ファエンツアの陶器産業を覗き見る
エミリア ロマーニャ州、エミリア街道沿いにあるラベンナ県ファエンツア市。中世以来陶器の街として栄え、イタリア最大の国際陶磁器博物館(イタリア:Museo Internazionale delle Ceramiche Faenza MIC)は、世界で最も重要な陶器博物館の1つで、町の中にも沢山の工房があり、そぞろ歩きも楽しい街です。
今回はそんなファエンツアの街中ではなく、陶器産業を支える郊外の工業地帯にお邪魔しました。
ボローニャ方面からファエンツア方面に車を走らせると高速道路の脇には大手の陶器の製造工場、ストック、運送会社など大きな建物からどんどん大きなトラックが出入りしているのがみえます。
バルサミコ酢の入れ物を作りたくて相談していたのが、イタリア好き通信でもお馴染みマルケ州に住む陶芸家の林由紀子さん。一つ一つ手作りで、ろくろ氏さんにひいてもらったタラーニョに色味は見てもらった方がいいからとまずは釉薬や顔料を選ぶところから。容器は、食品を入れるもので、お酢だけに酸度があるため、鉛の入った顔料はもちろん使うことができない。マヨリカ焼きの焼成温度は日本の陶器よりも低く、1000度以上で溶ける顔料は使えないなど。ちなみに日本の土でマヨリカ焼きを作るとか、その反対にイタリアの土で日本の陶器を作ろうとしてもできないんだそうです。
全く知らない分野だけに、あり得ない質問をどんどんしてしまう私。
この透明感素敵!これはガラスの粉を置いて焼いた物だから平たいものでないと無理よ。
こんな感じでボカした感じ…うーんこの釉薬では無理。
このガサガサした感じをツルツルにかけるのは?それは全部ツルツルになっちゃうよ。
などなど根気よく頓珍漢な質問に答えてくれる林さん。
顔料はKg単位で売ってくれて、水で溶かして一晩置いてからの方が気泡が入ってしまったりしないとか、ピカッとして色の発色が良いものはほとんど鉛などの重金属が入っているらしい、陶器と磁器の釉薬は違うとか絵付けなのか、シールみたいなものを貼って作る場合もあるとか、素地の色が赤か白かによって出る色が違うなどなど奥が深い。狭い店内で、たくさんある色見本から焼成後に出る色を想像して色選びできるというのは、職人技だと感心しながら、次は素焼の陶器選びへ。
どう見ても倉庫にしか見えない、看板も出ていない鉄の重い扉を開けると、薄暗い埃っぽい室内に所狭しと大きさ違いのお皿、カップに小鉢、クリスマスオーナメント、壺、水差しが迷路のように鉄のラックが組まれ置いてある間にいくつもの焼成窯がいくつも…奥に入っていくとオーナーらしきおじいさんが、黙々と作業をしていました。
こちらではシリコンなどの型を使い型取りをした陶器を焼いて売っているのだそう。陶芸というと、土をこねて形を作るところから絵付けをして完成するまでをいうのかと思い込んでいたのですが、イタリアでは一般的に使われる食器は、素焼き師、ろくろ師という職業の人がいて、絵付け師がいてと分業するそうなのです。おそらく、西洋の食器は大きさが決まっているからできることなのかもしれません。もちろんアート性が高いものは、一から土をこねて作るそうです。
絵付けしてもらいたいお皿や小鉢がいっぱい。蓋物も欲しい!それではろくろ師の方がいいからと2軒目。
こちらのろくろ師さんは今年60才。現在でも一番年少者だそうで、後継者不足が深刻なんだそうです。 2人のお子さんは別の道を選び、それでもしょうがないよ、自分で事業を起こさなかったら、ここまでやって来たかどうかわからないしなぁ。後は俺たちが居なくなったら、誰かが必要に駆られてやるんじゃないのか?とそうは言っても8時から20時まで毎日働いていらっしゃるそう。やはり情熱がないと務まらないのでしょう。型抜きの素焼きのものと比べると、繊細なデザインの物も多く技量の高さが伺えます。
作って頂いたタラーニョもあまりに容量が100mlと小さいため受けてくれるろくろ師が居らず、こちらにお願いをした経緯がありました。林さんに絵付けをしてもらい専用の木箱を作って日本に送った写真を見せると、本当に嬉しそうにしていらっしゃったのが印象的でした。
タラーニョにつける釉薬を選びに行くのがメインだったのですが、衝動買い的に買ってしまった素焼き。絵付けをお願いするには、まず自分のつけて欲しい柄を考えて、林さんの時間の余裕のある時に絵付け頂くという長期プロジェクト。お皿に乗せるお料理を想像して、付けて欲しい柄を考えるという贅沢な時間を過ごせるなと、まだ見ぬ特別なお皿を想像してはにんまり。
e13年目のバルサミコ酢デビューに林さん作の限定20個のタラーニョを我が家の醸造室を見にきて頂いた方だけに販売いたします。初お披露目は5月4日にいたしますので、お楽しみに。
13年物蔵出しバルサミコ酢お披露目会のお問い合わせはこちらからhttps://www.facebook.com/events/176606216942784/
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