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鹿野喜志枝〈KISHIE KANO PLACIDI 〉 ウンブリア州ペルージャ在住。 Placidi & De Donno SNC/ Placidinternational 代表 ファッションバイヤー ・イベント・研修ツアーなどの企画・運営 親族経営のオリーブ農園の経営にも携わり、ウンブリア州の食の魅力を発信している。出身地、山形県の「やまがた観光つや姫大使」としても活動。

マッシモ松本編集長!来ペルージャ!

先月、ローマに滞在されていたマッシモ松本編集長が
日帰りでペルージャにいらしてくださることに。
さてさて、どちらにお連れしよう。

イタリア全土の食の魅力を知り尽くしていらっしゃる編集長
もちろん、ウンブリア州も何度もいらっしゃっているわけで。
そんな編集長に喜んでいただきたくて
私達が選んだお店は、ペルージャからさらに車で40分ほどの
モンテ・マルターニにあるRifugio
山小屋レストラン「Rifugio San Gaspare」

ここのメニューはいたってシンプル。
地元の生ハムの盛り合わせと、本日のパスタが3皿とお肉のみ!笑



トルタ・アル・テストと相性抜群の品々!


ただ、なんと言ってもここの名物はウンブリア州の郷土料理を
語る時に忘れてはいけない「トルタ・アル・テスト」

焼き立てのトルタ [ Torta al testo ]は熱々!
イタリア語で「トルタ」というと、甘いものを想像される方が多いと思いますが、
この「トルタ」はウンブリア州の食卓には欠かせない伝統的な料理で、小麦粉を捏ねて伸ばして「テスト」と呼ばれる円形の鉄板で焼くのが特徴的なこの地方独特のパンのようなもの。

地域によっては「ピッツァ」とも呼ばれたり
古くから歴史と伝統で育まれてきた家庭料理なので
州内でも地域や家庭によって様々なバリエーションがあるのも特徴です。

そして、このRifugioは、石焼の上に乗せた生地を「テスト」と呼ばれる鉄板で挟み、上から灰をかけるという
昔ながらの方法で「トルタ」を焼いている数少ないレストランの一つなのです。

編集長の「うわぁ!これは初めて見たな!最高っ!」をいただき、私達も一安心。笑

Torta al testo/今となっては本当に珍しい昔ながらの焼き方!



「イタリアの緑の心臓」と呼ばれるほどに
山の幸、自然に恵まれているウンブリア州は加工された肉や野菜を使った
イタリアでも独特の郷土料理を育んできた地域。

それらの食材との相性ピッタリの「トルタ・アル・テスト」は
私達日本人が口にした瞬間にも
何故かほっこりと懐かしい感覚になる
そんなやさしいお味なのです。

編集長、長旅でお疲れかと思いきや
シェアした3種類のパスタに山盛りのお肉のグリルもペロッと
お召し上がりくださり、ノルチャ名物のサルシッチァはお代わりも!

「おいしい」は「うれしい」という気持ちが作るものだと
よく思います。「おいしい」は人の記憶に深く結びついていて、その記憶は「うれしい」が入っているものだと。

この大きな暖炉で焼かれる「トルタ」の光景は
主人の祖父母とのあたたかい思い出なのだそうで
ここに来る度に、ほっかほかの「トルタ」に生ハムを挟んでくれた祖母ちゃんの話と
その横で微笑んでいた祖父ちゃんの話を繰り返す主人。笑

祖母ちゃんが彼にしてくれたように
トルタの間に生ハムを挟み「マッシモ!食べて!」と
嬉しそうに差し出し、それを本当に「おいしい!おいしい!」
と満面の笑顔で召し上がってくださった編集長。

今回も、このトルタの記憶に「うれしい」が入ったなぁ、
と幸せな気持ちになれた一日でした。

Gnocchi ai porcini /ポルチーニ茸のニョッキ


Grigliata mista di maiale /豚肉各種のグリル、手前はレバーが練りこまれたサルシッチァです。


マッシモ松本編集長、いらしてくださって本当にありがとうございました。
次回またペルージャ でうれしいをご一緒しましょう!

「最高!気持ちー!」を連発いただき、私達も最高の一日でした!


 

イタリアの真ん中から、こんにちは!

ウンブリア州を担当させて頂くことになりました
ペルージャ在住の鹿野喜志枝(かの きしえ)です。

ペルージャのシンボル、Piazza IV Novembre・11月4日広場 のFontana Maggiore


30代後半、ほんの数ヶ月の語学留学のつもりで
ボールペンを倒して決めた滞在先がペルージャ でした。
ペルージャ 外国人大学で第二の学生生活を満喫していたところ突然襲ってきた体調不良。
検査の結果、明日破裂してもおかしくないほどの巨大な脳動脈があることがわかり、日本への飛行機での帰国は危険な状態、まさに生死をかけた大手術をペルージャ で2回も行うことになったのが約17年前。

奇跡的な出会い、そして頼もしい友人たちに支えられ、手術も無事成功、当初は半年ほどの予定だったペルージャ滞在が約2年となり、ようやっと帰国を決めた日「自分へのご褒美に!」とお買い物をしたチェントロのお店で主人と出会い結婚。

今年で結婚生活も14年になりました。
人生万事塞翁が馬、ほんとうに何が起こるか分からないものです。

ご縁に導かれて、好きだったファッション業界でバイヤーという仕事にも恵まれ、イタリアブランドの日本進出や商品開発にも関わりながら、あっという間に14年のキャリア。
その間、主人のお祖父ちゃんも立ち上げに加わった親族のオリーブ農園の経営にも携わることに、それがきっかけで食材の輸出仲介を初め、現在ではウンブリア州のみならずイタリア各州でのバイイング、イベントや研修などのオーガナイズのご依頼も多く頂けるようになりました。
5年前に小さな会社を立ち上げ、若いスタッフと毎日楽しく奮闘中です。

私の運命は、きっとこの町に繋がっていたのだと思います。

チェントロからの眺め、遠くにはアッシジも見えます。


チェントロ・Porta Sole
階段を降り切るとペルージャ外国人大学があります。
夏は心地よい風が吹くこの場所でのアペリティーボ時間が最高です。


イタリアの「緑のハート」とも呼ばれるほど豊かな自然に恵まれたウンブリア州。
州都は2000年以上前にエトルリア人によって築かれた丘の上の古都ペルージャ、重厚な城門や城壁、情緒溢れる中世の佇まいが今もそのままに残っています。

坂道だらけのチェントロを歩くと、美しい石畳や、そっと触れたくなるような城壁が深く長い歴史を囁いてくれるかのようです。

 

アックエドット通り・Via dell’Acquedotto昔は水道橋だったかわいらしい通りに愛らしい家が並びます。


石の丸さと輝きが歴史を感じさせる石畳


エトルリア門・Arco Etrusco 紀元前2〜3世紀に建築された門


Piazza IV Novembre・噴水の左側はプリオーリ宮殿・Palazzo dei Priori


決して華やかではない、落ち着いた素朴さのあるこの町は、現代の私たちの生活に、そっと寄り添いながら見守ってくれているようで、異国にいながら不思議な安心感に包まれた暮らしです。

ペルージャ と言えば学生の町。なんと1308年に創立されたペルージャ 大学は11学部あり全土からイタリア人学生が集まります。1925年創立のペルージャ外国人大学は、イタリア語とイタリア文化を広めるために創立当時から世界各国からの留学生を受け入れています。

「イタリア好き」の読者の方々にもペルージャ外国人大学でイタリア語を学ばれ、ペルージャをイタリアの故郷のように思っている方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

ペルージャ外国人大学・Università per Stranieri di Perugia
学位取得コースには多くのイタリア人学生も学んでいて、日本語のコースもあります


ウンブリア州の郷土料理といえばカッチャジョーネ、ノルチャの生ハム、カステルッチョの豆類、オリーブオイルやトリュフも名産、食の魅力も山盛りです。

親族で経営するオリーブ農園も収穫真っ盛りです!この時期は私たちも週末は搾油所通い、大家族とスタッフでフル稼働です!



聖フランチェスコの出身地、世界遺産の町アッシジ、美しい丘陵都市のオルヴィエートやグッビオ、建築物の宝庫スポレート、サグランティーノの里モンテファルコなどをはじめ、ウンブリア州は日本の皆様に訪れていただきたい、小さなくて魅力的な町や村が沢山あります。

イタリアで唯一海にも国境にも接していないこの地域は、今でもイタリアの伝統が生き続け、素朴さと豊かさを大切に暮らす人々の営みが守られているようです。
もちろん、そんな地域なので、イタリアのまん真ん中に位置していながら、アクセスの悪さも否めませんし、都会のように便利に日本食を堪能することもできません。
有名ブランドの直営店もなければ、飛び抜けてお洒落なレストランも見かけません。笑

それでも、私はこの町のちょっと不便で、ほどよく田舎なところが、むしろ心地よく、こじんまりとした町だからこその快適さを楽しんでいます。

どんなに慌ただしい毎日でも夕暮れ時に、家族や友人と
ワインを夕陽にかざしながら語らう時間を大切にできる
そんな時の流れのあるペルージャ暮らしを幸せに思っています。


やんちゃな(笑)ペルジーノの主人と
毛深い息子!愛犬ジャックラッセルテリアのゲンキとの日々のあれこれを中心に、皆様に、よりウンブリア州に興味を持っていただけるような話題、そして変化するイタリアのリアルな現実や新情報もお伝えできればと思っています。

オリーブ畑を駆け抜けるゲンキくん!みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。