マンマの紹介

• コンツェッタ・ロータ（Conzetta Rota）さん
• カラブリア州コゼンツァ県ロィアーノ村在住
• 得意料理：季節の野菜を使った料理

お料理説明・背景

カラブリア州は豚肉加工品のDOP（*1）食材が４つもある「豚肉大好き」な州でもある。州特産の黒豚（Suino nero di Calabria/スイーノ ネーロ ディ カラブリア）を筆頭に、今でも豚を飼う人は多い。春に生まれた子ブタを１年かけて肥育し、冬になったら潰してサラミに加工する。大きな部位は大切な日の為に保存する。

そんな豚肉文化のあるカラブリア州の本気のトマトソースは、たっぷりのオリーヴオイルで炒めた豚の骨付きあばら肉などが一緒に煮込まれた油ギッシュな一品。 最近では素揚げした豚ひき肉の肉団子や牛肉も使われるようになったけれど、やっぱり大切な日の大切なランチのトマトソースといったら、夏の間に作る自家製のトマトソースに冬の間に潰して保存しておいた豚の骨付き肉を3時間ほどじっくり煮込んで作られる「本気のトマトソース」以外に考えられない。

この「本気のトマト―ス」の対極に位置するのが「偽物ソース」（Sugo finto/スーゴ フィント）と呼ばれるトマトソース。偽物とは穏やかな呼び名ではないけれど、要するに自家製のトマトソースをオリーヴオイル＆ニンニク、夏ならバジルも加えてささっと仕上げる、簡単バージョンのトマトソースのこと。 パスタをゆでている間に作ることができる、超簡単＆美味な南イタリアの家庭の味。これはこれでおいしいけれど、でも肉っけがないのでカラブリアでは「偽物」と呼ばれてしまうのだ。

定年退職するまではバリバリ働いていたコンツェッタさん。貴重な休日は溜まった家事に追われて「本気のトマトソース」を作る時間的な余裕がない。でも今日は祝日。偽物ソースは食卓にふさわしくない。そんな時に重宝したのが、代々伝わるこのお手軽バージョンのトマトソースのレシピだったそう。

数か月にわたる熟成を経てうま味がぎゅっと詰まっているけれど、冷蔵庫の隅に忘れ去られて少しカピカピになっちゃっていた自家製ソップレッサータ（*2）の残骸の有効利用もできるし、時短なのに「本気のトマトソース」並みにおいしく仕上がる。特に暑い夏には、煮込む手間も労力も省けて大助かり！　なレシピなのだ。

今回「本当は内緒にしておきたかったんだけど」と、はにかみながらレシピを教えてくれた。コンツェッタさんはソップレッサータで作るけれど、実は残ったサラミを使って作るお手軽トマトソースのレシピは、カラブリア州コゼンツァ県の農村部で耳にすることがある。 農作業・家事で忙しい主婦が、それでも「本気のソース」並みな一品を食卓に出そうと、そして食材の無駄を出さずに努力した結果が、この本当に簡単で単純なレシピに込められているのか、と思うと感慨深い。忙しい農村の暮らしがしのばれるおいしすぎる一品。どうぞ召し上がれ。

*1　カラブリア州の豚肉加工品DOP：サルシッチャ、ソップレッサータ、カポコッロ、パンチェッタ
*2　ソップレッサータ（Soppresata）：ソット（Sotto・上）からプレッサータ（Pressata・ぎゅっと押された）という意味。腸詰のサルシッチャを作って、上から板などで押して余計な水分を早く出させる方法での熟成で、できあがりは楕円形です。

作り方

お料理ポイント

お好みでバジルを最後に入れてもおいしい。 パスタはどのような形状の物でもOKだけれど、タリアテッレなど卵生地はNG。 ソップレッサータが手に入り難ければ、サルシッチャなど熟成されたサラミで代用可能。 お好みで、リコッタチーズをかけていただく。