白旗 寛子 のすべての投稿

「友達の家」っぽさがいい感じ マテーラ郊外の100%ビオ農家レストラン

カーニバルの真っ最中ですが、カーニバルと言いましても、特にめぼしい行事もないマテーラでは、バレンタインも、カーニバルも、とりあえず食べる方向で調整します。この日曜は、友達の音頭で、通称「カストーロ」に40人からが集まって午餐をしてきました。

 

カストーロ アグリトウーリズモの友達の家バージョン

レストランではありませんよ。カストーロは、農業と畜産をカバーする総合農家で、当主のジュセッペさんは、畑もやり、馬、豚、羊、鶏の世話もやり、サラミやチーズも作るし、いつそんな暇があるのか、籠や木工家具まで作ってしまう。

1988年には有機農法に舵をきって、水源を守り、家畜の排せつ物を畑の土づくりに利用し、畑から上がってくるビオ作物で家畜を育てる、というような循環型の農業を続けています。


もともと大人数で食卓を囲むのが好きなジュセッペさん。友達から熱烈リクエストがあると、商売っ気のまるでない料金で、自慢の農家料理をふるまってくれるんです。

アグリトゥーリズモの、友達の家版といったところでしょうか。私まわりで「カストーロ(ビーバー)」と言えば、ビーバーの事ではなく、ジュセッペ・カストーロさんが経営する農場のことです。

 

カーニバルの日曜日 40人の午餐

午後2時、40人がようやく揃ったところで、ビオのプロセッコ(発泡ワイン)に自然(じねん)のボラージネのてんぷら風のアミューズで、午餐開始。

摘んだはかりのボラージネ。和名ルリヂシャ。独特の旨みがあるマテーラの春の野草


腹をすかせたマテーラ人の魂を鎮めるため?!当然前菜だろう…と高を括っていた大方の予想を裏切って、すぐに山盛りのパスタが運ばれてきました。斬新。

本日のパスタは、カリカリにしたブレサオラ、冬ネギ、かぼちゃのクリームのトロフィエ


メインはカストーロ名物「ピニャータ」。ピニャータと呼ぶテラコッタの壺で羊肉と露地野菜を、ほとほとと5時間以上かけて煮込んだもので、マテーラの郷土料理でもあります。


昔々は、年を取りすぎた(=役目を全うした)山羊肉を、最後まで美味しくいただこうというレシピでした。が、ピニャータが入る最低でも暖炉、できればピザ窯が必要ですし、美味しいシチューになるまで5時間以上もかかりますので、今となっては、家庭では”しない”料理となりました。


さらにカストーロのピニャータは、この日のために屠った羊肉と、丹精したビオ野菜&野草を使っています。ジュセッペさんが育てた羊だし野菜だと思うと、いただきますと手を合わせたくなります。

 

インテルメッツォというソリューション 笑

メインの後には、果たしてインテルメッツォ(箸休め)なるものがでてきました。音楽以外で初めて聞きましたよ、インテルメッツォ。

本日の発見:先に前菜として食べるより、インテルメッツォとして食べたほうが、パスタとメインが堪能できる

箸休め全7品


12時から時計回りに;まんまで美味しいプンタレッレ。フレッシュ寄りのカチョカバッロ・チーズ。作り立てのプリモサーレ・チーズ。フィンネルとオレンジのサラダ、ざくろのバルサミコ酢風。じゃが芋と玉ねぎのフリッタータ(イタリア風オムレツ)。中央;ジュセッペさん飼育&加工のカポコッロ
※ オリーブの枝で燻製した豚肉の一夜干しソーセージの写真を失念

好々爺のジュセッペさん(右)。箸休めが一段落したところで、おしゃべりにやって来た

Fai come se fosse casa tua(自分んちのようにくつろいでね)!

40人掛けのロングテーブルが置かれたソラリウム(サンルーム)は、広々とした前庭にもキッチンにもバスルームにも続いていて、どこへ行くにも気がねは要りません。実家か、勝手知ったる友達の家にでも居るような気楽さも、カストーロの魅力です。

カストーロのキッチン


ホストとおしゃべりついでに配膳を手伝ったり、キッチンに置かれたソファでは、お腹いっぱいになったちびっ子がお昼寝したり、乳幼児のパパ&ママがおむつを替えたり。

 

開始も、お開きもあなた次第

14時頃に始まったランチも、みんながそれぞれ適当に草サッカーを始めたり、たばこ休憩を入れたりするものですから、ドルチェの頃には、まだ少し早い日はとっぷり暮れていました。

イチジクのジャムとくるみの全粒粉タルト。カフェカップの蓋はジュセッペさん作


スタート時間もなくクローズ時間もない。朝から遊びに行ってもいいし、盛り上がればいつのまにか午後8時、9時ということもざらだし、小さい子がむずかり始めたら、後を気にせずに帰ってもいい。

この懐の深いもてなし。甲斐性のない私は、いいよなあとただただ憧れつつ、とうてい真似できないのです。

カストーロ、カストーロと書いてきましたが、正式にはマッセリア・ラ・フィオリータと言います。
Masseria La Fiorita
Strada Provinciale Timmari – Santa Chiara – Matera(マテーラ市)
お問い合わせ
masserialafiorita@gmail.com
facebook

 

パティシエが作る最高のパネットーネは、なんとバジリカータにありました。そのレシピも公開!

12月の声を聞くと、権威あるパネットーネのコンクールや、ガンベロ・ロッソなどのグルメメディアが一斉に、「パティシエが作る今年のイタリア最高のパネットーネ」を発表します。

本日ご紹介するのは、過去5か年、19タイトルで1位を独占するパネットーネ。まぐれではありません。しかもお店があるのは、アチェレンツァという人口わずか2,433人ばかりの小さな村なのです。

ティーリTiri3代目ヴィンチェンツォさんと「イタリアの最も美しい里」に数えられるアチェレンツァ村©Tiri

パネットーネ 手作りしない方が賢明な5つの理由

伊グルメメディア『ディッサポーレ』は、「家でパネットーネを作ろうなんて、最悪のアイデアだ」として、パネットーネ作りはおそらく(発酵による)パン作りの頂点であり、その「発酵菓子のエヴェレストに登らない方がいい5つの理由」を、口をすっぱくして述べています。(2019年12月4日

photo©Tiri


確かに…パネットーネは、イタリア人がイタリア人をして、「餅は餅屋」という数少ない食べ物の一つです。

それでは、作る意欲を徹底的にそがれる5つの理由から、ハイライトをTiri提供の美しい写真とともにおおくりします。

 

1、 びしびしのプロ仕様の家電を揃えたキッチンも、およびではない(意訳)

まずもって、捏ねあげ温度が絶対に27、28度以上にならないよう、ツインアームミキサーが必要です。ティーリTiriではさらに、専門の職人に改良してもらった世界に一つしかないミキサーを使っています。

 

2、 家で手慰みに作ってみるには人生は短すぎる(意訳)

捏ねと発酵で3~5日…この部分(だけ)が取り沙汰されますが、なんのなんの。われらがティーリTiriのオリジナル製法では、計3回の発酵だけでおよそ72時間、3日がかりです。

焼成後、今度は、逆さに吊って冷ましていきます。そうしないと生地が自分の重さでつぶれてしまうんですって。

Photo©Tiri


さらに生地を安定させ、アロマを十全に開かせるのに5~7日…(絶句)

 

3、天然酵母(母種)の脅迫

天然酵母を使っていないものはパネットーネとすら呼べない、とまずはばっさりと切りすてた上で、酵母の予備発酵にほんのわずかでも不具合があった時点で、即アウト。レシピなんか何の役にもたたない、と念仏のように繰り返しています。

㏗4.5の完璧に健康な天然酵母だけが、力強い発酵と焼成の出来、ロングシェルフを保証する©Tiri


 

それでも作りたいという頑固な貴方へ(笑) ティーリTiriレシピ大公開

Tiriのレシピ通りに、石臼挽きのビオ小麦粉とか、野天で平飼いの鶏の生みたての卵とか、フレンチバターとか材料にこだわり始めると、ティーリTiriのパネットーネ・トラディツィオナーレ(36€)より高くつきます。笑

本捏ね(1回目)の生地の材料
小麦粉 200g
砂糖 90g
水 80g
卵黄 40g
バター 100g
酵母 80g

30℃で12時間発酵させ、3倍にする

本捏ね(2回目)で追加する材料
小麦粉 40g
砂糖 20g
卵黄 40g
塩 4g
砂糖漬け各種 100g
レーズン 100g

 

それ以外の方は、何も言わずにTiriベーカリー&カフェへ

ティーリ・ベーカリー&カフェでは、パネットーネが1年中、気軽に楽しめるようになりました。1ポーション3.5€。

大都市にでもありそうな、随分しゃれた店内©Tiri


パネットーネの他にも、パンドーロ、デニッシュ、ババ、郷土菓子から、アチェレンツァの伝統的なパンやフォカッチャまで、5種類の自家酵母を使い分けて作られる、発酵菓子&発酵パンの世界を楽しめます。

photo©Tiri


ちなみに、ティーリ製のコロンバ(イースターの発酵菓子)は「イタリア最高のパティスリーズ・コロンバ1位」(ガンベロ・ロッソ2017年)、さらには印象的なブルーの専用箱まで「ベストパッケージ賞」(ディッサポーレ2019年)。ひつこいですか?笑

 

マエストロに聞く、パネットーネの美味しい食べ方

「どうもフォトジェニックじゃなくて…」と大照れのマエストロ・ヴィンチェンツォさんに、パネットーネの食べ方を伝授してもらいました。

キュートなアンジェラさん(左)とは交際12年目。ヴィンチェンツォさんが「パネットーネで行く」と決めたのは10年前なので、パネットーネよりも長いお付き合いになる


思ったより薄めにカットして、電子レンジの場合、150℃で10秒を目安に、温めてみてください。酵母や良いバター、ドライフルーツ、それぞれのアロマがいきいきと立ち上がってくれば、食べ頃です。

「いいパネットーネ」はそのまんまで美味しい


それではイタリア好きのみなさま、
今年もどうぞ素敵なクリスマスを、そしてよいお歳を!

Tiri1957
本店 Via A. Gramsci 2/4, 85011 Acerenza(ポテンツァ県/バジリカータ州)

ポテンツァ市内 Tiri Bakery & Caffè
Via del Gallitello 255, 85100 Potenza(ポテンツァ市/バジリカータ州)

 

サッシ地区でレッドブル®のフリーランニングの競技大会  世界遺産登録から26年、「フリーランニングの聖地」となるか?!

南イタリアでレッドブルと言えば、プーリア州の海リゾート、ポリニャーノで開催されるクリフ・ダイビングでした。

が、2019年はこれ「レッドブル・アート・オブ・モーション2019」。世界遺産「サッシ」地区を舞台に、世界のトップアスリート18名が、パフォーマンスを競い合いました。

https://www.redbull.com/より


かっこよすぎる公式トレイラーはこちらから。

フリーランニングって言うんですねえ。最近もマテーラの大聖堂近くでギリシア様式の壺(紀元前4C頃とみられる)が発掘されたばかりですが、2千年以上かけて築かれてきたサッシ地区の都市構造は、図らずもこの21世紀生まれの競技にぴったりです。

 

にわかファン、レッドブル・アート・オブ・モーション2019へ

土曜の13:30開始という、昼ご飯・命のマテーラ市民には「ありえない」時間帯と、直前までの小雨にも関わらず、特設ステージを視界におさめる良い場所はあまねく黒山の人だかり。フリーランニングという競技の、この集客力よ。

かくゆう私も、名前も知らない競技の魅力を前にしては、誘蛾灯の蛾のように、巨大モニターが設置された特設ステージ前へ。


リモンチェッロのプロセッコ&オーガニックトニック割りという不思議なドリンクを買い込んで、いざ観戦です。


 

初めてのフリーランニング

フリーランニングは、持ち時間90秒の間で、「difficulty 難易度」「execution 出来栄え」「flow 流れ」「creativity 創造性」「overall impression 総合的なインパクト」の5項目の総合ポイントを競う模様。

フィギュアスケートのように、パフォーマンスが終わるごとに審査員から得点が発表され、そしてフィギュアスケートのように、ルールを知らなくても、わいきゃあと盛り上がれます。

上の公式トレイラーにも出演しているNAPC2019王者のドミニク・ディ・トマーソ選手(オーストラリア)


大柄な選手が有利というパルクールに対して、アクロバティックなフリーランニングでは小柄な選手が有利らしく、女性選手も4名いましたよ。しびれちゃいます。

日本人も得意そうだ…と適当なことを考えておりましたら、いました!ミヤザキ ユライ選手。ビデオ選考にエントリーした100人以上の中から、審査員をうならせた男子上位4名の1人とのこと。

世界中にライブ配信された大会の模様は、一見の価値があります。

 

世界遺産地区でフリーランニング 是か?非か?

サッシ地区の段々畑に屏風を並べたような都市構造が、図らずも21世紀生まれのフリーランニングに、ばしっとハマりました。

「アート・オブ・エモーション2019」を一目見ようと、世界中から愛好者やファンが多く詰めかけ、前日の夜から、町にはフリーランナーっぽい様子の若者の数が目に見えて上昇。わたしのようなザ・にわかファンも巻き込んで、大いに盛り上がりました。


その一方で、大会直後のSNSでは、「フリーランナーおよび観衆が破損した」として壊れたブロック塀や屋根瓦の写真の投稿が物議を醸しました。またサッシ・ファウンデーションという社団法人が、サッシ地区の保全の観点から、サッシ地区でのフリーランニング反対を訴えました。

それに対して、

「(1952年のサッシ地区からの立ち退き令以降)30年以上もサッシ地区など見向きもせず、荒廃させた時代もあった」
― 世界遺産登録のずっと前からサッシ地区に住んでいる友人

「建物の外壁は、壊れたら二度と換えが効かない芸術作品とは違う。補償が整えられれば、大いに賛成」
― は16年間サッシ地区に住む友人

と言う意見もありました。

 

これは高度に政治的な問題だ

サッシ地区が世界遺産に加え、パルクールやフリーランニングの聖地となるのは、長い目でみると良いことではないか?と私は考えています。

アート・オブ・エモーション2019は、マテーラはもとよりイタリア国内でも初めての開催でした。新しい試みには、ふたを開けてみてからの課題はつきものです。

これ、まず市と主催企業が、愛好者に「世界遺産であり住宅地であること」を周知徹底し、罰則と損害があった場合の補償規定を設けるなどして、クリアできないものでしょうか?

市は思い切ってプレイエリアや利用時間も限定すれば、見たい!という人もフリーランニング遭遇率が高くなります。保全協力金として、使用料を徴収するのも有りかもしれません。

左:Josh Malone選手(USA)、中央:決勝ラウンドに進出したCharles Luong選手(スイス)。終了後、興奮で鼻息の荒いおばちゃん二人にも、気さくにフォトセッションに応じてくれた。


問題を改善するチャンスも与えないまま、短期合理的に反対!ゆえに今後一切の大会はなし!として、将来の「フリーランナー憧れの場所」の称号を手放すには、あまりにもったいない。

 

新しい価値が定着するには時間がかかる

サッシ地区だって…

1945年に出版された書物の中で、ダンテの地獄編に例えられ、
1948年には国家の恥とまで言われ、
1952~1968年、政府主導で立ち退きが続き、荒廃
1980年代の伝統文化の再評価のムーブメントを経て、
1993年には一転、世界遺産に登録。
2019年 欧州の文化の首都イヤー



「私たちはマテーラにぞっこんです」と書かれたビスケット会社の広告。Cottiは「惚れる」の他、ビスケットなどを「焼く」と言う意味があり、言葉遊びになっている。こんな広告がお目見えするのも、「マテーラ」に良いイメージがあればこそ。


そして将来「マテーラ出身です」と言えば、「ああ、フリーランニングの!」と認知されるようになれば?

開催する度に、きっとまた別の問題が持ち上がるんでしょうが、その度に微修正していったらいい。フリーランニングの是非について、20年後、30年後まで見据えた市民間の議論があるといいなと思います。

 

マテーラが『007』最新作のロケ地に 市民は見た『No time to Die』のバックステージ

ダニエル・クレイグ最後のボンド役とか、あの『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリー役の俳優が悪役とか…007シリーズ最新作『No time to Die(原題)』について、ウェブニュースで何となく目にする機会も多いですよね。

ロケ地はジャマイカ、ロンドン、イタリアなどと伝えられていましたが、8月中旬から4週間、マテーラの世界遺産地区&旧市街で、派手なカーチェイス複数回を含む撮影が行われ、6万のマテーラ市民がざわざわしました。

これだけのビックネームはメル・ギブソン監督の『パッション』(2004)以来です。

最新作のかっこいいトレイラーがこちら
JAMES BOND 007 “NO TIME TO DIE” Teaser Trailer (2020)

 

007はお好きですか?

恥ずかしながら、わたくしボンドシリーズは1作も観ことがありません。が、たまたまマテーラにいるのも何かのご縁。グループチャット経由で回ってきた写真(撮影友人一同)を横流し…もとい活用させてもらって、ド素人&昭和&ゴシップ目線で、007マテーラ・ロケのバックステージを漏洩します。笑

 

キャリー・ジョージ・フクナガ監督が超絶カッコイイ(私見)

スリーショットの写真は左から:監督、ボンドガールの一人レア・セドゥ、ダニエル・クレイグ。https://www.facebook.com/DirectorCaryJojiFukunaga/より


てっきり出演者の一人かと思ったら、アメリカ人のキャリー・ジョージ・フクナガ監督だそうです。「監督がボンドをやればいい」と取り沙汰されるのも、さもありなん。42歳。独身。『ビースト・オブ・ノー・ネーション』観ます。

 

撮影中のダニエル・クレイグは…

世界遺産地区の友人宅が撮影に使われ、仲間内ではおおってなりました。この友人宅、なかなかいい場所にありまして、映画のロケーションになるのは、鳴かず飛ばずに終わった『ベン・ハー』(2016)に続き2回目。ダニエル・クレイグとも二言三言かわす意欲を見せていた友人曰く「撮影中のダニエルはとてもとてもとても真剣で、撮影クルーも高次元にプロフェッショナルだった。」


友人は仕事に出かけたため、結局ダニエル・クレイグにはハローと言う暇もなかったらしいのですが、スウェーデン人の撮影監督(カメラマン)がイケてた、とのこと。007クルー、ハンサム揃い。

 

カーチェイスは実写

007名物のド派手なカーチェイス、実写なんですね。ボンドファンの間ではそんなの常識だったでしょうか?たったたらりら。グループチャットで回ってきた動画を見る限り、マテーラでの少なくとも3回のアクションシーンは、ふかしたエンジン音も、急ブレーキの音も豪快な実写でした。

こんなことになっているんですね


中世のマテーラの市壁を「またにかけた」華麗なバイク・アクションシーンもあります。乞うご期待。

 

ボンドカーは…何台?

5月16日付けのシネマトゥデイによりますと「この映画にはボンドカーが2台出てくる」「アストンマーティンとジャガーランドローバー」とあります。

友人宅付近の駐車場。壮観


何台なのーーーーー?


「007」シリーズ25作目となる「No Time to Die(原題)」は、2020年4月に世界各地で公開予定だそうです。

公式サイト

 

会心の出来です!マテーラ2019公式プログラム『南方からみたルネッサンス』展

欧州の文化の首都肝いりの『南方からみたルネッサンス』展が、マテーラ市で9月15日まで開催されています。

ルネッサンスなのに南イタリア。違和感ありますよね。違和感しかないですよね。案に違わず南イタリアのルネッサンスに着眼した企画展は、イタリアでも初!

イタリア史・文化史・美術史で一番検証される時代=ルネッサンス期が、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ミラノから語られるばかりだった中、ルネッサンス論では初めて、南イタリア視点でルネッサンスを捉え直そうという試みなのです。

8月現在の欧州の首都のようす


本展には「15~16世紀のマテーラ、南イタリア、地中海」を基点に、イタリアおよびヨーロッパ各地のそうそうたる美術館、博物館、史料館や教会から、180を越す作品が集められました。

企画展とはいえ、これだけの作品を一斉にお借りしてくるには、大変な裏方秘話もあった模様。欧州文化首都さまさまです。

 

勉強しておけばよかった世界史

時代設定は、ナポリ王国1438~1535年のおよそ100年間。

フィレンツェでは、マザッチオが『楽園追放』(1427)でルネッサンスの偉大な一歩を踏み出し、“偉大な”ロレンツォ・デ・メディチの大いなる文芸庇護の下、ダ・ヴィンチがたった21歳で『受胎告知』(1472)で名をあげ、スペイン女王の援助でコロンブスがアメリカ大陸に到着し、ローマでは、いよいよミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井画(1505‐)に着手した一方その頃…

アラゴン(後のスペイン)が副王をおいて統治していたナポリ王国では、1503年以降、劇的に人口が増加。イスタンブールに次ぐ地中海第二の都市に躍り出ていました。

”雅量の”アルフォンソ1世。『アラゴンのアルフォンソの肖像』(作者不詳、1460年代)、パリ ジャックマール‐アンドレ美術館 所蔵。


教養豊かで芸術に造詣の深いレネ・ダンジュー、続く“雅量の”アルフォンソ1世と統治者にもまずまず恵まれ、南のルネッサンスが花開いたとして不思議はありません。

 

なにはともあれ世界地図&航海図

海運国ジェノヴァじるしのアーモンド形の世界地図を納めたセクションI「地中海:海、航路、交易、権力と王朝」がまずもって面白い。

アラゴンはジェノヴァと盛んに交易していた。羊皮紙に描いた『ジェノヴァ製作アーモンド形の世界地図』(1457)、フィレンツェ国立中央図書館 所蔵


13世紀以降、ヨーロッパ、ことにイタリアの船乗りに整えられていった航海図の特性に、翼のあるドラゴン、海の怪獣や人魚が、気真面目に描きこまれています。

同地図 アジア部分


ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』さながらの想像上の生き物は、中世の(キリスト教の立場から世界を解釈した)伝統的な「世界地図」観は引きずりつつも、当時”発見された”ばかりの「アジア」(1447年一商人の見聞録がまとめられた)の新情報とおおらかに混在しています。

世界地図の他にも、航海図から天地図、精巧なアラブの天体観測器、あの町の鳥瞰図まで、まじまじ見ているとあっという間に時間が経ってしまいます。

 

いわくつきのドナテッロ

見逃しようがないのは、ドナテッロの巨大な『カラファの馬の頭部』。その巨大さ、古典的な作風がヴェルギリウスの金属の馬像の伝説と相まって、19世紀になるまで、古代ギリシア-ローマ文明の遺産だと信じられてきました。

ドナテッロ『カラファの馬の頭部』(1456)、ブロンズ。ナポリ国立考古学博物館 所蔵


 

事実は、ナポリのヌォーヴォ城のアルフォンソの凱旋門のために、ナポリ王アルフォンソ自らドナテッロに発注したもので、完成していれば、凱旋門の中央には実寸の3倍はあろうかという「騎馬姿のアルフォンソ像」が据えられるはずでした。

遠くから見上げて鑑賞するようデフォルメされた、迫力の作品を間近で観察できます。

 

目玉はコーラントニオ、アントネッロの一枚

目玉は『書斎の聖ヒエロニムス』。

コーラントニオ『書斎の聖ヒエロニムス』(1444‐1450)。ナポリ カポディモンテ美術館 所蔵


そして『受胎告知の処女』。

アントネッロ・ダ・メッシーナ『受胎告知の処女』(1445‐1450頃)。コモ シヴィックアートギャラリー 所蔵


松岡正剛氏は「ルネサンス社会は常軌を逸するめちゃくちゃの社会だった」と表現しましたが、いわんやナポリ王国のルネッサンスをや。

180という展示品の集合体からは、ナポリ王国の底抜けに明るい気風と喧噪が立ちのぼってくるようで、私のような基礎知識がごっそり欠けている者でも、2時間ほどで半分しか回れませんでした(あと2回は見に行こう)。

ぜひ時間に余裕を持ってお出かけください♪


Matera2019公式プログラム『南方からみたルネッサンス展』
~2019年9月15日まで
木曜~火曜 09:00~20:00
水曜 11:00~20:00(入館はいずれも19:00まで)

ランフランキ館(写真)
Palazzo Lanfranchi
住所:Piazzetta Pascoli, Matera

入場には下記、マテーラ2019パスポートが必要です。
Passport for Matera 2019(年間パス19€/大人。2019年中はパスポート提示で、マテーラ市内バス全路線への乗車が無料)
Daily Passport (1日パス10€/大人、購入当日の深夜00:00まで有効)

お得なデイリーパスポートは、同展チケット売り場またはMatera 2019 Info Pointで購入可

 

二人の女性シェフのユニット「アケーニ」が仕掛ける 旅する人にもとっておきの食体験/後編

例えば、ムルジャ渓谷トレッキング&ワイルドブランチ

前編中編はこちら)

野山に百花が咲きこぼれる5月。マテーラのいっとう美しい季節と「アケーニの野点料理」の誘惑に負け、出不精の私も嬉々として、アケーニが仕掛けるワイルドブランチに参加してきました。

シークレット・サパー同様、まずはSNSで日時と「ムルジャ自然公園内」とざっくりとした場所だけが告知され、メールで問い合わせると料金etc.を載せた招待メールが届きます。

ワイルドブランチの舞台は、ムルジャ渓谷の秘境。さらに一帯は私有地につき、予約した人にだけ、メールでGPS情報が明かされます。

秘密のワイルドブランチの会場©Mariangela Russo


今回もメニューもサプライズなら、自分たち以外は誰が来るのかも当日まで分かりません。

 

楽ちんトレッキングでムルジャ渓谷の秘境へ

最高地点500m越、マテーラ市民はキャニオンと呼ぶムルジャ渓谷では、公認エリアガイドについて、腰を据えたトレッキングも楽しめます。

目的地はこんなワイルドな場所!「あかりが灯るクリスト・ラ・セルヴァ岩窟教会」/季刊誌『MATHERA』2018年9‐12月号


ムルジャ渓谷には、分かっているだけで89の岩窟の聖堂がひっそりと点在していますが、そのような聖堂の多くは、険しい岩場を登ったり下ったりしてようやく辿り着くような「おっかない場所」にあったりします。

ワイルドブランチのテーブルが待つのも、そんな聖地の一つで、長く信仰を集めた岩窟教会があります。が、こちらの「参道」は道幅も十分で、急斜面にはところどころ階段まで穿たれていて、普段のスニーカーがあればOK。


オリーブ畑や、野の花が咲きこぼれる景色に目を細めているうちに、30分ほどで岩窟教会に着いてしまいました。

旧家所有のマッセリア(荘園)のオリーブ畑の中を、聖地への「参道」が通る


 

不思議なクリスト・ラ・セルヴァ岩窟教会を特別拝観

たどり着いた教会はその美しい外観から、マテーラの岩窟教会本の古典にして決定版の表紙を飾ったほど。

クリスト・ラ・セルヴァ岩窟教会の外観『Chiese e Asceteri rupestri di Matera(マテーラの岩窟教会と聖堂)』1995 Edizioni De Luca


内部もなかなかに興味深く、主祭壇がファサード(正面外観)の背面にある不思議な設計(祭壇を東向きにするため。岩窟の教会でみられる)の痕跡や、洞窟の壁体に直接うがって造られた珍しい告解室(1712年)が残っています。

中央に司祭さまが座り、写真のように膝をついて懺悔する


教会名の由来にもなっているのが、こちらの『キリストの磔刑』のフレスコ画。
苦痛で眉を下げ、頭(こうべ)を垂れるetc.「苦難するキリスト(人間性)」の構図が取られる一方で、水平に保たれた両腕、ほとんど立っているかのように(足台の上に)並置した足etc.「栄光の主キリスト(神性)」の構図との、おおらかなミックスが、想像をかきたてます。

すでに息の絶えたキリストを描いた。マテーラの岩窟教会あるあるで年代は不詳だが、苦しみや死をこうむるキリストの「人間性」がイタリアでも描かれるようになるのは、13世紀以降とか。


教会は世界遺産に連なる文化財ですが、なんとアケーニのフランチェスカの伯父チェーザレさんが所有管理しています。

というわけで、ワイルドブランチの参加者は、マテーラ市民でも入ったことのある人は少ない教会の中を見せてもらえます。内部から階段伝いに大小6つの洞窟コンプレックスに潜入でき、ちょっとした冒険気分まで味わえます。

 

ワイルドブランチ そのメニュー

うながされた秘境の洞窟には、野趣あふれるテーブルセッティングとアペリティフが待っていました。

最寄りまで車で乗り入れても、会場の洞窟まで徒歩15分ほどはかかる。搬入にアケーニの二人+助っ人を頼んでも4~5往復はした©Mariangela Russo


参加者17名のうち15名のマテーラ県人(安定期の妊婦さん1を含む)に寄せて、アケーニが組み立てたメニューは(*印はバジリカータ名物);

北インドのパーニ・プーリ生地で包んだプンタレッレのバーニャカウダ
トルタ・サレ
ムルジャ渓谷の山野草*のダンプリング(餃子)、ピーナッツソース添え
低温で火を入れた豚の腹肉、西洋わさび*のソース添え
紫キャベツのクロッカン
自家製フォカッチャ*
メタポント産いちご「カンドンガ」*
オルガおばあちゃんの柑橘風味のチャンベッラ(パウンドケーキ)
新鮮バター*と自家製アマレーナチェリーのジャム
スペルト麦とオーツ麦の自家製ビスコッティ、塩バター風味

藤の花を発酵させたワイルドソーダ水
新鮮な果物のエクストラクト2種
トルマレスカ 白・ロゼ プーリア州I.G.P.
バジリスコ 赤 アリアニコD.O.C.*
カフェ



アケーニの「野点」ビュッフェ©Mariangela Russo


今回、心を掴まれたのは、最近「発酵」の研究に余念がないというアケーニ特製の「ワイルドソーダ水」。季節の藤の花を発酵させたソーダ水は、記憶のどこにもない優美な香りがしました。

藤の花、発酵中…©ACHENI


ムルジャ渓谷のただ中。視界が広々と開けたセミオープンの洞窟は、春の植物がいっせいに発する勢いと、見えない動物たちの生気に満ち満ちていました。この多幸感!

©ワイルドブランチ参加者提供


初めて顔を合わせた人同士でもおしゃべりがつきない饗宴は、最近の日長にもそそのかされて、気がつけば19:00(!)。ワイルド「ブ」ランチは14:30終了の予定なのでしたが。笑

ACHENI
https://achenicucina.wixsite.com/achenicucina
ワイルド・ブランチ
料金の目安:35€/人~
席数限定
告知はアケーニ公式Facebookにて
https://www.facebook.com/achenicucina/
インフォ&予約 メールをする


二人の女性シェフのユニット「アケーニ」が仕掛ける 旅する人にもとっておきの食体験/中編

料理も、テーブルセッティングも、畑もつくる

 

(前編はこちらから)

 

「…わたしたち、全然SNS向きじゃないし…スマホをいじってる時間もほとんどない…実際問題、いつも手がよごれてるから。小麦粉で、卵で、土で、いろいろな発酵液で…」

2019年3月27日ACHENI公式facebookより

さらりとこんなことを書いちゃうあたりもぐっときちゃいますが、え、土?! 土?! クールビューティーなアケーニの二人は、自ら畑まで耕していました。

ACHENIのエレーネ(左)とフランチェスカ(右) 。くわえてミラノでインテリアデザイナーの顔まで持つフランチェスカ。びっくりの度合いとしては、農業>インテリアデザイナー


アケーニの料理には、手塩にかけた自前の作物が使われていた、とフランチェスカの口から聞いて、なんというか広々と澄んだ感動を覚えました。

 

例えば、洞窟のダイニングルームでシークレット・サパー

春まだ浅き3月15日、アケーニが仕掛ける食体験のひとつシークレット・サパー・クラブに出かけてきました。

毎回、場所を変え、趣向を変えて仕掛けられる秘密の宴は、SNSに日時と例えば「マテーラのサッシ地区」などと開催「地」だけが告知され、気に入れば誰でも予約できます。席数は毎回12席のみ(場所により10席)。

予約した人にだけ通知される会場もメニューもサプライズなら、自分たち以外は誰が来るのかも、当日まで分かりません。

会場は、世界遺産「サッシ(洞窟住居)」地区のオープン間もないホテルPalazzo del Ducaのダイニングだった。普段は宿泊者専用の朝食ルーム


シークレット・サパーの趣旨に嬉々として乗ってきた面々は;

マテーラでバカンス中だったドイツ人ご夫妻
プーリアとカラブリアからの2人組
マテーラ人4名
マテーラ在住アメリカ人1と日本人1

私とマテーラ人1名以外の全員が、英語で楽しく社交ができるという南イタリアにあっては奇跡のテーブルでした。笑

 

弥生三月のシークレット・サパー そのメニューは…

専ら「マテーラ」そして「春」を意識したメニューは、一皿ごとにテーブルを沸かせました。アケーニの料理が畑作りから始まっていたと知るのは、後になってからですが。以下、*印はバジリカータ特産です。

スターター
プンタレッレのバーニャカウダ

インド北部のパーニ・プーリ生地で、バーニャカウダ・オイルを包んだ


前菜
塩バター仕立ての子羊の内臓と、2つの食感のアーティチョーク

旬のアーティチョークを定番のフリットと、生(クレーマ仕立て)で


プリモ
セモリナ粉の生パスタ 野生のビターラーペとセニーゼ産IGPクルスキピーマン*、モリテルニ産カネストラートチーズ*のクリーム 添え

青物を練りこんだ手打ちパスタはよくあるが、こんなに「苦みの走ったいい生パスタ」があるものかと驚く


メイン
山野草風味の子羊、西洋わさびのソース添え

この日、胃袋をつかまれてしまったのが、子羊肉とミルフィーユにしてブロードで煮込んだという春の山野草。ほろほろと柔らかい子羊もイケてましたが、脇を固める付け合わせの方です。


土地柄、野生のアスパラをはじめ、チコリ、ボリージ(ルリヂシャ)などなど山野草を摘んできて食べる習慣が、まだまだ健在です。

義母の家でも、レストランやアグリでも、うまいうまいと言いながら食べてきたハズなのに…。エレーネがキュートに鼻にしわを寄せながら「ムルジャ渓谷の所有地で摘んで来た!」という、野生のチコリとフィンネルの香ばしさときたら。

プレ・ドルチェ
ヤギ乳のカプリ―ノチーズ、くるみとアマレーナのコンフィチュール 添え

ドルチェ
メタポント産レモン*のレモンカードのタルト

加齢によるあれやこれやで、白砂糖を自主規制しているにもかかわらず、美味しさのあまり完食。笑


パッシート(デザートワイン)
11フィラリ/プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリアD.O.C.G.(プーリア州)

各お皿に合わせて選ばれたワインの3銘柄にも唸りましたが、本日の1本は、断然こちら。ドルチェと甘美に引き立て合う


焼き菓子
メレンゲ
つきを運ぶと信じて、食事の最後にアケーニが必ず供しているのが、フランチェスカのマンマ手ずからの焼き菓子です。

中にキャラメルソースの雫をしのばせたメレンゲは、これだけ平らげた後でも、1つ2つとつまんでしまう


シークレット・サパー熱が冷めないまま、ちょっと言葉にならないあの澄んだ感動が、一体どこから来るのか…ずっと考えています。

二人が一心に向き合っているもの、畑づくりから始まる料理、郷土と大地、時間に育まれた食習慣、エレーネとフランチェスカの家族のストーリー、もてなしと客として招かれるということ、場所と人、人と人、人と人のあいだ…

 

次回後編は、ムルジャ渓谷のエクスカーション&ワイルドランチ、スカイプでの料理レッスンと、さらなるアケーニの食体験をご紹介します。

ACHENI
シークレット・サパー・クラブ
料金の目安:70€/人~
席数:12席(会場により増減)
告知はアケーニ公式Facebookにて
インフォ&予約 achenicucina@gmail.com(英語可)

二人の女性シェフのユニット「アケーニ」が仕掛ける 旅する人にもとっておきの食体験/前編

神出鬼没 二人の女性シェフの出張料理ユニット「アケーニ」

2017年8月、マテーラの食のシーンに、ちょっと贅沢でちょっとかっこよすぎる料理ユニットが現れました。アケーニ・クチーナは、店は構えない出張料理のスタイルで、マテーラとローマを拠点に、クールな食体験を提供しています。

料理ユニット「アケーニ・クチーナ」のエレーネ(左)とフランチェスカ Foto©Arianna Del Grosso for ACHENI Cucina


食事会の趣旨と会場、メニューに合わせて、クリスタルやアンティークガラスのグラス類、器、銀製のカトラリーから、いかにも上等なリネン類、アンティークのキャンドルホルダーや生花に至るまで、テーブルに載る物いっさいを持ち込んでセッティングする美しいテーブルも、アケーニの魅力です。

大晦日のホームパーティーのテーブルセッティングをするフランチェスカ(奥)Foto©Arianna Del Grosso for ACHENI Cucina


友人を招いてのホームパーティーは楽しい。が、素面にもどって直面するのが、後片付け問題です。そこでアケーニの魅力その2。翌日の指定の時間に、よごれものは汚れごと(!)回収していってくれるんです。

ということで去年の暮れ、友人の一人が「そうだ、大晦日はアケーニに出張してもらおう」という、途方もないアイデアを思いつきました(笑)。

Foto©Arianna Del Grosso for ACHENI Cucina


アケーニの魅力その3は、もちろんその料理です。

イギリス人、スウェーデン人、日本人、パヴィア人、ローマ人、マテーラ人、マテーラ近郊の村民、と雑多な集団の大晦日のディナーのため、アケーニが組み立ててくれたメニューは;

 

前菜
牡蠣バリッジ・グラン・クリュと赤玉ねぎのグラニータ
セニーゼ産IGPクルスキピーマンのカンノーロ、塩鱈のクレーマ仕立て入り

アボカドとシチリア産赤エビのサブレー(写真)
エンダイブ、バニラと卵黄、カチョリコッタ、ハーブのソース

プリモ
アクエレッロ米使用 雲丹のリゾット
レモンのジェルとトーストピーナッツ風味のバター 添え

メイン

蒸しダコ、ローストハーブ風味の蜂蜜の艶出し
ベークドポテトのクレーマ、ラーペのマリネ 添え(写真)

口直し
ヤギ乳のカプリ―ノチーズ、柿とカルダモンのソース 添え

ドルチェ

ホワイトチョコレートのガナッシュと塩キャラメルのシュー
アンゴストゥーラ酒の香りのレッドベリーソース 添え(写真)

ディナーの終わりに
アマレーナとキャラメリゼしたヘーゼルナッツのタルト

大晦日のお約束
自家製コテキーノ、レンズ豆添え

 

大晦日にふさわしい料理を作らなくては!と気をもむこともなく、後片付けの憂いもなく、さらにはマテーラ首都イヤーによる混雑と通行規制も受けず、大よそ行きを着て、ひたすら出された料理に溺れるだけです。

小さな面倒も体にこたえるナイスミドルには(笑)、いいこと尽くしの新鮮な食体験でした。

Foto©Arianna Del Grosso for ACHENI Cucina


次回、中編と後編にわたって、アケーニが仕掛けるシークレット・サパー・クラブに、ムルジャ渓谷のエクスカーション&ワイルドランチ、スカイプでの料理レッスンと、旅する人にもとっておきの食体験をご紹介します。

 

2019年、マテーラが「ヨーロッパの文化の首都」に?!

欧州文化首都って何だ?

欧州文化首都制度は、EU統合より随分前の1985年から続く、ヨーロッパ最大級の文化の祭典です。

おもしろいのは、首都は1年の持ち回り制なこと。首都に選出されると、EUレベルでその都市らしい芸術文化のイベントが繰り広げられます。

2019年の首都は、なんとマテーラなのです。

昨1月19日、マテーラ2019のオープニングセレモニーが、伊大統領と首相を迎えて賑々しく開催され、マテーラは晴れて「ヨーロッパの首都」になりました。笑

オープニングセレモニーは世界遺産サッシ(洞窟住居)地区のメインステージから、全国に中継された


2019年ワキワキのマテーラから、セレモニーのダイジェストと、内部事情通から届いたばかりの(笑)、2月8日現在、ホットなマテーラ2019の公式プロジェクトをご紹介します。

 

オープニングセレモニーを時系列で

当日、2020年の首都ゴールウェイ(アイルランド)やドイツ、フィンランドなどヨーロッパ各地から音楽隊がマテーラ入り。住宅地を含む複数の地域で同時多発的に音楽隊のパレードが見られました。

音楽隊は、ヨーロッパのどの国にも共通する伝統なのだ ©Matera2019


午後4時半から2時間のあいだ、一斉に消灯した世界遺産サッシ(洞窟住居)地区には、住人の手で無数のキャンドルが灯されました。

サッシ地区を夜空に、キャンドルの灯を星に見立てた「マテーラ満天の星プロジェクト」©Matera2019


青くライトアップされた大聖堂の上空には、星空に見立てたサッシ地区を背景に、発光するバルーンの月が昇りました。

©Matera2019


セレモニーのフィナーレには、花火ショーがムルジャ渓谷上空を彩りました。

©Matera2019


セレモニー終了後は、舞台を中央広場に移して、「首都」前にはまずお目にかかれなかった類のパレードやショーが、繰り広げられました。

仏ラ・コンパニ・デ・キダムの「光の馬」のパレード ©Matera2019


仏コンパニ・トランス・エキスプレスの「空中オルゴール」©Matera2019



オープニングセレモニーのハイライト ©Matera2019

続いて、内部事情通から届いた(笑)、2月8日現在、ホットにしておすすめの公式プログラム3つをご紹介します。

 

6人のアーティスト × 6つホテル 個性あふれるホテルにおじゃまして現代アート鑑賞

マテーラ・アルベルガプロジェクトでは、6人の現代アーティストが、6つのホテルの特別な空間に、永久展示のインスタレーションを製作。作品を旅人にも市民にも、無料で公開しています。

このプロジェクトのテーマは、歓待、出会い、共存。サッシ(洞窟住居)地区の住民の間で育まれた「隣組の互助」の伝統を、アートを媒体に再構築しようという試みなのです。

2月現在、断然の一押しは、洞窟住居地区の都市構造の華地下貯水槽を使った作品。このホテル地階には、稀有な連結した8つの貯水槽が残っており、アートの鑑賞がてら、実際に中に入ることができるようになっています。

A.ピッリの“IDRA(水または心を探求する場)”。細工を施した鏡を張った貯水槽は、まるで水をたたえよう。ウユニ湖のような鏡映しが楽しめる ©Matera Alberga


通常、宿泊客しかアクセスできないホテルが、マテーラ市民と「マテーラ滞在中の臨時市民」が出会って、交流する場に。展示スペースだけとはいえ、ホテル巡りができるのも一興ですよね。建物探訪好きにもおすすめです。

 

マテーラ・アルベルガ 開催カレンダー

注目 2019年1月18日~毎日11:00~21:00
ホテル:Corte San Pietro/サッシ地区
アーティスト: Alfredo Pirri “IDRA Istituto di ricerca anima(水または心を探求する場)”

2019年1月18日~毎日11:00~21:00
ホテル:Dimore dell’Idris/サッシ地区
アーティスト: Dario Carmentano “FONTE DEL TEMPO(時の泉)”

2019年1月18日~毎日11:00~21:00
ホテル:Locanda San Martino/サッシ地区
アーティスト: Filippo Riniolo

2019年2月23日-毎日11:00~21:00
ホテル:Hotel del Campo*マテーラ新市街。バスまたはタクシーが必要
アーティスト: Giuseppe Stampone

注目 2019年3月16日~毎日11:00~21:00
ホテル:Hotel Sextantio/サッシ地区
アーティスト: Georgina Starr
※ 内部情報によると笑、これも期待度、大。

2019年4月20日~毎日11:00~21:00
ホテル:Casa Diva/サッシ地区
アーティスト: Salvatore Arancio

Matera Alberga 詳細はこちら

 

「CIRCUS+」現代サーカス・パフォーマンス

未完のトラモンターノ城址公園に、2月8日現在、絶賛特設中のサーカスの大テントでは、バレンタインズデーから毎週末、5週間に渡って、南イタリアで未だかつて見たことがないという触れ込みで、現代サーカスのパフォーマンスが開催されます。大いに期待しましょう。

2月14日
19:00~ペティ・シャピトゥー
21:00~ Flavia Mastrella and Antonio Rezza(イタリア)『7 – 14 – 21 – 28』

2月15日
19:00~ペティ・シャピトゥー
21:00~Flavia Mastrella and Antonio Rezza(イタリア)『Anelante(息せききって)』

2月16 日
18:00 ~ 20:00 シネ・サーカス
21:00 ~El grito(イタリア)『Johann Sebastian Circus(ヨハン・セバスティアン・サーカス)』

2月17 日
17:00 ~ ペティ・シャピトゥー
21:00 ~El grito(イタリア)『Johann Sebastian Circus』

2月20日~24日
出演:Phia Menard(フランス) /Ziya Azazi(トルコ)

2月28日~3月3日
出演:Cecile Mont Reynaud(フランス )/Martina Nova(イタリア)/Jörg Müller(ドイツ)/Okidok(ベルギー)

3月7日~10日
出演:Groupe Acrobatique de Tanger(モロッコ)/Forum italiano nuovi circhi(イタリア)

3月14日~17日
出演: The Black Blues Brothers(ケニヤ)/ヒサシ・ワタナベ(日本)

場所はすべて
Gran Chapiteau, Parco del Castello, Matera
マテーラ市カステッロ公園、特設グラン・シャピトゥー(サーカスの大テント)

「CIRCUS+」カレンダーはこちら

CIRCUS+の入場には、マテーラ2019年間パスポートと、予約が必要です。CIRCUS+の予約は1週間前からのみの受け付けです。

 

マテーラ2019年間パスポート

年間パスポート(一般19€)を購入すると、アルゼンチン出身のTomàs Saraceno がムルジャ渓谷に仕掛ける、超絶インスタレーションなど超目玉となる5つの特別展をはじめ、公式プログラムのすべてに入場できます。

予約コード記載の年間パスポート(左)と、おまけのパスポートを模したスタンプラリー帳(右)


パスポートはマテーラ市内インフォポイントか、オンラインで購入します。

インフォポイント
住所Via Lucana, 125-127
毎日09:00~20:00

パスポートのオンライン販売はこちら

Matera 2019 EVENTSでは、イベントリストの閲覧、イベントの検索ができます。要予約のイベントは、該当するイベントの詳細ページのBOOKから予約します。※その際、年間パスポートに記載された「予約コード」が必要です。

公式イベントカレンダーMatera 2019 EVENTS はこちら

 

おまけ 年間パスポートを買ったらぜひ!期間限定の洞窟コンプレックスに入ってみよう

2014年、首都に決定して以降、マテーラでは地道に再評価と修復、再開発が進み、これまで眠っていた場所に、アクセスできるようになっています。

マテーラの旧市街では、なにげない石畳の通りの下や、「建物」の地階にも、洞窟空間が広がっているんです。アルス エクスカヴァンディ展のハイライトでは、そんな洞窟コンプレックスの一つに、実際に入ってみることができますよ。

15分間の洞窟探訪への入口。おお、こんな所が地下洞窟に通じていて、こんな所に出るのか~と新鮮な発見


ここでちょっとマテーラ建物のお約束をば。
例えば、イタリアのどこの町にもある「アッシジの聖フランチェスコ教会」。小鳥にも説法することでお馴染み、今も昔もイタリア人の信仰を集める聖フランチェスコは、イタリア共和国の守護聖人でもあります。

マテーラの聖フランチェスコ教会(14世紀)が、他の町のそれと一味違うのは、地階に12世紀に遡る岩窟の聖堂が存在すること。

マテーラでは大聖堂(13世紀)しかり、聖アゴスティーノ教会(16世紀)しかり、旧女子修道院アンヌンツィアータ館(18世紀)しかり。地の利のいい場所に建つ「物件」は、古くからそのうま味を生かすべく、はっきり目的をもって掘られた洞窟の上に、上書きするように建設されています。

ご多分にもれず、旧神学校ランフランキ館(17世紀。現、国立バジリカータ中世近代美術館)のどっしりとした建物の地階にも、ワイン醸造所、ワインセラー、雪室、倉庫として利用した複数の洞窟が眠っていて、今回見学できるのがここ。

ランフランキ館(黄色線)の地階に広がる洞窟空間の平面図:V.Baldoni著”Palazzo Lanfranchi”(出版IEM editrice)3ヶ所の赤塗りつぶし=人が入れる状態にある洞窟コンプレックス。見学できるのは、最右のランフランキ館地下を貫く洞窟コンプレックス。


ランフランキ館の東西を通る道を繋ぐ、まさに洞窟のパサージュは、洞窟ファン(?)と、夏季は避暑にもおすすめなのです。

「Ars Excavandi」展の詳細はこちら
2019年1月20日~7月31日
月曜 14:00~20:00
火曜~日曜 09:00~20:00
国立リドラ考古学博物館 Museo Archeologico Nazionale
住所 Via Domenico Ridola, 24
※ 入場にはマテーラ2019年間パスポートが必要です。

 

憧れのヴェンデンミアで、農業の大変さと偉大さを思い知る

ヴェンデンミア事始め

クリスマス待ちのはなやいだ時候に、秋の話になりますが…

友人の地元イルシーナという村のヴェンデンミアが面白い、とは聞き及んでいました。ヴェンデンミアとは、主にワイン造りのための大掛かりなブドウの収穫作業のこと。ちょうど稲刈りのような秋のイタリアの風物詩です。

10月中旬の晴れの土曜を見計らって、イルシーナからヴェンデンミアの招集がかかりました。マテーラからは車で20分、いそいそと向かったのは友人のお父様が定年後から丹精してきた0.5haのブドウ畑です。

イルシネーゼが「バジリカータのトスカーナ」(!)と称する村の田園風景のなかでも、ひときわ眺めのよい斜面に広がるブドウ畑


ささやかな畑とはいえ、すべて手摘みで、この日のうちに圧搾したいので、人手はあればあるほどいい。ブドウの熟し具合、天候をにらんでお父様の号令のもと、普段はモデナに住む長男リーノが至極当然、家族4人でヴェンデンミア帰省です。

おじいちゃんとブドウを摘むのが楽しくてたまらないモデナ育ちのエンマちゃん8歳。4人のちびっこの間では2丁の鋏をめぐって攻防戦が繰り広げられた


ヴェンデンミアには、収穫の喜びに大人も子供もうきうきとするお祭りの感があります。家族・親戚は問答無用として、伝統的にご近所さんや親しい友人も楽しく駆り出してしまいます。当家ではリーノの幼馴染みのジーノが固定要員です。


垣根に並んだ畑には、アリアニコ種(黒ブドウ)とシャルドネ種(白ブドウ)が、おおらかに混植されていました。まずはこの日のうちに圧搾したい白ブドウから収穫開始。


大きな葉に隠れた房も摘み残さないよう、二人一組で摘んでいきます。


ポリ容器が一杯になったら、大声で“ネコ”担当者を呼ぶと、空の容器を持って回収に来ます。

 

図説イルシーナ流ヴェンデンミア

白ブドウを圧搾場に送り出し、目途もついた午後2時半をだいぶ回って、ヴェンデンミアのピクニックとあいなりました。


イルシーナには、ヴェンデンミアの日に食べ継がれる行事食があるんです。それが「じゃがいもの野良仕立て」。茹でたじゃがいもをたっぷりのオリーブ油、パプリカパウダーで炒め、塩をし、さっと揚げたクルスキ(ドライド・スイートピーマン)を砕いて和えたものです。

冷めても、いや多分、冷めてからが美味しい。ピクニックにうってつけ


簡単そうでいて、リーノのマンマの貫禄の味にはならない、とは実のお嬢さんとお嫁さん談。それに旬のシシトウのオイル煮、フォカッチャ、焼き菓子で、ちびっこも大喜びのピクニックです。

さてお昼の合図とともに


畑の周縁に自生する葦を刈り取って、お父様が器用に作り始めたのが…


若竹色も清々しいボトル栓。ご自慢の2017年の自家製ワインを詰めたリサイクル瓶の口にも、ぴたりとハマるのは見事です。が、単なるボトル栓ではありませんよ。

写真右から:お父様、「じゃがいもの野良仕立て」を持って駆けつけたマンマ、当家の次男


イルシーナ流ヴェンデンミアでの正しいワインの飲み方をご覧あれ。

当家の長男リーノ(右)と幼馴染みのジーノ


グラス要らずで、大勢で回し飲みができます。プラスティックのコップなど無かった時代の、遊び心しかないイルシネーゼの知恵。ちなみにリーノもジーノも、モデナとミラノを拠点に海外を行き来する高給取りです。名誉のため。笑

 

ヴェンデンミアの憧憬と現実

ヴェンデンミアは楽しい。しかも愉快なイルシネーゼが一緒です。笑

作業中は、内輪のSNSでも一盛り上がり。「バジリカータの農作地における外国人労働者の搾取の実態。日本人は仕事が遅すぎる…来年はベンガル人を雇うつもりだ」とディスられる。笑


が、厳然とした農作業なのでした。

ブドウ畑はだいたい南向きに作ります。10月半ばとはいえ南伊のこと、日が高いうちは直射日光との闘いです。熟れたブドウに誘われてくる蚊やススメバチと闘いです。そうこうするうちに腰より低い所に生るブドウを摘む態勢もつらくなり、日が傾けば今度は肌寒さとの闘いです。

地面に近い位置にもわさわさと生る。ワイン用のアリアニコ種だが、実は食べても美味


それでもヴェンデンミアは、ブドウ作りの中では一番楽な作業なんだとか(!)。オリーヴ畑と違ってブドウ畑は手がかかります。茶目っ気たっぷりのリーノのお父様ですが、80歳を越えて、家族も今年が最後のヴェンデンミアかもしれないと考えています。


最後に、日よけのブドウ棚も収穫してヴェンデンミア終了。

0.5haの畑ながら、手慣れた大人5人+その他の大人4人(日本人含む)+ちびっこ4人で、朝から夕暮れまで実に1日がかりでした。

先発の白ブドウと合わせて自家消費用の1年分のワイン600ℓを賄う


マテーラの八百屋さんでは、旬ともなれば、夢のように甘いブドウが、キロわずか2€ほどです。
美味しいブドウの一房の裏に、日々自然と対峙して、丹精するリーノのお父様のような農家さんがいることに、思いを馳せました。