お料理説明・背景
「母はシチリアのメッシーナ、父はシチリアのパレルモ出身で、私はシチリア生まれなのよ」と、いつも明るいマリーサさん。お父様の仕事の都合で若い頃にナポリに引っ越してきたので、シチリアの記憶が全くないけど、憧れの大地だとか。
そんなマリーサが爽やかな夏におすすめする料理は、ソレント半島の先っぽながらも、陸の孤島と呼ばれる、Nerano(ネラーノ)という村にまつわる伝説のレシピ、ネラーノ風ズッキーニのスパゲッティ。
夏になると、この辺りの海辺のレストランからはバジリコの爽やかな香りと、オリーヴオイルの匂いが漂う地元の名物料理。チーズたっぷり、バターも使用するこってり系なので、実は材料のラインアップはあまり南イタリアらしくないのだが、バカンスで訪れていた北イタリアや、ヨーロッパ諸国の人の舌を虜にしたようだ。「自宅に帰ってもつくりたいんだけど、どうやってつくるの?」という質問に、レストランのコックたちが「チーズは4種類使うんだ」とか、「ズッキーニは乾燥させると香り高くなる」などなど、お客さんをとても上手に誤魔化し続けた結果、ナポリのマンマたちの頭を未だに悩ませ続けている魅惑のパスタ。
このパスタに欠かせないチーズ、Provolone del Monaco(プロヴォローネ・デル・モナコ)は、今ではイタリア全土で一般的に愛用されているプロヴォローネチーズの発祥地、カンパーニア州のカゼルタから、当時酪農が盛んだった、アマルフィ海岸の山の方でつくられていたチーズだ。南イタリアで一般的なパスタフィラータと呼ばれる製法で、熱湯をかけてゴム状に溶かし、形成したチーズ。牛の乳を使った一般的な硬質チーズなので、味わいとしては癖がなく口溶けもよく食べやすい。短期熟成で食べることができるが、熟成月数が増えると塩味が増すのが特徴だ。
カンパーニア州在住。イタリアの家庭料理に憧れ渡伊。1997年よりナポリ在住。日本での情報誌編集制作勤務経験を活かし、2005年スローフード協会公式ブック”Slow”日本版の現地取材コーディネーションを始め、様々なコーディネート、執筆を多々手がける。1995年より南イタリア情報サイトPiazzaItalia設立。ナポリにてマンマに習うナポリの家庭料理教室などを主宰。ブログ「ナポリのテラスから」で日々の生活をを綴る。
作り方
- ズッキーニは厚さ3mm程度の輪切りにする。(写真a 参照)
- ズッキーニをオリーヴオイルで狐色になるまで揚げる。(写真b 参照)
- 大きな容器に(最後にパスタと混ぜるため)揚げたズッキーニ、プロヴォローネチーズ(100g)、パルミジャーノ(50g)、手で半分程度に切ったバジリコ(7~8枚)の順で、材料がなくなるまで層をつくり、最後にバターをのせ、塩(チーズの塩分が濃いので少なめに)で味付ける。(写真c 参照)
- 3に2で使ったオリーヴオイル(熱いうちに)を半分程かける。この状態で常温にて1時間ほど寝かし、味をしみこませる。(写真d、e 参照)
- 1時間経過したらお湯を沸かし、塩を加えスパゲッティを茹で始める。
- スパゲッティを茹でている間に、別鍋にオリーヴオイルとニンニクを入れアーリオオーリオをつくる。(写真f 参照)
- スパゲッティはアルデンテで取り出し(ゆで汁をコップ一杯ほど残しておく)、ザルで湯切りしたら3に加え、6のアーリオオーリオ、塩少々も加えよくあえる。(写真g 参照)
- 残りのプロヴォローネチーズ、バジリコを追加して出来上がり。(必要に応じてパスタのゆで汁を加えてクリーミーに仕上げる)(写真h 参照)