マンマのレシピ

マンマの紹介

  • ミルコ・ピンナ(Mirko Pinna)さん
  • エミリア・ロマーニャ州モデナ県在住
  • 得意料理:モデナの郷土料理全般、サルデーニャ出身の両親の影響でサルデーニャ料理も造詣が深い

お料理説明・背景

今回は番外編として、今までも、これからも必要とされる保存食をテーマに、『イタリア好き』本誌vol49で、ケータリング会社を営むモデナ出身のシャフであるミルコ・ピンナさんに教わった、知恵とうま味が詰まった保存食を使った料理を紹介したい。

本誌では、香りが大切な乾燥ポルチーニ、塩味を意識して使うドライトマト、ハーブ塩は形状により、使い分けるなど、ちょっとしたコツも教えてもらったが、今回紹介するレシピは、その中でもポルチーニをメインに使ったおもてなしにもピッタリな"ひな鶏のポルチーニ詰め焼き"。調味料としてハーブ塩、飾りにカルチョーフィのオイル漬けを添えたものだ。

ポルチーニはイタリアの北から南まで、夏の終わりから秋の終わりまで採れるきのこ。標高や地域によって品種や質が少しずつ異なるので、比べてみるのもおもしろい。生のポルチーニの魅力は「歯応え」、乾燥ポルチーニは「香り」だ。大振りの乾燥ポルチーニは水から最低2時間以上戻して、戻し汁も余さず使うことをおすすめしたい。
形がよくない小さな物は粉にして、リゾットやパスタ、フランなど温かい料理の仕上げにかけるとスパイスのように香りを楽しめる。

続いて、お肉の味付けに使ったのはハーブ塩。ハーブ塩はイタリア各地にあって、その土地で採れるハーヴを使うのが基本だ。ここエミリア・ロマーニャでは、セージ、ローズマリー、レモンの皮をベースに、ニンニクの香りがしっかりついたAglione(アリオーネ塩)と、ニンニクの入っていないSale bolognese(ボロネェーゼ塩)がある。塩の粒の大きい小さいも含めればたくさんの種類があるね。使い分けの基本はマリネする時間、何日もかけてゆっくり塩が浸透してほしいパンチェッタなどは塩の粒子が粗いもの、10〜30分くらいマリネする場合は細かいものと使い分けるといい。肉類はもちろん、魚類、野菜にとちょっと料理のアクセントが欲しいときに重宝するから、いろいろ試してみてほしい。

最後に盛り付けに添えたのが、カルチョーフィのオイル漬け。イタリアでは南から北まで栽培されているカルチョーフィは、11月から5月までフレッシュなものを楽しめる。
オイル漬けには、大きなカルチョーフィの収穫が終わり、3、4回目の脇芽を使うことが多く、蕾がまだ硬めのしっかりした物を使うと歯触りも最高だ。旬の味を閉じ込めたオイル漬けは、夏場の冷製パスタや、フリッタータの具、ピッツアなどにも使うことができる。そのままアペリティーボにもいいね。とミルコさん。

使い方を知れば、もっともっと料理の世界が広がる保存食。お土産に買った、またはいただいた乾燥ポルチーニがお手元にあるなら、さっそく作ってみてはどうだろうか。

レポート:堂内 あかね(Akane Douchi)
エミリア・ロマーニャ州在住。日本で企業の管理栄養士として5年間勤務後、2005年渡伊。2007年、モデナ屈指の旧家に嫁ぎ、一族に継承されていたバルサミコ酢の樽の管理を夫と共に引き継ぐ。2009年よりスピランベルト市にある「伝統的なバルサミコ酢 愛好者協会」(Consorteria dell’aceto balsamico tradizionale di Modena)に所属し、バルサミコ酢マエストロ試飲鑑定士資格を目指し、研鑽を重ねている。バルサミコ酢の醸造の傍ら、イタリア人向け日本家庭料理教室の講座を北イタリア各所に持つ。また、自宅にて醸造室の試飲見学会、バルサミコ酢を使った食事会、料理教室を主宰。バルサミコ酢醸造のエピソード、見学会などは Facebook Akane in balsamiclandにて紹介中。

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材料

ひな鶏のポルチーニ詰め焼き(作りやすい量)

ひな鶏1羽500g前後
・ハーヴ塩小2細かい粒子のアリオーネ塩
【詰め物】
・乾燥ポルチーニ20g
・パン粉50g
・パセリ大1
・チーズすりおろし100g
・卵2個
・皮なしアーモンド6個
【仕上げ】
・ベビーリーフ適宜
・マルドンシーソルト適宜
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル適宜
・カルチョーフィのオイル漬け適宜あればで可

作り方

下ごしらえ

  1. 乾燥ポルチーニは冷水で、2時間以上戻しておく。(写真a 参照)
  2. オーブンを160度で予熱しておく。

作り方

  1. パン粉に100~150mlのポルチーニの戻し汁を注ぎ柔らかくしておく 。(写真b 参照)
  2. ひな鶏はお腹から開いて、背骨と肋骨を外し、肉を均一にならし、内側外側両方にハーヴ塩の細かいものを振り、30分ほど寝かせておく 。(写真c 参照)
  3. 詰め物を作る:ポルチーニとアーモンドは細かく切り、パセリはみじん切りにし、チーズ、卵をパン粉に加えてよく混ぜ、絞り袋に入れて20分ほど休ませる。(写真d 参照)
  4. ひな鶏を開いて、調理用耐熱フィルムの上に置き、3の詰め物を背骨の位置に来るように絞り出す。半分にひな鶏を閉て、巻き寿司を作る要領でフィルムにひな鶏を固く丸めて円柱形を作り、フィルムのはじをキャンディーの包装紙のようにしっかりと結ぶ。フィルムの数カ所に穴を空ける。(写真e,f 参照)
  5. 160度の予熱にしておいたオーブンに入れ、45分焼く。
  6. オーブンから取り出したらそのまま10分ほど休ませ、6つに切って、カルチョーフィのオイル漬け、ベビーリーフと共にお皿に盛り付ける。(写真g 参照)
  7. ひな鶏の上からマルドンシーソルト少々とエクストラ・ヴァージン・オリーヴオイルをかけて出来上がり。
  • a. 乾燥ポルチーニを冷水で戻す
  • b. パン粉にポルチーニの戻し汁を注ぐ
  • c. ひな鶏はお腹から開いて両面ハーヴ塩を振る
  • d. 詰め物の材料を合わせる
  • e. 詰め物を絞り出す
  • f. フィルムにひな鶏を固く丸めて円柱形を作る
  • g. オーブンから取り出したら10分ほど休ませる

お料理ポイント

ひな鳥を骨を取り除く際に、穴が開かないようにきれいに開き、厚みが均一になるようにさばくこと。中身を詰めすぎないように真ん中にくるようにすると、切った時に断面がきれいに仕上がる。詰め物が残ったら、ひき肉とあわせて、肉団子にしてもおいしい。