お料理説明・背景
バジルの葉を贅沢に使ったジェノヴェーゼソース。
イタリアではペスト・ジェノヴェーゼ、リグーリア州では略してペストと呼ばれています。日本でもスーパーで売られていますね。
さてみなさん、瓶詰めのペストを購入し、パスタ料理に使ったあとに少量余ってしまった、ということはありませんか? このような時ジェノヴァのマンマ達は酸化予防のため、少量のオリーヴオイルを加えてペストの表面を覆い空気に触れないようにしてから、冷蔵庫で数日保存します。
また、野菜たっぷりのミネストローネに加えて、郷土料理ミネストローネ・ジェノヴェーゼを作って使い切ったりします。
他にどのような活用法があるのか、イネスさんに面白い話を聞きました。
世界各国の有名人がお忍びで訪れるポルトフィーノという街をご存知ですか?
ジェノヴァから約33km離れた場所にある、まるで絵のように美しい世界的に有名なリゾート観光地です。日本のディスニー・シーのモデルになった事でも有名ですね。
昔、この街においしい手作りペストが有名なレストランがありました。ペストを使ったリグーリアの代表的なプリモ・ピアット、トロフィエ・アル・ペスト(ネジネジひねった短い生パスタ、トロフィエにジェノヴェーゼソースを絡めた料理)を求めて世界中からたくさんの人が訪れていました。ある時、あまりにたくさんのお客さんがやってきてしまったので、用意していたペストの量が残りわずかになり、遠路はるばる店を訪れてくれた人たちに振る舞うことが難しい状況に。それでもお客さんは次々と来店するので、シェフはどうしたらいいか頭をかかえ……そして生まれた料理が今回紹介するトロフィエ・アッラ・ポルトフィーノです。
トマトソースにペストを加えてお客さんに提供すると、これはおいしいと喜ばれ、お店の定番メニューとなりました。ある日、世界的に大ヒットした歌「マイ・ウェイ」で有名なアメリカ人歌手フランク・シナトラが来店します。シナトラの母親はリグーリアの出身なので、彼はよく母の故郷を訪れていました。彼がこの店でトロフィエ・アッラ・ポルトフィーノを食べて気に入った事で、この料理は有名になりあちこちのレストランで真似して作られるようになりました。作り方が簡単なので家庭でも食べられるようになりました。最近ではラザニアにもアレンジされています。
トロフィエは生パスタはもちろん乾燥タイプも販売しています。日本で手に入れにくい場合はニョッキや他の短いパスタ(例えばフジッリ、ロティー二、リガトーニ)がソースとの相性が良いのでオススメです。なければスパゲッティでも大丈夫です。
2011年よりジェノヴァ在住。音楽院を卒業後、演奏活動の傍らフリーライター、旅行コーディネート、通訳などを務める。演奏会などでリグーリア州各地を周り、それぞれの街の文化や風景に魅了される。ジェノヴァ近郊の街を散策したり、骨董市巡りが休日の楽しみ。 山と海に囲まれたリグーリア州の四季折々の情報をご紹介いたします。Instagramはこちらから