お料理説明・背景
子供のおやつやちょっとした集まりには必ずと言っていいほど登場するフォカッチャ。日本的に言えば“おかずパン”といったところ。トラットリアなどで前菜の一品として並ぶこともよくある。イタリア各地で、その土地独特のフォカッチャがあり、「えっ、これもフォカッチャって言うの?」と驚くほど地方によってバラエティに富んでいる。
プーリアでは上にフレッシュトマトをのせたものが基本。季節によってペペローニ(パプリカ)、カルチョッフィ(アーティチョーク)、きのこ類など、好みの野菜をのせたりもする。また、モチモチの食感を出すために入れるジャガイモの量を増やしたり、薄力粉に強力粉(グラーノドゥーロ)を混ぜるところもある。
今回ご紹介するネギのリピエーナ(フィリング)が入っているものも一般的で、どこのパン屋さんでも見かける。ネギのトマト煮の味付けと入れる量に個性が出るところ。材料もつくり方もシンプルなだけに、つくる人の経験と腕前が仕上がりに出るとも言えるだろう。
春になると、スポンサーレというネギの一種が旬を迎える。英語でスプリングオニオンと言われるこの野菜は、小ぶりのネギで、日本ではわけぎや細ネギが一番近いのではと思う。日本ではいつでも手に入りやすいが、こちらではこの時期以外はあまり売られていない。手に入らない時はタマネギだけでつくる。エキストラ・ヴァージン・オリーヴオイルとトマトでクツクツと時間をかけて煮ることによっておいしいネギの甘みが出る。
写真左は、トマトが旬の夏に自宅の畑で穫れたトマトを水煮にして瓶詰めしたもの。「旬を過ぎたトマトは味が薄くてあまりおいしくないのよ」とアンナ叔母さんは言いながら、ネギを煮る時に少しこちらを加えてつくってくれた。イタリアマンマらしいこだわりが垣間見れた瞬間だった。
料理を教えてくれたアンナ叔母さんは、義父の従妹であり、義母方の叔父の嫁なので、私の夫と濃い血で繋がっている。会ったことのない亡き義母の味に一番近い、大事にしたいレシピだ。
プーリア州在住。1999年プーリアと日本の架け橋になるべく(有)ダプーリア設立。2008年子育てのため夫の故郷Valle d’Itriaへ移住。スローライフを実践しながらプーリア仲間増殖活動中。
作り方
- フォカッチャをつくる。(下記参照)
- リピエーナ(フィリング)をつくる。(下記参照)
- 天板にオリーヴオイルをひき、半量のフォカッチャの生地を薄くのばす。(写真i 参照)
- その上にリピエーナをのせる。オリーヴの塩漬けは種を取ってちらす。(写真j 参照)
- 残りのフォカッチャ生地を別の天板の上でのばし、4の上にのせる。(写真k 参照)
- 下の生地を引きのばすようにして端を閉じ、もう15分程休ませる。
- 表面にフォークで穴をあける。(写真l 参照)
- 170℃のオーブンで表面がきつね色になるまで20分程焼く。
- オーブンから取り出し、冷めてから切り分ける。(写真m 参照)
フォカッチャ
- ジャガイモは皮をむき、薄く切って茹で、マッシュする。
- ビール酵母はぬるま湯で溶かす。(写真a 参照)
- ボウルに薄力粉、塩、エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル、マッシュしたジャガイモ、ビール酵母を入れる。(写真b 参照)
- 水を少量づつ加えてよく煉る。(写真c,d 参照)
- 毛布などに包んで1時間半ほど休ませて発酵させる。(写真e,f 参照)