お料理説明・背景
私が住むトラーパニとパレルモは100キロほどで、車で行けば1時間半くらいの距離。今では近い感じもしますが、昔は100キロと言えば1日以上かけて移動していた距離なため、同じ西シチリアに位置していても伝わる料理方法は異なります。
今回料理を教えてくださったのは、パレルモ市内のど真ん中で生まれ育ったマリアリータさん。料理上手なお母さんからたくさんのレシピを習ったという彼女が作るのはパレルモ伝統料理。
今回教えていただいたカジキの煮込みオーブン焼きはイタリア語だと「Pesce spada “agghotta“」。「アッギョッタ」とはシチリア弁で「色々な材料を煮込んだ」という意味。トラーパニではフライパンに全ての材料を入れて煮込むのですが、パレルモ風の作り方を教えていただきました。
「粉をはたいてカリっと焼いたカジキに、フライパンで軽く煮込んだ野菜を乗せて、最後はオーブンで野菜の甘味を凝縮させながらカジキにそのおいしさを染み込ませていくのよ。」
上に乗せる野菜は野菜自身の水分と少量の水だけでフライパンで煮込み、更にオーブンで加熱することで甘味が増すそうです。実際、オーブンから出てきた野菜を食べてみると本当に甘くてびっくり!
シチリア料理というとシンプルな料理法というイメージが強いですが、実は手が込んだものも多く。今回の料理も一つ一つを準備して、合わせてから更にオーブンで焼くと、2段階の調理法。パレルモは1862年のイタリア統一まではとても豊かな街で、有力な貴族もたくさんいました。それぞれの貴族にはMonsu’(モンス)と呼ばれるお抱えの料理人たちがいて、貴族の名を背負って腕を競っていました。シチリアに手が混んだ料理が多いのはその名残でもあるのです。
材料のカジキはシチリアを代表する魚。日本では「カジキマグロ」とよく言われますが、実際には「カジキ」はメカジキ科(またはマカジキ科)、「マグロ」はサバ科で遠い親戚関係にもあたらず、「カジキマグロ」という魚は存在していません。カジキは成魚になると300キロを超すこともある大型魚で、頭には大きく長い刀(スパーダ)があることからその名が付きました。ちなみに和名の「カジキ」は、長い刀の部分で「舵木(かじき)」と呼ばれる船の舵をとる板を突き通すことで「舵木通し」と呼ばれていたのが由来。旬は4~9月にかけてでパレルモの市場では台の上にドーンと一尾が丸ごと乗せられ、その姿は圧巻!尻尾の方から筒状に切って売られています。カジキには様々な調理法がありますが、マリアリータさんはこの調理方法が一番のお気に入りだと。色がきれいなので、クリスマスシーズンにもよく作るそうです!
「シチリア名産の塩漬けケッパーと爽やかな香りのシチリア産のグリーンオリーブを使ったこの調理法は、一口頬張ればサ~っとシチリアの風が感じられるのよ。シチリアのロゼワインと一緒にBuon appetito!」
2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自然にすっかり魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。現在、シチリア食文化を研究しつつ、トラーパニでシチリア料理教室を開催。また、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」の代表&コーディネーターとしてトラーパニで活動中。 シチリア美食の旅をコーディネート「ラ ターボラ シチリアーナ」
作り方
下ごしらえ
- 塩漬けケッパーは塩を流水で洗い、水気を手で絞りみじん切りにする 。(写真a,b 参照)
- グリーンオリーヴは種を抜いて粗みじん切りにする。(写真c 参照)
- タマネギ、セロリ、ニンニクはみじん切りするに。(写真d 参照)
- ミディトマトはヘタを取り8等分に切っておく。(写真e 参照)