魅惑のサヴォール
秋のモデナは葡萄の収穫が終わる9月末から、10月の中旬が過ぎると様々な秋の果物の最盛期を迎えます。
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エミリアロマーニャ州はイタリアの中でもフルーツの生産量が1位。私の住んでいるモデナ周辺でもりんご、洋ナシ、プルーン、マルメロ、カリンなどが採れます。そんなたくさんの果物と、夏の終わりに収穫したカボチャ、葡萄の果汁を煮詰めて作ったモストコット(サバとも言います)を使って作るコンフェトゥーラがモデナにはあります。モデナ方言でサヴォールと呼ばれ、砂糖を加えずに、何日もかけてじっくり煮込んだ、砂糖のなかった時代からの素晴らしいフルーツの保存食。
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地元の方に作っているか聞いたところ、80代のお婆さんは孫たちはヌテッラ(ヘーゼルナッツの入ったチョコレートクリーム)ばかりで見向きもされないから作らなくなってしまった。なんてお話を聞くと悲しくなります。
子供達の同級生の親御さんに聞いても作るという人は皆無…。
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その昔は暖炉や薪ストーブの横で何日も鍋を置いて作っていたそうですから、近年ガスや、暖房器具の普及によって生活スタイルが変わったことも作らなくなってしまった所以かもしれません。
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我が家では幸い薪ストーブがあり、バルサミコ酢の原料のために作ったモストコットを使って、庭の木にたわわに実ったカリンやマルメロ、カボチャ、りんご、洋ナシ、プラムなどを使って作っており、何より砂糖不使用、添加物なしというのが、子供達にも安心して食べさせられますし、自然の恵みを感じる甘みや酸味がモデナの伝統的なお菓子作りや、お料理に合わせやすくてとても重宝しています。
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果物を切って煮込む事数日。褐色のサヴォールがようやく出来上がります。
市販されているものもあるのですが、どれも砂糖が添加されたもの、残念ながら苦みが勝って決して美味しいと思えないものばかりにあたり、個人的に随分味を見たのですが、納得いくものが見つからず、Alsavor アル サヴォールという名前のケータリング会社を立ち上げている友人ミルコ ピンナシェフ(イタリア好き本誌Vol36にも登場しています)に相談すると、「僕も探し回ったけれど、納得のいくものがないから自分で作っているよ。必要なら分けてあげようか?」というではありませんか。
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写真はミルコシェフのオーガナイズするパーティーの会場の様子。パルミジャーノレッジャーノチーズを始めさまざまなチーズとサヴォールを合わせて
Al savorとはモデナ方言の言い回しで、コンフェトゥーラの名前の他、味わいという意味もあるのです。その名をつけたケータリング会社だから何か知っているだろうと踏んだのは当たりでした。
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試しに味見をしてごらんと味見をさせてもらって、その美味しさに本当にびっくりしたのです。
フルーツの凝縮された深みのある味、それでいて懐かしいような。和菓子にも通じるような味わい。
チーズを始め、肉料理や魚料理、野菜料理何にでも合うのですが、そのままスプーンですくってひと瓶空にしたいくらい。パンにジャムのように塗って食べてもとっても美味しいですよ。
イタリア好き読者の皆さん、エミリアロマーニャ州のフルールがギュっと凝縮されたこのサヴォール、是非召し上がってみてくださいね。