
お料理説明・背景

ウ・フンナテッリェは、モリーゼ州の州都カンポバッソ近郊にある小さな町、イェルシ (Jelsi)の伝統料理です。 この料理名は、方言の *affunnare*(「沈める・浸す」という意味)に由来しており、パンをソースに浸して食べることから名付けられました。
この料理の重要な食材のひとつが、北イタリアではあまり知られていない特別なソーセージ「ラード漬けの乾燥ソーセージ」です。ラードが加わることで、昔ながらの味わい深い風味が生まれます。伝統的には、この料理にはカントリースタイルのパン(できれば薪窯で焼いたもの)を添え、半熟の卵黄や濃厚なソースに浸して食べるのが理想的です。
もともとのレシピでは「コルノ」という赤ピーマンが使用されていました。これは大きなパプリカよりも火が通りやすいからです。しかし、現在では「コルノ」が手に入りにくいため、一般的な大きなパプリカで代用することが多くなっています。
昔、女性たちはこの料理を作り、中身をくり抜いたパンの中に注ぎ入れていました。こうすることで、パンが柔らかくなり、すべての味をよく吸収することができました。そのため、この料理は、小麦の作業収穫をしていた夫たちのために畑へ持っていくのに最適でした。
ちなみに、イエルシは「小麦の町」として知られており、毎年7月には「小麦祭り(Festa del Grano)」が開催されます。この伝統的な祭りは、2018年にヨーロッパの文化遺産として認定されています。
この料理はイェルシの人々にとても愛されており、毎年夏にジレンボ家が「フンナテッリェ祭り」を開催しています。祭り(サグラ)では、素焼きの小さな鍋に盛られ、赤ワインとともに提供されます。炭水化物・野菜・タンパク質がバランスよく含まれた、栄養満点の料理です。
今回レシピを教えてくれたナディアさんのお店では、季節の食材のみを使用するため、ウ・フンナテッリェを作る時、夏は新鮮なミニトマトで作り、飾りにバジルを使いますが、冬は、今回のように缶詰のダッテリーニトマトを使用し、年中カフェのメニューとしておいしく提供しているようです。
ぜひ旬の食材で、このモリーゼの伝統料理を作ってみてくださいね。
カンポバッソ出身。ナポリ東洋大学で日本語と言語文学を専攻。2004年に東京でイタリア語学校「ピアッツァイタリア」を設立し、現在は代表として勤務。
作り方
下ごしらえ
- タマネギの皮をむき、大きめの角切りにする。(写真a 参照)
- パプリカの上部を切り取り、中の種を取り除いた後、タマネギ同様大きめの角切りにする。(写真b 参照)
作り方
- フライパンにオリーヴオイルを入れ、タマネギを加えて数分炒める。(写真c 参照)
- パプリカと塩を加え、さらに数分炒めたら、蓋をして中火弱で約15~20分ほど加熱する。(写真d 参照)
- トマトを加え、弱火で40分ほど煮込む。(写真は大鍋で大人数分を仕込み中) (写真e 参照)
- 大きめに切った乾燥ソーセージを加える。(写真f 参照)
- 卵をソーセージの間の隙間に割り入れる。(写真g 参照)
- 蓋をして数分蒸し焼きにし、卵が好みの固さになったらテラコッタ製の器に盛り付け、数枚の田舎風パンを添えて完成。(写真h 参照)