お料理説明・背景
代々パレルモに暮らすファミリーに生まれ育ったマンマ、シルヴァーナさん。「季節のレシピを紹介して!」とリクエストすると、まず筆頭に挙げられたのが、今回ご紹介する「ジェーロ・ディ・メッローネ」だ。メッローネは、シチリアではスイカのことを指す(イタリア語では、アングリアやココメロ)。得意中の得意だそうで、スイカが出回る夏の間、月に2~3回はつくると言う。
「夫も子供たちも大好きなのよ。」
シルヴァーナさんには娘2人がいるが、長女はただ今日本留学中! でも、常時Facebookでつながっており、「いつも一緒」というシチリアらしい超絶仲良し一家だ(写真右)。
「ジェーロ・ディ・メッローネ」は、パレルモ伝統のドルチェのひとつ。シチリア語では、「Gelu di muluna ジェル―・ディ・ムルーナ」と呼ばれる。3000年の歴史を誇るシチリアには、現在使われるイタリア語の元となった(と言われる)シチリア語なるものが存在する。シチリアは、古代より地中海列強国の支配を受けてきた土地柄。フェニキア、古代ギリシャ、古代ローマ、イスラム帝国、ノルマン王国、スペイン王国......と目まぐるしく支配者が替わったが、各時代の権力者が置いて行った「置き土産」、つまり伝統や食文化、習慣、言語などが今も残り、ほかのイタリアでは見られないエキゾチックで独特な香りを放つ、今のシチリアをカタチづくっている。
「ジェーロ・ディ・メッローネ」も、イスラム帝国支配時代にアラブ人たちが伝えたのが起源だそうだ。ちなみに、グラニータやカッサータ・シチリアーナなど、よく知られるシチリア伝統菓子も、これまたアラブ人が伝えたもの。
さて、豆知識はこれくらいにして、「ジェーロ・ディ・メッローネ」に話を戻そう。6月下旬ころからスイカをゴロゴロ山積みにした3輪アーペやトラックを見かけるようになる(写真左)。農家が収穫されたばかりのスイカを路傍で直売する様子は、シチリアの夏の風物詩だ。
きらめく地中海の太陽を存分に浴びて育ったスイカは、赤子の頭……というより全身?と表現した方が良さそうなほどに大きく、重さは1個で10キロ前後。甘く、果汁もたっぷりで、そのままシャクシャクしても存分においしいが、パレルモでは、贅沢に果汁だけを抽出し、ゼリーに仕立て楽しむ。
7月15日のパレルモの守護聖人のフェスタ、8月15日のフェッラアゴーストなどにも欠かせない夏の定番ドルチェ「ジェーロ・ディ・メッローネ」。シルヴァーナさんが、ズィーア(おばさん)に習った伝統レシピに「こだわり」を加えたオリジナルバージョンは、繊細な甘さと、程よいプルルン感。友人たちや親せきで集まる夕食会やパーティでも、必ずリクエストされる「名物」なのだとか。たしかに、今まで食べたどこの「ジェーロ・ディ・メッローネ」よりもおいしかった♡!
手順はすこぶるシンプルだから、夏の間にぜひお試しあれ!
シチリア州在住。編集ライター/コーディネーター通訳。約10年間のローマ生活を経て、2010年よりシチリア州州都パレルモ在住。ガイドブックや雑誌のイタリア特集を始め、イタリア関連著書多数。近著「おしゃべりのイタリア語」絶賛発売中!イタリア商工会議所認定通訳。HP:buonprogetto / la vacanza italiana Blog:ローマの平日シチリア便り
作り方
- スイカを適当な大きさに切り分け、皮をはずす。(写真a 参照)
- 種を取りながら、適当な角切りにする。内側に残った種はそのままでOK。(写真b 参照)
- 2のスイカをスプーンで軽く砕いておく。(写真c 参照)
- 3をパッサヴェルドゥーラ(野菜こし器)に通し、果汁を抽出する。野菜こし器がない場合は、ブレンダ―やフードプロセッサーで粉砕してこす。ただし、フードプロセッサーの場合は粉砕力が強いので種をよく取り除いておくこと。(写真d 参照)
- 4の果汁を水切りざるに通す。(写真e 参照)
- 果汁を計量し、1リットルに対してアミド・ペル・ドルチェを90g、粉砂糖を150gの割合で計量する。(写真f 参照)
- 果汁を、5のざるよりも目の細かい茶こしでこしながら、鍋へ移す。(写真g 参照)
- アミド・ペル・ドルチェと粉砂糖を加え、よくかき混ぜて溶かしてから沸騰させない程度の火力(中弱火)にかけ、常にかき混ぜながら約10分加熱する。(写真h 参照)
- ポコポコと泡が立ち、軽く沸騰したら火からはずす。(写真i 参照)
- 冷めないうちに器に移し、粗熱が取れたら冷蔵庫へ。2時間ほど冷やしたら、チョコチップ、シナモンパウダー、ピスタチオで飾りつけをしてテーブルへ!(写真j 参照)