お料理説明・背景
南イタリアの郷土料理のお菓子にはアーモンドがよく使われる。
細かく砕いたアーモンドと砂糖を混ぜたパスタ・レアーレはパスクワ(復活祭)の時の羊を象ったお菓子やチョコレートでコーティングされた練りきりのような半生菓子に、また小麦粉を混ぜたりしてクッキーなどに使われる。
アーモンドの種類は同じプーリア産でも少なくとも3~4種はり、形だけではなく味もそれぞれ微妙に違う。自前のアーモンドでつくるアーモンドミルクやアーモンドクッキーは昔ながらのおやつ。アンナ叔母さんの家に行くといつでもアーモンドクッキーがガラスのジャーに入っている。カフェまたは自家製リモンチェッロと一緒に出してくれるが、帰り際に袋に入れてお土産に持たせてくれるのが密かな楽しみである。
プーリアのアドリア海沿岸部では例年3月初旬、桜の花によく似た大きな花が満開を迎える。花が終わってしばらくすると梅のようなまん丸い緑色の実がなる。まだ硬いうちに種を取り出し、石で軽く叩くと中から真っ白で柔らかい仁が出てくる。これがいわばフレッシュアーモンド。そのままかじるとやさしい甘さとみずみずしい食感で何とも言えないおいしさ。でもこれは保存が効かないので旬の時の楽しみ。
普通は9月頃、木についたまま実が熟れてパカッと割れ、少し乾燥した状態になるまで待って収穫する。その後、実を取り除き、種を割って仁を取り出す作業が待っている。取り出した仁(=アーモンド)は天日で数日乾燥させてから保存する。アーモンドパウダーにする場合は湯がいて甘皮を取った状態で天日干しにして乾燥させてから細かく挽く。自然の恵みをいただくのは手間と時間がかかる。この辺りでは何処の家にも1~2本はあるアーモンドの木だが、今時の現役マンマは共働きが多く、ノンナやノンノ(おばあさんやおじいさん)がいなければアーモンドの実も地に落ちて拾われることなく朽ちてしまう運命といえる。
写真左は、クッキー生地を切るときに使っていたナイフ。このナイフは、アンナ叔母さんのお母さんが使っていた100年ぐらい前のもので、今も大事にしているという。レシピ同様、代々受け継がれている”物”にも味わいを感じながら、アンナ叔母さんのアーモンドクッキーを味わった。
プーリア州在住。1999年プーリアと日本の架け橋になるべく(有)ダプーリア設立。2008年子育てのため夫の故郷Valle d’Itriaへ移住。スローライフを実践しながらプーリア仲間増殖活動中。