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バーリの老舗パン屋「Il Panificio Adriatico」

Il Panificio Adriatico(イル・パニフィーチョ・アドリアティコ)は、イタリア・バーリの中心部、Via Nicola de Giosa 113にある歴史あるパン屋です。1932年にコンコルディア家によって創業され、3世代にわたって受け継がれてきた伝統と情熱が詰まっています。


古くからの製法を守りながらも、常に革新を追求し、地元産の小麦や厳選された天然酵母を使用したパン作りに取り組んでいます。その品質とこだわりは、スローフード協会にも認められ、イタリア国内外で高い評価を受けています。


オーナーのジュゼッペさんのご厚意で取材を許可していただき、朝5時から取材に伺いました。キッチンにはアンナさんがおり、彼女は毎日ひとりでカルツォーネ、パンツェロッティ、お惣菜などを準備しています。パン、クラッカー、グリッシーニなどの製品は、別の工場で製造され、店舗へ運ばれてきます。

伝統を守りながら進化するパン作り

Il Panificio Adriaticoでは、職人の手作業による伝統的な製法を重視し、さまざまな種類の穀物や小麦を使用したパンを提供しています。特に、近年では希少な古代穀物(グラーニ・アンティーキ)を用いたパン作りに力を入れています。

使用される小麦には、以下のような特別な品種があります。


  • スペルト小麦(Spelto)、モノコッコ(Monococco)、ディコッコ(Dicocco) – 高い栄養価を持つ古代穀物

  • ルッセッロ(Russello)、ティミナ・シチリアーナ(Timina Siciliana) – シチリア特有の希少品種

  • ドイツ産および南チロル産ライ麦(Segale Sudtirolese e Tedesca) – 香ばしい風味が特徴

  • ピュア・ピュア(Pur Pur) – 山岳地帯で栽培される栄養価の高いライ麦

また、パンには天然酵母を使用し、化学的な添加物を一切加えず、素材の味を最大限に引き出すことを大切にしています。


自慢のパンと焼き菓子

Il Panificio Adriaticoでは、多彩なパンや焼き菓子を取り揃えています。


人気のパン

  • パン・アルコバレーノ(Pane Arcobaleno) – 全粒スペルト小麦、そば粉、ターメリックを使用したカラフルなパン      

  • アルタムーラ風パン(Pane d’Altamura) – 100% セナトーレ・カッペッリ小麦を使用したオリジナル

焼き菓子とスナック

  • フリゼッレ(Friselle)、タラッリ(Taralli)、スコッカレッレ(Scroccarelle) – 南イタリア伝統のカリカリ食感のお菓子

  • ビスコッティ(Biscotti) – 通常のものからヴィーガン仕様まで豊富な種類を展開

  • パーネ・アッツィモ(Pane Azzimo) – 酵母を使わない伝統的な無発酵パン

ユニークな特製カルツォーネヴィーガンペストリーも人気です。


  • スペルト小麦のカルツォーネ(カブの葉、トマト&モッツァレラ、玉ねぎ、チコリ、アーティチョークなどの詰め物)

  • パルミジャーナ ディ メランツァーナ

  • パンツェロッティ
今回の取材を通して、ジュゼッペさんとアンナさんのパン作りへのこだわりや情熱を強く感じました。一つひとつ丁寧に作られたパンは、素材の良さだけでなく、作り手の想いまで伝わってくるようでした。家の近所にこんな情熱的なパン屋さんがあったら最高ですね。

今回の取材の様子はこちら! https://youtu.be/XTH1lpDBJ80

【プーリア州】プーリア伝統料理愛溢れる兄妹シェフレストラン

プーリア州プティニャーノにあるレストランScinuà「シヌア」


イタリア、プーリア地方は、その素朴な魅力、絵のような風景、そして何よりも素晴らしい料理で有名です。そのプーリア地方の中心に位置する美しい町、プティニャーノに美食家を惹きつける一軒のレストラン、Scinuà シヌアがあります。


シヌアは「農場からテーブルへ」というコンセプトの元、食材はなるべく地元の農家、職人から調達しています。これによって料理の新鮮さと品質が保たれるだけでなく、地元コミュニティを支援することをも考えています。プーリアの太陽の下で育まれる肉厚なトマト、レストランの庭から手摘みされる香り高いハーブ、地元の牛、家禽類などそれぞれの食材がその土地の物語を語っています。


シェフのジジにお話を伺いました。

『このレストランは2013年2月に誕生しました。私たちの使命は、自分たちの考え、料理哲学に嘘をつかず、季節の地元の食材を使い、伝統料理を守る事です。メニューの数は多くはありませんが、それはただシンプルということではなく、一つの料理の中に多くの地元の新鮮な食材が使われているからです。』


『私たちは土曜日、日曜日をレストランの定休日にしています。もちろん週末の方が、お客さんが多いのは事実です。でも、私だけでなく、一緒に働くチームみんな、その家族を大切にするという人生の選択をした結果、週末を休みにしました。』

 

メニューのおすすめですが、まずは5種類の小さな前菜のアンティパストミスト。

前菜とデザートを担当しているスーシェフのパッティが、その時獲れる一番美味しい野菜を中心につくりあげるメニュー。いろんな種類の料理を食べたがる日本人にぴったりなメニュー♪


 

 

炭火で焼いたカチョカバッロチーズにプティニャーノ名物Farinella(ひよこ豆と大麦を炒って粉末にしたもの。きな粉に似てる)のジェラート、 カポコッロサラミといちじくを煮詰めたVincottoソースがかかったこの前菜スペシャリテもおすすめ。
 

この日のメインコースは、地元牛のステーキ、ハラミ、トリッパに牛の骨髄。炭火で調理された牛の骨髄を味見させていただきましたが、地元産のセモリナ粉パンと食べると、口の中に溶けひろがる複雑な味わいがもう至高の美味さ!
白ワイン、香味野菜、ハーブと共に調理されたトリッパは歯応えを残しつつも柔らかい抜群の調理時間で火入れし、嫌な臭みもなく旨みたっぷり。 
伝統的なテラコッタ鍋で調理していましたが、アルミホイルで蓋をして、上には皿を置いてしっかりと蓋をしていました。その皿の上に水を張っていたのでシェフのジジに理由を聞くと、『皿の水が鍋の中の状態を表しているんだ。熱くなければ、鍋の内部の温度も低く、水がなくなりそうなら、焦げに気をつけるんだ。」


 

プーリアの伝統料理への愛と、その未来を常に考えるシェフ、ジジとスーシェフ、パッティ。プーリアの本質を捉えた料理を創造的に作り出すシヌアでの食事を通して、プーリア食文化の豊かさを考えさせられました。


今回のシヌアでの取材の様子をYOUTUBEチャンネルにてアップしております。ぜひ映像でみて、さらにお腹を空かせてください♪

https://youtu.be/AWR06-mVFFI

 

Scinuà

Via Santa Lucia, 18, 70017 Putignano BA, ITALY

https://maps.app.goo.gl/ACyopjwGjB1UE7Qp8?g_st=ic

  0804058430

Sat. and Sun. are closed

【プーリア州】常連客でいつも賑わうパン屋さん!ピッツァでもなく、フォカッチャでもない、オリジナルPizzellaがマジうまい!

今回紹介するのは、Panificio Bove(パニフィーチョ・ボーヴェ)。プーリアの州都バーリから北に15キロほどに位置する美しい港町、ジョヴィナッツォにあるパン屋です。1956年から続く、このアットホームなパン屋は, ”Pizzella”というジョヴィナッツォ特産のフォカッチャを産んだ場所として知られています。地元の人々に愛され、たくさんの観光客もわざわざ買いにくるこの”Pizzzella”の秘密を探ってきました。


 

私が訪れた日、朝8時にお店に到着すると店主のフランコが暖かく迎えてくれました。パンの焼けた心地よい香りに迎えられ裏口のパン工房に入ると、フォカッチャ生地を仕込んでいる真っ最中。


 

材料はすべて、地元産。Tipo0の小麦粉に、オリーブオイル、トマトホール缶もプーリア州のものでした。


生地が出来上がって生地の分割作業に入った時、なんと計りを使いません。ベテランイタリア人親父二人の魔法の手によって、あっという間に大きな生地の塊は、分割されていきました。パンは個数で売るのではなく量り売りなので、そこまできっちりとした計量は必要ないのかもしれません。


ここで、フランコのお母さんにPizzellaの誕生秘話を聞くことが出来ました。


『昔、まだフランコが子供の頃、フォカッチャは分厚いタイプのフォカッチャを作っていたの。その日、発酵に時間がかかる分厚いフォカッチャを求めてきたお客さんに『時間がないんだけど、早くフォカッチャを作ってくれ』と言われましたの。 その時に、フランコの父が、フォカッチャ生地を薄く伸ばして、ピザ用のトマトホールを潰して、その生地に乗せて即席でPizzellaの原型を作ったのよ。すると、それが評判となって、リクエストが頻繁に入るようになり、今では、ジョヴィナッツォの名物パンになったのよ。』


Panificio Boveのメニューには、伝統的なイタリアンパンからpizzellaまで、豊富な種類のパンが並びます。でもほとんどの人がpizzellaかフォカッチャをメインに買いに来るようです。

Pizzella とフォカッチャだけで、一日400個ほど売り上げることに、驚きました。


パン職人によって、焼き上げられ積み上げられたPizzella。朝から客足が止まることなく続き、昼すぎの営業時間までノンストップで焼き続けていました。

私が、pizzellaを食べたのは、去年の夏。ジョヴィナッツォの友人を尋ねたときに、このフォカッチャのことを聞きました。

初めて見た時の印象は、『pizzaみたいなフォカッチャで、そんなに美味しそうではないな。』


でも一口食べると、外側はカリカリ、良い焼き色が香ばしく、トマトの風味が口の中に広がり、それは感動的でした。

Panificio Boveは、美味しいパンと心温まる雰囲気に包まれ、地域の人々が集まり、交流する特別な場となっています。


9月には地域をあげて、pizzella祭りが開催されるほど、有名になったBove。 私もまたPizzellaを買いに戻りたいと思います。

私が新しく始めたYoutube チャンネル”So Hungry Italy” で今回の取材の様子が動画で見ることが出来ますので、ぜひチェックしてみてください!

https://youtu.be/00OnScMp0CQ

Panificio Bove

Via Molfetta, 58, 70054 Giovinazzo BA, Italia

https://maps.app.goo.gl/UWqyKEC1Tna7nxhu7?g_st=ic

 

ヨーロッパ最古のカーニバル プティニャーノ2022年夏開催されました♪

イタリアのカーニバルといえばベネツィアが有名ですが、ヨーロッパで最古のカーニバルの祭典は、ここプーリアのプティニャーノにあります。


プティニャーノのカーニバルが始まったのは1394年!

プティニャーノのカーニバルが始まった理由は、1394年頃、プーリア地方はイスラム勢力に攻められており、大切に守って来た教会にある宝を海沿いのモノーポリから内陸地であるプティニャーノにある教会に移すため、プロチェッショーネ(宗教的な行列)を1394年の12月26日より始めました。プティニャーノの農民たちは、荒れた農地にぶどうの木を植えながらこのプロチェッショーネを見ていましたが、ある時仕事をやめ、プロチェッショーネに並び、踊ったり歌ったりしながらついていったそうです。
これが宗教とともに農民の伝統的な祭典となり、プティニャーノのカーニバルの始まりとなりました。


コロナ禍の影響で、2020年2月のカーニバルを最後に、2021年2月、2022年2月は延期になりました。

2022年は、イタリアの他の地のカーニバルは開催したところもあるので、プティニャーノのカーニバルも状況的には開催できたかもしれませんが、やらなかった大きな利用の一つにパレードに使う大きな模型の制作難度があると言われています。


毎年、一つのテーマがあり、そのテーマにそって、模型職人を中心に、かなりの規模で何ヶ月もかけてその模型を完成させます。

大きなもので、高さ10m 。鉄線で土台を作って、そこに新聞紙を貼り付けてベースを作ります。さらに上から粘土を張って乾燥させて色付け。


しかも電動でパーツが動くような仕組みになっていて、この巨大な模型がパレードで動いている姿は衝撃的です!

冬のカーニバルができなかった今年は、6月24日から7月3日まで、夏のカーニバルを開催しました。

街中に、巨大模型が設置され、週末は歩行者天国になり、さまざまなマーチングバンドが街中を演奏して歩き、音楽バンドやダンスのステージなどもあり、盛り上がりをみせました。


2年半ぶりのカーニバルに、プティニャーノの市民も嬉しそうでしたが、何人かに話を聞いてみると『冬のカーニバルはこの何十倍も盛り上がるんだ!』『来年はなんとかして冬のカーニバルを実行したい』とカーニバル魂に火がついたようでした!

最終日には、フィナーレとしてロバの模型に火を付ける儀式が行われました。炎とともに、新聞紙の破片が次々に飛んでいっている様子は、とても幻想的でした。


2023年冬には、3年ぶりの冬のカーニバルが開催できることを祈ります♪

今回の夏のカーニバルの様子は、YouTubeチャンネル『秋田犬サンゴin ITALY』にアップしております。

こちらから、伝統と迫力のあるカーニバルの様子をご覧ください。👇

https://youtu.be/Seyz8EvKeHg


 

イタリア好き、プーリアと私。

イタリア好き

あれは2018年6月、カラブリア州のとあるトラットリアでの出会いでした。初めてお会いする編集長の松本さんに、カラブリア州の食材を使った日本料理のコースを食べていただきました。笑


”イタリアで働く日本人料理人あるある”ですが、たまたま僕が研修でお世話になったそのトラットリアで、そこのオーナーに日本料理のイベントをやってくれとお願いされた時でした。

あれからちょうど4年。縁があって記事を書かせていただくことになりました。

 

初めまして。江草昌樹と申します。 イタリアでは5年間料理人としていろんな場所で働き、縁あってイタリア人女性と結婚。日本で数年過ごし、2022年からまたプーリア州に戻ってきました。


コロナ禍で、決まっていたイタリアでのシェフとして働く機会を失いましたが、それを機に

『より自由に、いつまでも経験、挑戦する生活』をモットーに活動しています。

今はYouTubeチャンネル『秋田犬サンゴin ITALY』を通しても、イタリアの生活の様子などを発信しています。


https://www.youtube.com/c/AKITAINUSANGO

 

プーリアと私

 

2014年にイタリア料理修行のため渡伊。日本でお世話になった料理の師匠の影響で、北イタリア料理に興味を持ち、2年ほど北イタリアを回って帰ろうと思っていました。

帰る前に一度、南イタリアも見てみたいという欲求が芽生えて、2016年夏からプーリア州のレストランで働き始めました。

北イタリアのイタリア人が言う『南イタリアなんかで働かないほうがいいいよ』という発言は何のその、料理も美味しいし、人もフレンドリーだし、気候もいい。一気にプーリアの魅力に引き込まれました。


飲食業界を離れた今、飲食業でないイタリア人コミュニティに初めて入って、イタリア人のリアルな暮らしがどんな感じなのかやっと徐々に分かってきました。

たとえ、5年以上イタリアに住んでいようと、飲食業界にいたら、24時間料理のことを考えて、休みの日もシェフと料理イベントに行ったりで、イタリア人の普通の暮らしっていうのを体験できていなかったですから。

妻の家族との家での食事では、地元の料理のことを毎回、義祖父母やお義父さんお義母さんに質問の連続です。またお義父さんとオリーブや自然のアスパラガスを収穫したり、お義母さんにカルツォーネの作り方を教えてもらったり。


そして飲食業をしていると絶対にできない、週末にイタリア人の友人たちと食事やイベントに行ったり、犬の散歩途中にいつものバールに行くと、自然といつもの友人たちが集まってきて、そこから新たな友人ができる。

みんなで集まって、会話を楽しんだり、イベントをしたり、踊ったりするのが大好き。人の繋がりの強さが私をプーリア州に引きつけたのかもしれません。


アルベロベッロ、青く輝く海、新鮮な野菜と海鮮物、オレキエッテにワイン。だけではないプーリア。

そんな素敵な州の魅力を伝えられるように、これから投稿していこうと思います。