9月に入り、より一層ワインを飲みたくなる季節になった今、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノを世界に広めたワイナリー、バンフィ社を改めて紹介したい。
2015年2月の特集では、バンフィ社のブドウや土壌、気候の研究、醸造技術について主にお伝えした。
今回は、今もなお研究を重ね、進歩を続けるバンフィ社の、その成長を支える人々にスポットを当てたい。
まず、バンフィ社を日本で語る上で外せないのが、この方。日本人ながら、バンフィ社イタリア国内の営業として、ヴェネト州やフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、トレンティーノ・アルト・アディジェ州などのイタリア北東部を任されている宮島さんである。
イタリアのワイン業界に携わる日本人の中で、宮島さんほどイタリアのワイナリーに、イタリアのレストラン・ワイン業界に溶け込んだ人はいないだろう。
宮島さんは大学の卒業旅行で、イタリアのワイナリーを回り、その際当時ビジネスとは無縁の日本人の若者に対し、ワイナリーが施してくれた温かいホスピタリティに感動して、イタリアワイン業界に進むことを決意されたそう。
バンフィ入社後は、日本市場の担当として何度も来日し、日本国内でプロモーションを行い、そのジェントルなお人柄は、日本のレストラン業界の多くの人を惹きつけ今でもファンが多い。
そんな宮島さんに、改めてバンフィ社を案内して頂いた。
【ブドウ畑での研究】
まず向かったのは、ブドウ畑。
2,830haという広大な敷地内には、850haのブドウ畑がある。
ブルネッロを生産するブドウ畑の総面積が2,100haなので、その約40%を占めるバンフィ社の保有畑は相当な広さだ。
この広大な畑には、異なるミクロクリマ、土壌が混在しており、この豊かな多様性は他社を追随させない贅沢なものだといえる。
また、広大な敷地で収穫されるブドウから造られるワインは、年間1000万本以上にも及ぶが、高品質を保つための研究は常に続けられている。
研究分野は剪定にも及ぶ。
普通、ブドウの剪定は、土地の日照条件、降雨量、土壌、ブドウ品種の性質などをもとに、「畑単位」で行われるが、バンフィは違う。
樹勢が強い樹、樹勢が弱い樹などの特徴に合わせ、「ブドウ樹一本単位」というさらに細かい単位で剪定方法を変えているのだ。例え、同じ畝にある隣のブドウ樹であってもその剪定方法は異なる。
これだけ細かな手入れを、敷地面積が特に広大なワイナリーで実践していることを考えると、バンフィがいかにブドウ樹を大切にしているかがわかるだろう。
また、バンフィは実験畑を所有しており、醸造学校などと共同して、ラグレイン、テロルデゴ、プリミティーヴォ、といった他州の土着品種や、更にはワイン発祥の地とされるジョージアのサペラヴィなどを用い、うどんこ病やべと病といったカビへの耐性、地球温暖化による環境変化に強い品種の見極めをしている。
バンフィ社のブドウ品種研究というと、1982年から1991年にかけてミラノ大学と共同で行ったサンジョヴェーゼのクローン選抜で、150種から3種に絞り込んだ重要なプロジェクトがあるが、これは今なお現在進行形で大胆な取り組みと研究がなされているのである。
こう話してくれたのは、ブドウ畑の責任者アグロノモのジャンニさん。バンフィで30回以上収穫を経験、2015年よりディレクターとして活躍している。宮島さんもさることながら、ジャンニさんも、一晩中でもブドウ畑のことを語りそうなバイタリティ溢れる人物だ。
【熟成庫の進化】
次に向かったのは、ワイナリー内の樽熟成庫。
来日経験もあるエノロゴのガブリエーレさんが案内してくれた。
ガブリエーレさんが来日したのは2012年。当初は別の醸造家の来日が予定されていたところ、急遽代打を引き受け初来日となったのだが、普段からセールスを担当しているわけでもないのに、とても話上手、盛り上げ上手だったのが印象的だ。
この日も、熟成にまつわる取り組みについて、惜しげもなく、熱い口調で披露してくれた。
バンフィ社は1990 年に通常のバリック樽より少し大きい350Lのバリック樽を独自に導入してきたが、その割合は年々減ってきているという。
その理由は。
「熟成の哲学が変わったんだ。20 年前は柔らかさとエレガントさにミディアム/ヘヴィ・ローストのバリックの力強さを付け加えることが好まれた。ワインの色ももっと黒っぽかったね。今では小樽の使用比率が少なくなり、樽全体のローストもライトやノンローストが増えているよ。」
時代に合わせて、謙虚に醸造方法を見直し自分たちの進むべき方向性を見直す。
エノロゴスタッフは柔軟な頭の持ち主で、彼らを信頼し投資する会社は肝が据わっているといえよう。
2020 年ヴィンテージから実験的に使用している新しいオーバル樽4000L(楕円型の樽)も見せてもらうことができた。
産地やロースト度合いなどが異なる6つの樽のワインをそれぞれ試飲したが、冷涼さを感じるもの、フルーティーさをより感じるもの、タンニンと凝縮を感じるものなど、最初こそ同じワインだったものが、樽熟成によってニュアンスが変わるという面白い体験が出来た。
樽だけでも、独自サイズの350Lバリック樽の導入に始まり、樽に使用する木材の自社調達、その木材を敷地内で3年間も雨ざらしと天日干しにし、余計なタンニン分を除去する工程を施す。木樽とステンレスを組み合わせたホライゾン・ハイブリッド樽を開発導入、そしてこの4000Lのオーバル樽の試運用。
バンフィの革新はとどまることを知らない。
【バンフィのチームワークとチャレンジ精神】
バンフィを訪問すると、社員同士のコミュニケーションが活発だといつも思う。
アグロノモのジャンニさんやエノロゴのガブリエーレさんと宮島さんとの関係も強い。
例えば宮島さんは営業スタッフの意見聴取のため、度々製造部門のワイン選定試飲の会議に呼ばれるそうだ。スタッフ間だけでなく、社長のエンリコさんや営業部長のロドルフォさんとの風通しも良く、社員それぞれが自分のやりたいことをしっかりと持ち、スタッフ同士が意見交換を重ねながら、道を切り開いていく姿勢が感じ取れる。
~For a better wine world~
「よりよいワインの世界のために」これはバンフィ社の社是であるが、今回の訪問を通して、常に環境の変化に気を配り、未来を見据えてよりよいものを追求する姿を見ることができ、バンフィのワイン、土地、人、会社、全て含めて、その良さを伝えていきたいと強く感じた。
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
★バンフィ社のワインはこちら▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/banfi.html
▼前回(2015年2月)の記事はこちら▼
伝統的手法の再考による新しいワイン造りから生まれるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
2015年2月の特集では、バンフィ社のブドウや土壌、気候の研究、醸造技術について主にお伝えした。
今回は、今もなお研究を重ね、進歩を続けるバンフィ社の、その成長を支える人々にスポットを当てたい。
まず、バンフィ社を日本で語る上で外せないのが、この方。日本人ながら、バンフィ社イタリア国内の営業として、ヴェネト州やフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州、トレンティーノ・アルト・アディジェ州などのイタリア北東部を任されている宮島さんである。
イタリアのワイン業界に携わる日本人の中で、宮島さんほどイタリアのワイナリーに、イタリアのレストラン・ワイン業界に溶け込んだ人はいないだろう。
宮島さんは大学の卒業旅行で、イタリアのワイナリーを回り、その際当時ビジネスとは無縁の日本人の若者に対し、ワイナリーが施してくれた温かいホスピタリティに感動して、イタリアワイン業界に進むことを決意されたそう。
バンフィ入社後は、日本市場の担当として何度も来日し、日本国内でプロモーションを行い、そのジェントルなお人柄は、日本のレストラン業界の多くの人を惹きつけ今でもファンが多い。
そんな宮島さんに、改めてバンフィ社を案内して頂いた。
【ブドウ畑での研究】
まず向かったのは、ブドウ畑。
2,830haという広大な敷地内には、850haのブドウ畑がある。
ブルネッロを生産するブドウ畑の総面積が2,100haなので、その約40%を占めるバンフィ社の保有畑は相当な広さだ。
この広大な畑には、異なるミクロクリマ、土壌が混在しており、この豊かな多様性は他社を追随させない贅沢なものだといえる。
また、広大な敷地で収穫されるブドウから造られるワインは、年間1000万本以上にも及ぶが、高品質を保つための研究は常に続けられている。
研究分野は剪定にも及ぶ。
普通、ブドウの剪定は、土地の日照条件、降雨量、土壌、ブドウ品種の性質などをもとに、「畑単位」で行われるが、バンフィは違う。
樹勢が強い樹、樹勢が弱い樹などの特徴に合わせ、「ブドウ樹一本単位」というさらに細かい単位で剪定方法を変えているのだ。例え、同じ畝にある隣のブドウ樹であってもその剪定方法は異なる。
これだけ細かな手入れを、敷地面積が特に広大なワイナリーで実践していることを考えると、バンフィがいかにブドウ樹を大切にしているかがわかるだろう。
バンフィ社のブドウ品種研究というと、1982年から1991年にかけてミラノ大学と共同で行ったサンジョヴェーゼのクローン選抜で、150種から3種に絞り込んだ重要なプロジェクトがあるが、これは今なお現在進行形で大胆な取り組みと研究がなされているのである。
こう話してくれたのは、ブドウ畑の責任者アグロノモのジャンニさん。バンフィで30回以上収穫を経験、2015年よりディレクターとして活躍している。宮島さんもさることながら、ジャンニさんも、一晩中でもブドウ畑のことを語りそうなバイタリティ溢れる人物だ。
【熟成庫の進化】
次に向かったのは、ワイナリー内の樽熟成庫。
ガブリエーレさんが来日したのは2012年。当初は別の醸造家の来日が予定されていたところ、急遽代打を引き受け初来日となったのだが、普段からセールスを担当しているわけでもないのに、とても話上手、盛り上げ上手だったのが印象的だ。
この日も、熟成にまつわる取り組みについて、惜しげもなく、熱い口調で披露してくれた。
バンフィ社は1990 年に通常のバリック樽より少し大きい350Lのバリック樽を独自に導入してきたが、その割合は年々減ってきているという。
その理由は。
「熟成の哲学が変わったんだ。20 年前は柔らかさとエレガントさにミディアム/ヘヴィ・ローストのバリックの力強さを付け加えることが好まれた。ワインの色ももっと黒っぽかったね。今では小樽の使用比率が少なくなり、樽全体のローストもライトやノンローストが増えているよ。」
時代に合わせて、謙虚に醸造方法を見直し自分たちの進むべき方向性を見直す。
エノロゴスタッフは柔軟な頭の持ち主で、彼らを信頼し投資する会社は肝が据わっているといえよう。
2020 年ヴィンテージから実験的に使用している新しいオーバル樽4000L(楕円型の樽)も見せてもらうことができた。
産地やロースト度合いなどが異なる6つの樽のワインをそれぞれ試飲したが、冷涼さを感じるもの、フルーティーさをより感じるもの、タンニンと凝縮を感じるものなど、最初こそ同じワインだったものが、樽熟成によってニュアンスが変わるという面白い体験が出来た。
樽だけでも、独自サイズの350Lバリック樽の導入に始まり、樽に使用する木材の自社調達、その木材を敷地内で3年間も雨ざらしと天日干しにし、余計なタンニン分を除去する工程を施す。木樽とステンレスを組み合わせたホライゾン・ハイブリッド樽を開発導入、そしてこの4000Lのオーバル樽の試運用。
バンフィの革新はとどまることを知らない。
【バンフィのチームワークとチャレンジ精神】
バンフィを訪問すると、社員同士のコミュニケーションが活発だといつも思う。
アグロノモのジャンニさんやエノロゴのガブリエーレさんと宮島さんとの関係も強い。
例えば宮島さんは営業スタッフの意見聴取のため、度々製造部門のワイン選定試飲の会議に呼ばれるそうだ。スタッフ間だけでなく、社長のエンリコさんや営業部長のロドルフォさんとの風通しも良く、社員それぞれが自分のやりたいことをしっかりと持ち、スタッフ同士が意見交換を重ねながら、道を切り開いていく姿勢が感じ取れる。
~For a better wine world~
「よりよいワインの世界のために」これはバンフィ社の社是であるが、今回の訪問を通して、常に環境の変化に気を配り、未来を見据えてよりよいものを追求する姿を見ることができ、バンフィのワイン、土地、人、会社、全て含めて、その良さを伝えていきたいと強く感じた。
http://www.montebussan.co.jp/
★バンフィ社のワインはこちら▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/banfi.html
▼前回(2015年2月)の記事はこちら▼
伝統的手法の再考による新しいワイン造りから生まれるブルネッロ・ディ・モンタルチーノ