羊さんたちが育つ場所で採れる自然のハーブと仕込む。すべてはサイクルの中の1つ1つの大切な要素。


袋から出されたチーズが深い、いい香りを放って..

今年も上出来~!


チーズがさくっと割れるのは、熟成の状態がいい証拠。別嬪さんです🎶


美味しいチーズにあやかろうと、次から次へと人が絶えません!こんなワイワイした雰囲気が、オープンイベントの醍醐味かもしれませんね😉。
たっぷり2日間フォッサチーズのープニングイベントを満喫し、大満足の帰り道。

この村の綺麗な景色と共に頂いたハーブの写真もパチリ🎶

また来年も来られますように!

では、また!!

 

 

 

 

 

 

ハーブを使ったイタリアの修道院のレシピたち

皆さんこんにちは!

今日は、ここ最近の私の食のキーワードである、イタリアの修道院の食文化について触れてみようかと思います。と言うのも先日、以前から著書を読ませていただき、一度お会いしたいと夢見ていた食文化研究者のTommaso Lucchettiさんのセミナーにやっと参加することができたためなんです。


彼は宗教に絡んだ食文化や修道院のレシピ本などを多数書かれていて、今回のセミナーではキリスト教ベネデッテイーノ(ベネデイクト)派の食文化についてお話をしてくださいました。


このベネデッテイーノ派の活動は、現在のイタリアにおける薬草学の原点であり、いわゆるハーブの栽培が修道院で行われるようになったはじめの宗派と言われています。ハーブは染色用、ハーブテイー用、軟膏用、そしてリキュール製造用(アルコール類、取り分けワインは中世では薬とされていました)に分けられ、修道女の仕事も”看護師”と”薬草の栽培と加工”担当に役割がはっきり分かれていたと言われています。ではどのように薬用ハーブを栽培するに至ったのでしょう。

ノルチャの聖ベネデイクトは、紀元後480年に生まれた聖人で、ローマで行政官になるための勉強をしていましたが、17歳で学問を捨てて神の道に入ります。砂漠で苦行をしたキリストの精神世界に少しでも歩み寄ろうと、山奥に籠り、ストイックな環境に身を置き、食事は山にある木の実や山菜を加熱せずに食すという当時の文明からは程遠い生活をしていたそうです。そんな彼の生き方に感化された多くの人も、彼に習い深い山で野生に近い生活を試みますが、食べることの出来る野草を理解するというものも学が必要なもの、毒性のあるものを食べてしまい命を落とす者もいたり、体調を崩し看病が必要な者が出たりと、崇拝者が増えれば増えるほど、1箇所に拠点を設ける必要性が生まれ、遂に修道院を設立します。修道院とは修道士や修道女の生活を管理する他、遠方からの巡礼者を受け入れたり、病気のものを招き入れて看病したりといういわゆる病院のような役割も果たしていましたので、食物となる作物や薬用に使われるハーブを栽培する必要が生まれ、これが今日の薬草学の原点となったという訳です。



さてそんな説明をトマソさんにして頂いたあと、お楽しみのお食事です。


マルケ州の修道院をはじめ、イタリア各地から集められたレシピから作られたお料理が並び、その多くはハーブが使われているものでした。中にはあの有名なヒルデガルドが考案したサラダもありました!

まずはこちら。


“Acqua cieca”~盲目の水~と呼ばれる1品。

野生のチコリ、トマト、ニンニク、オリーブオイル、パン、塩。

シンプルな味は現代のイタリア料理からさほど遠くなく、美味しく頂けました🎶

カステル•リタルデイという町のサンタカテリーナ修道院のレシピです。

次はこちら。


 

“Fave bollite e condite “~茹でそらまめの和えもの~•••ボッビオ修道院

“Crostini alla borragine”~ボリジのクロステイーニ”•••サンタンジェロ.イン.パンターノ修道院

こちらの2品にも、野生のフェンネルやオフィシナルのボリジが使われており、大変美味しいかったです。


“Raviole rotte”~壊れたラビオリ~

フダンソウやチーズがたっぷり入った小さなボール状の1品。サンタマリア•デッラ•ネーヴェ修道院


“Salsa ai capperi”~ケッパー入りソース~

ローマンミント、ニンニク、アーモンド、酢に浸けたパン粉、レモン汁。こちらも美味しくいただきました。

サンタンジェロ•イン•ポンターノ修道院

 


“Insalata secondo santa Ildegarda”~ヒルデガルド風サラダ~

私の大好きなワイルドレタス(Lactuca virosa)やバジル、パセリ、オリーブやゆで卵などが入っており、大変美味しかったです。ヒルデガルドさんもベネデッテイーノ派だったとは💕何だか嬉しい。


“Timballo di zucca “~カボチャのテインバッロ~

カボチャに野生のフェンネルと玉ねぎやパセリ、シナモンや卵などを加えたリッチな1品。当時は大変な高級品だったシナモンの存在が、特別な時の料理だったことを物語っています。


参加者の皆さんと先生を囲んで和気あいあいとお食事…ハーブの話しにも花が咲きます。

今回のセミナーで修道院がどれだけ学校や病院のような役割をしてきたか、またレシピをドキュメントとして残してこれている、という点でも読み書きの出来た彼らは、食文化の後継にとても貢献しているのだな~と強く感じました。

これからも小さなライフワークとして少しずつ勉強していきたいと思います!

また更にデイープでマイナーな情報をお伝えしていきますね。それでは、また次回に!

 

 

 

マルケからこんにちは

 

マルケにも秋がやって来ました。

 
ここイタリアに住み17年、そしてマルケの片田舎に、自宅に隣接した陶芸制作のための仕事場を構えて、早くも10年近くになろうとしています。



ルネッサンス時代、ウルビーノのモンテフェルトロ家の管轄下にあったこの地域一帯は、小さな美しい中世の村が点在していて、まだまだ観光地化されていない素朴な暮らしが残っており、大好きな小さな村巡りは制作へのインスピレーションを沢山与えてくれます。

学生時代はファエンツァで陶芸彫刻を学び現地で10年ほど仕事をしたあと、マルケ州出身の旦那さんと一緒にマルケ北部のアペニン山脈の麓の小さな村、Cagli (カーイともカッリとも読めます)へ引っ越して来ました。

山の梺の工房に籠ってこんな作品を作っています。



制作と子育てを両立しながら、田舎の山の暮らしが始まり、畑作りや地元のおばあちゃんとの野草摘み、郷土料理のレシピ集めなどにすっかり魅了されます。試行錯誤で不便はあっても発見が一杯の田舎暮らしは本当に楽しく、大好きな美術工芸文化や古くから農家に根付く野草やハーブを生活に取り入れる食文化のリサーチはすっかりライフワークとなりました。



自ら絵付けしたお皿に、山のハーブたっぷりの郷土料理を盛り付け一人喜々とする姿は…旦那さんしか知りません(笑)。



アテンドのお仕事も、そんなローカルなマルケの魅力を知ってもらおうと私なりの視点で始めた活動です。

こんなユニークでローカルな話題と共に、私の作品もちゃっかり紹介させていただきながら、ステレオタイプのイタリアの話題とはまた別のイタリアの空気や商品をご紹介出来れば幸いです。

どうぞよろしくお願いいたしますね🎶

 

ホームページ:http://www. collinediraffaello.it/

ブログ:http://www.colliraffa.exblog.jp