自然と共にある生活。カラブリア州のある養蜂家の1年と採蜜の様子
イタリアには固有種・リグスティカ種(Ape ligustica)というセイヨウミツバチがいて、古くから養蜂に使われてきました。(日本の養蜂家にも人気で「イタリアン」と呼ばれているそうです。)
実は、セイヨウミツバチは家畜。この為、世界中で品種改良も活発に行われており、数々のハイブリッド種も登場しています。
これらハイブリッド種は採蜜量に優れ、強健で環境適応能力が強い特徴があります。(目的をもって人間が作り出した種なので、ある意味当たり前なのですが。)
この為、世界中で飼育されている大多数のミツバチがこのハイブリッド種。イタリア国内においても、特に商業養蜂家はハチミツをいっぱい作ってくれるハイブリッド種を好むので、固有種であったリグスティカが消滅の危機にあります。
これではいかーん!!と、国と養蜂家の一部がイタリア固有種を保全する活動を始めていて、その活動に賛同している養蜂家を「イタリア好きVol.34 カラブリア特集号」でもご紹介いただきました。
ところで。リグスティカが大変なのは分かった。でも養蜂家って1年何してるの?って思いませんか??
今回は、リグスティカ種保全活動に取り組む養蜂家・ジュゼッペ氏(本業は先生)の1年、採蜜の様子と彼のコダワリについてお届けします(ちょっと長いです
養蜂家の仕事は春から始まります。
秋の蜜を採った後、冬越しさせるための体力をつけてもらい、外気温が柔らかく緩むまでは蜂箱を開けることはありません。冬の間に蜜箱を綺麗にしたり、工房での地味な仕事は色々あるのですが…まぁ今回は割愛して。
そして待ちに待った春。
温かさに釣られて、冬越しをした働き蜂たちが一斉に出てきます。
彼らの最初の仕事が、なんと排泄。
冬の間中ずーっと我慢していた物をすっきりさせてから、野の花へ花粉を集めに行きます。
長い冬ごもり、お疲れさまでした。本年もよろしくお願いします。
蜂たちの活動が活発になると、養蜂家は蜂の観察とお世話の作業で忙しくなります。
女王蜂は元気か、病気はいないか、蜜を集めてきているか。そろそろ人間用にも分けてもらえるかな…などを蜂箱を1つ1つ開けて確認します。
保全活動の一環として、女王蜂も作っています。
技術があれば女王蜂も作れるんですよ…びっくりですよ…。
さらに新女王蜂の結婚飛行の時期は特に気を使い、雑種交配しないように細心の注意が払われます。ここで近親交配にならない様、血統の遠い雄蜂との交配が出来る様に準備するのも、リグスティカ種保全活動の中では大切な作業。
女王蜂が元気で働き蜂の勢いが良く、人間にも蜜を分けてもらえそうなご一家のお宅は増築されます。
写真の場合、青い箱が本宅で、上に乗っている紫とオレンジの箱が人間用の蜜を集めてもらっている箱。
ミツバチたちはココにハチミツを集め、貯蔵に向く水分量まで熟成させてから蓋をします。
蓋をして保存するんですね。虫なのに凄いですよね。
ミツバチは高度な集団生活を行う虫なので、作業中には偵察係もやってきます。偵察なので見に来ただけで刺しません。かわいい。
このようにして蜜を集めてもらったら、今度は工房内で採蜜作業です! ちなみに、蜜でいっぱいになった蜜箱はおよそ20㎏ぐらいの重さになりまして、腰に注意しながらの作業です!!
まず、ミツバチがした蓋を取り除きます。
熱源を使って溶かし落とす養蜂家もいますが、非加熱にこだわるジョゼッペ氏は手作業で行います。
(熱源を使って溶かしても、注意すればハチミツの品質に大きく影響しませんが、ジョゼッペ氏のこだわりが凄くて…)
その後、ごるんごるんと工房自体が動くんじゃないか、ぐらいの勢いで遠心分離機にかけられて…
ハチミツが出てきました♡
これは栗の蜜ですね。
特殊な3重のフィルターを使って不純物をろ過し、ハチミツ保存用の専用容器に入れて数週間休ませます。ろ過しないと虫の足などが入ったハチミツになってしまうので密かに重要な作業です。
さらに水分量等の各種品質検査を経て…
やっと瓶詰め。(これはアカシアの蜜)
瓶詰めも手作業(笑
ジュゼッペ氏は1年のうちに最低3回は採蜜するので、この作業を3回繰り返すって訳ですね…
ここまで見て頂いたように、ハチミツという食べ物は、ミツバチたちが集めた蜜を加熱も加工もすることなく、そのまま頂く「生」な食べ物です。
ワインの様に、ぶどうジュースがアルコール発酵した飲み物よりもずっとずっと「生」です。
このため、私たちはミツバチがいる環境を、空気を、自然を頂いていることになり、良いハチミツ作りには良い環境が欠かせない、というのがお分かりいただけると思います。
ジョゼッペ氏の養蜂場は、ヨーロッパで最も空気が綺麗な場所に認定されたこともあるカラブリア州シラ国立公園の入り口。
しかも
さらにこのような環境は、ミツバチの健康の為にも良いので、リグスティカ種保全活動にはぴったりの場所なのです。
加えてジョゼッペ氏、ミツバチが蜜を集める時期の作業に、蜂を落ち着かせる作用のある煙も使いません。
これは、ハチミツに煙の成分が入ってしまう可能性を除く為。煙の成分が付着したら、ハチミツ作る際に取り除けないですからね…
煙を使ったとしてもハチミツに付着するのは超微量ですが、ここまで気を付けている養蜂家ってすごーく珍しいのです…
さらに採蜜作業も、蜜に触れない様に細心の注意を払いつつ手作業で行っています。
ここで薬剤を投入したりすると非常に楽らしいのですが、生であること、非加熱・無添加である事にこだわるジョゼッペ氏は頑なに手作業…
出来上がるのは、EUの認証を受けたBIOハチミツです。もちろん非加熱・無添加です。
(日本だと有機とか生、などの冠が付くのでしょうか?)
このようなこだわりは、リグスティカ種保全の目的もあるけれど、恐らく自分や家族に食べさせたいと始めた養蜂だからかな、と思います。
そりゃね。イタリア人が自分のマンマ♡に食べて欲しいと思って作ったら…最高級の注意が払われますよね。わかるわ~(笑
花を追って移動する大規模養蜂家はと違い、リグスティカ種と共に生きる為に最適な場所を選んだジョゼッペ氏は、実は私の養蜂の師匠でもありまして。
昔ながらのハチミツって…ミツバチたちがブンブン飛んでいた、まさにその時期の自然がぎゅっと凝縮された食べ物じゃない? その年によって微妙に味が違って当たり前じゃない?っていうコンセプトに共感し、折を見てはお邪魔虫 お手伝いに行っております。
本年のカラブリア州、4月中旬に山間部で積雪する寒さを記録し、各地養蜂家も大変なスタートとなりました。
が。本来養蜂ってそんなもんだろうと、飄々と作業する師匠の後を追っかけて、養蜂修行は今日も続く…
実は、セイヨウミツバチは家畜。この為、世界中で品種改良も活発に行われており、数々のハイブリッド種も登場しています。
これらハイブリッド種は採蜜量に優れ、強健で環境適応能力が強い特徴があります。(目的をもって人間が作り出した種なので、ある意味当たり前なのですが。)
この為、世界中で飼育されている大多数のミツバチがこのハイブリッド種。イタリア国内においても、特に商業養蜂家はハチミツをいっぱい作ってくれるハイブリッド種を好むので、固有種であったリグスティカが消滅の危機にあります。
これではいかーん!!と、国と養蜂家の一部がイタリア固有種を保全する活動を始めていて、その活動に賛同している養蜂家を「イタリア好きVol.34 カラブリア特集号」でもご紹介いただきました。
ところで。リグスティカが大変なのは分かった。でも養蜂家って1年何してるの?って思いませんか??
今回は、リグスティカ種保全活動に取り組む養蜂家・ジュゼッペ氏(本業は先生)の1年、採蜜の様子と彼のコダワリについてお届けします(ちょっと長いです
養蜂家の1年
養蜂家の仕事は春から始まります。
秋の蜜を採った後、冬越しさせるための体力をつけてもらい、外気温が柔らかく緩むまでは蜂箱を開けることはありません。冬の間に蜜箱を綺麗にしたり、工房での地味な仕事は色々あるのですが…まぁ今回は割愛して。
そして待ちに待った春。
温かさに釣られて、冬越しをした働き蜂たちが一斉に出てきます。
彼らの最初の仕事が、なんと排泄。
冬の間中ずーっと我慢していた物をすっきりさせてから、野の花へ花粉を集めに行きます。
長い冬ごもり、お疲れさまでした。本年もよろしくお願いします。
蜂たちの活動が活発になると、養蜂家は蜂の観察とお世話の作業で忙しくなります。
女王蜂は元気か、病気はいないか、蜜を集めてきているか。そろそろ人間用にも分けてもらえるかな…などを蜂箱を1つ1つ開けて確認します。
保全活動の一環として、女王蜂も作っています。
技術があれば女王蜂も作れるんですよ…びっくりですよ…。
さらに新女王蜂の結婚飛行の時期は特に気を使い、雑種交配しないように細心の注意が払われます。ここで近親交配にならない様、血統の遠い雄蜂との交配が出来る様に準備するのも、リグスティカ種保全活動の中では大切な作業。
女王蜂が元気で働き蜂の勢いが良く、人間にも蜜を分けてもらえそうなご一家のお宅は増築されます。
写真の場合、青い箱が本宅で、上に乗っている紫とオレンジの箱が人間用の蜜を集めてもらっている箱。
ミツバチたちはココにハチミツを集め、貯蔵に向く水分量まで熟成させてから蓋をします。
蓋をして保存するんですね。虫なのに凄いですよね。
ミツバチは高度な集団生活を行う虫なので、作業中には偵察係もやってきます。偵察なので見に来ただけで刺しません。かわいい。
このようにして蜜を集めてもらったら、今度は工房内で採蜜作業です! ちなみに、蜜でいっぱいになった蜜箱はおよそ20㎏ぐらいの重さになりまして、腰に注意しながらの作業です!!
採蜜の様子
まず、ミツバチがした蓋を取り除きます。
熱源を使って溶かし落とす養蜂家もいますが、非加熱にこだわるジョゼッペ氏は手作業で行います。
(熱源を使って溶かしても、注意すればハチミツの品質に大きく影響しませんが、ジョゼッペ氏のこだわりが凄くて…)
その後、ごるんごるんと工房自体が動くんじゃないか、ぐらいの勢いで遠心分離機にかけられて…
ハチミツが出てきました♡
これは栗の蜜ですね。
特殊な3重のフィルターを使って不純物をろ過し、ハチミツ保存用の専用容器に入れて数週間休ませます。ろ過しないと虫の足などが入ったハチミツになってしまうので密かに重要な作業です。
さらに水分量等の各種品質検査を経て…
やっと瓶詰め。(これはアカシアの蜜)
瓶詰めも手作業(笑
ジュゼッペ氏は1年のうちに最低3回は採蜜するので、この作業を3回繰り返すって訳ですね…
ジョゼッペ氏のコダワリ
ここまで見て頂いたように、ハチミツという食べ物は、ミツバチたちが集めた蜜を加熱も加工もすることなく、そのまま頂く「生」な食べ物です。
ワインの様に、ぶどうジュースがアルコール発酵した飲み物よりもずっとずっと「生」です。
このため、私たちはミツバチがいる環境を、空気を、自然を頂いていることになり、良いハチミツ作りには良い環境が欠かせない、というのがお分かりいただけると思います。
ジョゼッペ氏の養蜂場は、ヨーロッパで最も空気が綺麗な場所に認定されたこともあるカラブリア州シラ国立公園の入り口。
しかも
- ・近くに畑が無い(農薬散布被害の心配がない)
- ・整備された車道が無い(排ガス付着の心配がない)
- ・すぐ下を清流が流れている(空気が動き、常に清涼な環境)
さらにこのような環境は、ミツバチの健康の為にも良いので、リグスティカ種保全活動にはぴったりの場所なのです。
加えてジョゼッペ氏、ミツバチが蜜を集める時期の作業に、蜂を落ち着かせる作用のある煙も使いません。
これは、ハチミツに煙の成分が入ってしまう可能性を除く為。煙の成分が付着したら、ハチミツ作る際に取り除けないですからね…
煙を使ったとしてもハチミツに付着するのは超微量ですが、ここまで気を付けている養蜂家ってすごーく珍しいのです…
さらに採蜜作業も、蜜に触れない様に細心の注意を払いつつ手作業で行っています。
ここで薬剤を投入したりすると非常に楽らしいのですが、生であること、非加熱・無添加である事にこだわるジョゼッペ氏は頑なに手作業…
出来上がるのは、EUの認証を受けたBIOハチミツです。もちろん非加熱・無添加です。
(日本だと有機とか生、などの冠が付くのでしょうか?)
このようなこだわりは、リグスティカ種保全の目的もあるけれど、恐らく自分や家族に食べさせたいと始めた養蜂だからかな、と思います。
そりゃね。イタリア人が自分のマンマ♡に食べて欲しいと思って作ったら…最高級の注意が払われますよね。わかるわ~(笑
花を追って移動する大規模養蜂家はと違い、リグスティカ種と共に生きる為に最適な場所を選んだジョゼッペ氏は、実は私の養蜂の師匠でもありまして。
昔ながらのハチミツって…ミツバチたちがブンブン飛んでいた、まさにその時期の自然がぎゅっと凝縮された食べ物じゃない? その年によって微妙に味が違って当たり前じゃない?っていうコンセプトに共感し、折を見ては
本年のカラブリア州、4月中旬に山間部で積雪する寒さを記録し、各地養蜂家も大変なスタートとなりました。
が。本来養蜂ってそんなもんだろうと、飄々と作業する師匠の後を追っかけて、養蜂修行は今日も続く…